蛍川・泥の河 (新潮文庫)

  • 2279人登録
  • 3.70評価
    • (216)
    • (296)
    • (427)
    • (34)
    • (6)
  • 267レビュー
著者 : 宮本輝
  • 新潮社 (1994年11月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307091

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
吉本 ばなな
有効な右矢印 無効な右矢印

蛍川・泥の河 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 宮本輝初期2短編。
    「泥の河」は戦後しばらくした大阪の庶民の生活を舞台に、少年の目を通して情感豊かに流れる作品である。下町の生活の中に突然あらわれた対岸の舟に住む家族との交流によって誘われる狂気と不条理な死、そしてエロスを雰囲気良く描きだしている。
    実は、最後の巨大鯉が去る場面が象徴する意味はよくわからなかった。(笑)少年の過ごした別空間の、限られた経験の終わりを示しているのかな?
    「蛍川」は戦後しばらくした富山を舞台に、やはり少年の目を通し富山を中心とした北陸の風情をよく伝える作品となっている。ラストの蛍絵が映像的にも豪華で、それに辿りつくまでに描かれる少年一家の宿命を、死とエロスを絡めながらとうとうと描かれる。
    街の描写が多々あるのですが、路面電車の軌道が現在と異なっているのでしょうか?地理関係が少しわからなくなりました。(泣)
    どちらも国語教科書に載るような感じの作品と思いました。自分の試験点数はおそらく悪いでしょうけど・・・。(笑)

  • 好きな本を聞かれたら必ず名前をあげる作品。
    戦後の混沌とした日本を明るく、でも悲しく描いた作品。
    私はこれを読んで涙が止まらなかった。

    戦後の日本とは言え、分かりやすい言葉で書かれた作品なので心に入ってきます。

    何回も読みたい本。

  • ぞくぞくと震えます。
    作品の持つ、芸術としての美しさと、
    我々の生きるこの世界の奥暗さに。

    物語のヴォリュームに比して、文章は簡潔。普通の作家がやったならばただの説明文になってしまうような短さです。
    しかし、必要最低限度のこの文章が、豊穣な風景を眼前に現出させます。まるで、昔見たことがある風景みたいに。
    不必要なものがすべて排除され、思考の妨げが何もないからこそなのでしょう。この圧倒的な表現力にただ息を呑みます。
    文章も、現れる世界も、すべてが美しい。


    泥の河よりも蛍川のほうが好きです。
    少年が大人になり始める「泥の河」と、
    子供である(もしくは世界から庇護される)時間が終わる「蛍川」。

    前者に感じるのは、ちくりちくりと胸をつつくほろ苦さですが、
    後者に感じるのは底知れぬ深い闇の恐怖です。
    手を伸ばしてみれば、じつは全然恐れることのない暖かな世界なのかもしれない。
    でも夜は暗い。

    蛍はいつか消えてしまう。もちろん、光を生み出しつづける英子とも、離れなければいけない。
    そしてその後には圧倒的な質量をもった闇が置き去られる。
    その最後の瞬間を、鮮やかに描いた作品です。

  • すごく勝手な思い込みで、もっと俗っぽい小説家だと思っていたけど、完全なる食わず嫌いであったことにこれを読んで気づいた。
    『泥の河』の切なさはある種の衝撃で、読んでいると自分の小学校時代の友人たちの思い出がフラッシュバックした。
    同時に子どもには素直さゆえの残酷さもあれば、相手の心の触れてはいけない部分を直感的に感じ取る不思議な敏感さもあることを思い出した。
    生きている蟹に火をつけて「きれいだ」と言う少年の、やり場のない感情。
    この子はその後どんな大人になったのだろう、とても想像できない。

  • 戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描く太宰治賞受賞作「泥の河」。ようやく雪雲のはれる北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなかに、落魄した父の死、友の事故、淡い初恋を描き、蛍の大群のあやなす妖光に生死を超えた命の輝きをみる芥川賞受賞作「蛍川」。幼年期と思春期のふたつの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓をとらえた名作。

  • 『泥の河』で太宰治賞、『螢川』で芥川賞受賞
    どちらも、共通しているのは 貧しさ、死、逆境だが、都会の貧しさと田舎の過酷さが 少年に試練をあたえ強く鍛え上げる、希望と純真な心を失わず未来に開かれているところがよい。そういえば映画でも見たような、、、 この小説の舞台 昭和30年代にあった「人の死」とか「目に見える臭うような貧しさ」が人生に与える経験値、良い面も忘れてはいけないようなきがします。

  • 太宰治賞受賞の「泥の河」と芥川賞受賞の「螢川」。宮本輝の初期の著作物。宮本さんの作品には氏独自の死生観が散りばめられているように思いますが、この初期の2作には特にそれが顕著に現れているような気がします。

