山妣〈上〉 (新潮文庫)

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著者 : 坂東真砂子
  • 新潮社 (1999年12月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (503ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101323220

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山妣〈上〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 116回 1996年(平成8)下直木賞受賞作。明治時代、越後の寒村が舞台の社会派小説。しきたり、禁忌、地主社会が色濃く残る村の祭りで事件が起こる。タイトルが”やまんば”ではなく”やまはは”となっている理由は読了してから納得する。おもしろい、おすすめ。松井今朝子 『吉原手引草』で遊郭の知識を、熊谷達也 『邂逅の森』でマタギの知識を備えてこの本に取り組むのがベスト。(まるでドラクエの”魔法戦士”のような小説だ。)

  • 再読。第一部では労働と子育てに明け暮れ、不要な妊娠は命がけでその始末を負わされ、老いれば闇入りかお山迷いが待っている村の女たちの過酷な宿命が語られ、二部でも希望など一つも持てない女郎たちの境遇が語られる。読み進むほどに、女は割を食うことばかりとため息。
    男が楽だとは言わないが、女の歴史は妊娠堕胎出産が付いて回る分、痛く辛い思いをすることが多すぎる。かと言って、琴のように男と一生無縁で生きていく覚悟もまた別の悲しい痛みを伴う。
    先人たちが越えてきた厳しい人生の冬。だから、この本を読むのは雪降る真冬が相応しい。

  • ほとんど前知識なく読み始めたため、
    最初は伝奇ホラー小説だと思って読み進める。

    うーむ、どうも様相が違うなと思ったけど、
    かと言ってこの物語はどう着地するのか
    ずっとわからないまま読んでいたのが
    ちょっともったいなかったかも。

    下巻まで読了してはじめて、
    なんとなく作品のテーマらしきものが
    おぼろげに見えてきた状態。

    涼乃助含めて、やっぱり女性の生き方が
    テーマだったように思う。

    濃密で出口のない閉塞された村社会のなかで
    生活手段の乏しい女性が自身の境遇、
    運命に立ち向かいながらどう生きていくか。

    坂東真砂子は、徹頭徹尾このテーマだった。

  • 通勤電車で読むには、ちょっと向かない小説。
    直木賞受賞作品だったので期待して読んだものの、上巻だけでお腹いっぱいな感じでした。
    なんとか下巻も流し読みしました。
    「死国」の方が好きです。
    下巻でいきなり女性の視点からの物語が始まり、この女性が一体何者なのかと興味はそそられたものの、何となく先が予想されてしまい…。
    方言も読みにくさを増長させているのか?
    私は長過ぎて好みではありませんでした。

  • 越後の山里でおこなわれる奉納芝居の指導のために、東京から旅芸人の市川扇水とその弟子の市川涼之助が招かれます。美貌の涼之助は、村の女性たちの熱い視線を集めるようになりますが、じつは彼は半陰陽という秘密を抱えていました。

    そんな彼が、村の地主の阿部鍵蔵の後妻・阿部てるの自慰行為を目にしたことから、2人の運命は思いもかけない方向へと動き出します。涼之助とてるは、やがて人目を避けて逢瀬を重ねるようになりますが、涼之助がやがて旅立つことを知ったてるは、彼に襲われたと鍵蔵たちに言い立て、さらに涼之助が半陰陽の「化け物」だと言い募ります。妻を取られたと信じた鍵蔵は涼之助を殺害しようとし、やむなく涼之助は山の中に逃げ込みます。

    ここで物語のスポットは、涼之助の母・大竹いさに移されます。鉱山町の遊郭で、「君香」という源氏名で働いていた彼女は、遊郭の経営主である高岡壱之介から金を盗み出し、戸田文助という鉱夫と逃げ出そうとします。しかし、いさが子を孕んでいることを知った文助は、金を持って彼女のもとから逃げてしまいます。その後いさは、渡りマタギの重太郎に助けられて、ふゆと名づけられる女児を出産し、さらに彼との間に子を設けます。しかし、2人の間に生まれた子どもは半陰陽でした。山神様の怒りに触れたと信じた重太郎は、子どもを旅芸人のところに預け、いさのもとから立ち去っていきます。

    新潟方言で語られる山里の人間関係と、運命に翻弄される登場人物たちの軌跡が、濃密な物語を織り成しています。確かにおもしろいストーリーだと思うのですが、作品の全体に立ち込める重苦しさに疲弊してしまいました。

  • 資料ID:C0021331
    配架場所:本館2F文庫書架

  • 先日亡くなった坂東眞砂子さんの直木賞受賞作。あらためて読んでみてその力強い筆致に惹かれた。

  • 冬の雪国の冷たさがじんじん伝わる。山の厳しさ、生と性と血が色濃く描かれる。山妣となった女の話が凄い!色んな感情が揺さぶられ、前半の涼之助の話が霞む。しかし物語は繋がり緊張感と共に下巻へ。

  • 読んだのは1996年の新潮社単行本だけど、登録できないね・・・

     単行本は2段組み488ページの大部だが、明治時代の東北に生きる人々を、お国訛りの会話で活写する筆力に引きずられて、ぐんぐん読める。人々に「子をとって喰う」と恐れられる白髪の山姥を中心に、浅草から師匠と村にやってきた美しい芸人・涼之助、妻に去られることを恐れる地主の若旦那・鍵蔵と、どこか得体のしれないその妻・てる、子守の娘・妙、その姉の瞽女・琴、多数のひとびとの運命が雪山で縒り合わされ、凄惨な殺戮がくりひろげられることになる。
     これまで怪奇風味の作品が多かった作家だが、自然の猛威と人のつくった掟にしばられながら、里に鉱山町に生きる人々の暮らしの圧倒的ディテールにうならされる。とりわけラストパートの熊と人間の対峙は圧巻。獣の牙に己れの骨をバリバリと割られ肉を剥ぎとられる感じがリアルすぎてマジ怖い!その厚みある描写を通して、伝説の存在である山姥となる女の姿が吹雪の向こうに見えてくる。
    軛を絆に変える女もいれば、軛も絆もふり捨ててしまう女もいると、登場人物は語る。残酷なほどに無頓着な山の力を、畏れとして対象化することなく、己のものとすることによって山姥となる女・いさは、冬眠する獣のように、うつらうつらと夢を見ながら、産んだ子を忘れていく。それは人の世に求められる「母」の規範からもっとも遠いが、それゆえに、「ふたなり」として疎外されてきた涼之助にとっては、突き放す冷たさと同時に救いとなる温かさをもあたえてくれる。てると鍵蔵のセックスとは対照的に描かれる彼の自慰にも、人の世から棄てられることを、自ら捨てることへと変えた者が到達する解放がある。
    子を産む存在にして子を食う山姥は、異形として忌み嫌われるが、実はどんな母の中にも潜んでいる。今の私たちはそのことを忘れて見ないようにしているだけなのだ。殺した子の死体を抱いて体は土に戻り、魂は山姥となって雪山を駆けていく妙の母は、そのことを思い出させるようである。

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