サクリファイス (新潮文庫)

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著者 : 近藤史恵
  • 新潮社 (2010年1月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101312613

サクリファイス (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • フォローさせていただいている方のレビューを読んで手に取った一冊。

    中学校から10年ちょっと、いろんな国にPenpalがいた。
    なかでも一番仲が良かった同い年のフランス人の女の子がツール・ド・フランスが大好きで、そこからわたしも興味を持ったのが自転車ロードレースとの出会い。
    とはいえ、日本ではなかなか自転車ロードレースを見る機会はなく、ツール・ド・フランスでさえハイライトを放送してくれるかどうかの時代。
    わたしの知識は彼女の手紙に書かれているハイテンションな観戦の感想と選手の情報だけ。
    当時は個人競技だと思っていたくらいだ(汗)

    今はとりあえず、団体競技でありチームのエースを勝たせるために他の選手がカベや駒になる、ということは知っている。
    でも、どうしても「アシスト」システムについては、納得できないというか、いつまでたっても釈然としなかった。
    頭ではわかっていてもいざ勝負の場になったら、体が勝ちにいこうと動くものなんじゃないの?
    勝負の世界の人がそんなにものわかりよくなれるものなの?と。
    この作品を読んで、そのあたりが少しは納得できた気がする。

    主人公・白石はオリンピックを狙えるほどの陸上選手でありながら自分が勝つことに重さを感じ、エースを勝たせるためのアシストというシステムのある自転車競技に興味を持ち、転身。
    力があるのにアシストに廻る白石に、普段もどかしさを感じている同期で次期エース候補の伊庭。
    エース体質の伊庭が、白石のために「自由な気分になれるんだろ。試してみる」とアシスト役をする場面など、スポーツもののさわやかさがあり好印象。
    が、ミステリ部分は当然さわやかというわけにはいかず、後半の悲劇を起こす。

    作中、自分の身を投げ出すうさぎのお話が出てくるけれど、わたしはこのお話があまり好きではない。
    うさぎの行為は尊いのかもしれないけれど、悲しすぎるので。
    だからうさぎにも「彼」にも他の選択をしてほしかったと思う。

    終わり近くのベテランアシスト赤城が語るエース石尾に対する思いや、石尾のレースに対する姿勢。
    石尾の、周りによく眼を配り、よく考え、他者の夢まで含む重い勝利を背負い立つ強さに泣けた。

    「一人で走っているんじゃない。非情にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、俺たちは走っているんだ。」

    そう言ったエース石尾の、
    見えないアシストと、――究極のサクリファイス。

  • 単行本を図書館で借りて(シリーズ全巻)読み、中古本を購入してゆっくりと再読。ミステリーが苦手なのとロードレースのルールも、弱ペダだ齧ったたけで読んだので、二度目の今回はミステリーの方に重点をおいて読んでみました。(一度目はストーリーやルールだけで精一杯で読了した)


    今日やっと石尾さんのとった行動の意味を理解できた。チカに落ちた雷が私にも落ちた。(一度読んで理解できずに、すんません…と近藤さんに謝る)本当にミステリー苦手なんです。。。


    二重三重…無限に重なったサクリファイス(犠牲)の意味を知った。全巻タイトルがすごいなぁ…。内容もすごいんだけど…、鳥肌がぞぞぞぞ…と立った。改めて感動しました。エデンも買ってゆっくり読みたい♪

    香乃は傷をなめ合うような形の結婚でしあわせになれるんだろうか…。

  •  近藤史恵さんは自転車ロードレースを素材としたサクリファイス、サヴァイブ、エデン、キアズマの4部を書かれています。自転車乗りとして以前から気になっていたのですが、これまでなかなか読む機会がありませんでした。サクリファイス(犠牲)、標題から意味するものは何か。主人公のアシストとしての人生か、はたまた……。最後の結末はロードレースをめぐるミステリー。

     自分は一人気ままに長距離を走るツーリングが趣味でしたが、ここ数年郊外をかっこよく走るローディー達の姿を見るとことが多くなりました。自転車に家財道具を積んで北海道を走り回る、なんてスタイルははやらないのかもしれませんね。

     ロードレースの駆け引きは大変面白く、交代でトップを引いていく姿は初めて見ると、くるくると入れ替わり何あれ?なんで別チームのメンバー同士が協調するの?とか疑問は多数です。

     ゴール前のスプリントの勢い、自転車が大きくふれながら、でもぶつからず(時に肩で押しのけていますが)、なだれ込んでくるシーンは圧巻。コース脇で見ていても、通過する自転車はチェーンラインの音と、一瞬の風を残して通り過ぎていきます。

     随所に自転車の楽しさが溢れています。クロモリフレームの美しさ、なんて書かれた日には、うんうんと頷いて、自分の古いクロモリツーリング車を磨きたくなります。

     でも坂道を前にアウター/トップに入れて踏み込むなんてできません。年寄のツーリングは、坂を見たら、素直にインナー/ローで負荷を軽くしてカメのように登っていきます(smile)。ロードバイクが楽しくなる一冊でした。

