遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325347

作品紹介・あらすじ

あの日、3月11日。三陸の港町釜石は海の底に沈んだ。安置所に運び込まれる多くの遺体。遺された者たちは懸命に身元確認作業にのぞむ。幼い我が子が眼前で津波にのまれた母親。冷たくなった友人……。悲しみの底に引きずり込まれそうになりながらも、犠牲者を家族のもとへ帰したい一心で現実を直視し、死者の尊厳を守り抜く。知られざる震災の真実を描いた渾身のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • あの日、3月11日。三陸の港町釜石は海の底に沈んだ。安置所に運び込まれる多くの遺体。遺された者たちは懸命に身元確認作業に臨む。幼い我が子が眼前で津波にのまれた母。妻とお腹の赤ちゃんを一度になくした夫…。悲しみの底に引きずり込まれそうになりながらも、犠牲者を家族の下へ帰したい一心で現実を直視し死者の尊厳を守り抜く。知られざる震災の真実を描く渾身のルポルタージュ。

  • ショッキングなタイトルですが、東日本大震災直後の遺体安置所を取り巻く人々を真摯に丁寧に描いた記録です。私自身も真摯な気持ちで読みましたし、人間の暖かさや強さを再認識しました。オススメ!

  • 何冊か、東日本大震災に関する書籍は読んで来た。
    しかし、今作はタイトルにもある通り「遺体」に焦点を当てた小説であり、未曾有の大震災で溢れた遺体をどう対応するか?その対応だけを淡々と綴っている。
    この手の本を読む時は、大体感情的になり、泣いてしまうことが多いのだが、今作は遺体への対応策を淡々と綴っているだけので、悲惨な体験であることは確かなのだが、事実として、しっかりと受け止められるのが、特徴的。
    今までは宮城県側のルポを読むことが多かったが、岩手県側でのこれだけの被害もきちんと受け止めていきたいと思う。

  • 東日本大震災から三年が過ぎようとしている。未曾有の大津波に見舞われ、多くの方々が犠牲になった岩手県釜石市。そんな中、決して避けては通れない犠牲者の遺体…このルポルタージュは、犠牲者の一人でも家族の元に帰そうと努力した方々、犠牲者に敬意を払いながら数々の問題に取り組んだ方々を被災者の視点から描いている。

    まるで地に這いつくばりながら取材したと思われるルポルタージュであり、あくまでも事実のみを描いているのに強いメッセージが伝わって来るところが凄いと思う。

    単行本で読んだのだが、今、再読してみても、行間から溢れ出す多くの方の哀しみや苦悩が迫力を持って伝わってくる。文庫版には著者のあとがきが記載されている。

    自分自身、二年間ほど暮らした釜石市であるが、震災の数ヶ月後に訪れ、余りにも変わり果てたマチの姿に愕然としたものだ。

  • 東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸の町々。
    本書は岩手県釜石市の震災直後の様子を綴ったものである。
    中でも「ご遺体」を巡る人々の様子に焦点を当てている。

    検視を行った医師たち、ご遺体の搬送に関わった市職員たち、ご遺体の供養のことを考えた僧侶たちなど、あの混乱の中でそれぞれの場所・それぞれの立場でどんなことが起きていたのかを丹念に追いかけている。

  • 2014年3月11日、乗換がうまくいかずに立ち寄った駅ナカの本屋で偶然目に留まった一冊。真っ白な表紙に『遺体』の2文字。帯に目を移せば、東日本大震災のルポだとわかった。
    この日に見つけたのも何かの縁だろうと思い、その場で購入した。

    内容は実に衝撃的だった。ボランティア活動にも行っていなければ、基本的に情報源はラジオという生活を送る我が家ではテレビもあまり見ることがなく。被災地の現場の様子はほとんど目にせず3年間過ごしていた自分。

    自分が学ぶ資源やエネルギーの話として、原発については大学でも話題になっていたが、被災地の復興という部分にはほぼ目を向けてこなかった。

    大地震とそれに伴う火事、津波。大きな被害と死傷者、大量の土砂やヘドロ、倒壊した家屋、瓦礫の山。写真はなく、数人の当事者のさまざまな視点から、見て感じたこと、当時の実際の動きについて記録されている。

    想像するだけでも壮絶な現場。重たい。
    でも、この本にかかれていることは、心に刻んでおきたいと思った。
    この本を通じて、一人でも多くの人が当時の現場の様子を少しでも知ることができればと思う。

