クラッシュ―風景が倒れる、人が砕ける (新潮文庫)

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著者 : 佐野眞一
  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316390

クラッシュ―風景が倒れる、人が砕ける (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 阪神淡路大震災、雪印食中毒事件、福知山線脱線事故等、
    20世紀末から21世紀にけての10年間に起こった6件の事件・
    事故を取材したノンフィクションである。

    阪神淡路大震災の発生直後から、自社も甚大な被害を受けながらも
    AM神戸はCMをすべてカットし、被害状況や安否確認情報のラジオ
    放送を続けた。

    緊急招集された社員は、それぞれ街中に散って行く。新聞記者が
    まだ来ていない長田に向かったプロデューサーは、炎上する民家の
    前に茫然と立ち尽くす初老の男性を見つけた。

    燃えているのは男性の自宅だった。家族はどうしたのか?そうマイク
    を向けると男性は無表情に答える。炎上している家の中に息子がいる。
    倒壊した家に挟まれ、身動きが出来なかった。助け出そうとしたが、
    火が回って来た。息子は懸命に助けようとした父に「お父さん、
    僕のことはいいから、早よ、逃げて…」と最期の言葉を残した。

    「これ以降、二度と被災者にマイクを向けようとしなかった。たとえ
    放送マン失格の烙印を押されてもかまわなかった。」

    瓦礫に生き埋めになった子供が数日後に助け出された現場で、救助に
    当たった人々の「生きてるぞっ!」の声に「うそっ!」との声を上げ
    たベテラン女性レポーターとは大違いだな。子供の死体でも期待して
    たのか…。

    阪神淡路大震災に一番ページを割いているが、個人的に注目したいのは
    福知山線脱線転覆事故のJR西日本だ。

    事故発生当初、JR西日本は踏切で自動車と衝突した為の脱線と説明。
    あっけなく嘘だとばれると、置き石による事故の可能性なんて言い訳を
    し始める。

    被害にあった人々の家族が現場付近にに駆け付けても、そこに配置
    された職員は事故現場はどこなのかと問われて「分からない」と答
    える始末。

    多くの被害者が予想されているのに、会社が用意した被害者家族
    担当者は僅かに2名というお粗末さ。

    そして、補償問題を先取りしたように遺族間の連絡を取らせない
    ようにする細心の配慮と、遺族間の切り崩し。保身だけを考えた
    巨大企業の硬直が
    良く分かる。

    良書なのだが、文庫本に加えられた最終章、13年後の神戸は内容が
    饒舌過ぎて余計なきがするのだが…。

  •  東日本大震災のあとに、読むとまたいろいろと考えさせられる所があります。
     作者は、JR西日本、神戸市制、イオングループはあまりお気に召さないようです。また、ダイエーの中内さん、読売の正力さんには相当シンパシーを感じているんだな、と思いました。そのダイエーもローソンは放出して、今は見る影もありませんが。

  • 事故災害ルポの一級品。
    ただ、作者の佐野眞一の強烈な「反骨」的な意識が前面に押し出されていて、そこが鼻につくといえば鼻につきます。
    特に信楽高原鉄道事故の、JRを責める態度はバッシングと大した違いはないように見えます。あの事故で、JRを完全な加害者として責めるのは極めて難しいことです。

  • 3.11の東日本大震災前にこの本を買っていて、内容確認せずページを開いてあらびっくり。
    阪神淡路大震災と東海村原発事故ネタなんて、めちゃめちゃタイムリーじゃありませんか。
    ほかにも17歳少年の連鎖的殺人事件、雪印乳業食中毒事件、NY同時多発テロ、JR西日本福知山線脱線事故をルポしている。
    なんせ事件や事故が起こると飛んで行って自分の目で確かめ、多くの人にインタビューして回らないと気がすまない、血がさわいでしまうんでしょうね。
    今回の地震でもすぐに現地入りして悲惨な現場をみたんだろうなぁ。テレビはきれいごとしかオンエアしないから、佐野さんの生々しいルポを待ってます。被災者や被害者の生の声は本当に涙をさそいます。この本を読んでいてなんども涙をこらえました。
    そして神戸出身者として、神戸には奄美群島からの移住者が多いことや、彼らが差別されていたこと、福原遊郭は徳之島出身者が作った街だということ、あの「酒鬼薔薇」少年の父親は沖永良部島出身であること・・・・奄美出身者は沖縄でも差別されていたことを初めて知り驚きました。
    長田には番町という部落があって相当差別されていたのは忘れられない記憶として残っている。神戸は朝鮮から来た人、部落の人、入り乱れて私の学生時代には同和教育が盛んだったんです。…今はどうなんでしょう。
    おしゃれな街神戸の裏の顔が、震災によって露呈されたようです。

