リオ―警視庁強行犯係・樋口顕― (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101321516

作品紹介・あらすじ

「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、"否"と告げた。名手が描く本格警察小説。

感想・レビュー・書評

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  • <続>
    最初だからあえて書こう。『警視庁捜査一課強行犯係第3班樋口係長シリーズ』 の始まり始まりぃ~。
    あ,すまぬ。あまりに多くのこのSNSコミュの読者諸兄姉達が ご自分の読書感想文の最初を「〇〇シリーズ第何巻」という書き出しで書いているので 天邪鬼の僕は 出来るだけ同じ書き出し方は避けようと思ってここまで頑張って?遣って来たのだが,さすがにこのシリーズの のっけの作だけは書いて置いた方が良いと思った訳でして。でもその説明だけで何でこんなに紙面を使うんだ。いやはや無駄だなぁ。

    で、当然ながら物語は面白い。毎日の通勤電車の中でどんどん読み進んでしまう。だんだん残りが減っていくのがもったいなく思える。趣味読書でこんな もったいない的な気分 にはなかなかならない。 いにしえの昔 中学生の頃に その当時めちゃくちゃ流行っていた星新一や赤川次郎の文庫本を読んでいる時に同様の もったいない感を経験した記憶がある。同じだ。若返ったか僕。いやそれは無いなw

    今作は これでもか、という程 主人公樋口の性格と人柄について 主に樋口自身の内心的語りを用いて描かれている。そこが良い。今敏先生独特の警察小説の特徴なのです。本書の解説にも少し書いてあったけど その流れは人気作品『隠蔽捜査 シリーズ』の主人公竜 崎警視長 のパーソナリティへと間違いなく繋がっている。まあ竜崎は超権力志向で樋口には全くその気はない という大きな違いはあるが。

    そしてこの物語でも 警視庁捜査一課長は田端が務める。たぶん今敏作品の捜一課長役?は全て田端課長なのだろう。彼はいったい延べ何年捜一課長を務めているのだろうかw。ま、特にモンダイは無いが。

  • はからずもシリーズを逆順に読むこととなった樋口シリーズ1作目です
    登場人物たちを掘り下げてくような感じでこれはこれでおもしろいかも

    当然樋口の良き相談相手の氏家との出会いも語られることになると思い楽しみにしていました
    なぜ樋口は氏家には素直に相談できるのか?まあ類は友を呼ぶということなんでしょうが氏家の外側に向けたポーズの内面に誠実さがあるからなんでしょうな

    それから相変わらず樋口の自己評価の低さなんですがこれが本当にひどい、ひくつと言っていいくらい
    最新巻に比べてだいぶひどい、ということは逆にちょっとづつ自信をつけてるということなのかな
    そして妻の恵子の評価がほぼ樋口の自己評価と一致しているのが微笑ましく樋口の内面をちゃんと理解してる一番の味方なんだなぁと

    そして樋口シリーズのシリーズ通してのテーマはズバリ「家族」だということがはっきり分かりました
    犯人や容疑者はほとんど家族に問題がある人ばかりだし
    樋口家のような家庭を維持するには努力も必要!
    努力…足りてるかなぁ?

  • 今野敏「警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ」第1作目(1996年7月単行本、1999年11月文庫本)。
    「隠蔽捜査シリーズ」全9作を4〜5月に読了して竜崎伸也のキャラクターの大ファンになった。そして今野敏の新たなシリーズをまた読みたくなり今シリーズを手に取った。竜崎伸也のキャラクターとは立場も人柄も全然違うが、今シリーズの主人公の樋口顕も興味を注がれるキャラクターだった。

    警視庁捜査一課強行犯第三係長で警部補の樋口顕40歳が主人公。1955年生まれ、全共闘世代後の世代で、全共闘世代の後始末を負わされたという被害者意識を持ち、謙虚で真面目で人の目を気にするが、個人のプライドより効率を優先し組織を上手く利用し、そして上司同僚からも信頼されている優秀な刑事である。しかし本人はそうは思っていない。それでも捜査における状況判断や洞察力は抜きん出ており、容疑者や関係者から話を聞き出すのも上手い。考え方はどちらかといえば保守的で家族を愛するマイホーム主義でもある。妻の恵子40歳と娘の照美16歳の3人家族だ。

