ハイデガー拾い読み (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101320823

作品紹介・あらすじ

ハイデガーとは何者なのか?名著『存在と時間』を残したドイツの哲学者であり、戦中にはナチスに加担した学者でもある。しかし彼の面白さ、不思議さはそこだけには止まらない。「人柄は嫌いだが、著作は好き」という著者が、無類の面白さを誇る「講義録」を繙きながら、思想家としての構想の雄大さや圧倒的に優れた西洋哲学史家としての魅力を浮かび上がらせる。画期的な哲学授業。

感想・レビュー・書評

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  • ハイデガーの『存在と時間』は多感な青春期に読む本というイメージを持っていたけれど、どうやら違うようだ。その背景には、長大な哲学史が横たわっている。特にアリストテレス。
    プラトン以降、そしてその弟子のアリストテレス以降、存在は制作物として捉えられてきた。カントによってでさえも。ハイデガーはその系譜を描こうという壮大な構想を練っていたらしい。その一部が現存する『存在と時間』。
    ニーチェが古典文献学者であったように、ハイデガーもまたそうであった。両者の著作ともに、オリジナルな用語が頻出するが、実はオリジナルではなく、哲学史に逐一典拠をもつということがわかって驚いた。

    とりわけ刺激的だったのは、ハイデガーの「世界内存在」という概念が、弟子の日本人哲学者が送った岡倉天心の『茶の本』で言及されていた荘子の言葉に由来しているかもしれないという説。
    そのくだりを読んで感動。なぜなら、ハイデガーは本書によれば、ソクラテス以前の、生々流転する自然を存在の本義と捉えている節があるから。そこで、荘子とヘラクレイトスが出会う。
    まるで、出発点と終局点が西洋と東洋で逆になっているよう。西洋哲学は長い時間をかけて東洋的なものを目指し、東洋思想は西洋的なものを目指してきたみたいに読める。
    2000年近く離ればなれになっていた双子を見るようだ。

  • 世界内存在がようやく「近づいてきた」。三浦雅士の解説もとてもおもしろい。突然サリンジャー、リルケ、村上春樹だもんな。

    読んでいて感じたのですが(あくまで素人の雑感なので怒らないでください)、ハイデガーの興味は存在とか時間「そのもの」ではなく、プラトン、アリストテレス、カント、ニーチェ、キルケゴールなどが認識した事物に、つまりは別の哲学者による文献的な哲学への高い興味だったのではないかと感じる。人間、社会、倫理といった事項「そのもの」への関心は低かったんじゃないだろうか。そう考えればいろいろうまく理解できますが。

  • あちらこちらとのつまみ食いは、解る人には相当面白いのかもしれない。そこまでは入り込むことができなかった。言葉のもつ意味が時と共に変遷するのは世の常で、それを考慮しないで哲学史を語ることは、ハイデッガーならずとも無いのではなかろうか。そういう疑問はつねにあるものの、翻訳の限界もあることだし仕方ない部分もあるのだろうか。

  • ハイデガー研究者による本。
    ハイデガーに対する愛情を感じる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/743376

  • 2012/11/28読了

  • ハイデガーの講義録の紹介を通じて、彼の注釈学者としての側面や、わかりにくい用語の解釈を展開する。私のように哲学に疎い人間にとっては簡易な言葉使いのお陰でわかりやすかった。

  • ハイデガーは本質的に哲学史家であり、彼の講義録にはくみ尽くすことのできない魅力があると語る著者が、10回にわたってハイデガーの講義録のなかからとくに一般の読者にとってもそのおもしろさが伝わるものをとりあげ、わかりやすく解説している本です。

    ハイデガーの哲学は非常に難解ですが、本書は親しみやすいことばで書かれており、比較的肩の力を抜いて読むことのできるような内容になっています。ただ、著者の他の本でも論じられていることの繰り返しが多く、個人的には本書を読んで新たに学んだことはそれほど多くはありませんでした。

  • 第2回のカント思想におけるカテゴリーの概念および「実在性」の概念に関する解説がわかりやすかった。また第5回のアリストテレス思想における存在概念およびエネルゲイアの概念、第8回のハイデガー思想における「世界内存在」についての議論など、勉強になった。

  • 新潮文庫で、索引と人名索引がある哲学書という違和感。

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著者プロフィール

中央大学文学部教授

「1993年 『哲学の探求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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