ビューティフル・ネーム (新潮文庫 さ 27-11)

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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325217

感想・レビュー・書評

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  • たぶん著者初読み。未完の遺稿含む短編集。『ビューティフル・ネーム』完成品を読みたかった。国と名前をめぐる物語。若い主人公達が成長する中でこの国にある偏見や変な制度と対峙する。丁寧かつ軽やかに生きていく様が清々しい。読んで良かった。

  • ゆっくりと静かに、しかし大きく魂を揺さぶる。モノの名前とは違って、人間の名前というのは他者によって識別されるためのものである以外に、自らの生き方を規定するものであるらしい。自らの名前を名乗ることが、他者の魂を揺さぶり、美しいと感じさせるとはどういうことだろう。その人達の意志と関わりなく、歴史や制度がそうさせたのだと思うと、ものすごく切ない。

  • 帯には『早すぎる遺作』の文字。
    まったくもってその通りだと思う。

    在日韓国人3世を描いた3つの話から構成される…はずだったお話である。
    3作目は著者の絶筆。
    その続きを永遠に知ることがないと思うとますますこの作品への思いは強くなる。

    願いをこめられてつけられた名前はあまねく『美しい』。
    在日韓国人であるがために韓国名と日本の通名の2つの名前。
    日本における彼らの心のありようが少しでも感じられれば…と思う。

  • 身近だけどよく知らない韓国。
    通称名を使うことについて、このように考えたことはなかった。
    I am a japanese
    日本名を使っているから、周りは私をなんの疑いもなく日本人だと思い、このフレーズを話す。
    同胞でありながら、韓国名を使っている人と知り合い、通称名を使う違和感に気づく。
    でも、韓国名の自分がイヤで親に中学から名前を変え私立に通わせてもらったのに…
    そして韓国人でありながら、韓国語が話せない。
    自分の居場所はどこなのか?

    私の周りにも、きっと通称名を使っていたから気づかなかった韓国の同級生がいたのだろう。
    複雑な思いがうずまく。

    なんとなく図書館で借りたが、深く心に残った。

  • 最初の2つは、ピュアジャパニーズとしても共感して読めるし
    問題点にも気付かせてくれるなと思った。
    文学として良いだけじゃないというか。
    なるほどー、と読みながら思った。

    未完の遺作達は読みながら、
    これを書いていた彼女はどんなきっかけで…と考えてしまった、どうしても。

    特に最後の「春の居場所」は続きが読みたかったなぁ。
    映画を観ます。

  • 2004年、35歳で急逝した鷺沢萠が生前から構想していた、1つの主題に貫かれた3つの物語。最終篇は未完に終わった。また、自身の高校時代を描いたと思われる絶筆も併録。書くことに走り続けた作家が最後に遺した小説集。

  • 【本の内容】
    「Yes,I am.I am a Japanese.(えーっと、ホントは違うんですけど)」。

    在日韓国人三世の崔奈蘭は、中学高校の6年間だけ「前川奈緒」だった…。

    国と名前をめぐって編まれた三つの物語と、パソコンから見つかった未完の遺稿を含む鷺沢萠の絶筆。

    35歳の若さで世を去るまで、きりりと明るく、人間を深く肯定する物語を届け続けた希有な才能が、いま作品のなかに永遠の生を得て、光り輝く。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    「美しい名前」。

    素晴らしすぎてタイトルを見るだけでじわっとくる。

    読んでいる最中、何度も何度も繰り返しタイトルを見た。

    あたたかく美しいそのタイトルが本文とともに、新しい優しさを心に運んでくる。

    在日朝鮮人、思春期。

    「どうして私は韓国人なの?」「どうしてこんな名前なの?」。

    日本に潜在的に存在している在日外国人への差別は、彼らに容赦なく襲いかかる。

    通名を使い日本で生きる少年たちの苦悩と熟考が、非常にリアルな言葉で、しかし驚くほど読みやすく綴られた短編集だ。

    これから先、私たちが嫌でも考えていかなくてはならないことが、著者の脳みその中にはめいっぱい詰まっていたはずで、読みながら彼女の言わんとしたことを必死で酌もうとしたけれど、たぶん彼女が伝え残したことはまだまだたくさんあるような気がする。

    小説として無邪気に読むには痛すぎるのに、その内容と反比例するような無邪気な文章の書き方が本当に素晴らしかった。

    ただただ続きが読みたかったと残念に思います。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • #bookoff

  • その名前が私を形作る。

    未完の遺稿については、やはり完成したかたちで読みたかった。「眼鏡越しの空」については、自分が理解できない壁を感じる。理解したいと思っていても、なぜか壁が隔たるもの。チマチョゴリとキャミソールの話は、どうしても説得できない自分を感じた。アトナオにも奈蘭にも全面的に同意できないもやもやしたものを感じる。

    「故郷の春」の主人公は、字面から陽気な、というか明るい口調が音で聞こえてくる。でもそれは、作った明るさのようにも感じられ、自分というか、自分と名前に所属する自分を受け容れるまで、アイデンティティーの確立までの葛藤をなんとなく感じてしまう。

    チュー先輩のキャラクターは、とてもカッコイイ。もしかしたら、彼女も色々と考えたり恨んだりすることがあるかもしれないけれど、高校生の時点で、そうやってあっけらかんと、少なくとも外向きにそのように振る舞える時点で、とてつもなくカッコイイ。ところで、未完の「ぴょんきち/チュン子」の主人公もどうやらチュー先輩と同じ春純という名前だけど、同一人物だろうか。

    容易に、~だった、良い話だったと言えない、自分で消化できない。自分の名前に対する誇りの話と一般化することもできない。消化不良のまま、当分抱えておきたい話であった。

  • 在日一世の苦労や生活がうかがいしれる。また、そのまま日本に滞在しつづけた理由も、おそらく、この小説に登場する人物のようなケースが多いのだと思う。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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