漱石の孫 (新潮文庫 な 28-2)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101335124

作品紹介・あらすじ

百年前、祖父・夏目漱石がヨーロッパ文化と格闘していた下宿。その部屋を訪れた時、僕は予想しなかった感動に襲われた-。日本を代表する作家の直系として生を享けた著者は、如何にして、その運命を受け入れるようになったのか。ロンドンで祖父の足跡を辿りながら、愛するマンガへの眼差しを重の合わせつつ、漱石を、音楽家だった家・純一を、そして、自分自身を語ってゆく。

感想・レビュー・書評

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  • 有名人の子孫は大変っていう話。

  • 資料ID:C0027209
    配架場所:2F文庫書架

  •  夏目漱石の直系の孫にして、マンガ評論家の房之介氏による自伝的エッセイ。
     『肉親から見た漱石論』ではなく、主軸は『漱石の血筋にある自分』。
     偉大な著名人の子孫に生まれついてしまった者の葛藤と、屈折した青春。
     日本を代表する文豪の影の呪縛、その宿命を、歳月を経る中で受容し、著者は自己を確立してゆく。
     祖父の足跡を辿る英国の旅、ロンドンの下宿先で得た、思いがけない感慨。
     祖父と父、自分との三代の、性向の比較。
     漱石の文学論と、己の専門領域であるマンガ論の対比。
     その文体は自然体でわかりやすく、温かみのある筆致の底流に滲む知性に、文豪の血脈を連想してしまうのは僭越だろうか。
     悪妻と風評のある漱石夫人の、夫との情愛あふれる手紙のやりとりや、“おばあちゃま”の人柄を窺わせるエピソードなど、赤の他人の漱石研究者には書けない、肉親としての優しいまなざしで綴られた下りも微笑ましい。
     〆の出来過ぎたような猫の登場も、さもありなんと思える。

  • マンガ家で、夏目漱石の孫である著者が、「漱石の孫」という運命とどのように向き合ってきたのかが語られています。

    NHKの番組の企画で、漱石のイギリス留学時の足跡をたどることになったのが、本書執筆の動機になっているとのこと。近代の黎明期にイギリスを訪れ、文明との葛藤を一身に引き受けた漱石の心のうちに迫りつつ、現代の日本文化を代表するマンガやアニメといったサブカルチャーにおいて、近代以来の日本の置かれている位置を確かめなおすという、重層的な構成になっています。平明な文章で綴られているので、さらっと読み流すこともできますが、扱われている内容はかなり深いように感じました。

  • 有名人の一族は皆大変だということでしょう。
    どうしたって巨大な存在がつきまとうだろうし、その中で自己アピールする困難さは常人では計り知れないことに違いない。
    その大変さに免じて★3つ、内容はそれほど面白いものとは思えないかな。

  • 読書録「漱石の孫」3

    著者 夏目房之介
    出版 新潮社

    P133より引用
    “「漱石の孫」と見られたりするのが「うんざり」なのではない。
    また同じことを話すのか、という「うんざり」なのだ。”

    目次から抜粋引用
    “漱石と出会う
     夏目家の鬼門
     漱石と僕
     業の遺伝
     百年後の猫”

     漫画家、コラムニスト、マンガ批評家である著者による、漱石
    の足跡をたどりながら描かれた自伝的エッセイ。
     漱石の元下宿部屋から漱石が描いた水彩画まで、テレビドキュ
    メンタリーの取材やマンガ展のシンポジウムの話などを混じえて
    書かれています。

     上記の引用は、ロンドンのホテルでの、テレビディレクターの
    取材に対する一文。ググレカスという言葉は、こういう気持ちを
    持った人が使い始めたのかもしれないなと思いました。
    既に他の著作で書いておられるとのことですから、その部分をコ
    ピーして常に持ち歩いたら、手渡しだけで済むかもしれません。
    まあ、取材するほうがその対象者を事前に調べて、著作があるな
    らそれなりに読んでおくくらいのことはしておいたほうがいいと
    は思いますが。
     著名人の直系親族というのも大変なんだなと思いました。
    最近はあけっぴろげに誰それの2世3世としてテレビでタレント活
    動されている人も多くなってきていている今の状況で、著者がむ
    かしよりもずっと気楽になっておられたらいいなと思います。

    ーーーーー

  • おじいちゃんが、世の中では「文豪 漱石」と呼ばれている筆者がロンドンの下宿で改めて、祖父について、いろいろ考えをめぐらした。自分の生まれる前に他界してしまった人が超有名人というか、文豪なるカテゴライズで世の中から見られている奇妙な気持ち。1000円札事件は、なるほど…他人事なのだが、ちと同情する。父や叔父から見た癇癪持ちが自分にも引き継がれている?ことに対する感慨。
    もちろん、私も、漱石は鴎外や龍之介と同じく別格の存在ですよ。
    会ったこともない人が…というのは、私も自分の祖父に対して思ってきたところだったので、妙に納得する。自分の親のことも謙虚に見よ、と叔父や叔母に言われたこともあったが…もはや現実感がなく、書かれたものや写真などから、あとは、自分とどう関わったか、で記憶が作られていくのではないか、と思う今日この頃だ。

  • ちらちら見える自意識過剰さが鼻についた。もっと謙虚さがあれば読みやすかったのに…

  • 古本屋で見つけて衝動買い。

    夏目 房之介さんは、NHK教育テレビの
    「土曜倶楽部」に出てらした時から
    飄々とした面白い人だな~、と思って
    ちょっと気にしてました。

    最初に読んだのは、週刊朝日に連載の
    「デキゴトロジー 學問」の単行本。

    ここんとこしばらくご無沙汰してたので
    見つけて迷わず購入してみたら...
    内容がもの凄く「真面目」でした(^ ^;

    百年前、夏目漱石が下宿していたという
    ロンドンのアパートを訪ねる冒頭から、
    自分と漱石の「距離感」を自己分析しながら、
    若い頃「漱石の孫」と呼ばれることを
    いやがっていたのが、徐々に受け入れられる
    ようになって行った心の動きを追い、
    本職である「マンガの表現論」を語ったり、
    はたまた自分 - 父親 - 漱石とつながる
    「業の遺伝」を解き明かしたり...

    非常に「個人的な」心象を綴りつつ、
    「祖父」が「日本一有名な文豪」なため
    必ず「公的」「社会的」な、
    「役割分担」を背負わされていたことへの
    葛藤と「折り合いの付け方」が
    平易な文章ながら分かりやすく書かれている。

    身内に「超有名人」などいない一般人には
    なかなか実感することは難しかろうが、
    それでも共感することができる一冊。

    ある程度年齢が行ってから読む本かな。

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著者プロフィール

漫画コラムニスト、マンガ家、エッセイスト。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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