かけがえのないもの (新潮文庫)

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著者 : 養老孟司
  • 新潮社 (2008年12月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101308357

かけがえのないもの (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 『バカの壁』がベストセラーになる前の著者の、講演の話をまとめたもの。
    かけがえのないものは、自然の一部としての人間ということを、自然と人工、心と身体と対比しながら、述べている。
    あとがきで面白いことを書いている。日本女性の寿命を延ばしたのは、後藤新平である、と。
    彼がまず東京から水道の塩素消毒を始め、それ以降、女性の寿命は延びっぱなしだとか。

  • 「手入れ」の思想。これが、案外深い。

  •  養老孟司先生の人生に対する考察。かけがえのないとは、「それが一つしかないということ」である。その点で、かけがえのない人生とは、予測できないまずやってみようとすることの連続である。まず、やってみよう。手帳に書いた予定は未来ではなく、数ヶ月前から行動を拘束することから、現在である。ミハエルエンデのモモのように意識化して未来を食い潰してはいけない。
     最も力をこめて書いたところは、「人は死んだらモノになる」という所かと思います。解剖をやっていることから、死んだ人と関わることが多いからか、モノだと思うような風潮や、記述に対して疑問を呈するような書き振りになっている。
    鎌倉の御成小に通った頃の、自然について書いた文章がある。自分が育った頃とはまた違う、都市化する前のすがた。人工的につくった「まち」は、かけがえのないものではない。子供は自然。大人は社会や都市という人工物。早く大人になることを否定している。世の中に合わせなくていい。オウムや創価学会を都市化した仏教とすることで、禅寺のもつ山、自然との共存との違いをコントラストで表現するところも面白い。
    自然と人工、心と身体、都市と田舎、コントラストで物事をみる思考は、養老先生の特徴であり、自分でいろいろ考えろやということのんだろう。

  • 「かけがえのないもの」とはつまり自然なのでした。
    養老先生のお話はどの本を読んでも同じことが書かれているのですが、そのブレのなさがいいといつも思います。
    ただこの本の構成は、ちょっと取り留めなく文章が並んでいる感じを与えます。編集の仕方の問題かな。せっかくのいいお話がもったいない印象を持ちました。

  • 「手入れの思想」「未来を食う現在」「ゴキブリは自然の象徴」あたりの話は流石です。

  • 「意識の外にあるものを認めない=都市化=バカの壁」と考えていいのかな。「壁(=意識)の外の世界を経験してみなさいよ」ってことだろうか。

  • 養老氏の講演会には行ったことがあるのだが、その時おっしゃっていたことと同じことが書いてあった。ずっと変わらず、同じスタンスで自分の考えを貫いていらっしゃるのだ。

    著者は、「現代人は人間が作ったもの以外をすべて排除しようとしている」と説く。自然のものが自分の生活に入り込んでくることに耐えられない。だから、常に時間に追われているし、(人間が作っただけの)会社を首になることを恐れる。ゴキブリを変なほど嫌うし、目的がないと動けない。それが著者の言葉で言うと、人間が作り上げたものをとことん信用して、自然は信用していないということになる。

    面白かったのは、私自身が、時にその人間が意識して作り上げたものに驚くほど感動してしまうことだった。空や星を見たり、雄大な自然にふれて感動することはもちろんある。その感動体験は人生に必須だろう。しかし、同時に、ここにあるものすべて人が作り上げたのだ、という事実に私は感動してしまうことがある。机も椅子も、ベッドも服も、道路も車も、絵画も建築も。ありとあらゆるこの世の法律や規則も。せかせか動いてシステムを作り上げ、どうやったら楽になるかと考えイノベーションを起こし、便利になり怠惰になった自分を作り上げた先祖を畏れもするし、敬いもするのだ。その感覚は著者にはないものであろうし、養老氏に言わせて見れば、私こそ「都市化」してしまった最たる人間ということになってしまうのだろう。

    そして、そういう皮肉が私は好きなのです。

    (20130714)

  • 講演などの寄せ集めだからか、全くまとまりがない本だと思う。一言でいえば手抜きです。
    どの主張も中途半端で意図がつかめないし、「だから何?」と言いたくなる部分が多い。話の前提や結論が無視されて進んでいく。無駄に話が重複してキレがない。著者の思想を細切れに刻んで、無味乾燥に並べ直したような印象を受けました。
    そもそも主張のまとめられない本に価値があるのか疑問です。

