自壊する帝国 (新潮文庫)

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著者 : 佐藤優
  • 新潮社 (2008年10月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (603ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331720

自壊する帝国 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ソ連邦の消滅という歴史の大きな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか?。筆者が今の日本はこの時期に非常によく似ているという意味が読み終えてなんとなくわかりました。『文庫版あとがき』もいい。

    この記事を書くために再読しました。非常に面白かったのですが、やっぱり難しいです。この本は『外務省のラスプーチン』こと佐藤優さんが在ソ連日本大使館の外交官として赴任したときに 見聞きしたソ連崩壊までの一部始終を振り返る回顧録です。

    筆者は『蘇る怪物』を詳しくは参照してほしいんですが、モスクワ大学で教鞭をとっていた時期があり、そこで知り合ったミーシャという学生を介して、多くの重要人物を仲介してもらったり、自身の体質でウオトカを一日に数本飲んでもあまり二日酔いになることはない、という利点を十二分に発揮して『日本以上に酒を強要する』といわれるロシア人高官を相手にウオトカをガンガン飲みながら自身のルーツであるキリスト教はプロテスタントを基礎とした神学の教養を武器に彼が今でも『師』と仰ぐゲンナジー・ブルブリス氏をはじめとする人間たちに受け入れられていく姿はすごいなと素直に思わずにいられませんでした。

    そして、『大使以上の人脈を持っている』といわれる情報網を駆使して1991年のクーデター未遂事件にも正確な情報をいち早く掴み取って、『ぎっくり腰で政務ができなかった』といわれるゴルバチョフ大統領(当時)の生存を重要人物から聞き出したシーンがいまだに強い印象を僕の中に残しています。

    そのほかにも読んでいて面白かったのは食事、行動原理や習慣にわたってロシア人のことを細かく観察・描写されてあって、食事や飲酒の場面。そこで供される豪奢な料理。筆者と彼らが交わした言葉の一つ一つにもそういった事がにじみ出ていてロシアおよびロシア人がいったいどういう人なのかということや、あの当時、現場でいったい何が起こったのか?筆者が最近、今の日本がこの時期のロシアにそっくりだという理由がこの本を読むと本当によく理解できるかと思われます。非常に読んでいて骨が折れる文献だとは思うんですけれど、それに見合った対価は保証できる本だと思っています。

  • ソ連の崩壊を見届けた外交官
    難しかったけどすばらしい作品

    作品の紹介
    ロシア外交のプロとして鳴らし、「外務省のラスプーチン」などの異名を取った著者の回想録。在ソ連日本大使館の外交官として見聞きしたソ連崩壊までの一部始終を振り返る。
    「もともと、人見知りが激しい」という著者だが、モスクワ大学留学中に知り合った学生を仲介に、多くの重要人物と交流を深め、インテリジェンス(機密情報)を得る。ウオツカをがぶ飲みしながら、神学の教養を中心に幅広いテーマで議論を交わし、信頼と友情を勝ち取る。その豊富な人脈と情報収集力を1991年のクーデター未遂事件でも発揮、ゴルバチョフ大統領の生存情報をいち早く入手した。

    出世競争が最大の関心事であるキャリア組とは大きく異なる仕事・生活ぶりで、外交官の本質を考えさせられる。

  • 元々は伊藤潤二の「憂国のラスプーチン」がきっかけで手に取った本書。ソ連崩壊までの内情を描くノンフィクションで、聞き慣れない組織や思想も多かったが、先述の本で全体はカバーしていたのですんなり読むことが出来た。時系列的にはこのあと、出版時期はこのまえになる「国家の罠」も是非読んで「憂国のラスプーチン」への理解を掘り下げたい。
    佐藤優氏の経験は深く広い。そしてその経験を物語として描ききる作家性も見事だ。文庫版に追加された章も、横道にそれつつ重要な部分にも触れているので必読だろう。

  • ソ連邦の崩壊を、内側から記した一冊。
    当時何が起こっていたのか、何を起こそうとした人々がいたのかが論理的にわかりやすく書かれており、一気呵成に読んでしまった。
    ロシア経験が長い私の友人(著者と同年代)が言っていた、嘘のような話がここでも書かれており(カレンダーやマルボローの話)、それが本当に現実であったのだと改めて思う次第。
    「知の型には二つある。一つは、新しいものを創り出す知性だ。(中略)第二は、一流のオリジナルな知を、別の形に整えて、別の人々に流通させる能力だ。」(pp.258-259,ll.13-ll.7)
    いずれの知も持たぬ自分にはがゆいばかり。

  • 2017.6.20
    面白い。外交官としての人脈作り、仕事への姿勢もさることながら、その人脈を駆使して、ソ連崩壊を正確に読み解く力は圧巻。
    ソ連崩壊の過程。バルト三国の独立。血の日曜日事件。共産党にかわるイデオロギーとして、ロシア正教会との連携。かの有名なKGBの存在。実はそれを操る政治が重要。まさに権力闘争。ただ、最終的には、民意が勝つ。ゴルバチョフは民意の流れを作り、要は一度欲望をしってしまうと、後戻り出来ない。最後はエリツィンがゴールを決める。こういう権力闘争の中、ポリシーをもって人と付き合うことで、人脈が出来、外交交渉も有利に進める事が出来る。世界の最前線で、まさに命がけで戦う外交官に敬意を表したい。

