脳はこんなに悩ましい (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101329239

作品紹介・あらすじ

「私って何?」その問いの果てにあったのは脳科学だった。“自意識”は脳が作ったイリュージョン? 人の不幸が快感なのは脳のせい。オルガズムに男女差はなし!? セックスで放出されるホルモンの悪用法とは。「大器晩成」は脳構造的に正しい。遺伝子検査で知る意外な自分――。脳研究の最先端を知る科学者と、自己を探し続ける作家が探検! 驚きと刺激に満ちた、魅惑的な脳の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 「私とは何か?」を過剰なほど突き詰めて、脳科学書をしっかり読み込んでいらっしゃる中村うさぎさん。脳科学研究の最先端を分かりやすく教えてくださる池谷裕二さん。人間の脳って、ものすごく多くのことが解明されてきているのに、分からないことがそれ以上ににょきにょき出てくるのですね…。

  • 対話形式で分かりやすかった

  • 面白い。池谷さんの本はどれも読みやすいけど中村さんと対談するとより読みやすい。
    私も遺伝子検査したくなった。

    環境より遺伝子の力はだいぶ大きいな。興味深い。

  • 中村うさぎさんの知識量もすごい。対談形式でお二方ともウィットに富んだ方だという印象を受けました。

  • とても面白い!
    内容もさることながら2人の会話に純粋に憧れてしまいました。こんな風に喋れる様になりたい....今の自分にとって響く金言も幾つかあり、折に触れ開きたくなる一冊になりました。

  • 池谷さん、中村うさぎさんの対談形式の一冊。
    質疑や例話を交えながら対話が進んで行くので、専門書を読むよりもわかりやすいと感じた。脳科学について体系的に書かれているわけではないので、読み物として良いという印象を受けた。

  • なかなか面白い脳科学の話。
    美的感覚は後天的なもの。女性がセックスで声を上げるのは自分のテンションを上げるための古典的条件づけ。早漏は遺伝。オルガズムは男女一緒。他人の不幸で報酬系が活動する。アダルトビデオを見た男の汗のにおいを女は無意識で様々な脳部位を活発化する。石庭なんかでは黄金比が気付かず使われている。ストレスから逃げ道があると思うだけでストレスホルモンの上昇量が5分の1になる。現代人は忙しいというより暇になった。それで余計なことを考え自殺するのでは。薬指に比べて人指し指が短いほどペニスか大きい。ラバーバンドイリュージョンという錯覚。幼い頃大脳皮質が薄いと成長後に大きくなる可能性が高い。心拍総数は15億回、そう考えると人間は41歳が寿命。人は第一印象が9割、顔立ちよりも顔つき。23andMe社での遺伝子診断。未来の予測能力があるゆえに絶望や終末思想に捉われる人間。などなど。

  • 予想外にマジメな内容だった。ばかりか、最新の科学の知見が満載で、興味深く読ませてもらった。「忙しい」とは、時間内に仕事を終わらせる能力のないことをいう。(ラベリング誤謬)2017.7.27

