おとなの味 (新潮文庫)

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著者 : 平松洋子
  • 新潮社 (2011年2月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316543

おとなの味 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 食欲と性欲は似ている気がする。平松さんの食エッセイ、その手のお話はちらりとも登場しないのにどこか卑猥である。舌で捉え、口蓋に押し付け、ちゅうちゅうと吸い、ねぶり転がして、堪えきれなくなって惜しみながら噛み砕く。
    お腹がくちれば満足というタイプがいる。平松さんは違う。好奇心いっぱい、食べ方にも拘る貪欲なまでの食いしん坊。漫画家のよしながふみさんもこのタイプだと思う。

    日の高いうちから飲むお酒、ふくろにしたお揚げにブルーチーズを詰め込んで炙るおつまみ、待ち兼ねた鮎の短い旬の味、ふぐの白子に興奮し、なまこと無言でにらみ合う。

    もうしわけない味、熟れた味、おつな味、男の味 女の味。ほとんど関東のお店なのが残念だけど、「コート・ドール」行ってみたいなぁ。食べることはこんなに楽しい。

    甘いお酒をほんの少し、それだけで真っ赤になっていた頃。お酒を味わうより、飲める年になったことが楽しかった。今はスパークリングワインをグラスに二杯までなら飲めるようになった。やっぱり強くはないので真っ赤になってしまうけど。ようやく、食事とお酒を楽しめるおとなになった気がする。

  • いろいろな味についてのエッセイ。
    どこそこのおいしい食事紹介というより、『味』にまつわるもの。
    もちろん愉快だったり幸福だったりするだけではなく、苦いものや首をかしげるような面妖なものについても書かれている。
    特に印象に残ったのは『おごった味』『吸う味』。
    おごった味というのは、最近はやりのプチ贅沢みたいなものだろうか、読んでいてわかるわかる!と膝を打つ。
    フランス料理のフルコースとか京懐石とかじゃないところがみそです。
    もう一つの『吸う味』は甘鯛を食べる話なんですが、『花のズボラ飯』でいやというほど強調されていた『食べる行為のエロさ』というものが、もうこれでもかというほど濃密に書かれている。
    エッセイと考えれば相手は旦那さんなんだろうけれど、あえて『男が』というぼかした書き方が生々しく、赤面してしまう。
    食べるの難しい魚って無言になる。
    なんかもうこの時点で後ろ暗いような色気が出てきて、それを『男』が……いやー、もうエロいエロい。
    食べ物本のはずなのに……いや食べるということはいろいろな『感覚』につながっている。
    このエッセイの『味』というのは味覚以外だけではなく人の五感、もしくは六感にまで及んでいるのだろう。

  • 食べものエッセイ。身構えずにサクサク読めて気軽で良い本。甘い味としょっぱい味を一緒にすると美味しいのを知ったのは確かに大人になってからだった。名古屋の「大尽」と石川県白山の「うつお荘」に行ってみたくなった。食べ物で四季を感じることは、意識的に行わないともはや味わえないことなんだなあと思いました。

  • 食に関するエッセイって、自分ではきっと選ばないジャンルだ。しかし人が買ってきたこの本をパラパラめくってみたら、思いがけず豊潤で優しい世界がふんわりと広がっていた。
    しゃくしゃく、じゅるるといった音の使い方が楽しい。食材、食事に対して真っ正面から誠実に向き合う筆者の感性に溢れていて、心が満たされ、贅沢な気分になる。

  • グルメな人生を送っている食道楽の友人とこの前会った時、今読んでいるという本をお勧めしてもらいました。
    人は誰でも美味しい食べ物が好きなもの。
    ですから、美味しいものに関してのエッセイは、誰だって書けそうだと思っていましたが、この本を読んで、それは大きな間違いだとわかりました。
    この人の文章からは、本当に五感からのおいしさ、幸せが伝わってきて、とてもまねができません。

    自分でも、ブログに美味しいものを食べた話などをよく書きますが、このエッセイを読んだあとでは自分の文章がなんと恥ずかしいことか、と顔から火を噴く思いです。
    単純に、うわべだけの「おいしい」という感想だけでなく、食材そのものへの愛情に根差した深い思いも一緒に文章に載せているため、ひとつの食から物語がうまれくるようなイメージを感じます。

    著者はかなりお酒好きのようで、酒の話題はとりわけ楽しさが伝わってきます。
    飲めない身としては、文章に感情移入できないことが残念。
    かといって酒のつまみだけでなく、別の文章では甘味への深い思いも語っているため、食材全方位に対応できているようです。
    やはり、食のエッセイストたるもの、苦手な食べ物は存在しないのでしょうか。

    取り上げられた食べ物は、どれもさほど印象に残るようなものではありませんが、だからこそそのさりげなく見え隠れするうまみを堪能できるのは大人になってこそ、とする著者の姿勢が頼もしく思えました。
    確かに、わさびや古漬けたくあんのおいしさは、子供の頃にはまったく理解し得なかった味ですからね。

    「酸いも甘いも噛み分けて」という言葉がありますが、まさにそうやって長年の食生活をこなしていった人だけが知る醍醐味もあるということを教えてくれる一冊。
    日常の中の、至福の思いが味わえます。

