ジーン・ワルツ (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101333113

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わりました。
    そうですねぇ。。。
    東城大とは違って帝華大が出てくる話で
    「極北クレイマー」の三枝先生や
    「輝天炎上」でさらっと出て来た
    三枝茉莉亜先生など
    直近で読んだ人物が関係してくるとあって
    しっかり読み進めました
    とは言っても、不妊治療・体外受精・代理母出産
    など凡人にはなかなか難しかった作品ですね
    今後、また出てくるのかな?

  • 海堂尊さんの作品をはじめて読みました。
    医療や生命を考えさせられる作品で引き込まれました。

  • 親から子へ伝えられる遺伝子はDNA配列で、それは、A、T、G、Dの四文字。その塩基の三つの組
    あわせが一種類のアミノ酸を指定する。
     つまり、生命の基本ビートは三拍子、ワルツなのだ。  (文中より)

    * * *

    体外受精のエキスパート曾根崎理恵は試験管の中で、採取した卵子と精子の結合の実験をしてい
    る。

    彼女はアルバイト先のマリア・クリニックの地下実験室でひそかに受精卵を育てる研究をしているのだ。

    彼女は、厚労省に一目置かれている国内でも有数の大学で講義を受け持ち、主に学生には人類の
    発生学を教えている。

    閉院間際のマリア・クリニックには最後の5人の患者がいて、それぞれがさまざまな重い問題を抱えている。
    若すぎて育てられないという未成年の夫婦、なんども不妊治療をしてやっと妊娠できたが予断を
    ゆるさない人。
    仕事との折りあいに悩んで出産を決められない人。55歳の高齢で多胎妊娠がみとめられたひと
    (代理母出産が疑われている)心配した一人はついに流産してしまった。

    曾根崎理恵は既婚者だが夫は外国で暮らしていて、将来二人で家庭を続けていく見通しはなく
    離婚の話が具体的に進んでいる。
    彼女は同じ大学の、産科婦人科学会に属する、優秀な上司の清川教授の手で密かに、子宮と卵巣
    摘出の手術を受けていた。

    55歳の多胎児の母親は無事出産するのか。
    肺がん末期の院長の閉院後の決断は。
    僻地の産婦人科医療に献身していた、院長の一人息子が、一万人に一例という難産で患者を死な
    せて逮捕されている。
    法に従わずに人工授精、代理母を擁護する理恵の本心は。

    * * *

    少子化が社会問題になっている中で、産婦人科医師、産婦人科病院の患者離れが増加している。
    医師不足で、地方の病院、医院は閉院が続いている。

    お産は病気ではないという厚労省の見解の元で、危険なお産に立ち会う医師たちの姿勢と、
    問解決策を模索する姿が、現場の医師である作者から、伝わってくる。

    それは命を生み出す発生学を選んだ曾根崎理恵の姿勢によく現れている、最後の授業に、出産誕
    生の神秘を講義すると、学生から大きな拍手が沸く。

    現在の行政のあり方は、生まれて育っている子供には育児手当を出すが、これから生まれる命に
    は保険も使えない、毎月の検診費用もままならない世帯では、検診率は半分に満たないと何かの
    新聞で読んだ。
    少子化を憂うまえに、安心して子供の生める社会態勢が望まれる。

    この本は小さな力であっても多くの人に読まれ、今産婦人科医の抱えている問題、そして「欲し
    くても生めない人」「生めるのに生まない人」「生みたくないひと」それぞれに対する社会の理
    解を深めなくてはならないと深く感じた。

  • ん〜んん、なんて言えばいいんだろうか。
    私の頭が足らなかった、それもある、ただ、とにかく謎解きの面白さが皆無だった。
    なぜなら私に医療知識が皆無だから…それ以外にあるだろうか。
    かといって、医療知識があればどうだったろう。面白いかと言われるとわからない。面白かったのかも。そうじゃないかも。
    とにかく、理解はできても解釈できないことには、違法性もその重大さもわからないということはわかりました。

