ため息の時間 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101334271

作品紹介・あらすじ

愛したことが間違いなんじゃない。ただ少し、愛し方を間違えただけ-。完璧に家事をこなす妻を裏切り、若い女と浮気する木島。妻が化粧をするのを許さなかった原田。婚約寸前の彼女がいるのに社内で二股かれた洪一。仕事のために取引先の年上女性に近づく孝次…。裏切られても、傷つけられても、性懲りもなく惹かれあってしまう、恋をせずにいられない男と女のための恋愛小説9篇。

感想・レビュー・書評

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  • 男性目線で女性を描いた9つの短編。
    ただ少し愛し方を間違えただけ。
    それぞれの男性主人公の身勝手さに言葉が出ない。話にオチがあり(非現実的だったり)男は痛い目に合う(自業自得的に)。女性のしたたかさが際立っていた。
    個性に富んでさくさく読める面白さだった。一時間完結ドラマになりそうな題材だと思った。
    裏切り裏切られても、惹かれ合って繰り返すんですよね、それでも…。
    (男性ではないので)共感とは違うが、寂寥感に包まれた男性の姿が、身近に居そうでリアルだった。
    終の季節、バス・ストップ、分身(このラストは好み)が特に良かった。濡れ羽色のカラスはなんて言ったのだろう。

  • 完璧に家事をこなす妻を裏切り、若い女と浮気する男。
    妻が化粧をすることを許さなかった男。
    仕事のために取引先の女性と関係を持つ男。
    赤の他人のフリをして妻にメールを送る男。
    傷付けられても裏切られても惹かれ合う、
    そんな男女を描いた恋愛短編集。
    ちなみに、全編を通して男目線の物語。

    ***

    ひとことで言うと、面白かったです。

    それぞれの物語の設定としては、
    なんのことはない世間にありふれたものばかりだし、
    登場人物も平々凡々な人ばかり。
    だけど、ストーリーのテンポや予想外な展開に、
    「最後はどうなるの!?」と
    ページをめくる指についつい力がこもってしまう一冊でした。

    一番面白いなと思ったのは、
    女の言い分をテーマにしていた物語。
    社内に婚約寸前の彼女がいるにも関わらず、
    そんな自分に「二番目でもいいんです」と告白をしてきた新人女性社員。
    結局社内と彼女には内緒で浮気を始めるが、
    彼女と浮気相手の2人の女の「言い分」の板挟みになり、
    「一体どっちが本当のことを言ってるんだ!?」と困惑し混乱する。

    もうね、「天晴れ!」と拍手を送りたくなるほど、
    女2人はとにかくしたたかでした。
    2人の言い分には穴がなく見事なほど正当だけど、
    面白いくらいに背立し矛盾してます。

    言い分での板挟みっていうのは面白いくらい脳を混乱させるよね。
    「あの人とこの人、言ってることが違う…どっちが本当なの!?」って。
    結局のところ、どっちも本当なんだよね。
    ひとつの事象に対して、事実はひとつしかないけど、
    真実は人の数だけある…なーんて中二病みたいなことを言ってみる。
    冗談はさておき、それは私の中では真理です。

    例えば、Aちゃんがひとりでお菓子を食べていたら、
    そばにいた友達のBちゃんが「ちょーだい♪」とひとつつまんで口に放り込んだ、
    という出来事もこれはこれでひとつの事実だけど、
    Aちゃんは「いいよなんて言ってないのに勝手に食べられた」と思い、
    Bちゃんは「ちょーだいって言ったら普通にくれた」と思うかもしれない。
    それぞれにとってはその言い分が真実なので、
    ゆずれない場合は相手に怒りをぶつけたり、
    陰口などで自分の正当性を周囲に押しつけて仲間を増やしたりします。
    そして時間が立っても問題が解決しないと、「真実」に尾ひれはひれがつき、
    Aちゃんは「私が嫌がってるのに無理矢理取った!」と言いだしたり、
    Bちゃんは「いいよって言ったのに怒るなんて意味不明じゃない!?」と言いだしたり、
    どんどん複雑化していきます。
    これは笑えるほど小さな「言い分の衝突」だからいいけど、
    複雑な衝突はゴロゴロ転がってますね。
    「自分」という色眼鏡を通して物事を解釈すると衝突が多くなります。
    だからみんな「物事を多面的に見よう!」と声を大にするんですよね。

    話が全く変わるけど、
    私は本の「あとがき」と「解説」も必ず読む派です。
    みんなはどうなんだろう?
    唯川さんのあとがきを読んで、久しぶりにほっとしました。
    いつもパンチが効いているあとがきばかりだったから、
    「この本を手に取ってくださった全ての人に心から感謝します」
    なんてありきたりな礼節文句ですら、
    「ああ、この人はきっとほんわかした人なんだなぁ」
    なんて思って癒されちゃいました。

  • 男目線の女の話。あまりこのタイプの短編集は読んだことがなかったから、新鮮で面白かった。
    半分が男が浮気をし、女が出ていくと言う展開だったが男側の性格がどの話も面白く呆れるような人が多かった。
    「バスストップの木島の性格はもはやあっぱれだ。今どきこんな人はいないだろうが、杏子の復讐は立派なものだと思った。だが、妻と娘に逃げられ何もなくなった男たちを見るのは辛かった。
    「僕の愛しい人」は少しテイストが違って面白かった。ホラー要素も入っており、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからない。主人公は千晶を殺して食べたと言うことなのだろうか?これなら、殺してみつかりようがないから捕まらないのか?