  • また、偏屈物のオヤジの書き物に魅了されてしまった。脳化=都市化などのキーワード、本当によく考えさせられる。うーん、養老爺さんの術中にはまってるな

  • 折りにふれて読み返したい本。

    埋めてしまった予定は未来ではなくもはや今、予測不能なのが未来の貴重なところ

  • 脳化した世界では未来が無くなっている。
    なるほど、と思いました。

    ああすればこうなる。こうすればああなる。
    想定して生きる社会にあるのは未来ではなくずっと続く現在なのかも。
    予定表が現在なんだ、は何てわかりやすい。

    想定外を前向きに受け入れるのが大切だな、と。

    思った矢先に大災害が起きました。
    自然は予測出来ないもの。
    都会は脳から生まれた想定内の固まり。

    この本でも書かれていた事だけど。
    何か災害が起こると不祥事だと言って関係者をつるし上げる。
    まさにその通りの事が起こっています。

    今回の震災が起きて養老さんが言われた言葉が
    「今、僕たちの目の前に起きている事は問題ではなく答え」

    色んな養老さんの書籍を読んでいるとこの一言程スっと入ってきてわかり易いものはありません。

    がけがえのないもの。
    大事にしたいです、ほんと。

  • 都市化によって人間の生き方が変わったという一貫した主張。
    自然を制御するのは難しい。
    人生は予測不能だから面白い。

  • 数ヶ月前からAMAZONで本を買い始めて、活字中毒が加速している。
    50歳くらいの時に見るべきものは見た、読むべきものは読んだと思ったことがあるが、いやいやどうして時代も世界も諸行無常、絶え間なく変化するので次々と見たいもの読みたい本が続々出てくる。
    今読んでいるのは、養老孟司さんの「かけがえのないもの」新潮文庫。
    「バカの壁」で彼の名が世間に出たときは立ち読みをしたくらいだが、最近何冊か読んですごい人だなと思う。彼の本を読むと、自分の考え方がついつい世の表面的な事象に惑わされているのがよくわかる。
    彼の言うことは物事の根本、根っこを捕まえて言うので、言葉にすると見もふたもない話だが、その視点は斬新。彼の使う言葉は平易でありわかりやすいが、根本的哲学的なので言わんとすることをつかむのは結構難しい。この「かけがいのないもの」は彼の本の中でも本質的という意味でベストだと思う。

    「我々が住むのにいちばん楽な環境、安心できる環境というのは、私たち個人個人がそれぞれもっている心と体です。この場合、心は意識的なもの、体は自然がつくったもの。両者の釣り合いが我々の中にあるはずで、その釣り合いが狂うと居心地が悪くなります。つまり脳のほうに行き過ぎても、私はそれを脳化社会というふうに表現しましたが、どうも居心地が悪い。しかし完全に自然状態に戻せば、不気味な世界になってしまいます。我々個人が持っている自然と人工、あるいは心と体の釣り合いのようなものがあると思います。両者がうまく均衡する状態に落ち着いたとき、いちばん安心できるのではないかと思います。かけがえのない人間というのは、そういう存在だということです。」

    「戦後の日本は何だったかということです。多くの人は民主化とか近代化とか、いろいろなことを言いますが、 私はそれでは話がわかりにくいと思う。話の筋が見えない。戦後起こったことの本質をはっきり言えば、それは「都市化」なのです。」

    過剰な脳化、都市化は世界的人類的な課題です。あらゆる国、民族の共通課題です。一部引用でわかりにくいかもしれないが、養老さんの考えを今の世界の色々な出来事にあてはめると、ウーンと思うものがあります。彼の意見には目を離せません。

  • 立ち止まって肩の荷を下ろすことができる本。科学者もこういうことを考えるんだな、と共感できるところが多い。

  • 「かけがえのないもの」・・・・なんて、妙にきれいなタイトル。養老先生が何を書いているのかと読み進めた。あなたにとってかけがえのないものは?なんて聞かれても「命」とか「わが子」とか月並みな答えしか出てこないもので、養老先生の考える「かけがえのないもの」とは一体何なのか???読んでいくうちにそれは「人間」かなと思ったが、答えはどうも「自然」であるようだ。ここでの「自然」雄大な自然・・・海や山ではなく(いや、それも含まれるのかもしれないが)要するに人工的でないもの、人為的な手がはいっていないものをさす。そういう意味では「人間の身体」もその一つだ。確かに「かけがえのないもの」とは誰も手を施していない自然なるもの・・・。現代では相当価値があるのかもしれない。

