図書準備室 (新潮文庫)

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著者 : 田中慎弥
  • 新潮社 (2012年4月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101334820

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図書準備室 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「図書準備室」「冷たい水の羊」の2編入り。「冷たい水の羊」、すごすぎた。いじめられっこの主人公は「いじめられたと感じたらそれをいじめ」といういじめの定義を採用し、「自分はいじめられていない」とし、ひたすらいじめを受け続ける。いじめの内容もかなり陰惨な部類に入る。主人公はただただ自分の中の論理でいじめっこを観察し、自分の論理に逃避する。ただ一人、先生にいじめがあることを報告した水原里子という女子と心中することを計画しながら。重い。でもあの結末、主人公がいつか「死ねなかった」ではなく「死ななかった」と思える日が来るのだろうか。
    「図書準備室」は芥川賞第一作の「夜蜘蛛」にも通じるものがある、現代に第二次世界大戦はいかにして通用しているのかを描いた作品、と思う。田中慎弥さんはしっかり今の戦争を書く。

  • かなり独特で読みにくいが少し共感できる

  • 「逃げてからどうするの?」従兄の幼い娘に問われ「逃げつづけるしかない」と、答える主人公。たとえそれが辛く虚しい行く末だとわかっえいても、逃げはじめたらそこに終わりはなく、逃げ続ける人生が死ぬまでつづくのかな?

  • ”いじめ”という概念を、独自の論理を広げ、いじめられていないということを考える主人公の話である「冷たい水の羊」を併録している。こちらにフォーカスを当ててレビューを書き込む。内容としては、いじめを受けている主人公の想いが淡々と書き込まれており、物語が進んでいく感じである。常人であれば、いじめを受けたらもう二度と受けたくない、一秒でも早くいじめを終えて欲しいと思うだろうが、主人公は独自の論理を導きだし、「もっとやれ」と心の中で願望する描写は、マゾという感覚ではなく、一種の性癖なのかと感じる。する側も受ける側も各々の価値観で行動しているのであって、読者がどのように捉えるかは人それぞれだろう。本の虫ではないが、今まで読んだ小説の中で、一番読了するのに時間がかかったのは、一行一行の文章に重みを感じたからかもしれない。表題作も然り。

  • 読了。
    図書館準備室
    田中慎弥

    図書館準備室と、冷たい水の羊、の2話が入った単行本。
    田中慎弥のなかでは、これが一番読みづらかった気がする。一文一文が長い上に、設定はあるにしても狂気しか感じられず、そこに希望はあるのか、よくわからないストーリーだった。
    たしかに文体のできあがりは素晴らしいんだけど、いまいち暗黒の世界が垣間見えているようで…でも、芥川賞とる人ってそういう人が多いよね。やはり人間の美しくないところを文章にするのが、審査員にはステキに映るのかしら。

  • 単調で投げてしまいました^_^;
    主人公の話の脱線っぷりが半端なくて、でもこの作者らしいというか、芥川賞受賞の際にテレビで初めて姿を拝見した時の印象を裏切らない作品でした。
    出来れば読み切りたいな〜~_~;多分無理だと思うけど…笑

  • <「冷たい氷の羊」について>
     いじめがストーリーに絡んでくる小説は読むのが難しいなと感じる。凝視すべき点は本当にそこなのか?と疑いつつも、気が付けばそっちに目が行ってしまう。いかにも寓意がたっぷり込められていそうで、読書の流れを勝手にぶった切ってしまう。
     主人公の視点がはまった。狭溢な世界の中で、視線で外側へ穴を空けるんじゃないかってくらい、じっ…と見る。でも、絶対に穴は空かない。でも、しっかり見てる。一所懸命見てる。そんな感じが好き。
     現実をそのまま見ている訳では、もしかしたらないのかもしれない。後半に出てくる他者の視点が、主人公のような少年がたくさんいることを気付かせてくれた。
     終盤の描写は素敵だったが、面白くは無かった。