  • 2011/04/16 黒沢twitter

  • ニュースでも大々的に取り上げられるような事件を筆者が足で稼いだ話を中心に再構成する本。とりあげられるのはJR西福知山線、JCOの臨界事故、阪神大震災、雪印の不祥事、911など幅広い。題材の中で阪神大震災が唯一の純粋な天災であるが、その取材中にキリスト像や神社の社を境にぴたっと延焼がとまっている光景などに出くわし、震災と宗教の結びつきを思うところが、怜悧なライターの筆者らしくなく印象に残った。人の心が波打つところに、防波堤としての宗教が現れるのかもしれない。
    話の本筋とは何の関係もないが、阪神大震災で株をあげたダイエー及び中内オーナーの歴史がおもしろそうなので次はそれについて取り上げた本を読んでみたいと思う。

  • 福知山線の事故、17歳が起こした一連の事件、雪印の食中毒、東海村臨界事故、9.11テロ、そして阪神淡路大震災と、書かれているどの事件・事故も記憶に強烈に残った大きな事件事故であり、ひとつひとつについて一冊の本を書いてもまだあまりあるほどのものばかりだ。
    それを一冊にまとめているので、どうしても物足りなさは残るものの、筆者が自分の足で現場を回り、人々の話を集めたその臨場感は鬼気迫るものがあった。

  • 忘れられない、事件事故。
    続けておきた、17歳の少年たちの理不尽な犯罪
    JR福知山線脱線事故
    東海村臨界事故
    阪神淡路大震災
    9.11テロ
    なかでも、臨界事故には、背筋の凍る思いをさせられた。忘れられないし、決して決して忘れてはならないことだと、改めて思いしらされた。

  • 6つの事故・事件を扱ったノンフィクション。6つ、とは、(1)JR西日本福知山線の脱線転覆事故(2)ひと頃集中して発生した17歳による連鎖的な殺人事件(3)雪印乳業食中毒事件(4)東海村JCO臨海事故(5)阪神淡路大震災(6)911ニューヨーク同時多発テロのことだ。規模から考えれば、阪神淡路大震災とニューヨーク世界貿易センタービルを襲ったテロが圧倒的に大きいものであるが、どの事故・事件も、心が痛まずに読めるものはない。企業による事故・事件は、JR西日本、雪印、JOCの3つである。雪印とJOCは会社がつぶれる等により社会的な制裁を受けたが、あれだけ悲惨な事故を起こしたJR西日本はつぶれないし、鉄道の持つ公共性を考えるとつぶすことが出来ない。JOCは会社として消滅したけれども、日本の原子力発電関連施設が万全の安全性を誇っているかどうかは、その後の柏崎原発や美浜原発での事故を見る限り怪しいものがある。JR西日本の企業体質が改まったかどうかと言えば、最近の同社の事件を見れば、絶対にそんなことは言えない。企業によるこういう事故は起こってはいけない。不幸にして起こった場合には、それが再発しないようにしなければならない。雪印という私企業の場合には、消費者の選好を通じて企業の淘汰が行われ、JOCの場合には親会社がこの仕事から撤退することにより、少なくとも同じ企業による事故は発生しないこととなっている。一方で、原子力発電関連の安全性は、一義的には各電力会社にあるとはいえ、実際には国が責任を持たないといけない事項である。また、JR西日本も、いちおうは私企業であるとはいえ、公共性が高く国の関与の度合いの高い、あるいは、高くてしかるべき事業を営んでいる。痛ましい事故に対する再発防止策が充分に立てられているとは思えないというところが、東海村臨海事故とJR西日本事故に対して強い憤りを感じる部分であるし、行政に対する不信感がぬぐえない原因のひとつだと感じる。

  • 近年の日本・世界を震撼させた数々の事件や災害の現場を作者が自分の足で歩き回り、死線を目のあたりにした人々の正負の感情を丹念に描き、「どうしてこうなったか」問題点と対策を浮き彫りにする。客観的視点が固持されるドキュメンタリーものの中で、上質な脳みそを持つ作者が自らの感情を躊躇なく織り交ぜた筆致は痒いところに手が届く思いで、とても痛快。ついふわふわと日常を過ごしてしまう我々に、「生とは、死とは」という命題を鼻先に突き付けてくれる。手元に置いて、時々読み返したい一冊。

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