    事件は3人の中年男が次々と殺害され、いずれも高校生くらいの美しい女が現場で目撃され、3人目の現場ではその殺人現場で確保される。捜査本部ではその女性飯島里央を容疑者として逮捕、自供を迫るが里央は否認する。樋口だけが里央犯人説に違和感を持ち、所轄の刑事の氏家譲38歳と別行動で捜査するというような物語。
    3人の被害者はデートクラブのオーナーだったり、暴力団がらみのパブを経営していたり、いかがわしい撮影プロダクションの社長だったりで、ドラッグをやっていたことがわかった里央が犯人であることの可能性が高かった。
    樋口が真犯人の可能性として考えたのが二人、DJで里央に惚れている吉田晴彦(通称ハル)、もう一人が里央の通う高校の担任教師の梅本玲治だ。樋口の捜査は強引な捜査ではない。人の話を聞き、相手に安心感を与え、信頼され、そして優れた洞察力が武器だ。慎重に事を進め、自分ではなかなか自信が持てないことが欠点だ。
    そういう状況での樋口の独自捜査に助言して協力するのが強行犯第一係の係長で警部補の天童隆一47歳。若い頃の樋口に刑事の仕事を教えた先輩刑事だ。樋口を信頼し、理解し、上司からも信頼されている。
    理事官が池田厚作50歳、そして捜査一課長が田端守雄、警視だ。田端も樋口への信頼は厚い。このメンバーがおそらくこれからもシリーズで登場してくるということは想像出来るが、捜査一課長の田端守雄は「隠蔽捜査シリーズ」でも同じ捜査一課長の警視正で登場していて何か嬉しくなった。まさか竜崎伸也は登場しないと思うが、これから知っている刑事が登場してくるかもしれないと思うとちょっと別な楽しみが出てきた。
    しかしながら樋口の里央に対する恋愛感情は不自然だ。こんな情けない樋口は要らない。「隠蔽捜査シリーズ」の「疑心」でも竜崎の恋心が描かれていたが、両方とも愛情たっぷりの素晴らしい守る家族がいて、理性的な主人公で、保守的な価値観を持ち、この恋愛感情は釣り合わない。
    事件の真相は、予想通りの展開なのであまり感動はなかったが、これから樋口がどんなキャラクターを見せてくれるのかは、期待が膨らむ。シリーズ次作も是非読んでみたい。

  • 刑事物はあまり読んだことがないのですが、わかりやすく読めました。

    なんにでも過程があり、結果があるというのはそうだと思うが、物事を複雑に考えすぎて、単純なことを複雑に考えるあまりどんどん見えなくなっていくというのは、よくわかる。

    経験を積めば詰むほど、おちいりがちな事象だと思う。

    登場人物も少ないし、刑事物をあまり読んだことない人にいいと思う。

  • 樋口顕シリーズ(今日からテレビでドラマ化されますね)。主人公の樋口は自己評価が低く、これまでの今野作品の刑事ものには珍しいタイプですが、個人的には親近感を抱いてしまいます。

    タイトルのリオは事件に関係する少女の名前なのですね。知らず知らずのうちに樋口も彼女に惹かれているくらいですから、ちょっと会ってみたいと思わせてくれるキャラでした。

    シリーズ1作目ということで、読み手としてもまだ様子見というところでして、星は標準的な3つとしました。

  • まわりの顔色を窺って、若い女に惹かれて、これが主人公??とびっくりした。
    まだ好きになれんけど、事件を解決する能力はあるようなので次作に期待。

  • リオ、ってまさかの人名でしたか…。周りの目が気になって仕方ない樋口さん。竜崎さんとは対照的で、これはこれで楽しかったです。心情描写が丁寧でした。事件は割と普通な感じ。頼りにしてるんだよ…と言われ困ってしまう樋口さんに少し物足りなさも感じましたが、こちらもシリーズ追いかけてみようと思います。

  • 隠蔽捜査シリーズで今野サンにハマってしまったので、別のシリーズも読んでみることに。
    樋口さんもなかなか個性的なお方です。
    でもまだイマイチかな。。
    引き続き、二作目も読んでみます。

    そうそう、田端捜査一課長が登場したのは嬉しかったー!
    こういう繋がりあるともっともっと今野作品読みたくなるー!

  • ☆2
    警察小説では押し出しの強いキャラが主人公であることが多いが、本作は人の目を気にし、自分に自信が持てない、一見平凡な警視庁捜査一課強行犯係樋口顕が活躍するシリーズの第一弾。
    連続殺人が起こる中で、全ての現場で同じ少女が目撃され、その少女を容疑者として事件が展開される。
    読了感はイマイチ。WHO、WHY、HOW全ての部分で弱い気がした。捜査も地道で、逆にそこが現実味があるのかもしれないが、私は面白いとは感じられなかった。
    キャラが共感しやすいだけに次作に期待。

  • 今野敏の刑事ものは、主人公の刑事の性格・環境の設定が独特で面白い。

    本作の樋口については、「自分に自信が持ち切れない」「他人にどう思われているかを非常に気にする」という独特の性格が随所に垣間見えている。
    こういう人って組織の中に必ず居るよね、というタイプだ。

    普通こういった刑事ものだと、主人公は独断的だったり、極端に論理的だったり、とにかく周りとは一味も二味も出来が違うんだ、という形で名刑事ぶりを誇る場合が多いと思う。

    しかしこの作品では性格描写によって、樋口が優秀な刑事という印象を巧みにぼかしている感がある。(とはいえ、話の展開が進むにつれてどう見ても名刑事でしょう、としか言えない役割を果たしているのだが)

    そういった面から、とにかく直線的に解に突き進む剛腕刑事ではなく、微妙に「ゆらぎ」を持ちながらも着実に捜査を進めていく、という姿が進み方として他の作品には無い独特な感覚であり、本作の面白い所だった。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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