山妣〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (503ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101323220

感想・レビュー・書評

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  • 業の深そうな作家さんだと思った

  • 116回 1996年(平成8)下直木賞受賞作。明治時代、越後の寒村が舞台の社会派小説。しきたり、禁忌、地主社会が色濃く残る村の祭りで事件が起こる。タイトルが”やまんば”ではなく”やまはは”となっている理由は読了してから納得する。おもしろい、おすすめ。松井今朝子 『吉原手引草』で遊郭の知識を、熊谷達也 『邂逅の森』でマタギの知識を備えてこの本に取り組むのがベスト。(まるでドラクエの”魔法戦士”のような小説だ。)

  • どうしても坂東さんは四国や奈良のお話のイメージが強く、東北の炭鉱、小作人の話だと、情景をイメージするのが難しかったです。「さぁ!読むぞ!」と下巻を読み始めるまで時間が掛かりました。。下巻に続く

  • 下巻にまとめます

  • 女の負の歴史を思う。女性劣視や権利、そして性の弱者をまざまざと思い知らされる内容だ。やまんばを山姥と書くのではなく山妣と表現し、タイトルはやまはは。うまくつけられたなと感心した。
    上巻は女形俳優の話と山に住む女の話。ページ数が多いながらもグッとこの世界に引きずり込まれて先が気になって読むのが止められなかった。
    下巻が楽しみでならない!

  • 坂東眞砂子 著「山妣(やまはは)(上)」、2000.1発行(文庫)、1997年直木賞受賞作品。三浦敬三氏が「101歳の少年」で、面白くて一晩一気に読んだとありました。興味をそそられ読んでみました。上巻だけで503頁、大作です。第1部 雪舞台、第2部 金華銀龍の2部構成。時系列は逆順。越後の山奥、鉱山で働く鉱夫、そして遊女たちの暮らし。金を盗み鉱夫と山に逃げた身重の遊女、君香(いさ)は、鉱夫に金を持ち逃げされ、更に鉱山責任者に捕まってしまう。山の掟で耳をそがれるもつるはしで反撃。越後の冬山で死を覚悟した彼女を救ったのは渡り又鬼(またぎ)の重太郎。二人の奇妙な岩穴での生活が続き、いさは子供を産みます。(下巻)が早くも待ち遠しいです!
     坂東眞砂子「山妣(やまはは)」、1996.11刊行、2000.1文庫、直木賞受賞作、大作です。上巻は第1部、第2部、503頁。下巻は第3部、342頁。上巻第1部は、明治末期、越後の山里。美貌の役者涼之助と地主の嫁てるの密通。てるのラブコールを拒否した涼之助は「ふたなり、化け物」と呼ばれ村人から逃れて狼吠山の頂(山妣が住むという)に。上巻第2部は、時代を遡り、狼吠鉱山の話。遊女のいさは瀕死のところ重太郎という渡り又鬼に助けられ、山で暮らす。ふゆという女児を産み、重太郎との間の男児を産む。この男児が涼之助か

  • 再読。
    第一部では、労働と子育てに明け暮れ不要な妊娠は命がけでその始末を負わされ、老いれば闇入りかお山迷いが待っている村の女たちの過酷な宿命が語られ、二部でも希望など一つも持てない女郎たちの境遇が語られる。読み進むほどに女は割を食うことばかりとため息。
    男が楽だとは言わないが、女の歴史は妊娠堕胎出産が付いて回る分、痛く辛い思いをすることが多すぎる。かと言って、琴のように男と一生無縁で生きていく覚悟もまた別の悲しい痛みを伴う。
    先人たちが越えてきた厳しい人生の冬。だから、この本を読むのは雪降る真冬が相応しい。

  • ほとんど前知識なく読み始めたため、
    最初は伝奇ホラー小説だと思って読み進める。

    うーむ、どうも様相が違うなと思ったけど、
    かと言ってこの物語はどう着地するのか
    ずっとわからないまま読んでいたのが
    ちょっともったいなかったかも。

    下巻まで読了してはじめて、
    なんとなく作品のテーマらしきものが
    おぼろげに見えてきた状態。

    涼乃助含めて、やっぱり女性の生き方が
    テーマだったように思う。

    濃密で出口のない閉塞された村社会のなかで
    生活手段の乏しい女性が自身の境遇、
    運命に立ち向かいながらどう生きていくか。

    坂東真砂子は、徹頭徹尾このテーマだった。

  • 通勤電車で読むには、ちょっと向かない小説。
    直木賞受賞作品だったので期待して読んだものの、上巻だけでお腹いっぱいな感じでした。
    なんとか下巻も流し読みしました。
    「死国」の方が好きです。
    下巻でいきなり女性の視点からの物語が始まり、この女性が一体何者なのかと興味はそそられたものの、何となく先が予想されてしまい…。
    方言も読みにくさを増長させているのか?
    私は長過ぎて好みではありませんでした。

  • 越後の山里でおこなわれる奉納芝居の指導のために、東京から旅芸人の市川扇水とその弟子の市川涼之助が招かれます。美貌の涼之助は、村の女性たちの熱い視線を集めるようになりますが、じつは彼は半陰陽という秘密を抱えていました。

    そんな彼が、村の地主の阿部鍵蔵の後妻・阿部てるの自慰行為を目にしたことから、2人の運命は思いもかけない方向へと動き出します。涼之助とてるは、やがて人目を避けて逢瀬を重ねるようになりますが、涼之助がやがて旅立つことを知ったてるは、彼に襲われたと鍵蔵たちに言い立て、さらに涼之助が半陰陽の「化け物」だと言い募ります。妻を取られたと信じた鍵蔵は涼之助を殺害しようとし、やむなく涼之助は山の中に逃げ込みます。

    ここで物語のスポットは、涼之助の母・大竹いさに移されます。鉱山町の遊郭で、「君香」という源氏名で働いていた彼女は、遊郭の経営主である高岡壱之介から金を盗み出し、戸田文助という鉱夫と逃げ出そうとします。しかし、いさが子を孕んでいることを知った文助は、金を持って彼女のもとから逃げてしまいます。その後いさは、渡りマタギの重太郎に助けられて、ふゆと名づけられる女児を出産し、さらに彼との間に子を設けます。しかし、2人の間に生まれた子どもは半陰陽でした。山神様の怒りに触れたと信じた重太郎は、子どもを旅芸人のところに預け、いさのもとから立ち去っていきます。

    新潟方言で語られる山里の人間関係と、運命に翻弄される登場人物たちの軌跡が、濃密な物語を織り成しています。確かにおもしろいストーリーだと思うのですが、作品の全体に立ち込める重苦しさに疲弊してしまいました。

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