少女の器 (新潮文庫 は 8-14)

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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331140

感想・レビュー・書評

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  • 両親の離婚や家族の精神疾患など、厳しい家庭環境の中でも逞しく生きていこうとする少年少女の物語。思春期の少年少女にとって土台となる家族が揺れることは死活問題といえる。
    それでも、自分の足で立ち、自分の目で世界を理解し、自分なりに愛することができる強さが幸せなのではないかというメッセージ。
    また読み返したいと思う。

  • 読んでよかった。『太陽の子』と、『兎の眼』、そして『少女の器』、秀逸3タイトル。比べてみよう。

    太陽の子
     主人公ふうちゃん。小6、明るく元気、感受性ゆたか。
     男の子、キヨシくん。非行少年・不器用・お茶目。
     両親、精神病だが、やさしく大きい父。基本的に賢明なよき母。
    ※なによりたくさんのやさしい大人に囲まれている。
    少女の器
     主人公、絣(かすり)中~高校生 繊細、ひねていて聡明。
     男の子、上野くん。非行少年・真剣・憎めない。
     両親、恋多き母。離婚した優しく受動的な父。
    ※身近な大人たちに傷つけられる、繊細で絶妙。
    兎の眼
     小谷先生、若い女 泣き虫
     鉄三 真剣で荒っぽい
    ※太陽の子よりも、鋭利さが『少女の器』に近い。太陽の子は、最後のほうで主人公が大人にならざるを得ないが、こちらは元から大人。少女の器は、微妙な時期で惑う、それでも考えはしっかりしているところに、灰谷先生の子供を信ずる心を思う。

  • 登場人物が善良すぎる。
    上野くんがとてもいいキャラだけれど、彼ですら善良すぎる。
    キレイすぎてリアリティが薄い。

  • 中学生のときか高校生のときか
    何度も読んだお気に入りだったはずなのに
    大人になった今古本屋で再会したら
    ほぼ何も覚えていないことに愕然

    小学生の頃から作者の作品が好きだった
    今思うと難しい内容ばかりなのに

    大人だな、絣ちゃん

  • 離婚した母親と暮らす女の子の精神的成長物語

    主人公の絣は洞察力、思考力があり、大人びた発言をする
    その反面、父に甘えたり、気の置けない家族ゆえに母への攻撃的な発言等の幼さも見える

    そしてボーイフレンド(?)の上野くんもまたアル中の母とヤクザで行方不明の父を持つという複雑な家庭環境ながら、厳しい人生観からくる鋭い指摘はなかなかのもの

    解説でも書かれてあるけど、この4人の会話は頭良すぎない?(笑)
    皆、凄い洞察力なんだもんなぁ

    でも、何回か読んでいるけれども、毎回何らかの理解が深まる
    特に今回読み直したのは状況が状況だけに、両親の気持ちがとてもよくわかる
    あと、クニオさんについてもそう

    両親が離婚して不幸な子と離婚しないから不幸な子ねぇ
    まぁ、その二つの状態を両方試すことはできないんだから答えは出ないよね
    でも、離婚する場合はその方がいいと思ってするわけだから、まったくすべてが悪いわけではないと思う



    高校の頃に模試の現代文でこれの最後の部分だけ抜き出した問題があった
    で、当時それを読んで絣の年齢がよくわからなかった
    パパだのママだの言ったりして幼さを感じるところもあれば、エゴイストとかって単語がさらっと出てきたりする知的なところもあったり
    なので気になって、うちに本があったから最初から読んでみたのが最初


    あと、印象に残っているのは上野君の指摘で、ドブに落ちた犬を汚い汚いと言っても犬は立つ瀬ないわなというところ
    状況は違えど、自分の方が正しいからといって正論で相手を追い詰めてはいけないという自戒の意味で認識している
    でもまぁ、汚いものは汚いんだけどね
    汚いと心の中で思ってる事ぐらいは許してほしいよね

  • 中三から高二に掛けての小生意気な絣のその場その場の繊細さと全力さの引力が強すぎて一点集中的になって全体まで気が回らない。離婚した両親それぞれとの距離の近い日常が独特の説得力。彼らの恋人や訳有家庭の関西弁BF、自殺未遂癖少女や盗癖幼女の登場にも湿り気はなく、台詞の語尾の片仮名以外全く古さを感じなかった。

  • 子供が何を見つめ、何を考えているのか?それを見つめる大人の目が大切。

  • 灰谷さんの作品好きで昔よく読んでまして。ふと読み返してみたくなって本棚から引っ張り出しました。

    灰谷さんのいずれの作品にも共通しているのが、様々な個性を持った子供と大人が登場すること。子どもを子供として捉えず、一人の個性のある人間として描いていること。そして、各個性を持った人間がぶつかり合う中で生じる人間臭さを大事にしていて、ストーリーを読みながら人間の在り方を考えさせられること。個々のキャラクター設定が素晴らしく、且つストーリーも面白い上に、読み終わると少し大人になれる、そんなお得がいっぱい詰まった本が多いように思います。

    で、少女の器。両親が離婚している娘の絣が主人公。少しひねた少女ではあるが、頭の回転が非常に早くて、両親やボーイフレンドと交わす会話が小気味良い。こんな娘がいたら大変だろうけど、こんな娘が欲しいなーと思います。

  • 好きです。 未婚男として理想の娘です。噂で聞く世の年頃の娘さんは父親を毛嫌いするとか・・・。この作品の主人公・絣は父親と仲が良いです。父親と一緒に住んでないから仲が良いんかなぁ。作者が男やから理想の娘像を書いたんかな。 ああ、娘欲しいー。結婚したいー。彼女欲しいー!

  • 強くて優しい人間を演じるのは難しい。格好悪くても傷ついても、結局は向かい合わなくてはならないんだよね、自分と。

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著者プロフィール

1974年に発表した『兎の眼』が大ベストセラーに。1979年、同作品で第一回路傍の石文学賞を受賞。生涯を通じて、子どもの可能性を信じた作品を生み出し続けた。代表作に『太陽の子』『天の瞳』シリーズなど。2006年没。

「2009年 『天の瞳 最終話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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