  • 昭和30年  安治川を舞台に

     淀川の支流が大川と名を変え、大川はさらに中之島をはさむように堂島川と土佐堀川となる。その二つの川が合流して、安治川と名を変えるところに、三つの橋が架かっている。
     そのひとつ、端建蔵橋のたもとにある古ぼけた食堂「やなぎ食堂」が小説「泥の河」の舞台となっている。
     時代は、戦後の姿があちこちに残骸をさらけだしていた昭和30年-。この食堂へ、いつも来る荷馬車曳きの男が、坂か登り切れず後戻りした馬車の下敷きとなって死ぬ。
     食堂の一人息子で、九歳になる信雄は、ある雨の日、その死んだ男が残した鉄屑を盗もうとする少年、喜一に会う。少年からこの川に棲みついている巨大なお化け鯉の正体を見せられ、誰にも口外しないことを約束する。そしてこの秘密を共有することでお互いの心がつながってゆく。
     彼は対岸につながれたみすぼらしい廓舟に、姉の銀子と、声だけで姿を見せない母の三人で住んでいた。信雄は、姉弟になぜか心魅せられていくが、父親は、「夜はあの舟へ行ってはいけない」と言うのだった。

    泥々とした 風景と少年の眼

     第十三回太宰治賞を受賞したこの作品は、信雄と家族、そして食堂に出入りする労働者、さらにこの川に浮かぶ廓舟の姉弟とその母との交友を通じて少年の眼にうつる大人の世界と、泥々とした川にまつわる風景を描いている。
     作者の宮本輝は『泥の河」についてこう語っている。
     「私の心の中には、絶えずひとつの風景があった。大都会のはずれで合流する二本の大きな川と、陽を受けて黄土色に輝く川面のさざなみ、(中略)。『泥の河』という小説は、つまり私の中にひそんでいた不鮮明な映像をときほぐしていくことによって、つむぎ出されていった作品である」
     私達は心の中に、少年の頃の風景を持っている。それは作者が言うように、不鮮明な映像であるが何かのきっかけがあれば、あざやかに浮かんでくる風景でもある。
     昭和三十年。赤銅鈴之助の放送がラジオから流れてくる場面や、喫茶店のガラス越しに、大相撲のテレビを観るシーンは、高度成長以前の貧しい少年時代を思い起こさせる。あの頃は、みんなが貧しかった。そして大人と子供は、全く別の世界に住んでいた。戦争の傷痕をカスのようにひきずって生きている大人もいた。
    ある日、黙って、喜一の郭船が去っていったように、子供たちの別れは、突然、それもいたって日常的に訪れていた。

    内部に残る戦争の痕跡

    映画「泥の河」は昨年数々の賞を受賞した。マイナー系の映画としては、あまりにも多くの観客を動員したといえるかも知れない。それは白黒スタンダードの古い手法の画面構成と相まって、「団塊の世代」における、過去への追想とともに、高度成長時代への批判にもなりえていたためかも知れない。
     今、小説の舞台となった、端建蔵橋へと歩く。阪神福島駅から阪大病院へと歩いていくと、三分ぐらいで、福島の天満宮がみえてくる。原作で、浄止橋の天神さんと書かれている神社だ。
     祭り囃子にせき立てられるように、信雄と喜一が露店の並ぶ黄昏の街を駈けていき、大事なお金を落とす場面はここである。
     しかし、今や戦争の残骸は全くなく、近代的なビル街が並んでいるばかり。高度成長が、大阪の街を変貌させてしまったのか。はたして、戦争の残骸はこの街のどこにも残っていないといえるのだろうか。
     黄土色の川をみつめながら、私は、廓舟は川上へのぼっていったが、それは川上ではなく、私の内部へ去っていったのではないかと思わずにおれなかった。

  • 少年少女と、その取り巻く大人達との戦後の日常と、現代では忘れ去られた日本があった。ただ淡々と物語は進んで終了。何考える事は確かにあるが、うっーん…これは純文学作品なのだろう。私の中ではどこが芸術的か理解不能。時代なのかなー…

  • 戦後の大阪を舞台に、少年二人の交流を描いた作品。
    宮本輝の中で一番好き。初めての方もぜひ。

  • 10年以上前に、20も年下の女子大生に、「今、宮本輝を読んでいるけど、宮本輝良いですよ。」と言われた。ずーっと気になっていた。学校に文庫本があったので、借りて来たら娘が先に読んでしまった。20代の娘もとても良かったーと言う。
    で、読んだ。この本には2作品所収されているが、どちらもとても良かった。
    「泥の河」の冒頭では、馬で荷物運ぶ男が悲惨な死に方をする。川舟で暮らす生活苦の親子も出てくる。川の汚れ、大人達の卑猥で意地悪な言動、主人公友達になった少年の異常な行動など私を息苦しくすることもあった。でも、人生は不条理だけど、生きて行かなければならないし、覚悟して生きて行かなければならないことを再度感じた。主人公の両親の優しさが読んでいて救いになった。
    螢川は、お母さんの千代さんが存外に力強くて、ほっとした。

