切れた鎖 (新潮文庫)

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著者 : 田中慎弥
  • 新潮社 (2010年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101334813

切れた鎖 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞受賞のインタビューで、刺激的な悪態をついた著者を
    どこまでパフォーマンスが入ってるんだろ…? なんて、
    半ば、よこしまな気持ちを持って手にしたのが本書だった。
    あれは、著者の気持ちの飾り気ないストレートな発露だったろう…

    「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」の3編…
    川端賞・三島賞のダブル受賞という随分と評価の高い短編集だ。
    小説を読む恐ろしさは、気づかずにある内面を引きずり出され、
    歪によどんだありのままの様をつきつけられることにある。

    どの作品からも、そうした領域に切り込んでゆこうとする、
    著書の文学的に真摯な姿勢を感じた…
    たとえば冒頭作「不意の償い」は、妻となった女と
    はじめて関係を持ったところから語られる…

    そのとき、親を火災で亡くし、女は子を宿した…
    いかにもつくりものめいた話だ。ただ、作品は、
    そうしたかりそめの物語には拘泥せずに、
    男のねじくれた気持ちのありようを語る…

    ありていに云ってしまえば、男が女と関係を持つ時、
    かならずや疚しさがあるに違いない…ということ…
    愛情とは、愛しながらも自らの欲情を満たすことであること…
    それは、男ののっぺきならぬ性(さが)であること…

    そんなことが、逡巡し、よどみ、ねじれながら、
    そのまま文章になっているのがこの小説だった。
    ボクには、男の偽らざる気持ちが
    ありのまま描かれているように感じられたのだ。

    負の意識を持たぬ作者の書くモノで心をえぐられることはない。
    それをストレートに表現することが、いかに難しいかは、
    なにも作家でなくとも、誰しも思うことだろう。
    そんな文体のような態度が、受賞時の作者だったのかもしれない。

  • ・不意の償い
    ・蛹
    ・切れた鎖
    解説・安藤礼二


    正直なところ、私には理解のできない物語でした。
     ~私の読書力、読解力、知識、知能…、そんなものが全て足りないのでしょう。

    引き籠りと云うものを上手に現したものだなぁと、感じたぐらいが精一杯の感想です。 【蛹】

    この著者の作品が、各種文芸賞を受賞している事実に、選者である既存の作家先生様たちの歪んだ何かがみえるような気がします。

  • 不意の償い、蛹、切れた鎖の三篇を併録した田中慎弥の作品。全てを紹介しきれないので、一番印象に残った「不意の償い」だけを。作品の内容としては、身籠った妻と、主人公である父親になるという責任と、妻が身籠った過程による罪深さを軸に、一種の幻想空間のような世界が描かれている。田中慎弥の作品を読むのはこれで二作目だが、この人の作品は”一回だけ読了しても内容が掴めない”と云ったところか。凡人以下の私には一回では理解できない、文中の何かの比喩(ここでは、狸や猿など)を読み解く事が出来ると、一本の線で繋がるイメージが出来る。芥川賞を受賞した「共喰い」がそのように感じたからかもしれない。

  • やっぱり蛹がよかった。けれども文章構成の美しさでは最初の話が素晴らしかったし、話そのものの豊饒さにかけては表題作が一番か。取り合わせがいい。読んでよかった。

  • 「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」の短編三つ。
    蛹が一番面白かった。
    力を蓄えて、蓄えて、蓄えて、蓄えて、そして蓄えたままでいる。
    その始まりから終わりまで、ずっと力を込めつつ読んでいた。
    田中慎弥はまだ3冊目だと思うけれど、いつも表題作じゃないやつが一番面白い。
    150120

