紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331775

作品紹介・あらすじ

1986年、入省二年目の私はイギリスに降り立った。ロシア語研修に追われる慌ただしい生活の中でできた友は、好奇心旺盛な12歳の少年グレン。ロンドン書店巡り、フィッシュ&チップス初体験――。そんな小さな冒険を重ね、恋の痛みや将来への不安を語りあった私たちは、ある協定を結んだ……。聡明な少年を苛む階級社会の孤独と、若き外交官の職業倫理獲得までの過程を描く告解の記。

感想・レビュー・書評

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  • さすがは佐藤優❗
    ただのイギリス滞在記なのに、
    読み応えが有り過ぎます‼️

  • イギリスでの生活やロシアのテーブルーマナーが具体的に描写されており面白かった。特に、ホームステイでの生活において、少年と心を通わせる様子や英国の階級社会の現実。自分の子供がもう少し大きくなった頃に留学生を受け入れることができたらいい刺激になるろうと感じた。紀行文としても面白かった

  • 読み物として単純におもしろかった。
    人間ってこうだよな、とか思ったりもした。
    自分も海外に限らず合わなくなった古い友人がいる。彼らは何をしてるのかたまに思いを馳せることはある。

  • 感想
    エリートの素質。シェークスピアを読んでも、理性的な科学的議論ができてもそれでは不十分なのか。階級社会は我々の生活や思考を侵食し続けるのか。

  • 著者のイギリス留学時代の物語。著者の知識量がすごいのは他の著書などを読めばわかるが、その彼と同じように議論している10代の少年には驚かされる。多少はフィクションなのだろうか?あるいはこれが、英国の労働者階級中の優秀な層の標準?
    日本で何となく成長した私にとって、10代の子が階級にまつわることで悩んだりする英国の社会が、とても遠いものに感じられた。そして、最終的に少年は大学に進学せず階級の移動も起こらなかったのだが、この思考レベルでも学生にならないとなると、英国の大学生は本当にエリート層なんだろうな、と思った。日本の大学が適当すぎるのか。

  • この本は読みやすかった。外務省入省直後語学研修時のロンドン郊外での生活の日々をつづったもの。佐藤優の自叙伝はとてもおもしろいが、あまり難しい話ではなく普通の生活記のほうが私にとっては読みやすいし楽しめる。ホームステイ先のグレン少年との交流が中心。イギリスでは日本以上に、学校の選択がキャリア形成に影響することがよくわかる。友人のいないグレン少年と佐藤青年との深い交流は本当に興味深い。たまたま最近見たばかりの「戦場のメリークリスマス」について一緒に見て深く語り合うシーンは印象深い。好きな本だ。とても楽しめた。

  • 正直に言うと、少年との交流よりも、外務省の同僚との交流が心に残る。

  • 全然興味ない感じで読み始めたんだけど、凄く読みやすくて面白かった。自分の体験とちょこっとだけ重なる部分もあったりして、あああ、わかる、とか、あの状況でこれって凄いな、とか色々思いながら読んだ。

  • 久々に、色んな味わい方のできる良書に触れた。入省間もない研修生時代の佐藤優の自叙伝。イギリス留学の中で出会ったホームステイ先の少年との心の交流。外務省同期と交わす、新人時代の会話。青春小説としても楽しめるし、留学紀行文としても味わえるし、新入社員の初々しい雰囲気を楽しむ事もできる。何より少年との純文学的物語。

    何故だろう、佐藤優が経験を積み、少年が大人になり、同期とは次第に距離が離れ、移りゆく環境における栄枯盛衰の喪失感。心にジワリとくるノスタルジア。どれも素晴らしい読後感である。

  • 【展示用コメント】
     1986年、入省二年目の私はイギリスにいた。語学研修に追われる単調な日々の小さな楽しみは、ステイ先で出会った12歳のグレンとの語らいだった。(裏表紙カバーより)

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2001628119&key=B154510048507832&start=1&srmode=0&srmode=0#

  • 外務省に専門職員として入省し、「ロシアスクール」に属した著者は、1986年~87年にかけて、ロシア語習得のためイギリスに派遣される。本書は、その一年強の間のイギリス滞在記、特に最初の5週間のEJEF(日本人向けの英語研修機関)での英語研修期間中にホームステイ先で出会ったグレンという少年との交流が詳細に語られている。

