真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐B〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.32
  • (100)
  • (230)
  • (478)
  • (105)
  • (15)
本棚登録 : 2528
感想 : 216
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101322520

作品紹介・あらすじ

かすみとの偶然の出会いは、過去の恋に縛られていた僕の人生を大きく動かした。あれから二年、転職した僕の前にひとりの男が訪ねてきた。そして、かすみとその妹ゆかりを思い出させずにはおかぬこの男が、信じられない話を切り出した。物語は、驚愕のエンディングが待つside‐Bへ。今日と明日をつなぐ五分間の隙間を破り、魂震わす極限の愛が生まれる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • side-Aとside-Bを一気に読みました。
    お陰でちょっと寝不足気味です。。。

    読み進める中で、自分について何度も考え込んでしまうタイミングがあり、非常に悩みながら、じっくり考える事が出来た2冊でした。

    世の中の事を「仕組み」として割り切って考える事が出来る若さと強さ。
    そして時間の流れという重さ。

    20代の頃に好んで読んでいた本と、40代となった今の趣向が違うように、時間と経験が良くも悪くも、人を変えてくれます。
    随所に登場する主人公からするとちょいダサのオッサン達もいい味をだしてくれてて。まさに「年寄りの説得力」を感じました。

    本多孝好さんの本はいつも考えさせられる。
    本多氏おそるべし。
    ちなみにside-Aを読んでいた時、うっすらとノルウェイの森が頭に浮かんだのはなぜだろう。。。

  • 尾崎氏への想いを断ちきったかすみに5分間の狂気から救い出された僕はある日唐突に彼女を喪う。姉妹水入らずで出かけたスペインで事故に遭い、助かったのはゆかりのみ。それ以来尾崎氏ともゆかりとも交流を絶った彼は、久しぶりに尾崎氏から呼び出されるのだが・・・

    共に暮らす妻が本当に自分が選んで結婚したゆかりなのか、分からなくなり、憔悴した尾崎氏は残酷な願いを口にする。「ゆかりに会って欲しい」と。

    同じ見た目、同じ遺伝子、性格も共有する記憶までもほぼ同じ一卵性双生児・・・知り合いに一卵性双生児の姉妹がいるが、どちらがどちらなのかほとんど実際見分けがつかない。髪型や話す内容で見分けるだけだ。

    尾崎氏の妻として生き残ったのは本当にゆかりだったのだろうか。
    主人公である僕にも感情移入しにくかったし、なんだかすっきりしない。

    最後に、本多氏はこの作品についてこう語っている。
    『これは恋愛関係でなく恋愛感情を書いたエンターテインメント小説です。いわゆる「純愛もの」を期待されると、少し違った印象を受ける小説だと思います。それを期待されている方には「こういう恋愛小説はどうでしょう?」と挑むつもりで書きました。逆に「純愛って、いや、ちょっと」という方には、「わかる。僕もそうだから。じゃ、これならどう?」と、そう言いたい小説です。

    きっちりと構成を組んでから書き始めたわけではありません。これを書いている間、「これは本当にエンターテイメント小説として成立するのだろうか」という迷いを常に抱えていました。原稿用紙にして四百枚を越えても物語の終わり方が見えず、「これが小説として成立しなかったら、次に本を出せるのはいったい何年後だろう」と暗澹とすることもしばしばでした。その原稿を自分としては納得のいく物語に仕上げることができて、今はただただほっとしています。今度は、この物語を読んでくれた方々がその中に何を描き上げてくれるのか、著者としてとても楽しみにしています。』

  • 必ず前後編と巻が分かれていることが重要。結末はあまり覚えてないからもう一回サラッと読んでも良いかもしれない。

  • ほっとするようなSide-Aのラストから一転、Side-Bの冒頭は、後ろから頭をガツンと殴られたような大きな衝撃から始まります。

    恋人を失うということと、「自分は誰なのか」という答えのない問いと少しずつ向き合っていく主人公は、乾いたアスファルトに雨がしみ込んでいくように、じわじわと少しずつ熱量を取り戻していきます。
    そしてずっと守っていた堤防が決壊するシーンでは、読んでいる私まで堤防決壊!笑

    「なあ、今の君に今の僕はどんな風に見える?」
    結局は、それが唯一の答えで、一番大切な守るべきことのような気がします。

    真夜中の五分前―以前なら「昨日」に取り残されてるような主人公だったけれど、今は"five minutes to tomorrow"―明日に続く5分間が、過去と向き合い、明るい明日に向かうための大切な五分間に変わったような印象を受けるラストでした。
    今日の最後の五分間、私は何を想おうか。