  • 2011年3月11日。40000人が住む釜石を襲った津波は、死者・行方不明者1100人もの犠牲を出した。膨大な犠牲者を前に立ち止まることすら許されなかった人たちの記録です。壮絶すぎて言葉がありません。

    石井光太さんのルポルタージュは毎回読むたびに心のここから打ちのめされて、ほかの事が一切手につかなくなってしまうことが多いのであまり万人に勧められるものではないのですが、ここに書かれてあることは震災を経た日本人すべてに読んでいただきたい壮絶な記録です。内容を簡単に申しますと、釜石市でご遺体の収容、身元確認、葬送に当たった人たちへのインタビューを丁寧に積み上げた一冊です。民生委員。歯科医師とその妻。釜石市職員。陸上自衛隊員…。

    彼らの語られる『遺体』の描写が、今もYoutubeなどの動画サイトに生々しいまでに残っている津波の暴力的な破壊力がいったい何をもたらしたのか、ということが痛いほどに伝わってきて、ページをめくる手が時々鈍ってしまったことをここに付け加えておきます。僕が読んでいて印象に残ったのは総ての医療機器が津波によって流されたときに役遺体の身元判別に立つのは人間の歯形である、ということでした。『沈まぬ太陽』の中にも遺体を区別するのに歯科医師たちが死臭と線香の臭いでむせ返る体育館の中で歯形を調べる、という場面がありますが、それとほぼ同じ描写が繰り広げられ、中にはあまりの惨たらしい犠牲者の変わり果てた姿や、生後間もない乳飲み子の遺体が遺体安置所となった体育館に運ばれ、横たえられ、駆けつけてきた遺族が遺体の前で慟哭する姿には『絆』ですとか『復興』という言葉がいっぺんに吹き飛んでしまうくらいに生々しく、壮絶なものでした。

    さらに、目の前で津波にさらわれ、後日遺体となった肉親と対面しなければならなかったという方の話には本当に今思い出しても胸が詰まりました。筆者は最後のほうで、『復興とは家屋や道路や防波堤が修復して済む話ではない。人間がそこで起きた悲劇を受け入れ、それを一生涯十字架のように背負って生きていく決意を固めてはじめて進むものなのだ』という言葉は、あの震災が起きてすぐに、未曾有の現場を体験し、被災した人たちに丹念に寄り添ったからこそ、かける言葉だなと読みながら感じました。僕は大手メディアが遺体を写さなかったのかについての是非をここで云々するつもりはありません。ただ、この本を読むことによって多くの『死者の声』『声なき声』に耳を傾けていただければ、幸いに思います。

  • テレビなどではあまり語られなかった、東日本大震災の犠牲者の方々のご遺体の話。

    遺体安置所で奔走する方々、市職員、住職、遺族、消防団員、葬儀社、医師、歯科医師……。

    当時の大混乱ぶりが詳細に描かれおり、また犠牲になった方々、ご遺族の方々の苦しみが伝わってきて、涙しながら読んだ部分も多かった。

    映画化されていたことや、本書に出てくる職員が不祥事を起こしたことなどを後で知った。知りたくなかった。

    石井光太さんの書く文章は、内容の濃さも、取材力も、筆致も凄まじい。他書も読みます。

  • 高1の夏、東日本大震災により甚大な被害を受けた釜石市に被災地訪問をする際、課題図書として読んだ。

    『遺体』というタイトルからもわかる通り、震災のことを生々しく描いたお話だったので、被災者の方々や遺族の方々のことを思うと、胸が締め付けられ、辛い気持ちでいっぱいになった。そんな震災のなかで自分自身も親しい人や家族を亡くしているのにもかかわらず、復興のために必死で働き続けた人々のことを知り、驚いた。

    私は3.11のとき、外国に住んでいたため、大地震は経験していないが、海外のニュースでも東日本大震災は大きく取り上げられていて、非常に不安になった記憶がある。実際に被災地を訪れ、震災の傷跡を見たり、被災者の方々からお話を伺う前に、事前学習としてこの本を読んでおいてよかった。

  • ニュースでは報じられない悲惨な状態を生々しく伝える1冊。
    今後起きる西日本大震災の減災に向け、今を生きる私たちが東日本大地震を教訓とし後世に伝えるべき情報が多く書かれていた。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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