  • なかなかに読み応えのある本でした。
    ソ連やロシアの実情というか深いところがわかります。
    実際自分が著者ならこの時どうしたやろかと思いながら読み進めました。
    かなり感情移入することができたと思います。

  • 著者が、ノンキャリアのやり手外交官として、ソ連崩壊を目撃した迫真の実録。神学を武器にして人脈を広げ、信頼を勝ち得て、クーデター等の歴史的な事件に関する様々な情報を得ていく、厳しくも逞しいプロフェッショナルな外交官の姿に感動を覚えた。例の事件後の著者の文壇での活躍の振りがも、むべなるかなと思う。

  • 本書の続編は『甦る怪物――私のマルクス ロシア篇』(文藝春秋)らしい。


    【目次】
    目次 [003-008]
    自壊する帝国/主な登場人物 [009]
    ソビエト連邦地図 [010]
    自壊する帝国/関連年表 [011-013]

    序章 「改革」と「自壊」 017

    第一章 インテリジェンス・マスター 
    見習外交官/英国陸軍語学学校/亡命チェコ人の古本屋/旅立ち

    第二章 サーシャとの出会い 052
    モスクワ、雀が丘/GRUの陰謀/科学的無神論学科との出会い/反体制派の演説/モスクワ大学の二重構造/アルコールへの驚くべき執念/週十六回のセックス/対話の意味/召集令状

    第三章 情報分析官、佐藤優の誕生 109
    ソ連を内側からぶっ壊す/モスクワ高級レストランでの「正しい作法」/宗主国のない帝国/「異論派」運動の中心人物、サハロフ博士/誰かがやらなくてはならない「汚れ仕事」/ザルイギンの正体/分析専門家としての第一歩/外務省ソ連課長の秘密ファイル

    第四章 リガへの旅 158
    ラトビア人民戦線/アルバート通り/ラトビア特急/カラマーゾフの兄弟/モロトフ・リッベントロップ秘密協定/外国を巻き込んだ独立戦略/ソ連の「隠れキリシタン」

    第五章 反逆者たち 217
    反体制活動家のアジトへ/最初から狂っていた国/フルシチョフの息子/メドベージェフの“情報操作”/人民戦線の暴走/「自由の戦士」というビジネス/政治の季節の到来/欲望の塊

    第六章 怪僧ポローシン 278
    「中国人百人分くらい狡い」男/ポローシンの生い立ち/フロマートカの生涯/神道とロシア正教/モスクワの“都市伝説”/政治取引/黒司祭の巻き返し/転宗

    第七章 終わりの始まり 331
    「手紙作戦」の成果/先を見通していた共産党守旧派幹部たち/アントニオ猪木のモスクワ格闘技外交/良心派党官僚の苦悩

    第八章 亡国の罠 362
    極限状況の生と性/使者として/梯子を外したゴルバチョフ/逃亡者シュベード/政治的売春婦/ソ連共産党VS.ロシア共産党

    第九章 運命の朝 437
    三人への電話/思いがけない小銭の威力/ゴルバチョフは生きているのか?/逃げ出したポローシン/ふやけたクーデター/生存確認/ソ連解体を演出したブルブリス/カミカゼ攻撃/別れの宴/共産党秘密資金の行方/イリインの死/決別/デリート

    あとがき(二〇〇六年五月 佐藤優) [522-526]
    文庫版あとがき――帝国は復活する(二〇〇八年九月二十六日脱稿 佐藤優) [527-596]
    解説(二〇〇八年十月 恩田陸) [597-603]

  • 著者が外交官としてソ連で過ごした日々を振り返りつつ、国家の崩壊という大事件に関わった人びとの姿を生き生きと描き出した本です。

    前半は、ベルジャーエフやブルガーコフといった「道標派」の思想家を研究しているサーシャという人物との交流が語られています。ソ連の崩壊を予想するサーシャは、バルト三国の独立運動に身を投じ、やがてラトビアで排他的な民族主義の動きが高まってくるとモスクワに戻り、ロシア・キリスト教民主運動という政党を立ち上げることになります。

    その後、著者の交流範囲も広まり、アントニオ猪木氏を通じてヤナーエフ副大統領やイリイン共産党第二初期などの守旧派の人物とのつながりを得て、1991年8月のクーデタ未遂事件の渦中での彼らの動きがつぶさに語られることになります。

    最後に、ソ連崩壊後にサーシャと再会し、彼の申し出た金銭の無心を断ったエピソードが置かれています。

    「もし、サーシャの物語を中心に書き進めていったならば、ソ連崩壊よりも、どの時代においても、鋭敏な危機意識をもち、この世界と人間の双方を変容することを試みるが、挫折を繰り返すロシア知識人について書くことになったと思う。しかし、そのような良心的知識人の世界ではなく、良心を殺し、政治ゲームに入っていった人々の世界を私は描きたかった」と、「文庫版あとがき」の中で述べられていますが、個人的にはサーシャにまつわるエピソードが強く印象に残りました。

  • 読了

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ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そしてゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていた。ソ連邦消滅という歴史のおおきな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。大宅賞、新潮ドキュメント賞受賞の衝撃作に、一転大復活を遂げつつある新ロシアの真意と野望を炙り出す大部の新論考を加えた決定版。

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