  • ストーリーも最高に面白いながら考えさせられた点を書き残しておきたい。

    かすみとゆかり。
    一卵性双生児の二人が2つの人生を共有しあい、かすみの中のかすみとゆかり、ゆかりの中のかすみとゆかり、お互いの中で2人が存在し4人の人格が存在している感じにも見える。しかし逆に二人で1つの人格の形成も無意識に行っているようにも感じられる不思議さ。本来1人ずつの人格なので2つのはずがそうならない混乱が薄気味悪く残る。
    かすみの死はそこを決定づけてしまうもので、周りの人間達の混乱ぷり、本人ですら分からなくなるほどの様子。
    自分達は一体本当に何をみて認識しながら確認しながら暮らしているのかが分からなくなってきた。
    次の日が今日の延長で同じ継続線上の「当たり前」の普遍性を伴うものと何故信じられるのか?疑った事もないような気がする。
    自分が曖昧で漠然と処理しすぎている事への疑問すら覚えた。不思議な作品となった。

  •  真夜中の五分前

    本多孝好さんらしいスラスラと読める文章でした。
    性格やしぐさも似ている一卵性の双子に
    恋をするという設定で、どうして「片方」の子じゃないと
    だめなんだろう、と考えさせられました。
    孝好さんの答えは「その人と過ごした時間、思い出」かな?
    人を好きになるのに定義なんていらないと思うけれど、
    私も孝好さんに同意でした。

    特にラストのシーンが大好きで、
    そのシーンを何度も読み直しました。
    感動するというより、酔うというような感覚でした。
    暗闇に溶けながら、時計の秒針の音を聞く。
    そんな情景が思い浮かびます。
    「好きだった人のことを忘れてしまうのはどうして?
    ほんとうに大好きだったのに。」
    新しい恋をしたときにふと疑問に思うときがあります。
    今この瞬間も過去としてなくなってしまうんじゃないかと
    怖くなります。
    でもラストシーンを見てモヤモヤが晴れました。
    切ないようで、あったかい。

    長くなりました。

  • 人間をかたち作っているものや
    恋愛とは何かなどに果敢に挑んでると思います。

    ただ、個人の存在の問題に双子を使うんだったら、
    更に踏み込んだアプローチの仕方がほしかった。

    本作者は、色々な難しい問題に取り組んでくれてるため、
    これからも読んでいきたいです。

  • 何年かぶりの再読。side-A,Bとおして。◆嗜好も考えも行動も好みも一緒の見分けのつかない一卵性双生児がいて、そのどちらかを好きになった場合、彼女のどこが好きなのか、なにを愛してるのか、なぜもうひとりの方ではないのか。究極の設定で、誰かを愛するとはどういうことかと、鋭く問いかけてくる一編。◆本人はいたってクール、死んだ恋人の影をひきずり、わけもなく次々と美女に好かれ、つきあうと人としてのずれを感じられる、といった一時期の村上春樹しぐさなスタイルが垣間見えるところはちょっとな、と思いつつ、ぐいぐい読めてしまった。◆結末はまさかの…。自己同一性、その人をその人たらしめている部分がまざってしまい、自分でもわからなくなってしまったら、という形に。それでも愛せるだろうか、そもそもそれは本当なのだろうか、多大な混乱に押し流されそうになりながら。以下備忘録◆◆狂ってるのよ。あなたの部屋にある目覚まし時計と同じ。ほんの五分くらいだけだけどね。ちょっとだけ、でもきっちりと狂ってる。◆結局のところ、僕にとってあの会社はもう過ぎてしまった地点だし、彼らにとっての僕もすでに過ぎてしまった人間だった◆「好きな自分になってみようという気は?そういうことに時間を費やすことが、正しい人生の過ごし方だと思うんだけどね」◆「俺はこの世界が嫌いだけど、俺はこの世界でしか生きていけない」「そこのところだけは誤魔化したくないんだよ」(野毛)

  • 軽い気持ちで読み始め、夜中に読み終えた。
    明日仕事が休みで良かった…
    それぐらい個人的には気に入りました。
    なんか読み終えて心がざわつくような、でも読んで良かったと思える作品。

  • いい読後感。
    どれだけ強く想っていた人と離れたとしても、また人は人を愛せるし、愛した人も愛した自分も忘れずに生きていけるのかな。

全216件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1994年「眠りの海」で小説推理新人賞を受賞。‘99年、『MISSING』で単行本デビュー、「このミステリーがすごい! 2000年版」でトップ10入りするなど高く評価され、脚光を浴びる。以後、恋愛、青春小説を超えた新しい静謐なエンターテインメント作品を上梓、常に読者の圧倒的支持を得ている。その他の作品に『正義のミカタ』『MOMENT』『WILL』『魔術師の視線』『君の隣に』など。『dele』では原案と脚本を担当し、山田孝之と菅田将暉主演でドラマ化された。

「2021年 『チェーン・ポイズン <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本多孝好の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×