からくり民主主義 (新潮文庫)

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著者 : 高橋秀実
  • 新潮社 (2009年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101335544

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からくり民主主義 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  •  世の中の複雑さにため息が出る、そんなルポルタージュ集です。

     沖縄米軍基地や福井の「原発銀座」、そして統一教会に上九一色村など、話題の土地に実際に行ってみた著者。勿論著者も、取材前は我々とほぼ同じく、メディアで報道されるような"対立軸"を頭に入っているわけで、その先入観を前提に取材を始めるわけです。
     が、取材を進めるうちに、そこで意外な実情を知ります。

     当事者は、賛成派も反対派も、外から(特にメディアを通して)見るよりずっと冷静で"普通"なのに気づきます。テレビで見るような激しい怒りも、イッちゃった感もなく、肩すかしを食らったような気分にさえなります。
     逆に、メディアを通して「可哀想な被害者だ」と思っていた人の言い分が支離滅裂で訳がわからない、というのもあります。が、ともかく、丹念に当事者の話を聞けば聞くほど、思い描いていたイメージと当事者の像にズレが生じてくるのです。
     そして、話を聞いているうちに、それぞれに言い分があり、それはどれもそれなりに正しく、それなりに変なところもあります。そういう「不完全な正しさ」と、様々な人々の利害得失により、紆余曲折を経た事実経緯。それらの絶妙に危ういバランスの上に組み上がった現状は、さながら崩壊寸前のジェンガのよう。下手に触ると崩れそうで、もう誰も手が付けられなくなっています。

     そんな実情を目の当たりにした著者は、ただただそこで「困り果てる」…そんなルポルタージュです。
     著者の、時にシニカルとさえ思える透徹した視点から描き出される事実の全体像は、確かに「こりゃどうしようもねぇなぁ…」と思わされる複雑さです(わかりやすい対立があって、白黒ハッキリ分かれるようならば、そもそも事態はそんなにこじれないわけですから)。

     ものすごい抽象的な感想になっちゃいましたが、本書のルポは、どうしようもなく複雑な事情を、ある種の「トホホ感」をもって読んでもらいたい、そういう作品だと思います。

     再稼働を巡って対立の激しい原発の問題についても、結論を出す前に是非一度本書の第7章をお読み頂きたいところです。


     議論・討論という奴でとにかく白黒をはっきりつける態度に何かモヤモヤするモノを感じる、という方。本書を読んで一緒にモヤモヤしましょう(笑)。
     でも、白黒キッパリつけるにせよつけないにせよ、心の何処かでモヤモヤを抱き続けるというのは大事なことだと思います。やっぱり、世の中はそんなに単純なのじゃないですから。

  • 日本各地の困った問題のホントのところを高橋秀実さんが聞いて歩くとても誠実なルポです。
    「〇〇賛成!・〇〇反対!」などの対立は作られるものであって、実際にあるのは個々人の思惑のズレであるという指摘は目からウロコでした。

    ご当人たちの困った問題というのは、他人ごととしてひいて聞くとプッと笑ってしまう可笑しみを含んでいます。わたしなどは不謹慎にも大笑いするところがたくさんありました。

    実に面白く!かつ、とてもためになる本。さすが、養老さんのおすすめ。

    Mahalo

  • 仙台空港ソファーで読了(67/100)
    世間の裏側。ジツニオモシロイ

  • 考えさせられる内容です。親本は2002年出版、各章の初出は1995年から2002年と古い本ですが、古さは問題になりません。

    序章 国民の声――クレームの愉しみ
    第1章 親切部隊――小さな親切運動
    第2章 自分で考える人びと――統一教会とマインドコントロール
    第3章 忘れがたきふるさと――世界遺産観光
    第4章 みんなのエコロジー――諫早湾干拓問題
    第5章 ガリバーの王国――上九一色村オウム反対運動
    第6章 反対の賛成なのだ――沖縄米軍基地問題
    第7章 危険な日常――若狭湾原発銀座
    第8章 アホの効用――横山ノック知事セクハラ事件
    第9章 ぶら下がり天国――富士山青木ヶ原樹海探訪
    第10章 平等なゲーム――車椅子バスケットボール
    終章 からくり民主主義――あとがきに代えて
    参考・引用文献
    解説 村上春樹

  • 困った困った。。。

    10年前の出版。統一教会やオウムなど時代を感じさせる問題の中に未解決の沖縄米軍基地問題が。テレビでは全く説明されていない軍用地の借地料をめぐる住民同士の対立や、マスコミ向けの反対運動などは村上春樹の解説にもある通り、弱ってしまう。何とかならないものか。若狭湾原発銀座問題もそうだがとてもよく調査してある。困った困った。。。

  • TVや新聞はあらかじめ作られたシナリオに沿って番組や記事を作る。
    起こってしまったことを調べる警察署よりは、悪をただすという目的意識を持って悪を探し求める検察に似ている。より強く正義感をドライビングフォースにしているだけにたちが悪い。
    いまどきマスコミを信じている人も少ないとは思うが、高橋秀美氏の本著には、マスコミや中央の政治家が、説明の難しいもの、シナリオに沿わないものをひたすら無視する様子が書かれている。

    著者の「弱くても勝てます」はひたすら開成高校の選手と監督へのインタビューが中心で軽妙な印象だった。この本でもその親切でわかりやすく親しみの持てる語り口はそのままだが、取り上げたテーマについては、実に良く勉強して臨んでいる事がわかった。ありとあらゆることを調べても、そこから無理に結論を導こうとしないところがこの著者の良いところであり、読者に好かれる所以だろう。