    グラマースクールで孤独を味わっていたグレンを友人として対等に扱い、深い心の絆を築いた著者の人間性(ここまで尽くすかなあというくらい、打算抜きでい親身に接しているのは凄い)。そして、細部を必要以上に正確かつ詳細に描いてしまう著者の性癖(この点は、著者の他の著書にも共通する、そしてどの書も知識詰め込みすぎになっていると思う)。何れも著者の人間性が強く現れていて興味深いと思った。

  • 著者である26歳の日本人外交官と、12歳のイギリス人少年との交流を描いた回想録。
    著者のエグい教養作品とは違った進学や恋愛相談を通じて、生々しく、心温まる交流を描いた文学的な作品だと思う。

    大学出たばっかりの26歳で、自国の文化や歴史を語りつつ、「(イギリス人に対し日本)食は文化だから、食べなくてもいいんだよ」と言えるか?著者の本当のグローバルコミュニケーション能力・才能には、恐れいる。
    海外赴任する人だけでなく、国内転勤族にも、使える実践的知識だと言っても過言ではないだろうか。
    他人との交流のあり方において。

    本作品の時代からは、変化しているのかも知れないが、生活レベルで見た日英の違いも見逃せない。

  • 是非とも読みたかった一冊

  • 1980年頃のイギリスの文化、国際情勢、日本人がどう見られていたか、等を知ることができた。現在は大分状況が違うにしても、イギリスに行くことがあればその前に読んでおきたい本だと思いました。著者と少年グレンの対話が面白く、二人の関係が羨ましくも思いました。

  • 佐藤優氏のイギリス研修生時代の小説。佐藤氏が外交官としての方向性を形成する時期に何を考えていたのかが分かる。
    「先生と私」の方が私は好きですが、本作も佐藤氏のイギリス分析も含まれており、負けず劣らず面白い内容です。

  • 外交官専門職員の最初の1年か何の生活について分かるようになる。
    ノンフィクションだが読みやすかった。
    外交官になった理由や仕事、裏事情を赤裸々に書いている。

  • ジャンルと言われると自伝かと思われます。著者が外務省に入って、イギリスとソ連で研修を行っている期間だけの話ですので、小説といったほうが近いのかもしれません。
    外交官としての研修で語学を主として学ぶためにイギリスに14ヶ月滞在、その期間の話をホームステイ先の息子グレンとの出来事を主体に書かれています。まだ研修中の話ですので、外交官の世界については触り程度のことが書かれているにすぎません。そのため著者の純粋な人間観ややりたいことについて、とても人間的に書かれてあり、読んでいる自分と照らして読むことができました。
    自身の生き方に対して、少しだけ高度な視点で考える。著者の生き方を読み、そのように考えさせられました。

  • 佐藤優はこういうのに集中して粗製乱造やめればいいのに… 一部、できすぎてて作ってないかというところはあるけど、自分自身とホームステイ先の少年の交流と階級の壁について。こういうものに私は弱いんだろうなあ、まあそりゃそうだろなあ。

  • すごーく面白かった。久々に惹きこまれて一気に通読。佐藤氏の10代、20代の片鱗が垣間見えて面白い。‥‥わが身と比較すると全然違ってて、軽く落ち込むけど(経済学部の癖に、学生の頃、経済学のこと、まったくわかってなかったし)。
    佐藤氏の無神論から洗礼を受けるまでの過程について、もっと知りたい。他の本に書かれているのかな。

  • なんか・・・こんな構造を持ったお話をどっかで読んでると思うんだけど・・・なんだっけ・・・(悪い意味では無い)。

  • 面白かった。佐藤氏がどういう人物か知らなかったので、余計に意外性があって楽しく読めた。

  • 『国家の罠』では非常に頼もしく新鮮に感じた佐藤氏の世の中を見つめる真摯な姿勢も、ここまでくるとちょっとくどいかな…
    外交官だった身分へのこだわりとか膨大な知識の披露とか昔から大物感を漂わせていた自分とかが優先されてしまっている感じ。自分の物語を仕立て上げすぎと言うか。
    タイトルの『紳士協定』は結局守られなかったようだし。最後まで読むとそもそもタイトルがそぐわないことにがっかりしてしまった。
    あなたのこともあなたの仕事もとても尊敬しているので、そんなに誇示する必要はないと思うと伝えたい。

  • 爽やかな感じでありつつ軽くないバランスがいい本。

  • 若き日の追想記,というより懺悔の気持ちが通底した告白記,のように感じる.その中にも,佐藤氏の人間観,世界観が内包されていて読み応えがある.何より,極めて読みやすい文体で構成されているため,引き込まれる.