  • 生きていくって、哀しくてけど小さいながらも希望がある。
    最初読んでた時は、暗い話なのかと思っていたけど、2作とも最後は希望が見えるようで、「がんばるか」というような感じを受けた。
    この頑張るは、「ヨォーし!いっちょ、がんばるか!」と全面的に見える熱苦しいものではなくて、「駄目なら駄目て、がんばるか」と肩のチカラが抜けたようなもの。
    読み終えて、温かい気持ちになれた。

  • 何故か目覚ましが鳴る前の明け方に目覚め、本書を読了した。「泥の河」の舞台である戦後すぐの大阪の街が目に浮かぶ。衝撃的な馬方の死。舟の家に住む親子の境遇と、彼らと信雄の悲しい別れ。純文学や~。やはり太宰治を先に読んでおくべきだったと反省。「蛍川」は、少年の淡い恋心と、家庭の事情に翻弄されていく様子が、最後の不気味とも言える蛍の情景に集約された感じだった。

  • タイトルから勝手に下町のほんわかした話かと思っていたら、いい意味で『泥の河』冒頭で裏切られ、嚙みつくように読み終えた。
    川に付きまとうどぶ臭さが染み付いた、焼きつくような死の情景と、その傍らで生きる人々の生活。
    できることなら、夏に読みたかった。

  • どぶ臭く息が詰まるような日常に、ほうと灯る火の美しさ。死の色濃い物語ふたつ。特に蛍川は凄まじいくらい死を感じた。

  • いい味出してます、お勧めです。

  • 尊敬する人に勧められて買った。

    家族、恋、友情。
    子どものころに感じはじめた「だいじなもの」が丁寧に、大切に書いてある気がする。

    ラストシーンの描写がものすごく印象的。
    主人公と周りの人たちを慰め、そして応援するような蛍のひかり。
    わたしの実家の近くでは今でも蛍をみることができるけど、近年みられるのは数匹だけになってしまった。
    たくさんの蛍の光が集まった風景は、平成生まれのわたしには想像することしかできない。

    作品から、昭和という時代がもつ暖かさも感じとることができた。



    「運というもんこそが、人間を馬鹿にも賢こうにもするがやちゃ」

  • 泥の河が良かった。
    生死なんて小さなもの。小動物の生死が簡単にコントロールできるように、人間の生死ももっと大きな力に簡単にコントロールされている。

  • 初めて読んだけど、好きな作家になった。情景描写とキャラクターの肉付けが上手。まずは前者だが、授業や小説でもあまり触れる事のなかった戦後、高度経済成長期直前の混沌とした世界をまるで臭気まで漂ってくるかと思う程リアルに描いている。次に後者、どの人物もまるで一度会って話した事があるかのような現実感と説得力。あと、主要人物が全員人柄が良いのが好きだった。特に「泥の河」の信雄と喜一が可愛すぎる…。ただ、そんなキャラクターにも容赦なく苦難を与える作者は真性のドSなんじゃないかと思えてきた。この作者の世界の登場人物には決してなりたくないなぁ。「泥の河」も「蛍川」も、美しい作品だった。老いた時にもう一度読みたい。

  • びりっびりくる!

  • 光景が映像として眼に浮かぶ。「泥の河」油を呑まされ火をつけられた蟹が燃えながら這い回っている。蟹から放たれる悪臭を孕んだ青い炎。それを銀子がゆっくりつまんで川に投げ入れていく。「螢川」蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へと火の粉状になって舞い上がっていく。

  • 『泥の河』は大阪、『蛍川』は富山と場所は違えど、どちらも戦後から高度成長期にかけてのまだ日本が貧しかった昭和の時代を、2人の少年の視点を通して描かれています。貧しい家庭や、儚い人の命、淡い性の目覚め、自分ではどうしようもない情況の中、もどかしさや、理由の判らない衝動を抱えながら、こうやって人は川に流されるみたいにゆるやかに成長していくのだと感じました。

  • 【いい意味で昭和】
    小説です。

    わたしは『泥の河』の方がよかったです。

  • 花まんまを読んでいても思ったが、大阪は猥雑とした街だなと改めて感じる。もっともこちらの描写は戦後すぐの話だから一概に比較できるものでもないが。

全267件中 1 - 25件を表示

蛍川・泥の河 (新潮文庫)に関連するまとめ

蛍川・泥の河 (新潮文庫)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

蛍川・泥の河 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

蛍川・泥の河 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

蛍川・泥の河 (新潮文庫)の作品紹介

戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描く太宰治賞受賞作「泥の河」。ようやく雪雲のはれる北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなかに、落魄した父の死、友の事故、淡い初恋を描き、蛍の大群のあやなす妖光に生死を超えた命の輝きをみる芥川賞受賞作「蛍川」。幼年期と思春期のふたつの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓をとらえた名作。

蛍川・泥の河 (新潮文庫)のKindle版

ツイートする