8月17日、ソ連軍上陸す―最果ての要衝・占守島攻防記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101332215

感想・レビュー・書評

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  • 浅田次郎「終わらざる夏」は、長い割に、なんだか不完全燃焼に終わった小説だったが、題材となった日本最北端占守島(しゅむしゅとう)でのソ連軍と戦いは、私の心にくさびを打つ内容だった。
    お涙ちょうだい的な、物欲しげな作り話はいらないから、日本が無条件降伏したあとの8月17日、何が起こったのか事実だけを知りたい!その一心で読破。
    不可侵条約を結んでいたはずなのに、アメリカとの交渉役として頼りにしていたのに、日本が負けたと知った途端、急に日本がほしくなってしまったソ連。いわゆるスケールの大きい「火事場泥棒」ですな。まったくコスい。ハイエナのような奴らだ。
    池田大佐、堤師団長の決断がなければ日本の国土は歯舞、色丹どころか北海道までソ連に浸食されていたかもしれない。
    多くの犠牲を出し、悲劇を生んだが、決してその戦いは無駄ではなかったといえる。

  • 本来、日本人が知らなくてはならない史実。1945年8月17日、終戦を受け武装解除中の千島列島北端の最前線、占守島に北海道占領の野心を抱いたソ連軍が上陸する。再武装し抗戦した守備隊の多くは玉砕、戦死し、また捕虜となりシベリアに抑留された。やっと故郷に帰る事ができるはずの彼らが身を挺して抵抗したおかげで、ソ連の北海道侵攻は食い止められたと言われている。

  • この史実を知ることに意味がある。
    史実の検証を

  • 1945年8月17日、終戦から2日が経ち武装解除を行っていた千島列島最北端の北方最前線の島、占守島に突如国籍不明の軍隊が上陸した。北海道占領の野心を抱いたソ連軍である。守備隊は直ちに最武装を行い、ソ連の侵攻を食い止めんと抗戦を行う。守備隊の多くは玉砕、戦死し、また捕虜となりシベリアに抑留された。でやっと故郷に帰る事ができるはずの彼らが身を挺して抵抗したおかげで、ソ連の北海道侵攻は食い止められたという。本来、もっと多くの日本人が知らなくてはならない史実だ。

    この本は、基本的にこのあまり知られていない史実について、膨大な時間を費やして資料を集め、当事者にインタービューを行うことで、歴史として後世に伝える事を目的としている。時系列的にソ連の上陸から停戦交渉までの出来事を数々の文献や証言を基に記載されているため、正直、読んで楽しいものではない。但し、戦闘に関する記述だけではなく、当時の外交的な各国の駆け引き、戦略などについても分析がなされているのは大変興味深い。日本の本土攻撃のルートとして千島列島を経るルートも検討がなされていたなど、驚愕の事実も含まれている。現在の秩序は、机の上での戦略的な議論の結果としてあるという側面を知らされる。

  • 終戦後、2日たって、ソ連がカムチャッカ半島南の日本が守る、占守島に攻めてきた。この戦いが日本が最後にした戦争なのかもしれない(今のところ)
    そして、この戦いで日本がソ連に猛反撃をしなければ、北海道はおろか、東北の一部もソ連に取られていたかもしれないのである。
    終戦後に部下を死なせてしまった上官はずっとそれが心残りであったという。
    道民が知らなければいけない歴史ですね。

  • 一般的にわが国で終戦の日といわれる1945年8月15日以降、ポツダム宣言受諾後のソ連軍による侵攻に立ち向かった占守島の日本軍の戦いを描く記録文学。
    占守島の将兵たちの奮戦とその意義、ソ連軍の侵攻の意図を、長年にわたる多数の資料と聞き取りにより明らかにしようとしており、内容はもちろん、著者の歴史との格闘が垣間見えるのが良い。
    ハイライトはやはり、第十一戦車連隊、通称"士魂部隊"と、連隊長池田大佐の奮戦だろう。赤穂浪士となり恥を忍んで降伏し再起を図るか、白虎隊となり玉砕するかと部下に問いかけ、全員が戦いを選ぶというエピソードが印象的。彼らの決意と奮戦が、占守より南へのソ連による侵攻を防ぎ、占守の民間人を悪名高いソ連軍将兵の毒牙から守り、ソ連の北海道までを見据えた侵攻の野心を挫くことに繋がった。
    彼らがもし赤穂浪士を選んでいたら今の日本は、全く違った形をしていたかもしれない。本書の解説で、歴史学者の山内昌之氏をして、第2の硫黄島と言わしめた占守島の戦いは、国防、領土、歴史を考える上で、私たちが知らなければならず、また、忘れてはならない史実の一つであると感じた。

  • 9784101332215 366p 2010・8・1

  • いはゆる「占守島の戦ひ」を描くノンフィクションであります。副題に「最果ての要衝・占守島攻防記」とありますが、光人社的な戦記物とはちと違ふやうです。

    1945(昭和20)年8月14日にポツダム宣言を受諾した日本。翌日の玉音放送で多くの国民が終戦を知るところとなります。
    ところが日本の最北端に近い千島列島の占守島では、終戦後の8月17日から三日間に渡つて戦闘が繰り広げられたのでした。ソ連軍のまさかの急襲が! この国は昔も今も油断がならない。

    著者の大野芳氏は29年の歳月を費やし本書を完成させました。労作と申せませう。
    おほむね時系列にこの戦ひが述べられ、停戦の軍使として関つた長島厚氏の講演が、適宜挿入されます。第七章「軍使は二人いたのか」では、長島証言によつて通説が覆る部分について語ります。聞き書き証言を中心にしたノンフィクションでは常につきまとふ危険性も感じるのであります。
    人は大袈裟に語りたがる、或いは面白い話を脚色したがるものです。また、自分に都合の悪い事は無意識にせよ意識的にせよ隠す傾向があります。これはわたくしも同様なので、証言者を一概に責める気にはなれませんが。

    そして「エピローグ」を読むと、北方領土問題の理不尽さを改めて感じます。多くの人に読んでもらひたい一冊と申せませう。
    ただ、せつかくの力作に対してかかることを述べるのは申し訳ありませんが、大層読みにくい。文章といふより、構成の問題なのでせうか。読みながら何度も前の部分を読み返したり、突つかへるのでした。
    単にわたくしの読解力不足なのか? と少し不安になりました。
    以上。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-259.html

  • 読むべき知るべき内容だと思うのだけれど、知識がなさ過ぎるのか構成のせいなのか、私には読みづらかった・・・

著者プロフィール

大野芳(おおの・かおる)
一九四一年愛知県生まれ。ノンフィクション作家。『北針』で第一回潮賞ノンフィクション部門特別賞受賞。
著書に『近衛秀麿――日本のオーケストラをつくった男』(講談社)、
『絶海密室』『瀕死の白鳥――亡命者エリアナ・パブロバの生涯』(以上、新潮社)、
『8月17日、ソ連軍上陸す――最果ての要衝・占守島攻防記』『「宗谷」の昭和史――南極観測船になった海軍特務艦』(以上、新潮文庫)、
『死にざまに見る昭和史――八人の凜然たる〈最期〉』『無念なり――近衛文麿の闘い』『裸の天才画家 田中一村』(以上、平凡社)、
『天皇は暗殺されたのか』(二見文庫)など多数。

「2020年 『伊藤博文を暗殺したのは誰なのか 安重根と闇に隠された真犯人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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