  • 創作コンテンポラリー料理 次々と湧き出す話題が、予想外の相転移を見せるグルーヴ感はインプロビゼーション(即興演奏)の臨界点に達しています。最高の人間讃歌 脳の暗黒エネルギー95% 「心」の深淵 サノレックス合法ですけど効き目は覚醒剤と同じですよマジンドール 統合失調症の発病率は人口に1% 錯視図 ゴッホの絵画には、幻想や奇抜さを意図した「演出」とは違う迫力を感じます。 恋愛感情が生殖活動のための口実として存在するんだったら、その星には恋愛感情は必要ないですよね。 性器を刺激されると、そのとき見えているものを好きになることが知られています。所謂「古典的条件付け」ですね。とくに女性では、こうして好きになった感情がなかなか消えず、また消えても再燃しやすいのです。 笑うと楽しくなる。これと同じでセックスするから恋する 「身体が感情を操作する」という側面は本当に大きいと思います オルガズムという根源的な整理現象については、男と女が殆んど同じであるというのが面白いですよね。 セックスで放出されるホルモンがあります。「オキシトシン」というのですが、これは相手を信頼することに関与するホルモンです。子供におっぱいをあげるときにも出るんですよね。 世俗的な欲は際限がない 奇妙な性癖を持っています。だって、隠れてセックスするのは人間だけですよ。 「秘め事」 動物は公開セックスですよね。しかも多くが乱交です。だから生まれてきた子の父親が誰だかわからないのが普通。哺乳類でさえも九五%以上の種はつがいを作らないとされています。 猫とか発情をアピールするもんね。性器を見せて、発情臭を放つ。人間はしないですよね。やったら逮捕されます。 更に奇妙なのは、人は閉経した後もセックスする。因みに、閉経があるのは人間やシャチ、マッコウクジラなど、ごく限られた動物だけです。 他人の失敗を喜ぶなんて、一般には醜い心だと言われますよね。でも、脳は確かに喜ぶようにプログラムされているのですよ。そうなんだから仕方ない(笑)。 私達はその事実を素直に受け入れなければならないのです。「お金」もそう。所持金が増えれば報酬系が活動します。お金のことばかり考えるのはいやらしい、意地汚い、と咎めても仕方がない。だって、装置としての脳はそういう仕掛けになっているんだから。デファルトなんですね。因みに、寄付した時も報酬系が活動するんですよ。やはり快感(笑)。相手の為のチャリティーというより、自分の快楽の為という側面もある。慈善活動は「俺って、こんなに人の役に立っている。すごいねえ」という自己陶酔に似ているのです。それがダメだという意味じゃなくて、脳の仕様だからそれでいいって言いたいんです。そういう個人の快楽欲求から基盤としながら、結果として、スムーズで総体的な人間社会を形作っていく。これこそが脳の面白い働きなのです。 本当は安ワインでも、事前の情報に左右されてしまうんですね。涙は「今夜はダメよ」っていうシグナルだったんですね 無意識の脳に任せて放置するという姿勢。あと、よく寝ることも大切。レム睡眠が特に重要らしいです。ちょうど夢を見ている時の睡眠ですね。これが多いと閃くチャンスが高まる。気合入れて仕上げた原稿が、あとで冷静に読んでみると、目も当てられないほど酷いことがあります。私は割とそんな傾向があるので、原稿は早めに書いて、暫く寝かせておきます。原稿を寝かせるだけでなく、自分自身も「寝る」という意味ですね。 直感は無意識で、閃きは意識。思いつくプロセスに論理性がある。 女性の方が、ある種の直感が優れていると言われています。ブーバ/キキのような単純な問題では男女差は出ませんが、相手の表情を読み取るような、所謂ノンバーバルな能力には差が出てきます。 男性はすぐ理由を付けたがるもんね。説明したがる。「閃きの男と直感の女」だ。それは至言ですね! 突拍子もない、論理から飛躍したアイデアを思いつくのは女性。こうやって調べれば調べるほど、女性の優秀さを痛感します。脳の使い方という点では、もしかしたら男性は少し劣っているのかな、と(笑)。男は屁理屈っぽいだけの単調一本槍。しかも自分が単純だということに気付いていない。受精からの発達を見ても、そもそもはじめは皆、女性ですよね。そこにY染色体があると男性が派生してくる。言って見れば、男性は亜流。この社会を作ったのは男性なのに、劣っているというのは不思議ですね。 男性の思考は単純でストレートだから、明快な社会のルールやスキームを作りやすいのかもしれませんね。「金持ち=成功者」とか「勝者=強い」とか。 