  • 自分勝手な男が沢山出てきた

  • サラサラ読めて良かった。
    女性が書く男性目線の恋愛小ホラー短編集。
    どの男もいい感じにだらしないのは女性が書いてるからなのだろうか。
    女性が怖い話もあったけど、不思議な感じで怖いみたいなものが大半なので好みだった。

  • どれも軽く読めて、続きが気になる短編。面白かったけど、もう一回読み返そうとは思わない。



    口紅
    病院のベッドで妻が頼んだ口紅。夫は浮気相手に用意させる。妻が最期に会いたかった相手は

    夜の匂い
    派手な女と地味な女。男が後者を選んだときからもう一人がつきまとってきた。百合で囲まれた部屋で、出て行く人間は

    終の季節
    高校生の娘の友人は、リストラした男の娘。援助交際を辞めさせたくて

    言い分
    22歳の若く清純な後輩と、27歳の気風のいい同僚と。どちらの言い分も呆れるくらい筋が通り、真っ向から対決している。あまりの正当さに恐怖さえ覚える。信じるべきは果たして

    僕の愛しい人
    努力し真面目に生きているのに割を食うばかりで、夢を追う彼女とも一緒になれない。重役の娘に惚れられて、金と出世のために結婚するがそれも彼女のため。お腹の子どもは

    バス•ストップ
    浮気を何度も繰りかえした。その間妻は完璧に家を守っていた。それは納得ずくだと思っていた。1年の貞淑で完璧な妻の復讐

    濡れ羽色
    なんとなく手を出した取引先の女は、社内の掌握者だった。カラスの放った彼女の口癖とは

    分身
    一回り年下の妻は良くしてくれて申し分ない。ただいつか裏切られるのではと気が気でない夫が作り上げた彼女のチャット友達

    父が帰る日
    母と自分を捨てた父を家に迎えた。修学旅行前日に思い出したのは

  • 短編小説9話。
    口紅
    夜の匂い
    終(つい)の季節
    言い分
    僕の愛しい人
    バス・ストップ
    濡れ羽色
    分身
    父が帰る日

    あとがきによると、男性主人公の話とのこと。
    読んでいて、言われれば、そうかと気がつくくらい、
    女性の視点、唯川恵の視点が明確で気がつかなかった。

    初出が、小説新調、週刊朝日、小説工房、小説nonの1996年から2001年にかけたものを集めている。

    これらで「ため息の時間」というのがうまいかも。
    女性のため息なのか、男性のため息なのか。
    女性と男性の両方を捕らえた人間のため息なのか。

  • 終の季節:ヒヤリとさせられた。僕にも起こりうるかも・・・

  • 私が好きだったのは『口紅』
    旦那さんは奥さんがお化粧をするのが嫌いで、一度すごく怒ったことがあるんだけど、奥さんが病床のときに「口紅が欲しい」ってお願いして買ってきてもらうの。
    でも全然使わなかく逝ってしまったのね。
    でも実は、それを塗って死んだあと、旦那さんの友達の夢に出てきたお話。
    これはね~、すっごい奥が深かったわ~。
    なんていうか、奥さんの執念っていうか、旦那さんに対する対抗心っていうか、そういうものが死んでから表れるなんて女って恐ろしいわ~って思うんだけど、こういう旦那は絶対に許せない!!

    その次に好きだったのが最後の短編の『父が帰る日』
    これはね~、昔、奥さんと息子をおいて出て行ったお父さんが、30年も音信不通だったのに病に倒れて病院から電話がかかってくる。で奥さんにも押され、一週間の一時退院でお父さんを預かることになったのよね。でも或る日、孫のバックパックを漁ってるお父さんを見て息子が怒るの「また、そうやって昔みたいに金を盗むのか!」ってね。で、お父さんは病院に帰しちゃうんだけど、翌日、孫がお財布の中を見たら、くちゃくちゃの千円札が一枚入ってたんだって。
    なーんかね、これ読んだときに、すっごい泣けそうになったのよ。泣きたかったの。でも隣りでTIMがうるさかったから泣けなかった。。。
    これはね、ほんとじーんとくる話だったわ。

    そのほかに7編の短編が入ってて、どれも男目線で書かれた話になってます。
    この本、私、かなーり好き!!
    5つ★あげたいな~。って思ったんだけど、たまにね「え?これはどういう意味?で、どうなっちゃったの?はっきり書いて~!」ってところが2箇所くらいあったので4つ★かな~?
    でも唯川恵さんの作品はこれからもどんどん読んでいきたいと思います。

  • 男の目線で女を書く。
    ただ少し、愛し方を間違えただけ。

    バスストップの杏子は一番怖かった。あんだけ完璧に復讐できるものなんだなぁ。
    たぶんどの話も女目線から見たらよくある話。でも男目線でかかれているのは新鮮で女は計算高いし男はだまされやすいんだなぁと。
    胃が痛くなる話ではあったな。いい男の人がいない笑

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