- Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101317120
作品紹介・あらすじ
あの戦争に関しては皆が健忘症にかかってしまったらしい。シェルショックと言う訳か。1975年、我がN県は突如独立を宣言し、街にソ連兵がたむろし始めた。中学生の私は千秋と一緒に山へ行き、奇妙なゲリラの一員となった…。変えようもない宿命に抗う術を探す、猥雑で凡庸で滑稽で物悲しい人々の姿。日本ファンタジーノベル大賞『バルタザールの遍歴』の異才が放つ長編第2弾。
感想・レビュー・書評
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N県独立戦争でゲリラになったという主人公の回想録。
戦時中の話もすごい体験なんだけど、戦後の話、日常に戻れる人戻れない人、戻される過程やその後のほうが印象に残っている。外部の人と接してやっと、ゲリラという体験の特殊さに思い至ったというか、読んでいるこちらも感覚が麻痺していたようだ。
といっても、その世界に入り込んでしまうほど没頭するでもなく、かといって退屈でもなく、とにかく読んでしまう不思議な感じ。
ずっと銃を手放せないのも印象的だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
佐藤亜紀3作目。文句言いつつ文章が好みすぎるのでついついこの作者さんの本を読んでしまう。
どうでもいいんですが1人の女を2人の男が共有するってシチュエーション、今まで読んだ佐藤作品全てに登場するんですが私的にちっとも萌えないので勘弁してほしい次第。
と、思いつつ読んでたんですが、ラスト近くの加世さんの手紙読んで、(少なくともこの作品においては)それなりに意味がある設定だったんだなあと納得。
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佐藤亜紀、好き…!!!
単語と文章を方程式が如く使いこなす鬼才。内容や雰囲気以上に「文体」にハマった作家は初めてで、個人的にここ数年の中で一番ハマっている人です。どれ位かっていうと、絶版になった新潮文庫版をユーズドで買っちゃう位(他の出版社からハードカバーで出ていますが、このデザインが好き。新潮社装丁室のクオリティの高さよ!)
出版界の事情から、知るひとぞ知る状態なのがもったいないなあ… -
N****県の分離独立騒動でゲリラとして戦った主人公が書いた手記というスタイルの小説。『信頼置けない語り手』であり最初や途中でずいぶんと自己言及的な言い方をしてくる。著者のほかのエッセイや小説論を読んでいるので狙いがわかってニヤニヤしながら読みすすんだ。普通の小説としても楽しめるが、「小説らしい紋切り型表現」「あざといキャラ」にうれしくなってしまった。
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またこの人の本を読めてよかったと思った2作目。
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紙質とか新潮文庫が大好きだったのに、この本が絶版になっててガッカリです…
この本を絶版にしちゃうくらいだから…と思ってしまいました。 -
1975年、日本海側にあるN***県が独立を宣言、街にはソ連兵が駐留するようになった。中学生の「私」は崩壊した家を捨て、友人の千秋と共にゲリラの一員となるが…。<br>
著者の博識ぶりと充実したディテール、流麗な文章には溜息しか出ない。他作品に比べると読みやすいのでお勧めです。