シンクロ(同期発火)京都・龍安寺りょうあんじ 黄金分割比 心 「べき則」 地震や雪崩 樹形の分岐 美の直感というのかな。数学でも自然界でも、ある種の直感があって、それを芸術家は「啓示」や「インスピレーション」と表現したりするのかもしれない。 杓子定規に分析 当の芸術家本人は、自分の「感性」に基いて神秘的な作品を生み出していると信じているかもしれませんが、なにせ、その脳自体が自然の一部ですからね。脳の産物である芸術作品が自然のルールに従うのは当然といえば当然なのかも。 言霊事件 世界のイベントと脳回路がシンクロしているんじゃないとと。 虚言癖は、バーチャルとリアルの境界認識が不得手ふえてなまま成長してしまった可能性もありますね。 ヒトには「言語表現ができるから、伝えたいことが生まれる」という側面があります。言葉をつなぐうちに、徐々に霞が晴れて、意見が明確になってくる。つまり、出力を通じて内面が形成されます。 考えを書き出すのは、典型的な「出力」です。 単語リストを見て学習するというプロセスは「入力」に相当します。一方、テストで問題を解くのは知識の「出力」です。脳は「この情報はこんなに使う場面が多いのか」と重要性を判定するんです。出力の機会が多ければ多いほど、記憶は定着する。脳は出力依存なんです。 イメージとしては「出力は結果である」と思いがちですよね。でも違うんだ。出力が原因になって、結果がついてくるわけですね。 だってプラシーボは、いわば信念ですよね。 所謂火事場のバカ力 格闘技の選手達のビッグ・マウス そもそも人は「社会性生物」だから、むしろ演じている状態のほうが、「真」の自分の姿に近いのかも。 多重的な人格を日常的に演じている。どれが本当の自分かと聞かれるとわからない。どれか一つに決めることは不可能だし、決めること自体が無意味です。 「心は環境に散財する」ブレない方が正しいような気がしてしまいがちですけど、ブレがあって当たり前。 此方から積極的に「笑う」という出力をすると、後から「楽しい」という内面感情がついてくる。驚異の「睡眠リセット力」 推理小説には、夢遊病を切り札にして 脳の薬は全般的に奏効率が低いのが特徴の欠陥商品 鬱症状には薬でなく、軽めのエクササイズも効くそうですよ。散歩などでもね。 身体性が欠如 部屋に籠って考え事をするくらいならば、いっそ体を動かしてエクササイズをやったほうが良い。「人差し指の長さ÷薬指の長さ」の数値が小さければ小さいほど、つまり、薬指に比べて人差し指が短ければ短いほど、ペニスは大きい。 テストステロン 平均値は11〜12センチ チャン・グンソク 幻肢痛 転移能力 身体は未だに上手く脳を使いこなせない 文明の萌芽 ゲノム解析 ネアンデルタール人の遺伝子が、人にコピーされて残っているのです。 ミトコンドリアは母系継承する 異形 神の遺伝子 聖典も教典も FOXP2 人とお喋りしていると、頭の中が整理されたり、面白いアイデアが浮かんだりするよね。出力することで、人の精神は一気に進化したのかも。 用意周到な進化的準備 非言語的なコミュニケーション 言わずもがなで、「そこは空気読んで共有しようよ」 チンパンジーは攻撃的ですが、ボノボは温厚な動物です。 オキシトシンの作用 グルーミング 海外では握手やハグなどの社会的スキンシップが盛ん ジョンとヨーコの言っていたことはあながち間違ってなかったのかもしれない 失うことの欠点を利点に変換する器用さ コンプレックスが人間を成長させる 「過去は一回こっきり。進化は、再確認の実験ができないから、サイエンスではない」 ダーウィンは「適者生存」をルールとした自然淘汰を唱えましたよね。でも、適者生存とは、いわば自己矛盾と言いますか、かなりアヤシイ言葉です。だって「適者」ってそもそも何でしょう。どうしてそれが本当に「適していた」とわかるのでしょうか。答えは「だってその証拠に生き残ってるじゃん!」としか言えない。つまり結果論。 確かに。言われてみれば完全にトートロジー(同語反復)だ。 「適者生存」は詐欺っぽい方便。だって、毛を失った不適者のヒトが生き残っているわけですからね。一見もっともらしい言葉ですが、騙されてはいけません。キリンは高血圧 科学的讒言 人類が後から拵えた怪しげな理論武装 「大器晩成」は脳的にも正しい 未使用だった脳回路に新たな胎動が芽生える ヒトの心臓は何歳に15億回目を刻むか。なんと41歳です。私は41歳を超えましたから、これにてご臨終です。 「閉経(HK)B48」というユニットを女優の美保純さんと結成 どの生物も、閉経したときには大抵寿命。生殖能力がなくなった時点で、生物は寿命を終える。 