ハイドラ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 716
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101313313

作品紹介・あらすじ

出会った瞬間から少しずつ、日々確実に、発狂してきた-。有名カメラマン新崎の専属モデルを務める早希は、私生活でも密かに彼と同棲している。付き合って三年を過ぎ、セックスの時以外は体に触れてこない新崎。不均衡な関係に深い倦怠感を覚えるなか、ずっと早希のファンだったというバンドマンの松木と出会う。ひずみのない愛を求めては傷つく女性の心理に迫る、傑作恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 危うい‥‥ほんっとギリギリ。好き。〆方も好きだー。

  • 人は一日に35,000回の選択をしているというのを何かの本で読んだけれど、この本を読んでそれを思い出した。
    それくらい主人公の描写が細かい。
    恋愛ともなれば尚更そうなのかも。

  • 【2021年目32冊目】
    最初から最後まで主人公の早希に引っ張られる作品でした。一人の人間の、女の心理がこれでもかというほど書かれていて、痛々しさを感じながらも世界に惹き込まれたま読了しました。最後の選択だけわからなかったけれど、きっとそうせざるを得なかったんでしょう。

    すごかったです。

  • 2023/09/26

  • 心を鷲掴みにされた

  • これはジョイスの『ユリシーズ』じゃないか?

    いえ勿論、似てもなければ、書かれた動機もまったく違うのは明らかなのだけれども、同じ不倫もの、「元ザヤ文学」にカテゴライズされ得る小説として、そう考えながら読むと案外楽しい。

    主人公「早希」の、メランコリックな人物造形を担う、不穏で気がかりな文章が、癖になる味わい。著者は、実はこの種の文章を書き連ねることが主目的なのではないか?と思わされる加熱具合。ここら辺は好みが分かれそう。

    著者の長編作品も読んでみたいと思う。

  • 会話「」が多い。
    主人公の女の考えてることもっと知りたいとは思わなかった。それだけ自分のことを自分で説明していた。
    植物風景の描写に人間の何かを重ねた間接的表現はなく、直接的な表現。
    最近、小説の表現方法に関心がる。
    どういう表現がされているのか(何を言葉で表して何を表さないのか)なと。
    気が乗らない本は、なぜ気が乗らないのかを知りたくて、その本を分析したくなり、その気の乗らなさを自覚した上で著者がこういう文を書いているのなら、そうまでして表現したい何かはなんだろうと気になる。

    「」会話中に自分や相手が言った言葉の後に、主人公の内面が吐露されている。 
    会話と気持ちがセットで書かれている。
    会話(行動)と、「」の後に綴られる本心(心)。
    心が饒舌。
    行為の影に見える心。
    現実では自分の心は全てこの小説のように語らないから
    隠れている。 それが語られている。
    全て赤裸々に語るから、逆につまらない
    主人公の女の「」の後の内面の吐露が、もっともっと悩み抜いたものであればいい?

    「うん」。ばかり。

    行かないで、テレビに出たい、そう言えない。
    わがままを相手に言えない。
    人の心が死んでいくところを撮りたいあんたに付き合ってらんないわ。 と言えばと思うが、言えない。

    主体 
    カメラマンの男にとって一番の存在でありたい
    蘭をとらないでほしい
    ツアーに行かないで
    こういうのは主体? 受け身の主体?



    主体のない、自ら行動しない、人見知りに見える若い女と
    有名カメラマン、人気バンドのボーカルが付き合うのはなぜだろう。
    主体的で、仕事で名が知られているような人が、なぜ?
    そういう人は、相手にも主体的な人を選ばないのかな。
    私は主体のない女の側からこの疑問を抱く。

    カメラマンの男は女に自立を求めた。

  • 究極の自己愛を描いた小説のように感じた。
    早希は本当が常識を常識として捉えて、矛盾も破綻も罪だと思う逃げ場のないある種単純にも見える松木さんになりたいという憧憬を感じてる気がする。
    そして本当は松木さんのそれは途方も無い努力の末のものだと怒ってる姿を見て、また無感情な自分を思い出している。
    そして、不安定で歪んだ自己愛を生み出すきっかけで、強固なものとし続ける新崎さんは早希の自己愛を崩さないためには必要不可欠な人になる。
    早希は新崎さんにも松木さんにも感情が揺れることはなく、マイナスではあるが感情が動くのはリツに対してだけだと思う。
    しかし、それもリツに自分を重ねていての自己嫌悪のようなものであって、結果的に大きな自己愛からは逃れられてないように思った。

  • ハイドラがヒドラの謂いだったとは。束縛・諦めからの解放かと思いきや帰還、と。しかし、主要人物みんな美形でモテる。モデルの早希、女からモテて仕方ない新崎、人気インディーズバンドのボーカル松木、早希と松木をとり持つ、美青年リツ。周囲には関係を隠しつつ新崎と同居する早希。彼への思いは募るばかりだが、ともに住んでいても彼への自分の関心は目に見えて低下。そんな中紹介された以前から自分の熱烈なファンだというバンドのボーカル。まっすぐで裏表のない気持ちに傾きそうになるが、その純粋さには不安も覚え。どちらに傾くか綱渡りの中、最後は新崎のもとへ、と。ストレスに耐えかねての噛み吐きは治らぬまま。

  • 歪んでいる、ただただ歪んでいる。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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