  • *****

    帝華大学医学部に属し、不妊治療を専門とする曾根崎理恵は大学で学生に発生学を教え、研究のかたわら、週一回非常勤としてマリアクリニックで診療を行っている。
    閉院間近のマリアクリニックが抱える患者は五人。
    年齢や境遇が違う彼女たちの出産、それぞれを待ち構える試練。
    彼女たち、そして、生命、地域医療を脅かす問題に真摯に向かう理恵。
    そんな中、彼女をよく知る清川准教授はとある噂を耳にし…。

    *****

    『チーム・バチスタ』シリーズも少しずつ読んでいますが、舞台はつながっているけれど、こちらには白鳥&田口コンビは出てこない。
    映画化ということもあって、気になっていた作品。

    生命倫理、代理母出産、地域医療、産婦人科医療の抱える問題。
    テーマを挙げると、重い。
    これから生まれてくる、新しい命を支えてくれているお医者様、そしてその患者となりうる私たちの危機へとつながることだ。
    出てくる妊婦さんは、みんな自分の子供を無事に産みたい、当たり前の願い、でも、それが叶うことは当たり前じゃない。
    私も大人になって、赤ちゃんを授かること、授かった後、お腹の中で育て無事出産の日を迎えること、五体満足で生まれてきてくれること、それらが易くはないことを知った。
    小さい頃はそんなこと、分からなかった。
    理恵も言っていたように、“奇跡”なのだ。

    勿論、海堂さんの小説らしく、エンタテイメントある物語として、ドキドキもハラハラも、そして、胸にぐっとくるシーンも、ある。
    登場人物たちも魅力的。
    清川先生はカッコイイし、屋敷教授のキャラクタも外せない。
    学生たちと理恵のやりとりも好きだった。
    マリアクリニック院長である茉莉亜先生の迫力。
    母になったことで妊婦たちが理恵を驚かせるくらいの強さを見せたりと今回の物語における重要な5人の妊婦のそれぞれの道程からも目が離せない。
    そして、一番大きな秘密と企みを抱えた“クール・ウィッチ(冷徹な魔女)”、曾根崎理恵。
    恐ろしさすら感じる彼女の医療への、そして、自分の望みへの意志、想いに、息を呑む。
    強く、冷静であるだけではない部分も描かれているが、突き進む様はクール・ウィッチ…まさに。

    女性としては未経験とはいえ、共感できる部分もやはりあり…この作品は男性が読んだらどう感じるのでしょう??
    ちょっと気になる。

  • 官僚のやり口に問題があること、現実の産科医療が大変で提起すべき問題があることは判る。だが、そのやり口は正しくないだろう。正直、登場人物の行動や選択に嫌悪感が残った。欺瞞に満ちた理屈を展開して後ろめたくはないのか。道理を曲げた自分を誤魔化しているだけにも感じる。海堂さんにはもう少し良い筋・顛末の話を期待する。

  • 不妊治療をテーマにした作品。
    途中から代理母の問題をはらんでいるのだな…と読めるのだけれど、落としどころが全くわからない。

    「因果律はすべての事象が明らかになった時には、あるべき場所に還っていくものなのね」

    作品中何度か登場するセリフですが、最後の最後に事象が明らかになった時、主人公の敷いてきた伏線に空恐ろしさを感じます。

    ちょっと前に読んだ同作者の『医学のたまご』の登場人物と繋がってきます。彼の作品は、登場人物がシンクロしているなぁ。

  • 2018/6/25購入

  • 癒着とか院内政治とかを描くバチスタシリーズとは違って、あくまで医療に焦点を当てた一作。世代が世代だけに刺さる一冊だったけど、かなり重い。妊娠・出産が奇跡であること、だけどそれが必ずしも自分の思い描く幸福に等しいわけではないこと。知ろうとしてこなかった、むしろ目を背けてきてしまった現実を突きつけられた気がした。

  • 女性が健やかな子供を産むことは、奇跡なのだ。
    健やかな子供が生まれてくることが当たり前ではない。
    悲しいことだが、奇形児が生まれてくることも……
    初めて、桜宮サーガシリーズで涙した。
    それだけ、出産という行為が感動的ということか。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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