この本は4つの章に分かれていて、
Ⅰは日々のこと。
Ⅱは旅の思い出
Ⅲは他の作家のこと。
Ⅳは自作のこと。
について書かれていました。
その中で興味深かった文を抜粋。
『嫌いなもの
それは「いなかもの」である。
いなかものというと、地方に住んでいる人の蔑称と誤解する連中がいるが、そうではない。
「いなかもの」とは、いかなる人間か。ざっと思いつくままに箇条書きしてみる。とりわけ若い方たちは、その意味について考えていただきたいと思う。
一、玄関を少しあけただけなのに、台所まで踏み込んで来る輩。一歩譲れば三歩押し入って入って来る輩と言い替えてもいい。
一、非はいつも相手にあるというふうに考えてしまう輩
一、恩を仇で返す輩
一、人の幸運や幸福を妬んで、やっかむ輩
一、何かにつけて「俺がしてやった」、「俺のお陰だ」と言う輩
一、坐る場所でないところで坐る輩
一、自分よりも弱い相手をいじめる輩
一、お葬式に体操服のような服装で参列する輩
一、相手がもとめてもいないのに贈り物をして、それに対する感謝の意が少ないと怒る輩
一、反対に、自分にとってはありがたくないものを贈られて、相手を罵倒する輩
一、自分と肌の合わない人に冷たくする輩
一、人は失敗を犯すものだということを知らない輩
一、人生の大事を感情で対処する輩
一、ケチ
まだまだあるだろうが、つまるところ、デリカシーがなく、姑息で勇気がなく、人を許さないくせに自慢や自己弁護ばかりするやつのことである。
私にえらそうに説教する資格はないが、若者たちよ、どうかこんな人間にだけはならないでくれよな。』
全く同感!
自分が何となく思っていることをこうやってキチンと文章に出来る、作家ってすごいな~と思います。
・・・と言うか、宮本輝さんのような、ちゃんと言葉を紡ぐことの出来る作家はすごいと思います。