ため息の時間 (新潮文庫)

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著者 : 唯川恵
  • 新潮社 (2004年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101334271

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ため息の時間 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 完璧に家事をこなす妻を裏切り、若い女と浮気する男。
    妻が化粧をすることを許さなかった男。
    仕事のために取引先の女性と関係を持つ男。
    赤の他人のフリをして妻にメールを送る男。
    傷付けられても裏切られても惹かれ合う、
    そんな男女を描いた恋愛短編集。
    ちなみに、全編を通して男目線の物語。

    ***

    ひとことで言うと、面白かったです。

    それぞれの物語の設定としては、
    なんのことはない世間にありふれたものばかりだし、
    登場人物も平々凡々な人ばかり。
    だけど、ストーリーのテンポや予想外な展開に、
    「最後はどうなるの!?」と
    ページをめくる指についつい力がこもってしまう一冊でした。

    一番面白いなと思ったのは、
    女の言い分をテーマにしていた物語。
    社内に婚約寸前の彼女がいるにも関わらず、
    そんな自分に「二番目でもいいんです」と告白をしてきた新人女性社員。
    結局社内と彼女には内緒で浮気を始めるが、
    彼女と浮気相手の2人の女の「言い分」の板挟みになり、
    「一体どっちが本当のことを言ってるんだ!?」と困惑し混乱する。

    もうね、「天晴れ!」と拍手を送りたくなるほど、
    女2人はとにかくしたたかでした。
    2人の言い分には穴がなく見事なほど正当だけど、
    面白いくらいに背立し矛盾してます。

    言い分での板挟みっていうのは面白いくらい脳を混乱させるよね。
    「あの人とこの人、言ってることが違う…どっちが本当なの!?」って。
    結局のところ、どっちも本当なんだよね。
    ひとつの事象に対して、事実はひとつしかないけど、
    真実は人の数だけある…なーんて中二病みたいなことを言ってみる。
    冗談はさておき、それは私の中では真理です。

    例えば、Aちゃんがひとりでお菓子を食べていたら、
    そばにいた友達のBちゃんが「ちょーだい♪」とひとつつまんで口に放り込んだ、
    という出来事もこれはこれでひとつの事実だけど、
    Aちゃんは「いいよなんて言ってないのに勝手に食べられた」と思い、
    Bちゃんは「ちょーだいって言ったら普通にくれた」と思うかもしれない。
    それぞれにとってはその言い分が真実なので、
    ゆずれない場合は相手に怒りをぶつけたり、
    陰口などで自分の正当性を周囲に押しつけて仲間を増やしたりします。
    そして時間が立っても問題が解決しないと、「真実」に尾ひれはひれがつき、
    Aちゃんは「私が嫌がってるのに無理矢理取った!」と言いだしたり、
    Bちゃんは「いいよって言ったのに怒るなんて意味不明じゃない!?」と言いだしたり、
    どんどん複雑化していきます。
    これは笑えるほど小さな「言い分の衝突」だからいいけど、
    複雑な衝突はゴロゴロ転がってますね。
    「自分」という色眼鏡を通して物事を解釈すると衝突が多くなります。
    だからみんな「物事を多面的に見よう!」と声を大にするんですよね。

    話が全く変わるけど、
    私は本の「あとがき」と「解説」も必ず読む派です。
    みんなはどうなんだろう?
    唯川さんのあとがきを読んで、久しぶりにほっとしました。
    いつもパンチが効いているあとがきばかりだったから、
    「この本を手に取ってくださった全ての人に心から感謝します」
    なんてありきたりな礼節文句ですら、
    「ああ、この人はきっとほんわかした人なんだなぁ」
    なんて思って癒されちゃいました。

  • どれも軽く読めて、続きが気になる短編。面白かったけど、もう一回読み返そうとは思わない。



    口紅
    病院のベッドで妻が頼んだ口紅。夫は浮気相手に用意させる。妻が最期に会いたかった相手は

    夜の匂い
    派手な女と地味な女。男が後者を選んだときからもう一人がつきまとってきた。百合で囲まれた部屋で、出て行く人間は

    終の季節
    高校生の娘の友人は、リストラした男の娘。援助交際を辞めさせたくて

    言い分
    22歳の若く清純な後輩と、27歳の気風のいい同僚と。どちらの言い分も呆れるくらい筋が通り、真っ向から対決している。あまりの正当さに恐怖さえ覚える。信じるべきは果たして

    僕の愛しい人
    努力し真面目に生きているのに割を食うばかりで、夢を追う彼女とも一緒になれない。重役の娘に惚れられて、金と出世のために結婚するがそれも彼女のため。お腹の子どもは

