甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101332413

作品紹介・あらすじ

「甲子園なんてこなければよかった」-。球史に刻まれた一戦、1992年夏、星稜vs明徳義塾。松井との勝負を避けた明徳は非難を受け、試合をきっかけに両校ナインには大きな葛藤が生まれた。あれから15年、自らの人生を歩みだした監督・元球児たちが語る、封印された記憶。高校野球の聖地で、彼らは何を思い、何が行われたのか。球児たちの軌跡を丹念に追ったノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 松井秀喜が甲子園で5敬遠されてから10年
    関係者を取材し書かれた書籍
    当時5敬遠は衝撃的でしたが、あの出来事は関係者
    の中ではどうだったのか知ることができました
    そして今まで知らなかったことも知ることができました
    よかったです

  • これはタイトルが『甲子園が割れた日』で松井が5連続敬遠されたあの試合に纏わる話のノンフィクションだと思って読み出すも、分量的にあの試合そのものより、当事者のあの試合前後を追った記録に近い。実は私、もう20年も前に初めて甲子園をテレビ観戦したとき当時の明徳エースがあまりにもタイプなマスクで(笑)以来、東北出身なのにずっと明徳ファンです。また、監督のタイプとしてノムさんと馬淵さんの計算されてる感が大好きで(´◡`๑) だからこの本、大好きな馬淵監督と明徳が沢山で美味でした♡

  • ノンフィクション。

    日本が揺れた松井秀喜5打席敬遠のドキュメンタリー。

    明徳が悪者扱いをされている印象が強かったが、関わった人達の話から明徳は悪者ではないと思えた。

    勝つことに徹底したやり方が果たして悪いことなんだろうか?答えは多分出ないのかな…価値観の違いなのかもしれない。みんな純粋だった。野球にかけていた。それがすごく伝わってきた。

    特に星稜の五番を打っていた月岩さんの話は心に残った。

    やっはり試合の後はいろいろな葛藤や後悔があったようだ。(今でも?)葛藤の末の言葉であるだろうがこの言葉が印象的だった。

    「あそこで打って、有頂天になっていると…将来のことを考えると、打てなかった方が良かったと思います。」

    松井選手の夢の実現にはどうすればいいかという質問の答え

    「…逃げないことじゃないですか。好きだと思えることからは。」

    やっぱり努力してきた人は言葉の重みが違う。

  • 高校野球史上もっとも有名な試合の一つ、松井秀喜5連続敬遠を取材したノンフィクション作品。悲劇のヒーローである松井秀喜氏はもちろん、明徳と星陵の両監督や選手、そしてあの試合を担当した解説者や、当時記事を書いた新聞記者など、多方面への取材により、あの日の真実に迫っている。

    いまだにあの試合がメディアで紹介されるとき、高校野球らしくないとかスポーツマンシップに反するなど、否定的な論調が多数を占めている。しかし、本書を読んでわかったのは、必ずしも野球関係者の間では、否定的な意見が多いわけではないという事だ。

    特に強豪校と言われる学校は、甲子園で優勝する事を唯一の目標とし、尋常とは思えないような練習量を積んでいるのだ。相手が高校生だからといって、勝負の世界にきれいごとを求めるのは、そんな事情を知らない我々のワガママなのだろう。

    あの世代の明徳の選手たちから、50歳になったら星陵と再試合をやりたい、という話が持ち上がっているそうだ。でも残念ながら星陵サイドは、あまり乗り気ではないらしい。ぜひとも2024年の夏、できれば甲子園球場で、もう一度あの試合を見てみたいものである。

  • その試合の後で教え子たちにかけた監督の言葉に、ぎゅっと胸が詰まりました。
    「星稜らしく、散ってしまったな。」

    それは、監督自身が13年前の教え子と甲子園で経験した、簑島高校との延長18回の激闘の末の敗戦に重ね合わせて言った言葉。
    野球にうとかったわたしでもその試合は鮮明に記憶しています。
    いまも何かにつけ、甲子園の名勝負として紹介されることの多い試合です。

    そして今回この本で取りあげている試合は、また違う形で星稜が甲子園の悲劇の象徴みたいになってしまった時のことです。

    わたしの祖父と同じ根上町出身の松井秀喜選手は、それだけでとても身近で親しみを感じる相手。毎年夏に帰省すると、地元の寺井駅の構内の売店では「ゴジラ松井クッキー」を売っていたほど、地元では大ヒーローなのです。(その売店も、JRの合理化の波なのか、もう数年前になくなってしまったけれど。 )

    メジャーリーグにまで飛び出してしまう「怪物」が、あの静かなほのぼのした町内からよく誕生したなあ、と思わずにはいられません。プロに入ってからの飄々としたインタビューの態度。言い終わったとき、下あごをぐっと噛み広げる独特の表情。ますます、おもしろい人だなあ、と思って、今もスポーツニュースに出てくるとつい注目してしまいます。

    簑島高校との激闘から13年後の夏の甲子園。石川県代表として甲子園にやった来た星稜高校。
    4番で主将の松井選手に対し、対戦相手の明徳義塾高校は全ての打席、5連続敬遠を選ぶのです。
    大会前から「怪物」として名をはせていた高校生ばなれした強打者松井選手は、その試合、バットを1度も振ることなく、伝説になってしまうのです・・・

