絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325323

感想・レビュー・書評

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  • メディアで語られる貧困像に疑問を持った著者が、彼らと同じ体験をして、同じ目線に立って描いた本当の貧困生活。

    一番ハッとしたのは、貧困生活をおくる子どもたちの精神的健康について。
    日本には当たり前のようにカウンセリングがあり鬱病などもよく問題されるので、なんだか都会病のような気がしていた。
    でも絶対貧困にある人は精神的健康以前の問題でいっぱいいっぱいなだけで、やっぱりそういった問題は多いんだとわかる。

    『世界がもし100人の村だったら』の大ヒットも、私たちが貧困問題を現実的に感じられないことが理由なんじゃないだろうか。
    ただのデータとしてではなく、そこに生きる人間の心を想像することが必要なのだと思う。

  • 【読書リスト11】石井光太『絶対貧困』新潮文庫。世界各国の貧困地域を歩いた著者による14の講義。スラムの成り立ちやそこで暮らす人々の仕事や性、路上生活者の物乞いや物売り、結婚、出産、葬儀、犯罪そして売春の実態が生々しく語られており、否応なく自分はどう生きるべきか考えさせられます。

  • 読みやすい!

  • 世界の貧困地域の生活と特徴のレポート。所々に挿入される考察は目新しいものではなく、また全く相容れないと感じることもあるが、スラムに飛び込み生活を共にするという筆者の人生を張った取材に裏打ちされ力がある。
    著者が掲げる「貧困学」の理念とはずれるかもしれないが、人は貧しさから学ぶことが確かにあるように思う。
    貧しさから遠いことでは世界一かもしれない国に生まれた私達は、貧しさに対する態度を知らない。「貧しさ」と「正しさ」を切り離すことが出来ない。
    確かにある貧困と、私達はいかに向き合うべきなのか。その意味を、どう捉えるべきなのか。
    考えさせられる一冊でした。

  • 缶ジュース一本よりも賃金の少ない世界の人達・・・
    日本に住んでる自分では想像もできない程の世界を、決して大袈裟に誇張しているのではない『リアル』な内容として読み解きことができた。

    『貧困の中でも恋は生まれる』『売春している女性達は皆で協力して子供を育てている』といった、人の美しい側面も描いてくれたのが嬉しい。
    著者にはこれからも取材を続け、良質なノンフィクションを生み出していって欲しい。

  • 途上国の貧困問題といっても、遠いどこかの話ではなくやけにリアルな問題に感じた。

    何をしたら良いですか?ではなく、どうしたら良いかを自分の頭で考えることが大切。

  • 貧困の実態とは如何なものか?
    広範な地域での綿密な取材・調査を通して、貧困者の実態を明らかにしている。

  • 世界の貧しい国々ではあ1日を1ドル以下で暮らす人が12億人もいるそうだ。本書ではテレビのドキュメンタリーのように「救うべきかわいそうな貧困者」という画一的な視点ではなく、人々の生活に入り込み、「あたりまえの現実」としての彼らの生活が書かれている。
    自分の子供を売春婦にしないために売春をして子供を学校に通わせているいる売春婦や、インドネシアの年齢別人口がキリのいい年齢だけ多い理由、自分の腕や目をつぶしたマフィアをかばう少年、どの話もテレビではなかなか報道されない。それは「救うべきかわいそうな貧困者」や「貧乏でも明るく頑張る子供」のようなわかりやすく感動をさそうテーマに沿って番組を作るからなのだ。
    タンザニアのスラム、無償で産婆をするオバちゃんがいる。少しでもお金をとればいいじゃないかという言う著者にオバちゃんは「アフリカでは、みんなお金を目当てに戦争をしたり、虐殺をしたりしている。私は赤ちゃんが生まれてくる時ぐらいはお金に関係なくやってあげたいのさ」と言った。
    貧しい国にいるからって同じ人間なんだ。いい人もいれば悪い人もいる。今さらながらそんなことをわからせてくれる良書。

  • この本を選んだ理由:
    貧困問題に興味があったので

    この本に感動した理由:
    思いっきり現場に踏み込んだ取材をしている点に驚いた。
    生まれおちた場所によって、価値観は全然違うことを再認識。
    常識とは偏見の塊であるとはよく言ったものです。

    発見したこと:
    まさに「リアル」な世界。痛々しくて目をそむけたくなる。でも向き合うっていってみたところで、それも綺麗事でしかなくて、結局どうしたらいいのかわからない。
    とかく知ってしまった、出会ってしまった、同情してしまった、テーマに尽力すればいいという理論に賛成。

    自分にどのように影響したか:
    生まれた背景が違えば、悩むことも違うということを知り、もう少し自分を客観視してみようと思えた。

  • 1日1ドル以下で暮らす人間と寝食を共にして書いた作者のルポです。書かれてある事一つ一つが衝撃的で読んでいて唖然とさせられますが、日頃私たちが目にすることは決してないだろうという世界が展開されています。

    この本を最初に手にとって見たのは少し前になるんですけどね。今回この記事を書くために再読してみたのですが、いやはや、ここに書かれていることは全て『事実』なんですが、いやはや…。あまりにぶっ飛んだすさまじい世界ですわ。むしろ一周して逆に現実感をわすれさせてくれますね。

    いま、日本が『格差社会だ格差社会だ』と盛んに騒がれておりますが、この本に書かれているまでのレベルには『まだ』いってはいません。

    この本の作者は無茶苦茶とも思える事実を淡々とつづっているが、あまりの内容で改めて絶句しました。特に自分が好きだった箇所は『売春編』に関する箇所で本の中には写真が掲載されているのですが、本当に粗末な部屋、もしくは場合によっては貨物列車の中で事が行われていて、そこかしこに散らばった使用済みのコンドームの中に、蟻が入り込んで、乾いた精液を食べると言う描写でした。本当にこの箇所を読んでいるときは慄然としました。

    最近、こういうところに行って実際に自分の目で現場を見ておきたいという衝動に駆られる自分がいます。ま、諸般の事情により、当分は出れませんがね。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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