  • 養老孟司入門に好適な書。脳化(都市化)、自然、手入れ、死体、意識、無意識と云ったキーワードが理解出来る。要素還元主義から導かれる、予定調和的未来なんて幻想に過ぎない。「ああすればこうなる」の価値観は決して幸福を齎さず、後悔を齎すのみになる可能性が高い。増して、意識が創り出した「ねばならない」の絶対主義は不毛だ。 203頁

  • 真理。

    我々は「かけがえのないもの」を尊びながら、我々の社会と言うものはそれをなくす事で発展し続けるという矛盾。

    しかし俺はこういうものを危険思想と呼ぶ。

     なぜなら、このような真理を知ってしまうことは、「かけがえのあるもの」を作らない、すなわち全て偶然と自然の力に任せてしまうことを肯定するからである。
    養老先生の仰る事はとても納得できたし、「予測不能なことがあるから人生は面白い」というのはごもっともである。しかし、だからこそ我々がすべきことはやはり未来と自然を食いつぶし、全てを予測し、因果を追求し、科学することだと思う。そして可能な限りを追求した先に、偶然にも予測不能な自体が起きた時に、我々は「ああ、やられたな」と苦笑いしながらまた自然に挑む。それが人間と自然の宿命の対決であり、その中にこそ人間の幸せはあるのではないだろうか。

    「予定されてしまった未来は現在の一部である」

     時間についての考察では茂木健一郎と同じことを書いていた。どうやら出所はミヒャエル・エンデのようだ。過去を否定することで、それまでの自分を抹殺することで人は変化し成長し続ける、と前に書いたが、先生は「過去を否定することは現在を否定することだ。なぜなら現在は必ず過去の上に成り立っているから。」と書かれている。これは単に言葉の使い方の問題であって、俺の考えと変わらない。俺はその都度考えを変え続ける、つまり考え続けることを「過去を否定する」と言い、彼はもっと広い意味で、「その否定の連続を肯定する」ということを言っているのだ。俺は何かを否定したり、間違いを訂正したりして何が正しいかということを探し続けることを肯定しているからこそ一時的な否定の連続なのである。

     また、老子や荘子、仏教、そしてラスタやナヴァホもそうなのだろうが、「自然に委ねる」思想をまた少し理解した。彼らは予測できないどんな事態にも覚悟があり、勇気があるのだ。臆病な俺や、科学の社会は見えないもの、自然の予測不能な力をあまりに恐れる。だから原因を探り、そこから未来を予測して現在にしようとする。ただ、俺から言わせると、俺はそうやって全ての事象に責任を持ち、自由になろうとしているんだ。みんな何千年もそうしてきただろう?悪あがきだろうがなんだろうが、そうやって見えない大きな力に挑戦し続けてきたんだよ。そうやって自然や未来を食いつぶして、最後に残ったものが、たぶん俺が勝ち取れなかった「予測不能」という人生のエッセンスとなって最高のスパイスを効かすんだろう。

  • いつもの養老さんの作品と違うと感じた。

  • 同じ話題がぐるぐるでるなと思っていたら、
    講演会を集めたものだった

    現在を意識する
    未来は白紙、それは不安とは別、選べる
    ケアとキュア
    以身伝心、形真似れば心もできるようになる

  • 難しくて、行きつ戻りつしながら読んだ。
    でも解剖学からの視点が面白い。

  • ・目というのは本当は脳の出店なんです。

    ・人生は取り返しがつかない決断の連続として見えてきます。

    ・財産というのは自分の身についたものだけだ

  • アンチ脳化社会

  • 理屈には限界があり、それを超えるのは感性だ。

    人間の創ったものを信じるな。

    予定に支配された未来は現在である。
    未来は未来のままにしておけ。


    ・・・まとめるとそういうこと。

    内容は素晴らしいけれど、構成が・・・。
    講演をまとめただけのものだから、仕方ないのかもしれないけど。

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かけがえのないもの (新潮文庫)の作品紹介

かけがえのないもの、それは人の手のはいっていないもの、すなわち自然、子ども、からだ…。予測のつかないそれらとの付合い方を、日本人は知っていたはずだ。結果を予測し、何事にも評価を追い求める生き方はつまらない。何が起きるか分からないからこそ、人生は面白い。自分で考え、まずやってみよう。養老先生が一番言いたかったことをまとめた、養老流人生論のエッセンス。

かけがえのないもの (新潮文庫)はこんな本です

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