月光の東 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307138

作品紹介・あらすじ

「月光の東まで追いかけて」。出張先のカラチで自殺を遂げた友人の妻の来訪を機に、男の脳裏に、謎の言葉を残して消えた初恋の女性の記憶が甦る。その名前は塔屋米花。彼女の足跡を辿り始めた男が見たのは、凛冽な一人の女性の半生と、彼女を愛した幾人もの男たちの姿だった。美貌を武器に、極貧と疎外からの脱出を図った女を通し、人間の哀しさ、そして強さを描く傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  •  あるエリートサラリーマンがパキスタンのカラチのホテルで自殺することからこの物語は始まる。この小説の秀悦なのは、この自殺した背後にいる米花という女性を全く異なる2人の人物に語らせていることだろう。
     推理小説的な側面もあって、一気に読めるとても良い本だと思う。

  • 夢中で一気に読める本を求めて、宮本輝を手に取った。カーテンで仕切られた病室で2.5日位で読んだ。夜の日本海側の村、古美術展、バーなど、薄暗い場面が多くシンクロしてぐんぐん読めた。

    2人がそれぞれよねかを調べ、神視点の読者が全てを知る奇妙な面白さ。
    杉井はよねかを一目も見られず、津田が作る美味しいクリーム・コロッケを知らない。
    美須寿はよねかの女の子らしい一面や男との接し方は知らない。

    それでいいんだと思う。
    初恋の中学生の少女を買った中年の男なんかに会わない方がいいし、浮気相手の異性との話し方や交わり方は知らなくて良い。

    自殺を乗り越えこのさき生きていくのに必要な情報が、2人にうまく行き渡った。

    加古の死因は最後まで謎のままだが、恐らく柏木の話のようなことだろう。

    「月光の東」も謎のまま。解説は死後の世界というふうに書かれていたが、私は本の描写のまま、シルクロードか山岳に輝く月の、もっと向こう側を想像する。生命はあるのに闇に隠れてしまって出てきてくれない。寂寞として、強い夜風しか聞こえなくて、しーんと冷たくて、、暗闇と隣り合わせのよねかの乾いた、信念ある心を思う。

    よねかは女の嫉妬からか魅力的、とは思えなかったが、強かで行動力があり尊敬はする。弱い心を見つめながら立ち直っていく加古美須寿が、読者の等身大の人物だろう。自殺に傷つく家族と共に、毎日は続き、親切な周りの人に支えられて、夫の自殺に、よねかに打ち勝った。


    30歳を過ぎてから、年相応を思うと器量不足で自信がなくなり、急に根暗になった。よねかほどではないが、今まで出会った人を傷つけてきたなぁなんてことも思う。私も罰が当たるだろうか。もう当たっただろうか。そんな自分が好きだと言えるだろうか。少しずつ立ち直ろう。そして自分も頼られる側に回れるよう、手を温めておかなくては。

  • 宮本作品はほぼ読み尽くしたと思っていたが、これは未読でしかも主人公が丁度自分と同じ年代で、まさに今読むべき本に出会えた気がした。

    他の作品もそうだが、物語を通して色んな場所へ旅することができるのがこの作品の魅力だ。
    カラチ、糸魚川、北海道、京都・・・それぞれの場所で出会う人物も、とてもその土地に溶けこんでいるように思える。
    この旅を求めて、私はまた宮本作品を手に取るのだろう。

  • 宮本輝さんは最近気に入りつつある、丁寧語で統一された文体、丁寧で細やかな人たち
    舞台はまた裏日本、暗い怪しい影のあるような雰囲気
    ある女を追いかけてという筋だが、結局出会えないままに話が終わる。真相が明かされるのも探偵の結果ではなく1人の人間にたどり着いたためという。中々ない幕切ではなかろうか、その方がロマンチックでもありまたリアルでもある、切符1枚が記憶の拠り所なんて夢のある話
    また話の途中でそれとはわからぬままに何度もすれ違っているという点も僕には新鮮でその不確かさなどにリアルな魅力を感じる


    再読する
    かしわぎでの最後の夜はないままの終焉でも良かったのではという印象もすこし。月光の東が朧げなように米花も掴みきれない存在のままでも良かった。最後の解説のような怒涛の文章はやや負担

    糸魚川
    信濃大町
    親不知駅前のヒマワリ
    門別

  • 再読。

    日を置かず、直ぐ他の本を読むと ストーリーが浅くしか残らないかな

    でも、印象深い 本は 何年経っても覚えてるよね。


    6.21.読了。

  • 読みやすい。
    すべて明かされなくてもモヤっとしない。

  • 昔読んだ本

  • 3.5

    推理小説のように先を楽しみにしてどんどん読み進めるが、その結果がなんか。

  • 解説をよんでいて、宮本輝の小説には、自殺というテーマがよくでてくることを知った。
    -----
    ほかの小説にもよく出てくる自殺のモチーフである。
    自殺といっても、自殺した当人よりむしろ、すぐそばで誰かに自殺されたものは
    どうするかという問題である。
    ------
    読んでいると、死よりも、生きるためのすべをかいてあるように思えた。
    死なないで、生きるためにこうして!って生きることへのヒントがちりばめられている
    ような気がした。

    最近樋口裕一先生の本で、知的な思考は訓練で身につく。と学んだが、

    自分を好きになること、これも訓練で身につくのか!と思った
    自分を好きでいる訓練は、生きるために必要。

    生きることは、自殺しないことではないと思う。
    アドラーでいう、他者からの承認欲求を求めて他者の人生を生きることも、
    自分自身を生きることではないと思う。

    自分の人生を生きるためには、自分のことを大好きでいる訓練が必要。
    失敗しても大好き!ということは大事だけど、自然と大好き!っていえるような
    行動を増やしていきたいと思った。

  • 著者の作品として複雑な内容だった。主人公の女性をめぐる男達の出逢いと葛藤。加古の死は謎は?読者に想像を委ねる、そういう手法なのだろう。2017.11.8

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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