    <表題作について>
     笑ったけど、何だか良く分からなかった。
     どちらの短篇も、思っていることや言っていることが行動とかみ合っていない。袋小路チックで息苦しい。客観的な語り口なのに、明らかにズレてるであろう解釈をする。語り手は、そのズレを意識しているのだろうか。
     意識しているのだと思う。話の途中気が付けばいない伯母や、母の反応に、彼がズレを感じ取らないとは流石に思えない。だからこそ、彼は洪水のように語るのではないだろうか。それが、彼が現状もち得るアクセスの手段なのではないか。
     だから、本当か作り話かは、どうでもいい。あくまで話。戦争も同じく、話。吉岡のとんでもない体験も、入れ籠構造によってぼんやりと遠ざかっていく。
     「冷たい氷の羊」では読めたのに、「図書準備室」での吉岡による残酷な描写は眠くて読むのに苦労したのは、この現実性の乏しさが原因なのかも。なんだか、戦争が遠のいた。

  • う~~ん、暗い。

  • 「図書準備室」、「冷たい水の羊」の二編が収録。前者は、ニートが題材。ニートである主人公が延々と喋り続けるという不思議な短編。後者は、いじめられている少年の話。勿論、読者によって、様々な感じ方はあると思うが、個人的には一文一文が長く、非常に読みづらい文章というのが感想。

  • 『図書準備室』を読み終えた。何度も読もうとしては途中で終わっていたが、その度に
    「この作家はいったい、作品内に本当の『言いたいこと・主張』を秘めているのだろうか」と不安になってしまった。先ほどついに読了したのだが、結局その不安の思いは現実になってしまった。

    「三十を超えて働かないでフラフラしている事の釈明」をテーマに始まるのだが、結局、それは僕のうちでは明らかにならなかった。挨拶をしなかった事なのか、ショッキングな事件を聞いてしまった事が原因なのか判然としない。それでいてどうもそれらではない気もする。

    とは言え最近ありがちな、「一見作者の主張が不在であり、実際もやはり主張のない小説」であると言う断言もできない。これは僕の読解力不足ということになるのだろうか、いまいち「判然としない」のである。それが純文学というものだと言われれば、それまでなのかもしれないが……。

    批判するつもりはないが、三島や谷崎や川端を敬愛しているという割には、あまり文章に美しさを感じる事が出来なかったのも残念だった。後半では名文と行かないまでも良いと思った文章が散見されたのだが、前半はなんだか無理やり長さを稼いでいる気もしないでもなかった。

    恐ろしく饒舌な主人公なのだが、序盤に
    「どうしてこんなに声が小さいのだろう」と述べている所にも矛盾を感じてしまう。僕の中で「声が小さい」と「饒舌」はあまり共存するものには思えないからだ。

    とにかく釈然としない思いが強いので、この作家の作品を他にも少々読んでみる気にはなった。


    さて、併録されている『冷たい水の羊』を読み終えた。こちらは作者の処女作であるが、正直こちらの方が良かった。処女作と言うものはつまり、
    「まだ著者が小説家でない時分に書かれた作品」である。

    別に新人賞の選考者におもねる訳ではないだろうが、こちらには相当三島や川端を意識したとみられる修飾の多い文章が随所に見られた。一方で『図書準備室』にはそのようなきらめいた文章は殆ど無かった。これは要するに著者が処女作をいかに「必死なくらいに力んで」書き、二作目をいかに「小説家として肩の力を抜いて」書いたか、と言う事を暗示していると思う。

    いじめの被害者の少年が、「自分はいじめに遭っているのではない」と事実を認めたがらないのは、よくある陳腐な考え方だと思うが、作者はそれをテーマに作品を仕立てあげる事に成功している。その時々の主人公の少年の心の変遷を映し出しているとも読み取れる、一種捻くれた比喩や表現が随所に見られるのが上手く効いているのだと思われる。