  • 近藤史恵さんの本は4冊目です。
    これまで読んだ「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」「ふたつ目の月」で近藤史恵さんのファンになりました。
    が・・・
    「サクリファイス」はロードレースがテーマだと知り、尻込みしていました。
    全く知らない世界。
    そして全く興味のない世界。
    好きな作家さんの本だとしてもその世界に入り込めるだろうか・・・
    それでも手を出さずにはいられない何かを感じつつ読み始めたら・・・
    どっぷりはまっていました(笑)
    もうすこしで「食わず嫌い」ならぬ「読まず嫌い」に陥る所でした。
    摩訶不思議なルールとナイト精神が混在するロードレースの世界。
    そこにあるミステリー。
    面白かった!
    とくに後半はぐんぐんスピードを上げてひきつけられていきました。
    続編の「エデン」もぜひ読んでみたいと思っています。

  • 数年前から自転車に興味がある。自転車といっても、自転車ロードレースだ。その自転車ロードレースの話とあって、読みたいと思っていたこの本にようやく手をつけることができた。
    大雑把に言えば、プロのチームがレースに挑む話。淡々とレースシーンが続くが決して緩くなく、臨場感がありレースを体感しているような興奮に包まれる。またそれだけではなく、この話の魅力は人間関係だろう。この話の中で、真のロードレーサーに出会えた気がして感動した。
    やはり、自転車を少しかじっていた方が用語や状況がよく分かり、すっと自分の中に入ってくる気がする。少なくとも私はすぐに理解できた。これから知識なしで読む方には、先に少し自転車について調べてからの方がより楽しめるよとお薦めしたい。

  • なかなか面白かった。実は青春スポーツ小説かと思って読み始めたのですが、後半からミステリー色を帯び始め、あれ、これはミステリーだったのかと・・・。(笑)
    自転車ロードレースの世界など知るよしもありませんでしたが、この小説を通して、こんな面白そうな世界もあったのかと知りました。ただのスプリントでないところがまたいいですね。
    自分みたいな素人に対して、そうした空気を実によく伝えていると思われ、その躍動感と疾走感がとても爽快でした。その短い文章のフレーズで駆け抜けていった感じがします。
    ミステリー的な所もこれはこれでいいのですが、むしろこのままロードレースの人間模様一本でいっても良かったような気もします。ミステリー調となったことで(?)、あの最後はあり得んだろうとか(純粋ミステリーの最後ならまあいいかなと)、香乃の存在が魔性的にもかかわらず少し弱いとか(笑)、またあの爽やかな疾走感も後半別な空気となってしまって、自分としては少し残念だったような気がします。レースがネタにもかかわらず最後のアレが無いのも残念な気がしました。
    まあ、ですが気晴らしに読むにはサイコーな娯楽小説だと思います。本題は3重くらいの意味が込められていますかね?

  • 面白かった。さくさく読みました。
    サイクルロードレースが、団体競技だったとは…(@_@)
    エースとアシスト。アシストの『犠牲』の上に成り立つエースの成績。目からうろこでした。

    大好きなサッカーに当てはめても、エースストライカーよりアシストする選手が好きな私は、主人公の誓くんが好きです。そして香乃は本当に男を見る目がないし、デリカシーに欠けると思うなぁ(`ε´)

  • 何ともすごい作品。
    初めの1ページがそんなシーンに繋がってたなんて。
    ストーリーセラーで読んだ作品が好きで、手にとった本書。
    石尾のイメージが崩れて行くようだったけど、最終的にはとんでもないやつだった。
    葬式でも泣けなかった彼が、決め手となったステージを聞き、走馬灯のような記憶が流れるところではシンクロしまくりだった。
    一転二転三転、現実は複雑に入り組んでて新たな情報でそれまでの真実はひっくり返る。
    誰かの希望は誰かに託されて続く。
    エデンも楽しみ。

  • 面白かったです。一気読みでした。

    昔ツール・ド・フランスを見てた時期があったので(ミゲル・インドゥラインの頃です。山岳王キアプッチがお気に入りでした。ドーピングにより7度の優勝が取り消しになったランス・アームストロングの頃は見ていませんでした。)、特に前半はかなり引き込まれました。

    だいたいのルールは分かっていたのですが、この本を読んで新たに知ったことも多く、久しぶりにツール・ド・フランスを見てみたくなりました。

    恋人のトラウマのせいか優勝よりアシストの方に喜びを感じる主人公の設定が面白かったです。結末は悲しすぎました。

  • 太陽と風とスピードとスリルに夢中になった。

    5年ぶりくらいに再読。
    初読のイメージがあいまいだった。しかし私の記憶の中でどこかひっかかるので、久しぶりに手に取った。
    あの頃、いかに適当に読んでいたことか。

    ページをめくると風を感じる。私のようにロードレースの世界に無知なものが、その世界の楽しさや興奮を知ることができる。自転車競技のルールはもちろんのこと、レースの駆け引き、ヨーロッパ発祥のスポーツゆえの精神まで理解できる。そして、魅力的な登場人物たち。スリリングな物語。どんでん返しの結末。

    一流のミステリかつ青春小説です。
    苦い味わいだけれど、心の中には、峠を超える風が吹き渡る。

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サクリファイス (新潮文庫)の作品紹介

ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと-。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた!大藪春彦賞受賞作。

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