- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101326511
感想・レビュー・書評
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著者の甲野善紀氏は、武術家、武術を基にした身体技法の実践研究家である。本書は2005年に発刊、2007年に文庫化された。
甲野氏は、「ナンバ」(右手と右脚、左手と左脚を同時に出す、江戸時代の飛脚の走り方)など、日本人古来の身体の使い方に注目し、独自の身体操法を研究してきたが、そこから導き出されたのは、「体幹部をねじらず、足で床を蹴らない、つまり反動を利用することがない」動きであり、本書においても様々な実例が紹介されている。
そして、甲野氏は、「私が研究してきたのは、剣術にも体術にも共通するような動きの原理、身体の使い方の原理ですから、スポーツにも応用できます。ただ、それは今日のスポーツの常識とはまったくちがった動きです。だからこそ現代のスポーツの常識では無理だと思い込まれてきたようなことを可能にするのです」といい、甲野氏から直接教えを受けた桑田真澄や、直接の接触はないというものの、「ナンバ」が一般に注目されるきっかけを作った末續慎吾ほか、多数のアスリートへ影響を与えたことが語られている。
また、甲野氏の理論は今や、武術やスポーツのみならず、楽器の演奏、舞踊、介護医療に応用されており、フルート奏者の白川真理の例も記されている。
様々な分野を支配する西洋的観念・発想を見直す一つのアプローチとして注目に値するものと思う。
(2007年9月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前から、武士はどのようにして、真剣で立ち会っていたのだろうということが、たいへん気になってしかたがありませんでした。時代劇のチャンバラのような動きはあり得ないし、剣道のように真剣を扱えば、互いに深手を負うどころか、たちまちどちらも命を落としてしまうでしょう。で、あるときテレビで甲野先生をお見かけしました。そのときの先生の動きは、常識を覆すものでした。打ち込まれてきた剣をすりとかわし、同時に小刀を相手の手首、喉元につきつけていました。
先生は古文書や秘伝書の類を研究し、自らも古武術の動作、技を修得されている方です。本書を読むと、かつて日本人は西洋人とは異なる身体の使い方をしていたことがよくわかりました。例えば、重いものを持ち上げるとき、先生の腕や足、腰などに負荷はかかりません。それどころか、足の裏でさえ負荷が計測されないのです。特定の筋力を用いず、どうやら身体の各部分がそれぞれ違った動きをし、全体で大きな力を生み出しているようです。身体をひねったり、うねらせたり、膝に力をためたりして、その反動で勢いをつけるという、我々が常識としてとらえている筋力的な動作とは相反するこのような動きは、現代の科学では説明のできないことのようです。
先生の研究や動作は、いまでは野球や陸上競技をはじめとするスポーツ界のみならず、介護やロボット工学、舞踊や楽器の演奏、宇宙開発やカウンセリングやビジネスなど、いろんな分野で応用されているようです。にもかかわらず、先生は常に自らの考えや成果を否定し、さらに上の段階を目指しておられます。
自分も学生時代はずっと運動部に所属していましたが、そのころ先生の存在を知っていればと悔やまれてなりません。 -
読んでるだけでは、なに言ってるんだかわかんない。
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ノウハウ本ではなく、ノンフィクションという区分けになるのだと思います。
「身体の動かし方」を見直すきっかけとしては、おもしろい内容です。
実質的な著者は田中聡ですが、セクションごとの結論がどうしても現代社会批判に向かうのは、好き嫌いがあるかもしれません。
さすがに文章と簡単な写真だけでは、実際に「古武術的な動き」をイメージするのは難しいです。YOU ●UBEがある時代に生まれたことを、感謝します… -
古武術といえばこの人。どうやって体を使うのか興味があった時期に読んだが、よかったと思います。普段にも活かすことができるので、常に考えながらやってみると面白いです。
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甲野善紀氏と田中聡氏の共著。といっても、ほぼ書き手はライターの田中聡氏。身体論について。産業革命以来の近代科学主義による機械論的な身体観から古武術にみる昔の日本人の身体観、生命論的な身体観への回帰を説く。ただ、生命論的な身体観というのは、複雑なもの、感覚的なものであるため、なかなか言葉にするのが難しいが、かつての日本人がもっていた身体観の素晴らしさやそれを探究している甲野さんの存在を多くの言葉を尽くして説明しようとしている。身体の使い方のうまい人(達人)は身体のパーツを細かく分節化しているとのこと。サッカーで言うと、足の甲や踵や指、太もも、ふくらはぎなどの単位よりも細かい単位のパーツも眠らせずに使える人ほど足使いの巧い人ということ。そういう意味で、身体を割ること、身体全体のパーツを使うことを意識して、スポーツに取り組んでいこうと思う。養老孟司と甲野善紀との対談もあり。