- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307091
感想・レビュー・書評
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子は二十歳になるまでは生きていたいと願う親と早くに親を亡くした子。風景と心情がていねいに描かれているいい小説。
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戦後の大阪を舞台に、少年二人の交流を描いた作品。
宮本輝の中で一番好き。初めての方もぜひ。 -
10年以上前に、20も年下の女子大生に、「今、宮本輝を読んでいるけど、宮本輝良いですよ。」と言われた。ずーっと気になっていた。学校に文庫本があったので、借りて来たら娘が先に読んでしまった。20代の娘もとても良かったーと言う。
で、読んだ。この本には2作品所収されているが、どちらもとても良かった。
「泥の河」の冒頭では、馬で荷物運ぶ男が悲惨な死に方をする。川舟で暮らす生活苦の親子も出てくる。川の汚れ、大人達の卑猥で意地悪な言動、主人公友達になった少年の異常な行動など私を息苦しくすることもあった。でも、人生は不条理だけど、生きて行かなければならないし、覚悟して生きて行かなければならないことを再度感じた。主人公の両親の優しさが読んでいて救いになった。
螢川は、お母さんの千代さんが存外に力強くて、ほっとした。 -
生きていくって、哀しくてけど小さいながらも希望がある。
最初読んでた時は、暗い話なのかと思っていたけど、2作とも最後は希望が見えるようで、「がんばるか」というような感じを受けた。
この頑張るは、「ヨォーし!いっちょ、がんばるか!」と全面的に見える熱苦しいものではなくて、「駄目なら駄目て、がんばるか」と肩のチカラが抜けたようなもの。
読み終えて、温かい気持ちになれた。 -
何故か目覚ましが鳴る前の明け方に目覚め、本書を読了した。「泥の河」の舞台である戦後すぐの大阪の街が目に浮かぶ。衝撃的な馬方の死。舟の家に住む親子の境遇と、彼らと信雄の悲しい別れ。純文学や~。やはり太宰治を先に読んでおくべきだったと反省。「蛍川」は、少年の淡い恋心と、家庭の事情に翻弄されていく様子が、最後の不気味とも言える蛍の情景に集約された感じだった。
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タイトルから勝手に下町のほんわかした話かと思っていたら、いい意味で『泥の河』冒頭で裏切られ、嚙みつくように読み終えた。
川に付きまとうどぶ臭さが染み付いた、焼きつくような死の情景と、その傍らで生きる人々の生活。
できることなら、夏に読みたかった。 -
どぶ臭く息が詰まるような日常に、ほうと灯る火の美しさ。死の色濃い物語ふたつ。特に蛍川は凄まじいくらい死を感じた。
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いい味出してます、お勧めです。
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尊敬する人に勧められて買った。
家族、恋、友情。
子どものころに感じはじめた「だいじなもの」が丁寧に、大切に書いてある気がする。
ラストシーンの描写がものすごく印象的。
主人公と周りの人たちを慰め、そして応援するような蛍のひかり。
わたしの実家の近くでは今でも蛍をみることができるけど、近年みられるのは数匹だけになってしまった。
たくさんの蛍の光が集まった風景は、平成生まれのわたしには想像することしかできない。
作品から、昭和という時代がもつ暖かさも感じとることができた。
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「運というもんこそが、人間を馬鹿にも賢こうにもするがやちゃ」