ピグマリオン効果 感情は行動にでる 願えば理想に近づいていける ディスカッション ブレーンストーミング 三人寄れば文殊の知恵 昨日あったことを書くんじゃなくて、今日あったことを書く。しかも過去形で。 ボーダーライン 塚原光男選手が世界に先駆けてやっちゃった瞬間、「人間にはムーンサルトができる」という認識が世間に生まれたわけです。 脳の潜在能力を増幅させる補助機 虹が発生する原理が解明されたからといって、「あれは所詮、ただの光の屈折なんだよな…」と退屈になるわけではない。そんな説明で虹の「美しさ」が消えるわけではないんです。 「我」という自意識、「私」という概念も、よくできたイリュージョン幻想かもしれませんね。 他者がいて、はじめて「私」という概念が成り立つ。 使用言語が思考癖や人格形成に寄与するのは当然のように思えてきます。 世界人口の半分がバイリンガル 相手の仕草や表情を真似すると、自分への好感度が高まるんですよ。 時間がない状態を、或いは、時間内に仕事を終わらせる能力がないことを「忙しい」と言うわけです。 「ラベリング誤謬」 言葉は思考のツールであると同時に思考停止のツールでもある 出世魚になると完全にお手上げ 英語圏人は牛を、モンゴル人は馬を 、イヌイットたちは氷を言い表す表現を多く持っている。語彙の豊富さで、その民族がなにを重視するかがわかるよね。 英語では、全部「I」とか「you」のひとことでまとめちゃう 人格=パーソナリティの語源は、ラテン語のペルソナ(演劇で用いる仮面)だと聞いたことがあるけど、パーソナリティという仮面を外したら本当の自分が出てくるわけではなくて、仮面を取っちゃったらのっぺらぼうの自分しかいないのかもしれない。 脳は身体の「入力変換装置」として開発されたわけです。だから脳は「外部からの入力」と「外部への出力」によって活かされる。外部との接続を剥がしちゃったら、脳としての意味を失ってしまいます。 社会の中で自分を繕いながら、「仮面」を作って振る舞う、そのプロセス全体こそが本当の自分だと思うんですよね。 人は第一印象が''9割'' DNA整形をやり始めるカップル デザイナー・ベイビー 生命の尊厳もはや「神」の領域ですよね。人類が立ち入っていいのか。 現に今だって、着床前診断や出生前診断をして、障害を抱えた子を事前に堕胎する夫婦もいるわけです。 これは権利として事実上認められています。 DNAに手を加える層と、それが出来ない貧困層の二極分化が進むと思うのです。 農作物や家畜だって、品種改良や遺伝子組換を繰り返しているうちに全然違う品種が生まれちゃうわけだし。 科学の力で遺伝子を操作できつつある人類は、今や、新種の生命体を自ら創作する能力を手にする段階にいることは間違いありません。 あぁ、やはり偶然のバグだ、何か間違ってできちゃったんだ、と(笑)。そう考えると、折角こうして驚異的な確率の末に生まれてきたんだから、もっともっと人類を賞賛してもいいではないかと、自画自賛したくなります(笑)。 この脳を作って考えている限り、私たちの感覚や思考は限定的ですよ。 知識不足からくる無限な恐怖心 スニップSNP 99ドルで遺伝子診断 ヒトは全員、否応なしに「ミュータント(遺伝子変異体)」です。 うさぎさんのお父さんの先祖は、何処から来たのか分からないのですよ。女性はY染色体を持っていないからです。地球の画像を表示するところが、ジョーク好きなアメリカ人らしい 女性が父方の先祖のルーツを知りたければ、兄弟なり父親の遺伝子を調べてみればいいのか。 かつては「暗いところで本を読むと近視になる」「TVゲームは目を悪くする」と言われて言われましたが、今ではほぼ否定されています。 アンジェリーナ・ジョリー ガン感受性遺伝子 ラクトース不耐 韓国の次世代シークエンサー 国策としてゲノム研究に力を 日本は再生医療研究 才能を開花させるためには、「足が速い」だけでは駄目で、「練習を継続する能力」や「走るのを楽しむ能力」、それから「トレーニングによって成績が向上する能力」などを持っていなければ、選手として大成出来ないと思うんです。 網膜という粗末な装置から入ってきた僅かな情報を手掛かりに、本当は見えていない筈の膨大な隠れた情報を補いながら、リアルな「体験」をしている。これはもう、ほとんど幻覚と言ってもいいくらいです。実際、黄色という色は幻覚です。 スポ根的な訓練。勘の特訓は「脳」の体育会系 重要なポイントは「勘」は無意識の作用で、訓練でしか身につかないから、言葉で人に伝えることができないってこと。 