  • 駆け出しの外交官、いや、それに向かって歩みはじめたばかりのころの佐藤が、イギリスで語学研修(英語、ロシア語)を受けたときのホストファミリーの少年との対話が主。イギリス特有の階級社会とグラマースクールでの自分の立場に悩む知的な少年との対話が、佐藤の職業観を固めていく。
    ロンドンの書店巡り、『戦場のメリークリスマス』を共に観たこと、キドニーパイの異様な味、同期同僚である武藤氏との濃密な対話など、佐藤の回想が甘酸っぱくもあり、人をして、同様の過去への沈潜に誘うような本でもある。

  • これは、一言で言うと面白い!!
    食べ物の描写も多く、読んでいてお腹がすく(笑)。
    不本意なイギリスの英語研修のホームステイ先でのグレンとの出会い。
    今の佐藤 優さんの土台になっているのでしょう。
    外交官の武藤さんとの思い出もしかり。
    12才のグレンが1週間分のお小遣いを貯めて、ミスターサトウにフィッシュアンドチップスをご馳走する場面。うるっときました。
    戦場のメリークリスマスの話も出てきます。
    中国ほどでないにしても、イギリスでも日本人は残虐ってことになっているのでしょうか。

  • ここでは筆者が外交官になってすぐのころ。イギリスはベーコンズフィールドにある陸軍語学学校時代に触れた回想録です。キャリアの同僚と12歳の少年。彼らとの出会いと別れの物語であります。

    帯に書かれているキャッチコピーが
    「あの夏の約束を捨て、私は外交官になった―。」
    という非常に印象的な佐藤優氏のイギリス時代を振り返った回顧録になっております。佐藤氏のイギリス時代はラジオ番組などで自身が語っている話から想像するに外交官として語学を身につけるためにイギリスの陸軍語学学校の日々は本当に過酷なものだったんだな、と思っておりました。しかし、ここで描かれているものは語学学校の日々のほかにグレンという筆者のホームステイ先の家の12歳の少年との交流と、同期であり、キャリア外交官である武藤顕氏との交流と別れを中心に描かれておりまして、これがまたなんともいえない切ない展開になりましてね。

    筆者はグレンとその家族を通して、イギリスに横たわる『見えない壁』具体的に言うところの『階級社会』の存在や、社会の姿を知り、武藤氏からはキャリアとノンキャリと立場は違えど、同じロシア・スクール(外務省の『派閥』)として語学で切磋琢磨する姿。さらにはグレンと映画『戦場のメリークリスマス』を見る場面があり、、この映画を大学時代に見たことを思い出し、台詞やト書きが出てくるとその場面の映像を思い出しました。

    ここで武藤氏は筆者に『あまり政治に深くかかわるな。』や『君はいつか組織と対立するかもしれない』との警告があったり、グレンが両親と別な階級に行くために大学へ進学するべきか否かを筆者に問うている場面はすごく印象に残っております。グレンとの結末は本書に譲るとして、筆者と武藤氏は同じモスクワ大使館に勤めながらもだんだんと疎遠になっていき、筆者が政争に巻き込まれたときは組織に『踏み絵』のために『佐藤優調査チーム』の指揮を執った事がここに記され、こういう結末になってしまったことにやるせなさを感じつつも筆者が
    「私が武藤君と会話を交わすことは、生涯ないと思う。しかし、武藤君が研修生時代の私にとってかけがえのない友人であったという記憶は一生消えない」
    とあとがきのほうに記してあったことがあのすさまじい修羅場を経験した筆者だからこそ書くことのできるメッセージだな、という読後感を持ちました。ほろ苦い後味を持つ一冊ですが、これは面白かったです。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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