    バス•ストップ
    浮気を何度も繰りかえした。その間妻は完璧に家を守っていた。それは納得ずくだと思っていた。1年の貞淑で完璧な妻の復讐

    濡れ羽色
    なんとなく手を出した取引先の女は、社内の掌握者だった。カラスの放った彼女の口癖とは

    分身
    一回り年下の妻は良くしてくれて申し分ない。ただいつか裏切られるのではと気が気でない夫が作り上げた彼女のチャット友達

    父が帰る日
    母と自分を捨てた父を家に迎えた。修学旅行前日に思い出したのは

  • 初めて読んだときから好きで何度も読み返してるのは「僕の愛しい人」。千晶に感情移入しすぎてしまうと言うか、ほぼ毎回泣いてしまいます。

    「言い分」「分身」「バス・ストップ」も好きだけど、久しぶりに最初から最後まで再読してみて「口紅」「終の季節」「父が帰る日」に切なくなる。

  • 短編小説9話。
    口紅
    夜の匂い
    終(つい)の季節
    言い分
    僕の愛しい人
    バス・ストップ
    濡れ羽色
    分身
    父が帰る日

    あとがきによると、男性主人公の話とのこと。
    読んでいて、言われれば、そうかと気がつくくらい、
    女性の視点、唯川恵の視点が明確で気がつかなかった。

    初出が、小説新調、週刊朝日、小説工房、小説nonの1996年から2001年にかけたものを集めている。

    これらで「ため息の時間」というのがうまいかも。
    女性のため息なのか、男性のため息なのか。
    女性と男性の両方を捕らえた人間のため息なのか。

  • 終の季節:ヒヤリとさせられた。僕にも起こりうるかも・・・

  • 私が好きだったのは『口紅』
    旦那さんは奥さんがお化粧をするのが嫌いで、一度すごく怒ったことがあるんだけど、奥さんが病床のときに「口紅が欲しい」ってお願いして買ってきてもらうの。
    でも全然使わなかく逝ってしまったのね。
    でも実は、それを塗って死んだあと、旦那さんの友達の夢に出てきたお話。
    これはね~、すっごい奥が深かったわ~。
    なんていうか、奥さんの執念っていうか、旦那さんに対する対抗心っていうか、そういうものが死んでから表れるなんて女って恐ろしいわ~って思うんだけど、こういう旦那は絶対に許せない!!

    その次に好きだったのが最後の短編の『父が帰る日』
    これはね~、昔、奥さんと息子をおいて出て行ったお父さんが、30年も音信不通だったのに病に倒れて病院から電話がかかってくる。で奥さんにも押され、一週間の一時退院でお父さんを預かることになったのよね。でも或る日、孫のバックパックを漁ってるお父さんを見て息子が怒るの「また、そうやって昔みたいに金を盗むのか!」ってね。で、お父さんは病院に帰しちゃうんだけど、翌日、孫がお財布の中を見たら、くちゃくちゃの千円札が一枚入ってたんだって。
    なーんかね、これ読んだときに、すっごい泣けそうになったのよ。泣きたかったの。でも隣りでTIMがうるさかったから泣けなかった。。。
    これはね、ほんとじーんとくる話だったわ。

    そのほかに7編の短編が入ってて、どれも男目線で書かれた話になってます。
    この本、私、かなーり好き!!
    5つ★あげたいな~。って思ったんだけど、たまにね「え?これはどういう意味?で、どうなっちゃったの?はっきり書いて~!」ってところが2箇所くらいあったので4つ★かな~?
    でも唯川恵さんの作品はこれからもどんどん読んでいきたいと思います。

  • 男の目線で女を書く。
    ただ少し、愛し方を間違えただけ。

    バスストップの杏子は一番怖かった。あんだけ完璧に復讐できるものなんだなぁ。
    たぶんどの話も女目線から見たらよくある話。でも男目線でかかれているのは新鮮で女は計算高いし男はだまされやすいんだなぁと。
    胃が痛くなる話ではあったな。いい男の人がいない笑

  • 短編小説です。

    「バス・ストップ」が好きです。
    浮気をした夫に対する、
    妻からの復讐は、

    「妻として限りなくつくす。」こと。

    なるほど。

    読んでみて、こういうことが、
    復讐となるのかと関心しました。

  • しつこすぎず、軽すぎず。

    さらっと読める短編集。キャラが現実的。「夜の匂い」が一番好きかな。
    重たい関係、身勝手な気持ちの作品が続いていく中、ラストの「父が帰る日」のシンプルな気持ちが沁みた。一見単純そうに見える感情が、一番綺麗なのかな。

  • なんだかいい意味でも悪い意味でもすっきりした作品。

  • 短編集。
    あとがきを見て気づいたけど、全編、男性目線の作品だった。

    作者が女性なので、世間一般の男性像として共感を得るものがあったけど、これを男性が読むと反論したくなるのかな?