    これは観念小説だと思う。人によっては奇妙な表現の多さにくどさを感じる事もあるかもしれない。でも、確かに才能は感じた。

  • 野球少年の汗臭さは、臭いけどそれだけ。
    その汗臭さを汗臭さとして発散できずに年をとってしまった人間のねばねばした臭いが漂う作品でした。

    アダルトチルドレンというと、無味乾燥な定義になってしまいますが。
    健全な大人なら、わだかまりのない思い出になっている「学校」という舞台で粘っこい物語を作れるあたりに、昇華できていない黒い煮凝りのような感情を感じました。

  • まだ全部読んではいませんが


    やはりこの人は凄い人なのだな、と
    読めば読むほど
    惹かれていくから不思議です

    多分自分の中にも彼と同じ狂気が宿っていて
    呼応してるんだと思います

    作者紹介の顔を見て
    知っている人の瞳にとても似ているなといつも思う
    彼ほどぎらぎらはしていないけれど

    彼も
    彼の書く文も
    嫌いじゃないです

  • ご本人から想像していたとおり、頑なな難しい人間の奥深くを表現してると思う。若い時分、落ち込んでるときに読む本かなと思う。

  • 『共喰い』で芥川賞受賞した田中慎也のデビュー作。共喰い読了後だからわかることだけど、デビュー作から『らしさ』がバリバリ出ている。表題作は主人公の独白が延々と続く怪作。どちらの作品も作者の思想や価値観で埋めつくされている。しかし不思議と不快にはならない。改行がほとんどない作品に抵抗のある人だとちょっぴりキツイかも(笑)

  • 図書準備室、冷たい水の羊の二編からなっている本。星4つをつけたのは後者の方。図書準備室はぼちぼち。冷たい羊はいじめをあつかっている作品。いじめられている彼は自殺を考えるようになる。色々な理由をつけ、最良の日を選択する。どうなるか。暗い内容を書いている本だが、好きな感じの落ちで、読み終われば爽やかな感じがした。次は著者の切れた鎖をよんでみたい。

  • 私には読むのが辛かった。

  • 芥川賞受賞時に石原都知事とやりやった熱も冷めた頃なので、そろそろ田中氏の本を読んでいこうと思いました。
    同じく芥川賞西村賢太氏と比較されることもありますが、作風は全く違います。西村氏は私小説なのに対し、田中氏自身はあくまで小説(フィクションという意味でしょうか)と言っています。しかし、実体験がにじみ出るという意味では、それはもうすでに私小説なのでしょう。
    「図書準備室」は、中学生の視点から大人の様々な事情を理解しようとして、結局、浅い教養から歪んだ理解をしてしまう様を、「冷たい水の羊」では、いじめられる主人公が誰にも相談できず、それを論理だとして受け入れようとしますが挫折する様を、細かな心理描写で丁寧に描かれています。

  • 表題作は、作者自身を思わせる引きこもりの主人公が、中学生の頃の教師から聞いた話を語るんですが、その内容自体は結構衝撃的で、なんだろう、ちょっと大江健三郎の初期作品みたいな空気があるんですけども、それを引きこもり中年の働かない言い訳として語らせる構造の意味はあんまりわからなかったです。もう一編の「冷たい水の羊」のほうは、いじめられている男子中学生が主人公なのですが、いじめっこ(※美少年)との間にある感情が、だんだん歪んだ同性愛じみてくるあたりは上手いなあと思いました。ただなんかこう、どちらの作品も理解はできるけど共感はできない(したくない)なあというタイプの主人公なので、読み終わった後、良い気分にはけしてならないです…。

  • 初めて田中慎弥さんの書いた物を読んだ。テレビで姿を拝見して想像していたとおりの文体。自分の好みの文体だけれど、少しもたもたしているのが気になってしまった。芥川賞を受賞した作品も読んでみたい。

  • 2編とも、読んでいる間はけして気持ちいいものではない。というか、不快のレベル。劇的でもないし最後まで不快さが払拭されるほどのことも起こらない。ただ、表題作はいろんな解釈が出来る(私だけ?)し、「冷たい~」は主人公がそれまでとは違う形で明日を楽しみに?待てる終わり方。大々的でないところが返ってリアリティがあって、いろいろ想像出来ていいのかもしれない。

