きみのためのバラ (新潮文庫)

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著者 : 池澤夏樹
  • 新潮社 (2010年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101318202

きみのためのバラ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹さんは、曖昧な感覚に、言葉で形を与えるのが本当に上手い人だと思う。そして、的確なだけでなく、その文体が、理知的な美に満ちているのが、また素敵だな、と思う。
    静かで、淡々として、こじんまりとまとまっているのだけど、決して、味気ないというわけではない。

    うまく言えないけど、一目ぼれした普段着を身につけた時に、身体にぴったりとなじんで綺麗なラインが出て、一人じんわりと満足する時のような、肌感覚に近い、しっくり感というか。

    人生で遭遇する、儚くもかけがえのない出逢いと別れをとらえた、八編からなる短編集。

    ある人は、アメリカと思しきところで、美味しい料理と会話に。
    別の人は、沖縄で、何かに取り憑かれたような、たった十日の連夜の情事に。
    またある人は、アマゾンの奥地で、激情と争いを抑える、呪文のような言葉に。
    出逢う対象も、場所も人それぞれ。

    どの話も短く、大きな展開はほとんどないのに、理知的な静けさの中に、人生や社会の真理、そして、人智を超えた不可思議さが、巧みに散りばめられています。
    何気ないのに、心に強い余韻を残す作品集です。

    毎夜、寝る前に、1話か2話を、ゆっくりと読み進めていたのですが、そんな風にして、噛みしめるような読み方をするのがお勧めな作品でした。

  • 短編集
    非常に精密に描かれた作品たち

    こういうのを待っているんです

  • 青い薔薇の表紙が美しくて、つい買ってしまった訳だけれど、読み終わって思うのは、ナゼ黄色じゃないのかということ。。。
    「人生の広場」が好きだな。ずっと階段を昇ってきてふと踊り場にさしかかること、ある。ちょうど今がそんな感じかもしれない。それから、「ヘルシンキ」。
    どのストーリーも一歩引いたような視点で語られているのが私には魅力的だった。

  • ヘルシンキ、ミュンヘン、沖縄、モレリア(メキシコ)、バリ島・・・・
    世界のあちこちを舞台に、人との出逢いと不思議な時間が流れる8つの物語。

    旅先で、ふと目にとめた、気にとめた、目、仕草、言葉が、旅の時間に彩りを添えたり、人生を変えたりする物語たちです。

    ここで語られる話は、大仕掛けなストーリーはなく、いずれも、ひとり旅での個人的なできごとです。

    ミュンヘンの1泊の夜に久しぶりにあった友人の遺産とパリの生活、
    ヘルシンキで出逢ったロシア人の妻と離婚後娘と年に1度会う男、
    卒業後沖縄に職を求めた若い男とアラフォーの女医の連夜、
    メキシコの列車で出逢った少女と老女 etc.

    静かな語り口が、
    それぞれにあった体温で、その土地の湿度や乾きで、明るさと暗さで、それらの物語をじんわりと伝えてきます。

    上質のおとなの短篇集です。

  • 静かな秋の夜長にぴったりでした。しっとりした余韻に浸れる8つの物語です。
    特に気にいったのは『20マイル四方で唯一のコーヒー豆』と『きみのためのバラ』
    『20マイル四方で唯一のコーヒー豆』は、旅の本来の意味を教えてくれるような気がしました。
    八方塞がりの心を抱えて旅にでる。この特別な日々。何も考えずにたくさんのものを見て、知って、いつの間にか気持ちはすごく楽になる。ずっといることは出来ないけれど、でも今はいいんだと思える。居心地の良い空気に、少し口が軽くなる。そうしてもう大丈夫なんだと思える自分がいる。そのために人はこうして遠くまでいくのだなと気づくのです。
    『きみのためのバラ』では、決して失ってはいけなかったはずのものが、いつの間にか零れ落ちてしまっていたような喪失感を味わいました。
    混雑した電車の中を不穏な気持ちで乗客を分けながら車両を移動する現在と、混雑する汽車の中を会いたい人のために黄色いバラを手に客車のなかを進んで行く過去。この対比に、どうしてこの世界はこんなことになってしまったのだろうとの思いが強くなります。
    混沌とした強欲と悪意に満ちた現在。もう会うことはないとわかりながら彼女にかけた「アスタ・ルエゴ またね」という言葉は、希望と喜びに溢れた過去への別れの言葉でもあったのでしょう。

  • 書店で見かけて装丁買い。
    個人的にオムニバスは好きではないはずなのに、それでも良い読後感でした。
    作品ごとに雰囲気も主人公もまったく違うせいかもしれません。
    都会的なようでいて、テーマは身近で読みやすい。
    海外、せめて空港へ行きたくなります。

  • もっと早くに出会いたかった、と思う本はたくさんあるのだろうけど、これもそうかも。

    書名にもなっている"君のためのバラ"はほっこり切なくてもちろん素敵。
    今の私には、"20万マイル四方で唯一のコーヒー豆"が何だか引っかかった。

  • 短編集。
    『人生の広場』と『きみのためのバラ』が良かった。

    人生の広場という考え方に共感できたし、自分に置き換えてみたい。

    旅ならではの出会いと別れ、意外な行動力にも覚えがある。日常のふとした瞬間に、懐かしい旅の情景を思い出すことほど素敵なことはない。

  • 外国に行きたい。美しい世界はすぐそこにある

  • 前にも書いたけど★で一律の基準で評価をするのは難しい。今は★3の気分だけど、これは★5にもなりうるなー。

    普通は抑揚でオチをつけたり盛り上げたりするんだろうけど、この人の本は、常に穏やか、抑揚が少ない。みんなが忙しく動き回る雑踏の中で読んでいても、時が止まってるみたいな気分にさせられる。
    きっと登場人物にとってはドラマチックな話なんだろうけど、この人が書くと落ち着いた印象になるから不思議。心が静かになる。

    言葉が古かったりもするけど、尊敬できる作家さんです。

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きみのためのバラ (新潮文庫)の作品紹介

予約ミスで足止めされた空港の空白時間、唱えると人間の攻撃欲がたちまち萎える不思議なことば、中米をさすらう若者をとらえた少女のまなざしの温もり。微かな不安と苛立ちがとめどなく広がるこの世界で、未知への憧れと、確かな絆を信じる人人だけに、奇跡の瞬間はひっそり訪れる。沖縄、バリ、ヘルシンキ、そして。深々とした読後の余韻に心を解き放ちたくなる8つの場所の物語。

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