長嶋茂雄の「勘ピューター」 声帯の制御が苦手 能力を向上させる為には、脳へのフィードバックが有効 性的に気持ちいいとか、美味しいものを食べて嬉しいのは本能的快感ですから、報酬系の脳部位が関与してます。一方、もっと高度な幸福を感じるときは、大脳皮質、特に前頭葉系の「知的な脳」が働いてるようです。 快感は、現実と期待値の差です。 スーパーセンス(超感覚)私の濡れたマ◯コの生写真 ゴミが入って涙を流しているオッサンの''目''の写真(笑)。 プラットフォール効果 人間の脳は本能的に、物語を必要としているんじゃないかと思う。 ライトノベルやアニメの世界の主流は、物語がない日常系、空気系になっちゃった。 大きな物語が直結するストーリーの人気がなくなって、美少女萌えみたいに物語性を排除したアニメに人気が出るようになっちゃった。人間は物語なしでは生きていけないと思うんだけどなあ…。 宗教と不安ビジネス 人間は有限性にやたら拘泥しますよね 終末願望 ノストラダムスやマヤの大予言 光化学スモッグ 連合赤軍事件 アメリカナイズされたサーファーブーム そもそも宗教が「天国」や「極楽浄土」を設定しているという時点で、「今の世界がベストではない」と認めているわけです。 インド・ヨーロッパ系の言語には「無が存在する」という言い方があるんですよ 不平等は自然の摂理なんですよね。この数学的に極めて自明な事実を、世間の人々は、意外と知りません。自由主義や平等主義という理想が行き着く先を知らないまま、理念だけを高く掲げるのは滑稽です。出版界だって、ごく一部のベストセラーと大多数の売れない本に分かれますよね。 パレート則 ニッパチの比率 不平等の法則が世界を動かしている。つまり、平等なんていう理念は机上の空論でしかないということか。努力だけで成功できないことは、誰もがうすうす感づいているよね。 オッカムの剃刀 チンパンジーにとって「逆の発想をする」のは壁があるようなのです。「AはBである」と認識するのは、チンパンジーにとって難しい作業ではありません。しかし、逆にして「BはAである」と一気に推論することができない。できるのはヒトだけです。 チンパンジーは一方通行の思考しかできないので発展性がない。正しい推論ですが、何の膨らみもないんですよね。自明なことしか出てこないから、味気ない。ヒトは「AならばBである。ならば、BならばAかもしれない」という柔軟な発想を用いることで、思考に広がりを作っています。たとえ論理性が欠如していても、思い切りのよい思考飛躍が、高度な推測や予知、創造性を生み出すのです。 ''HOW''の科学、''WHY''の宗教 攻殻機動隊 「WHY」は神の領域 苦しいときの神頼み(笑)。 ヒトの指は五本ですが、鳥は四本、馬は一本です。その差について「WHY」の答えを真正面から問えるのが、宗教や哲学だと思うのです。ほら、こう考えれば、もう答えが出ましたね。「神」とは何か–それは「科学ではわからないナニか」のことです。だから神を科学で解明しようとする試みは…。科学的に矛盾している(笑)。そんな風に考えるとき、私は科学者としての無力さを思い知るわけです。そして、それが密かに快感。だって、科学は「自然が如何に偉大かを探る学問」ですから。「神の通る経路」と書いて神経。その神経を使って科学する者の、心地よい宿命ですね。と同時に、神を想定しないと思考できないヒトという生物を、ひたすら愛おしく感じるのです。 その心許なさ、不安、焦燥が私を「私探し」に駆り立てた。 サイエンスはロマンだ

  • ちょっと分かりにくいところもあったが、先日読んだ「錯覚の科学」にも相通じるところも結構あって、面白かった。中村うさぎさんの「私は思春期のころ、萩尾望都のSFマンガ『百億の昼と千億の夜』(原作・光瀬龍)を読んでえらく衝撃を受けたのよ。」には思わず頷いた。池谷さんの「「神」とは何か――それは「科学ではわからないナニか」のことです。」、科学と宗教の関係を端的に言い表した深い言葉だなぁ。

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著者プロフィール

監修:池谷裕二
脳研究者。東京大学大学院薬学系研究科薬学専攻医療薬学講座教授。薬学博士。一般向け書籍の累計発売部数100万部超え。

「2023年 『3ステップ ジグソー知育パズル どうぶつ だいずかん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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