戦争の法 (新潮文庫 さ 29-2)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101317120

作品紹介・あらすじ

あの戦争に関しては皆が健忘症にかかってしまったらしい。シェルショックと言う訳か。1975年、我がN県は突如独立を宣言し、街にソ連兵がたむろし始めた。中学生の私は千秋と一緒に山へ行き、奇妙なゲリラの一員となった…。変えようもない宿命に抗う術を探す、猥雑で凡庸で滑稽で物悲しい人々の姿。日本ファンタジーノベル大賞『バルタザールの遍歴』の異才が放つ長編第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • N県独立戦争でゲリラになったという主人公の回想録。
    戦時中の話もすごい体験なんだけど、戦後の話、日常に戻れる人戻れない人、戻される過程やその後のほうが印象に残っている。外部の人と接してやっと、ゲリラという体験の特殊さに思い至ったというか、読んでいるこちらも感覚が麻痺していたようだ。
    といっても、その世界に入り込んでしまうほど没頭するでもなく、かといって退屈でもなく、とにかく読んでしまう不思議な感じ。
    ずっと銃を手放せないのも印象的だった。

  • 不思議な読後感。遠くへ連れて行かれたような、けれど実際には日本国内が舞台の話なのだ。

    著者の知識量の多さ、それに伴って構築された世界観に圧倒されるものの、なんと読みやすい。
    ただ羅列されているだけでなく、物語の中にちゃんと落とし込んであるせいか、まったく読むのが苦にならなかった。

    少年から大人への、一種の成長譚?でもあるのかもしれないが、なんともほろ苦い。
    彼が「隣にいてもいいと思えた」人たちがことごとく消え、彼だけが残っているのがなんとも。
    とはいえ、感じるのは同情でも哀愁でもなく。

    「そういうものだよな」という乾いた諦念、だからこそ消えないほろ苦さ。

    「私」が幸せかもしれないと最後に辿り着いたのならば、この世界はちゃんと閉じることができる。
    そう思わせるしたたかさがある小説だった。

  • 佐藤亜紀3作目。文句言いつつ文章が好みすぎるのでついついこの作者さんの本を読んでしまう。
    どうでもいいんですが1人の女を2人の男が共有するってシチュエーション、今まで読んだ佐藤作品全てに登場するんですが私的にちっとも萌えないので勘弁してほしい次第。
    と、思いつつ読んでたんですが、ラスト近くの加世さんの手紙読んで、(少なくともこの作品においては)それなりに意味がある設定だったんだなあと納得。

  • 佐藤亜紀、好き…!!!
    単語と文章を方程式が如く使いこなす鬼才。内容や雰囲気以上に「文体」にハマった作家は初めてで、個人的にここ数年の中で一番ハマっている人です。どれ位かっていうと、絶版になった新潮文庫版をユーズドで買っちゃう位(他の出版社からハードカバーで出ていますが、このデザインが好き。新潮社装丁室のクオリティの高さよ!)
    出版界の事情から、知るひとぞ知る状態なのがもったいないなあ…

  • N****県の分離独立騒動でゲリラとして戦った主人公が書いた手記というスタイルの小説。『信頼置けない語り手』であり最初や途中でずいぶんと自己言及的な言い方をしてくる。著者のほかのエッセイや小説論を読んでいるので狙いがわかってニヤニヤしながら読みすすんだ。普通の小説としても楽しめるが、「小説らしい紋切り型表現」「あざといキャラ」にうれしくなってしまった。

  • またこの人の本を読めてよかったと思った2作目。

  • 紙質とか新潮文庫が大好きだったのに、この本が絶版になっててガッカリです…

    この本を絶版にしちゃうくらいだから…と思ってしまいました。

  • 1975年、日本海側にあるN***県が独立を宣言、街にはソ連兵が駐留するようになった。中学生の「私」は崩壊した家を捨て、友人の千秋と共にゲリラの一員となるが…。<br>
    著者の博識ぶりと充実したディテール、流麗な文章には溜息しか出ない。他作品に比べると読みやすいのでお勧めです。

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2022年 『吸血鬼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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