  • 大好きな小説集。何度も折り入って読み返しているんだけれど、なかなかレビューを書けなかった。書いてみます。
    この小説集には『不意の償い』『蛹』『切れた鎖』の3篇が収録されている。三島賞と川端賞をダブル受賞したそうな。賞の裏付けもある通り、初期の傑作と言えるだろう。中でも衝撃的なのは社会化されていく自己をカブトムシに投影した『蛹』だろうがみなさん言及されていると思うのでここではそれ以外の2編について重点的にレビューを書いてみようと思う。
    まず『不意の償い』。収録されている作品の中で個人的に一番好きだ。大まかな筋としては同じ団地で同じ年に生まれて育った男女(夫婦になる)が初めてのセックスをしている時に両親の勤め先のスーパーマーケットで火事が起き4人全員が死に、「セックス中に親が死んだ」罪の意識を感じ、さらに便所と下駄箱の間に妻を押し付けて犯し妊娠させたことが罪の意識を加速させ、妄想と錯乱の中ラストまで突っ走る。主体と客体がところどころで逆転し、スーパーマーケットは一分ごとに燃えてまた復活し、街は炎に包まれ、人間の顔をした犬が歩き回り、股間が突然大きくなりズボンを突き破って表れたのは磨きたてのぴかぴかのボルトだ。あまり目立たないが田中慎弥の傑作短編。
    『切れた鎖』は没落した名家の女三代が主人公というか語り手で(おばあちゃんが主人公だろうか)、因襲に満ちた共同体の中で朝鮮半島からやってきた教会を憎み、顔がいいだけでそのほかには何のとりえもないだろう男たちと遊んでばかりいる二代目の問題に手を焼き、幼稚園に通う孫と共同体の没落を表しているようなファミリーレストランで食事をしながら話は進む。この「近代化が進み空虚さだけが残った共同体」の描写がとてもうまい。「男たちが酒を飲んだ後に食べるのは穴子の湯漬けではなくアイスクリームサンデーだった」という一文にすべてあらわれている。
    この作品全体に漂っているのは「濃厚な死の匂い」だ。ある人にとっては不快なものになるだろう。はまる人にははまる。薄くてすぐ読めるし本屋に行けば新潮文庫から出ていることもありわりと簡単に手に入ると思うので読まれたことがない方は一度読んでみることをおすすめしたい。現代文学の担い手の初期の短編。読む価値あり。

  • あそこの人たちは日本人じゃないの。偽物の日本人なの。ミサは本物の日本人なんだから偽物と仲良くしちゃダメ。
    偽物と仲良くしちゃダメと言った自分は在日の人たちを犬と呼んだ母へ一歩近づいてしまった。

  • 『不意の償い』生と死に挟まれた罪悪感に苛まれながらも父になる青年の話
    『蛹』社会に憧れ闘いに怯える青年の葛藤を描いた秀作
    『切れた鎖』廃れゆく名家の女性が世代を超えて捕らわれてしまった因縁から逃れようとする話
    どの作品にも言い知れぬ不安の根元には父という存在への対極する思いがある。

  • 駄作

  • 田中慎弥の作品に出てくる人物の本当にどうしようもなさ。これこそが人間なのではないかと強く思う。本当に本当にどうしようもない。ろくでもないし、怒りもわいてくる。しかし、ひとつひとつの言動を取り上げるのではなく、総体として、人間はこういう弱さとか残忍さを抱えた存在なのではないかという疑念を払拭しきれない。しかしこのひとの本の、日本伝統純文学のど真ん中感はいったいどこから来るのか。少々時代錯誤感をわたしはかんじてしまうのだけれど、今、こういうものを発表する意味、というのはまあ著者の関係なのでしょうがないのだけれども、こういうものを読む意味、ということについて考えていくと、どうにもこうにもやっぱりしっくりこないんだよなあ。

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海峡の漁村・赤間関を、コンクリの町に変えた桜井の家。昔日の繁栄は去り、一人娘の梅代は、出戻った娘と孫娘の3人で日を過ごす。半島から流れついたようにいつの間にか隣地に建った教会を憎悪しながら…。因習に満ちた共同体の崩壊を描く表題作ほか、変態する甲虫に社会化される自己への懐疑を投影した「蛹」など、ゼロ年代を牽引する若き実力作家の川端賞・三島賞同時受賞作。

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