エデン (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 352
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101312620

感想・レビュー・書評

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  • 「叩きのめされたとしても楽園は楽園で、そこにいられること、そのことが至福なのだ」
    ……と、いきなり最後の一文を引用してしまったが、つまりここにこの『エデン』という書名の意味が集約されているのである。
    この物語は、前回、レビューを書いた『サクリファイス』の続編。前作よりも登場人物が少ない分、それぞれの心理描写や心情の移り変わりが手に取るように伝わってきた。自転車ロードレースの過酷さや表裏一体の人間関係は相変わらずながらも、ヨーロッパという「楽園」でプロとして自転車に乗ることの、名誉や喜びも存分に描かれていたように思う。

  • 前作から三年。
    冒頭から、誓がヨーロッパで頑張っていることはもちろん、ツール・ド・フランスに出るということを知って俄然盛り上がり、そしてその調子のまま期待どおりの面白さに最後まで一気読みでした。
    誓の魅力は、決して力強い押しの強いタイプではないのに、自分の中にブレない基準というか芯をはっきりと持っているところかと思います。
    さらに、チームの中でのアシストという役回りということもあり、とても「日本人らしい」キャラクターと感じられます。
    また、このシリーズは自転車レースが大きな比重を占めていますが、おそらく何の興味もない人が読んでも、とても楽しめる内容です。
    ミステリーの要素もありますしね。
    自信をもってオススメできる一冊です。
    どうやら彼自身のあちらでの活躍はまだ続くようなエンディングでもあったので、続きを楽しみに待ちたいですね。

  • 前作のミステリー要素が薄らいで、スポーツ小説でした。
    前作ほどは後味の悪さも感じず淡々と進む分、安心して読むことができました。

  • 2013-40
    サクリファイスに比べてミステリー感は薄くなった。
    でも、スポーツ小説としては勢いを増している。
    自転車のスピード感を感じます。
    自転車競技に興味ないのに面白い!

  • サクリファイスからの続編。前作から3年後、ツール・ド・フランスに挑む白石とそのチームで起こるドラマ。ツールという長丁場の戦いの中で行われる駆け引き。ツールにかける熱い思い。前作もそうでしたが、読んだ後の読後感の良さと無性に自転車に乗りたくなる衝動はさすがです。スピード感のあるストーリーのテンポも自転車ドラマには合ってると思います。
    今回はサスペンス・ミステリーの要素が若干薄かった気もするのでもう一味欲しいとも思いましたが、これはこれでおもしろかったです。はじめてこの本から読むより前作を読んでからのほうが面白いかも。

  • 「サクリファイス」の続編です。

    自転車ロードレースのお話ですが、私は興味もないし全く詳細も知りません。見た事もないですし。

    でもほんと「サクリファイス」もそうなんですけど、全くの素人でもなんだかよく分かるんです。決して説明臭くはなく、ストーリーの一部としてスッと自転車ロードレースの事も分かるようになっています。

    ロードレースはただ速ければいいと言うものではなく、選手同士・チームとの駆け引きが重要。
    その駆け引きがとってもスリリングで面白いです。
    そして主人公の白石は、ツール・ド・フランスに出場する唯一の日本人。その辺の文化や、考え方の違いなどもよく描かれています。

    前作は結構ミステリー要素も強かったのですが、今回はそれほどでもないです。でも所々気になる謎もあったり。何よりもレースがどういう結果になるのか気になってしょうがない!純粋にロードレース小説としてとっても面白いので今回も一気読みでした。

  • 自分でも理由はよくわからないが自転車競技の話が好きだ。高校生くらいの時にテスト勉強の息抜きに夜、NHK(?)でツール・ド・フランスを観ていたからだろうか。『サマー/タイム/トラベラー』の主人公が繰り返しビデオでツール・ド・フランスを流していたからだろうか。スポーツというものに対し観る人は努力の成果や友情や何か美しいものを見出す。私もオリンピックなどを観ると素直に感動する。だが、現実にはドロドロしたものやどす黒いものも存在する。誓はそれをそれとして認め、それでも自分の考えを貫く。チームの為に犠牲になる。エースのアシストに徹する。潔い。が、人の為にそこまで犠牲になれるのだと思った前作と比べると★半分ほど足りない。

    追記:これを書いた後、自分の書いた『サクリファイス』の感想読んで笑ってしまった。私の抽斗って少なすぎ!

  • ツール・ド・フランス見てみたくなった。自転車競技って不思議で過酷なスポーツだと、前作を読んだ時と同じような感想を持った。

    ミステリィ感は前作の方があったように思い、少し物足りなかった。

  •  前作「サクリファイス」の鮮烈な衝撃は2年近くたった今でも忘れられない。あの白石誓が帰ってきた。今度はヨーロッパに渡ってプロチームに所属し、ツール・ド・フランスでピレネーをアルプスを駆け抜ける。「サクリファイス」が魅力的なロードレース作品である上にミステリとしても超絶一級品だっただけに、続編を書くのは難しかろう。本作はミステリ性はほとんどなく、ロードレースの中でのチームメート、チーム間の人間模様を描いた単なるスポーツ小説になっている。だけどそれでこの作品に魅力がないかというとそんなことはない。前作のようなあっというどんでん返しがなくても十分楽しめる。
     自転車競技というのは不思議なスポーツだ。チーム内で役割分担して走るのはもちろん、場合によっては敵である他チームとも協力したりするなど、駆け引きが大きなポイントを占めている。だから体力のある若手よりも体力は落ちても経験を積んだベテランが有利だったりする。集団走行のときは風を受ける先頭を交互に負担するというマナーがあったり、ただただ速ければよいという競技ではないところがおもしろい。いきおい他チームの選手とも仲が良く、レース中に走りながら相談して即席チームをつくったりする。チームのエース、ミッコとそれをアシストする立場の白石、チームの存続が危うい状況のなかで微妙な位置関係にある監督と他のチームメート、それに彗星のように現われたライバルチームのニコラ。ツール・ド・フランスの各ステージをうまく絡めて、それぞれの人間関係のエピソードをうまくつないでゆく。最後のアルプスの山岳ステージで予期せぬ出来事が起こって意外な結末にはなるんだけど、それもミステリというほどではなくまあアクセントくらい。
     個人記録を優先するかフォアザチームに徹するかの葛藤の結果、白石が選んだ道は...。うまいよねえ。ほんと白石誓、いい男だなー。男が惚れるね。ミッコとチカの新チームでのレースもぜひ見たい。

  • サクリファイスを読んでから1年くらい経ちます。世の中に出て初めて、ゴールを同じくする仲間というのを持つことの難しさを知りました。同じ空間にいて、形式的には同じゴールを目指しているはずなのに、各々思惑があってそれが表面化しないから余計面倒で。信じ合うことがこんなに難しいのかなと不思議で仕方なかったです。サクリファイスを読んだ時とは違う意味で、やっぱりこの本は自転車競技だけを語っている訳ではないのだと思いました。そんなことを思ってしまうから、より主人公のことが好きになりました。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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