  • 2003年春、モロッコへ旅行した際、マラケシュ旧市街スークで平松さんの写真を何回か見ることになった。その頃はモロッコも今ほどメジャーでもなく、平松さんのことも知らなかったが、モロッコ人は平松さんの写真を指さし、「ユーメイ、ユーメイ。」なんて言ってました。モロッコのバブーシュやハーブ、オイルに早くも目をつけるなんてさすがです。
    あれから8年、今ではすっかり平松さんのファンになっちゃてます。本棚に載せてないけど、「夜中にジャムを煮る」「焼き餃子と名画座」「旅で恋に落ちる瞬間」etc.夢中で読みました。
    倉敷生まれなのに江戸っ子口調で微妙な味を表現していくさまは小気味がいい。かなりの呑兵衛さんなので嗜好にかたよりがあるけれど(なまこやどじょうが好きってちょっと・・・・)それでも美味しそうに表現してくれるので許される。
    水の違いで味も変わってくるとか、油揚げの袋の中にブルーチーズを入れて焙ると美味しいとか、料理本としても楽しめちゃうのです。

  • 1958年倉敷市生まれの平松洋子さん、子供の頃の夏休みでは、ラジオ体操、肝油、絵日記、朝顔観察、プール登校日・・・、そして夕方の水撒き、そのあとの「かつおぶし削り」があったそうですw。そんな平松洋子さんにかかると、どんなものにも味わいが~~~(^-^) 「もうしわけない味」は、日の高いうちから飲むお酒。「車中の味」は、大船軒の鯵の押寿司とカップ酒。「一丁前の味」は、甘えず、媚びず。いったん心に決めて相手のふところに飛び込んだら四の五の言わない。覚悟を決めた女の佇まい。こんな感じで62もの味が味わえます!

  • 食べ物の本が好きで。

    しかもいつもそういう本を買う場所って限られてるのよ。

    品川駅の本屋。

    何でだろ。あそこに行くと食べ物のエッセイが魅力的に見えて、ついつい買ってしまう。だいたい品川にいるときは、成田エクスプレスか、新幹線で帰郷、みたいな時なので、電車の中でその本をおやつ代わりに読む、みたいな感じになる。

    ここ最近立て続けに食べ物エッセイが軒を連ねている私の本棚ですが、全部品川駅で買いましたw


    いくつかあるの。ここに来たらこの本を買う、みたいな本屋さん。変な漫画を買ってしまうところ、下世話な女子本を買ってしまうところ、アート系の本を買うところ、哲学系の本を買うところ、みたいな。


    好きなものが決まってるなー、と、危機感覚えることもある。だって、あれだけたくさんのいろんな分野が並んでる本屋なのに、だいたい足を運ぶルートが決まっているんだもの。そう思うとね、寄り道してみたりするんだけど、どうもね。


    とまあ。平松さんは、そんな食べ物エッセイの中でお気に入りの作家さんなのです。あと石井良子さん。

    お二人とも、食べるのが大好きなんだなぁって、嬉しくなるの。私にはない感情を持ってる。

    食べることは嫌いじゃないし、ご飯作るのも好きよ。食べることに興味がないわけじゃない。できるだけ健康を維持できるものを食べたいと思う。でも、結局のところ「何を食べても一緒」と思ってしまう私は、彼女たちの作品にあこがれるのです。

    きっと、幸せそうに食べる彼女たちに同席している気分になれるのよね。私にとって「食べ物」は、人と人をつなぐ場所でもあると思う。一人でいてもしっかり食べたいとは思うけれど、一人ならば、何を食べても一緒なのです。なんの味にも、感動しないからで、だから、長旅の電車の中で本なんか買ってしまうのは、電車で一人空腹を紛らわすように何かをつまんで自分を満たすよりも、幸せな食卓に同席して、おいしそうな光景と、そこにある笑顔を思い浮かべることのほうが、私にとって満たされる行為なんだと思う。

    品川駅で、自分のためにそんな本を買い、家族のために、おいしそうなお土産を買う。私の幸せな時間です。

  • 20150510読了
    以前に読み終わっていたものを忘れていた。●「菊乃井」さんに関する話も登場するが、基本、関東方面に重きを置いた食のエッセイ。江戸料理ってこんなんなんだなーと知る場面が多かった。これの影響で初めて「ねぎま鍋」を作ってみた。美味。●永六輔「職人」を読んだあとだからか、職人さんとの付き合いが描かれるP250「一丁前の味」が特に印象的。「職人はさ、気分よくやらせてやるにかぎるのよ。たいていのことなら、ああいいよ、あんたの気のすむようにやっとくれ。これで万事うまくおさまるのよ」「よけいな口出しはせず、ぐずぐず言わず、けれどもこうと決めたらぽーんと相手のふところに飛びこんでまかせ切る。それが一丁前の女だとも断じていらっしゃるわけだ」●鮎正いってみたい!

  • 酒好きの著者がお酒が邪魔になると表現している、石川県はうつお荘の摘草料理が気になる。
    著者が娘の誕生日だけに通ったレストランも気になる。そうして一年一年重ねていった日々の暮らしが気になる。

    豆腐を水切りするときは手で割って表面積を増やすといい
    京都の水は軟水、軟水だからこと今の日本料理がある
    硬水が主となるヨーロッパではシチューやアクアパッツァなど、煮込料理が発達してきた、水の味に合った料理が発達してきた

    料理のコツ、おいしく食べるためのちょっとしたことは経験を積むことで覚えていくものだ、と「自慢の味」で書いているけど、この本にもぎっしり詰まっていて、経験の浅い私は著者からこっそりお裾分けしてもらった気分になった。

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おとなの味 (新潮文庫)の作品紹介

泣ける味、待つ味、吸う味、消える味。食材と調味料の足し算では掬いきれない、新しい味覚が開かれるとき、その裏には流れる四季と人との出会いがある。上機嫌の父がぶら下げた鮨折りで知った心地よく鼻に抜けるわさびの辛み。煮る炒めるのひと手間で、鮮やかに変貌する古漬けたくあんの底力…。時の端々で出会った忘れられない味の記憶に、美しい言葉を重ねた至福の味わい帖。

おとなの味 (新潮文庫)はこんな本です

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