  •  「冷たい水の羊」について云えば、解説にも触れられているが、鳥居がある広場で松の木の下の根と地面との間の拳くらいの穴に蟻がたかっていた。それを見た父親が「ほう、たくさんいるもんだな、大きい松の木は力の弱い者のめんどうをみてるんだ。」と、それに対し、主人公の目は「枝葉が伸び過ぎたかわいそうな大木を蟻たちが死なせてやろうとしているのだと」映った。という、夏休みの父との想い出として語られるシーンがある。

     選挙がどうたらこうたらっていう家族の会話があったり、父親は代議士かなんかなのだろう?弱い者を守ろうとする強者として位置づけられるのだろうか。それに引きかえ生贄のごとくいじめの標的にされている一見、自虐的にもとれる主人公(息子)の言葉は、弱者として映し出される気がする。
     その人の生き方、人生観によって同じものを見ても受け止め方が違ってくるのだろう。
    彼をいじめる連中とか強い父親像と向き合い乗り越えなくてはならない。
     ちなみに表題作「図書準備室」は、主人公の一人語りが、なんかくどくて飛ばし読みだった(^_^;)

  • 「図書準備室」・・・「なぜ30歳を過ぎても、私は働かず母の金で酒を飲んでいるのか」という言い訳と屁理屈を延々と語る主人公。その才能は、商売になりそうです。
    「冷たい水の羊」・・・いじめシーンがショッキング。経験あるのか想像力で書き上げたのか。作者の筆力に圧倒される。

  • 珠玉の受賞作品 短編2編 面白かったぞ

  • どろどろとしたコンプレックスの大量のマグマが噴出してくるような小説。とにかく迫力はある。文章の力は確実にある作者。

    ただ内容的に、この小説を読まなければいけない・・・というか読みたい理由が全く見つからない。

    一つの文章が長く読点で区切ってつないでいき、なかなか句点が現れないのも特徴。

  • 単行本を買おうかと思っていたら文庫化しました。ということでさっそく購入です。『共喰い』に続いてまた2冊ほど単行本も出ていましたし、なかなか波に乗っているようです。話題の田中さんです。

    ちょっとだけ読もうと最初の文章を読むと、文のつなげかたで「おっ」と思いそのまま読むのを進めました。「図書準備室」も「冷たい水の羊」も暴力とセックスが描かれます。暴力やセックスというのは文学でよく出てくるモチーフとも言えますが、それを描くこと自体が前景化しすぎているような小説は個人的にあまり読む気がしません。田中さんの場合は表面的にはそういうことを描いているのですが、こちらに伝わってくるものはもう少し深いところにあるもののような気がしています。そのため、この作家がとても気になっています。

    それは何なのだろうと『切れた鎖』を読んだ時にも思ったのですが、今回も自分の中でしっかりとした結論は出ませんでした。ただ『切れた鎖』(とりわけ所収の「蛹」)などと合わせて考えると、この作家は「生命」に関心があるように思われます。もう少し言えば、心臓が脈打つ様とか、血が体内を巡るイメージを作品から感じ取れるのです。むきだしの内臓が蠢くような目を逸らしたくなるようなイメージまで喚起されるようです。畢竟「生きること」に関して多大なる関心を持っている作家のように思えます。そしてそれが読み手にも伝わってくるのでしょうか。何となくですが、姿勢を正して読まねばならないような気がしてしまうのです。

    この姿勢を正さねばならない感じが個人的に嫌いではないので、この作家が気になるのかもしれません。そういえば解説を書いている中村文則さんもそんな作家のように思います。

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なぜ30歳を過ぎても、私は働かず母の金で酒を飲んでいるのか。それはあの目に出会ってしまったから。中学の古参教師に告白させた生涯の罪を、虚無的に冷笑しつつ、不敵な価値転倒を企てる野心的表題作。
級友たちの生け贄として凄惨ないじめの標的にされた少年が、独自の「論理」を通じて生存の暗部に迫る、新潮新人賞受賞作「冷たい水の羊」を併録。
芥川賞作家、田中慎弥 のデビュー作品集が文庫化。

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