    「高校野球らしく堂々と戦え」という明徳義塾の監督に対する非難、松井選手の次の打順を打つバッターに対する「お前が打っていれば勝てたのに」という無言の声。

    この本は、当時の両校の選手や監督、そして、松井選手本人など当時のことを知っている人物にインタビューをして、当時の事実や選手の偽らざる心情をまとめています。

    5打席連続敬遠なんて、松井選手はさぞかし悔しく甲子園を去ったことだろう
    とか、
    監督のサインにしたがって勝負から逃げるような球をミットに投げ込まなければならなかった投手だって、本当は松井と勝負したかったに違いない、
    とか、
    全て、ギャラリー側の視線にすぎないのかなぁ。
    なんて、思いました。

    スポーツ選手として、競技に取り組みながら考えていることは、同じ目標に向かっていても、そのやりかたとか、何を信じるか、とか、そんなものは自由なんだということを思い知らされました。

    勝負事だから当然勝つことにこだわるのも信念。そのための戦術としてルールを越えなければ何も間違いではない。
    特に高校での野球の場合、「甲子園」という明確な目標が描きやすいので、たんなる高校生のいち部活を超えている世界があるということは、なんとなく感じられるところではあったものの、そのそれぞれの毎日と人生は、壮絶なものがあるのだなあと。
    (この印象もまた、ギャラリーとしての視線に過ぎないけれど)

    この本の著者の方もまた高校では野球をやっていたそうで、自らのエラーで勝利を逃して現役生活の幕を閉じてしまった、という思い出があるそう。それで、同じ野球経験者として、彼らの気持ちがわかってやれるのでは、とこの取材を決意し、自力で当時の関係者にアタックし、インタビューをしたというところがおもしろいと思いました。

    質問ひとつにしても、単なる、話題としての問いかけしかできない場合と、”こんな場面では、選手なら、監督ならこう考えるんじゃないか?”という前提のもとに話しかけができるというのは貴重だと思うから。

    それでさえ、取材者が予想するのと全く違う種類の答えが当時の選手や関係者から帰ってくることがあって、つくづく、話は聞いてみないとわからないものだなあと感じました。
    しかし、いくら「あの試合」から相当の年月が経過し、それぞれ大人になって当時の選手達が、「過去の思い出」として振り返った上で話してくれたとしても、あの暑すぎる甲子園のグランドに埋めてきて、絶対に、一生取り出さない想いも、あるんだろうなあ。

    高校野球は「ひたむき」とか「さわやか」とかよく形容されますが、ぜったいそんなことだけではすまない。渦巻くいろんな世界がある。
    選手の想い、監督の想い、そして甲子園という場所が象徴する一瞬のきらめきと重圧と運命のめぐりあわせ。この中で、ただ上手くなること、勝つことに向かって、それぞれのやりかたで、3年間を部活とともに生きている野球部員たち。甲子園はそんな人たちの舞台なんだな。あらためて重たく恐ろしい場所だ!

    今年も地方大会が始まって、そして甲子園の幕が開ける。この時期にこの本を読んでよかったと思いました。

  • 松井の敬遠、それにかかる明徳や星稜の監督、選手への丁寧な取材から、当時関係者がどの様にあの出来事を捉えていたかがよく分かる内容。あっという間に読んだ。

  • 今年の『文庫王国』で、本著者の近刊がチャンプになってたけど、そういえば本作、持ってるけどまだ読んでなかったな、という訳でまずこちらから着手。こっちも確か、発売年の『本の雑誌』でランクインしてたはず。まずタイトルから、松井の凄さが思う存分語られるものかと思ったんだけど、あにはからんや彼の出番は殆どなし。敬遠を支持した監督、実行した投手、松井の次(5番)を打った選手。そのあたりが中心に、取材が行われていく。ある意味”事件”たる本案件が、章を追うごと、次第に浮かび上がってくる展開の妙もさることながら、もっと興奮するのは、”自分だったらどう考える?そしてどう行動する?”っていう、裏のというか、実はそれこそが真の狙いと思われる問いかけ。正直、その事実だけを聞かされたとき”え!?フェアじゃなくね?”って、反射的に感じてしまう自分がいたんだけど、その公正性というか価値観は、色んな身分で関わった人それぞれの声を冷静に聞いて、そこで初めて判断すべき問題。日常的に繰り返される判断を、単純なものに落とし込む危険を本書に見た。そんな味わい深い読書でした。

  • 92年の甲子園、星稜対明徳戦における松井選手の5連続敬遠。当時大きなニュースになり、明徳の監督、選手に対する批判が相次いだこの出来事を関係者への綿密な取材により解きほぐしていく。メディアを通じた情報により著者自身が抱いていたイメージが取材により変化していくプロセスを共有するノンフィクションならではの面白さを感じる。…が引いた目線での個人的な感想をあえて書けぼ高校の部活動にここまで熱くなるって不思議だ。あとその後も野球人生送る人って多いのね。

  • 高校野球を高校生が野球やってるだけの話と思えばこんな狂騒は起きないんだろうけど、人生とか清々しさとかと無理無理くっつけるから見る側と選手監督の感覚がズレていくのかな。
    マスコミが煽って作ったストーリーと内実がここまで違うのか驚いたが、日常のニュースもそんなものなのかもしれない。

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著者プロフィール

1973年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部卒。スポーツ新聞記者を経て独立。スポーツをはじめとするノンフィクションを中心に活躍する。『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社)でミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』(集英社)で講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『佐賀北の夏』『歓声から遠く離れて』『無名最強甲子園』などがある。

「2018年 『高校野球 名将の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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