    家庭をかえりみない夫への復讐の方法が面白かった。

  • 久々の唯川恵作品♪
    男性目線で書かれた恋愛小説(とは呼べないようなものもいくつかあったけど)が9編。男性目線で書かれてはいても、やはり書き手は女性だな、って印象が強かったです。
    全体的に「いざというときに強い女たちと滑稽な男」という構図が多い気がします。男性が読んだら「女って怖い」って感想になるのかな。私はちょっと共感してしまうものもあったけど。
    作中の男性陣の滑稽さに、石田衣良の「夜の桃」がちょこっと思い出されました。

    タイトルの「ため息の時間」とは言い得て妙で、憂鬱な…後悔の気持ちを孕んだ暗いため息が思わず漏れてしまいそうな短編集。

    ただの恋愛小説じゃなくて結構ホラーっぽいのもあったので、苦手な人はびっくりするかも。

  • 恐いのやら嫌な人やらしんみりやらこれを読んでいろんな感情を感じました。

  • 全て男性主観で描かれたお話。

    妻を理不尽に縛り付けた男、女に振り回される男、愛しすぎた男・・・などなど。一見普通の男女の話のようだったのに、読んでいくうちに引き込まれていって、ラストに驚かされる。

    私としては、「濡れ羽色」、「父が帰る日」が印象に残った。

  • 唯川恵さんのお話はホントに好きです。とっても読みやすかったです

  • 恋愛短編集なんだけど

    ただの恋愛小説じゃなくて


    戻らない時間に対するジレンマとか

    どうしようもなく悪い方向に引きずられてしまっていく人の弱さとか

    自分ではどうしようもない流れに対する苛立ちとか


    なんだかいたたまれなくなってきたりして


    1つ1つのお話が濃厚でした。

    恋愛だけでなく
    人生の部分でも。


    それと、この本を読んで
    文章を読みながら
    脳内でシチュエーションが出来ていく感覚というか

    一文読み進めるたびに、ヒントをもらえたかのように

    脳味噌のなかでイメージ映像がサクサク切り替わっていく楽しさを、久々にガッツリ実感しました。


    これって読書の醍醐味。
    最高の気分でした。
    ありがとうございます。

  • 08/1/26購入。男の視点から見た恋愛の短篇小説だった。題名と同じくため息が出ちゃいそうなのもあり、まあまあおもしろかった。

  • そんなに唯川さん詳しくないけど、男性目線なのが新鮮だった気がする。

    消化不良の話も多いけど、私は消化不良結構好き。
    もやっとしてるその感情が欲しくて短編集を読むくらい。

    ため息つくけど、いやなため息じゃない。

  • 性懲りもなく惹かれあってしまう男女がいる限り恋愛小説を書き続けられると締めくくった唯川恵さん。
    この短編集は、どれも心地よい疲労感が残るものでした。

  • 男性の視点から描かれた短編集。
    読み終えて本当にため息をつきたくなった。
    唯川恵の書く物語はあまり気持ちよくないものが多いが、それでももっと読みたくなるのが彼女の不思議な魅力だと思う。
    最後の「父が帰る日」が一際いい話に思えたのは、恋愛が絡んでいないせいだろうか。

  • オトコ目線の恋愛もの。
    なんだかおとな。

    なんて思ったけど、わかるような気もするものがちらちら…

  • 「言い分」や「バス・ストップ」など・・・。
    女性の強かさや逞しさを秘めた物語だと思います。
    その強さがどういう風に向かうのか。
    自分に向かうのか、相手に向かうのか・・・。
    私は上記の2つは結構好きでした。
    ただ、消化不良的なものもいくつかあります。

  • 今の私の年齢だとまだわからないかも。5年後読んだら違う感想を持ちそうだな。

  • 短編小説です。
    後味の悪い作品が大目かも…?
    でも中には心が温まるストーリーもあります。
    普通の恋愛小説に飽きた!という方におすすめかも。

  • いい意味で、裏切られた。女の醜悪さが男性の視線によって、効果的に表現されてると思った。男性の視点で描かれる女性、として、非常に完成度が高い作品だと感じた。

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