三十光年の星たち(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307183

感想・レビュー・書評

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  • 憧れることを諦めた人がこの作品を読むと、胸がちくちくすると思う。少なくとも私はそうだった。
    若さとは愚かであることではなく、愚かしいほど純粋であることをわからされた。私は少なくとも、今はそのような歳ではないし、そのような人との出会いもない。主人公をあえてアラフォーの成年を選んだのは、宮本輝本人が苦労した歳であったからだと、作者のあとがきに記されていた。

    陰鬱な変わらない日々を変えてくれた一人の老人。
    「君の三十年後を見たい」と言われた成年。
    その時になったら、あなたはここにはいないのに、と思う成年。それも分かった上で「つべこべ考えずに進め」と言う老人。

    いずれ、分かる。

    その言葉に期待を膨らませられるか、不安を抱くか、はたまた両方か。読む人によって変わるのはそこだけだし、作者も読者に伝えたいのはそこだと感じた。

    今の世の中、何でもかんでも理由づけをしたがる。その上でお互いを尊重し、分かり合えと言う。そんなことが可能なのだろうか。

    「余計なことは考えず、何の意味があるのかもどうでもいい。ただひたすらに働け。いずれ分かる。」

    この時代にそんなことを言えばパワハラと思われるかもしれないが、結局こじれている人の多くは、この事実を受け入れたくない人だと思う。早く結果が欲しい、早く結論を知りたい。三十代という年齢の人たちが抱えるコンプレックスを一刀両断する作品だったと思う。

    人の人生を否定して、自分の生き方を押し付ける老害。そう言えばそれ切りなのだけれど、その目線になった瞬間、あなたは主人公と同じように、純粋に憧れを抱いてしまうかもしれない。

  • よかった
    内容に感動したというより
    文章に心打たれた

    上巻より付箋だらけになってびっくり
    忘れないうちに書き出そうと思う

    私はあることに修行中(⁈)の身

    教わり導かれる立場として
    教え導く方々の言葉が沁みた

    人との出会いが
    人生を変える

    よい出会いをしたい

  • 仕事にどう向き合っていくかを考えさせられた。
    とてもいい意味で、3年で1人前という考え方が覆される。自分がどんな大人になっていきたいか、どんな生き方をしていきたいかという、大きなことを問いかけてくれる本。
    20代で出会えて本当に良かったな。
    人生の分岐点で、必ずまた読み返すだろうな。

  • 無理だと思える難題が、次々と仁志に任せられるようになる。しかし、仁志は段々と師匠・佐伯からの薫陶や一つ一つの言葉の意味を自分で考えて、成長していく。師匠に応えたい、師匠の夢を実現したい、その想いで不可能を可能にしていく姿は、師弟関係の美しさを見事に表していたように思えた。
    現代では、さとり世代と言われてるように、ググれば答えに出会える。何なら人生の悩みのアドバイスも、無責任にネットに書いてある時代となった。その一方で、仁志や虎雄のように、師匠からの一見意味のわからない言葉について、真剣に考えて、ああでもない、こうでもないと愚直に努力する人はどれくらいいるのだろうか。自分はそのような人になりたいと思わされた大切な本となった。

  • 十年後も十光年先も、百年後も百光年先も、百万年後も百万光年先も、小さな水晶玉のなかにある。―与えられた謎の言葉を胸に秘め、仁志は洋食店のシェフとして、虎雄は焼き物の目利きとして、紗由里は染色の職人として、それぞれ階段を着実に登り始めた。懸命に生きる若者と彼らを厳しくも優しく導く大人たちの姿を描いて人生の真実を捉えた、涙なくしては読み得ない名作完結編。

    11月19日~20日

  • 20代のうちに読みたかった。
    人に勧めると説教くさく捉えられるかな。ただ純粋に、これからの人生にあかりを灯してくれるような作品でした。

  • なかなか古臭い文章書くけどよい。#草花たちの静かな誓い に続いて素晴らしかったです。
    自分も30年後の自分を楽しみにできるよう毎日を精進していきたいです。

  • 男は老人から起業したい人向けの融資事業と融資事業から店をオープンした女性から伝説のソースを引き継ぐことになる。
    男は老人たちを通して、自分は何をすべきかと人生の覚悟を磨いていく。
    人間としてどうありたいか。ちょっと参考になる本。

  • 面白かった。

    読み終わった後、すがすがしい風を感じるような小説だった。

    うまくいかないことを、自分には向かないといって逃げ出すことは簡単。ただ、そのあとには、たぶん何も残らない。


    躓いても、ゆっくりでも
    一生懸命に、ひたすらに、楽をせずに働き続けた先に
    本当に人生が始まるのかも。

    60歳までをどう生きるかで、その後の人生も決まってくるのかもしれない。

    もっと楽な道を選ぼうとしている30代の弱い自分に、目の前だけを見て仕事を選ぶなと、言われている気がした。

    失敗してもいいんだ。
    失敗し続けて、最後にどうにかカタチにできるまで続ければいいんだ。

    まだやっと階段の前に立ったばかりなのかもしれない。

  • 上巻に続き下巻も良かった。仁志の生き方って羨ましいと思う。実際の親には勘当されたが、平蔵と出会ってどんどん自分の良い面を引き出せていると思う。生きる事につまずいた時に読み返す素晴らしい物語だ。宮本輝、素晴らしい。

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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