    沖縄米軍基地問題、若狭湾原発銀座、諫早湾干拓問題について述べた三つの章は、マスコミの報じる被害者と加害者の単純な構図がまったくのでたらめであることがはっきり書かれている。そして、国、自治体、地元住民各者各様の本音、地元住民間の微妙な対立関係などが色づけなしに紹介されている。原発賛成派や推進派にとって反対派は補助金や補償金のつり上げのために必要不可欠のもので、その功績によってとても感謝されている事や、当の反対活動家自体が自らの役割をそのように意識している事など、都合、事情、本音のオンパレードに、大人は「やっぱりそうだよなあ」と頷かざるを得ない。
    著者によれば小さな親切運動の達人曰く、「人に席を譲るためにはまず自分が座ること」なんだそうだし、富士の樹海で自殺者の死体を発見する事は、住民にとってはただただ煩わしいだけのものなんだそうである。

    普通の人は誰もがそれぞれの人たちの本音に理解をしめすことだろう。視聴者や読者はほとんどが賢い大人と言って良いから。
    しかし残念ながら普段私達は、マスコミや政治家にはすっかり舐められてしまっているのだ。タイトルの「からくり民主主義」というのは私達の社会がそういう都合、事情、本音を持った人々の集まりになっていて、マスコミや政治家、社会活動家がすぐ「みんな」をねつ造してありもしない現象をあるかのように伝える背後に、全然別のからくりがあることを表そうとしている。

  • 物事は単純じゃない。必ず、表と裏があることを実感させてくれる本。
    マスコミ関係者(特に朝日新聞とか)こそ、この本を読んで反省すべき。まあ、しないだろうけど。

  • 国民の声ークレームの楽しみ
    アホの効用ー横山ノック知事セクハラ事件
    平等なゲームー車椅子バスケットボール
    「反対の賛成」ー沖縄米軍基地問題
    忘れがたき故郷ー世界遺産 白川郷

  • 民主主義。「みんな」ってなんだ?どの章もおもしろおかしいだけではなく、きっちりとした取材に裏付けられた情報があるので、お得感満載。
    好きなのは第9章の「ぶら下がり天国――富士山青木ヶ原樹海探訪」。ぶらさがれる側の実情がよく分かる。だれにも迷惑のかからない自殺などないのだ。たぶん。
    著者のクジラっぽい文体、好き。

  • 統一教会、諫早湾干拓問題、米軍基地反対運動、原発反対運動・・・
    単純にマルバツで語れないような問題について、現場の実態をあぶり出すという企画は面白いと思う。
    ただ、本書は、現場を取材して集めた「生の声」に対して高所から皮肉を込めて語るワイドショー的批判本になってしまった。
    この本に登場する人たちからは、「よそ者がわかったような口を聞くな」と言われんじゃないかな。

  • ノンフィクションなんだけれど、各章に結論というものがない。それが悪く言えば、著者の意見や考え方が無いように映るのだけれど、よく言えば、白黒決めずにそのままのかたちで問題をあぶり出していて真実性があるということになる、というところに、もやもやがあるんですね、読んでいて。そういう気持ちわるさを序盤から感じながら、距離を置いた視点だなあ、だとか、考えちゃうんです。だけれど、安易に結論や意見をおしつけるような手法というのは、実はほんとうじゃなくて、著者のように、深くなるまで深めていく、それも自然にあるがままを見て、というやり方を経てこそ、言えることってでてくるのでしょう。村上春樹さんが解説でそのようなことを書かれていて、「ああ!」と思いました。物書きとはかくありたいですね。また、もう10年以上前の本だから、トピックが古いのです。しかし、いまに繋がる「しがらんだ世界」がそこにはあるのでした。そして、春樹さんがいうように、それが「ぼくらが生きている困った世界」なのでした。

  • 筆者が、某宗教団体や沖縄、原発、樹海などを取材して、多数の当事者の声を描く。そうすると、あれ?私たちの思っているイメージとは少し違うのではないか?という部分が顕在化してきて、結局「実際どうなんだろう」という曖昧な状態で終わる。世の中は思った以上に曖昧にできているんだな。201407

  • 序章 国民の声――クレームの愉しみ
    第1章 親切部隊――小さな親切運動
    第2章 自分で考える人びと――統一教会とマインドコントロール
    第3章 忘れがたきふるさと――世界遺産観光
    第4章 みんなのエコロジー――諫早湾干拓問題
    第5章 ガリバーの王国――上九一色村オウム反対運動
    第6章 反対の賛成なのだ――沖縄米軍基地問題
    第7章 危険な日常――若狭湾原発銀座
    第8章 アホの効用――横山ノック知事セクハラ事件
    第9章 ぶら下がり天国――富士山青木ヶ原樹海探訪
    第10章 平等なゲーム――車椅子バスケットボール
    終章 からくり民主主義――あとがきに代えて

    解説・村上春樹

  • 「弱くても勝てます」からのはしご。
    高橋秀実という人の取材と文章が好きだ。

    まず序章で掴まれた。

    読み進むうちに、この本って何についての本だっけ、と感じることもあったが
    終章と村上春樹さんの解説によって納得した。

    諸問題の情景を描き、結論を出さない本。

  • 時事ネタエッセイ集。
    文章に嫌味がないのは取材現場に丁寧に足を運ぶ著者の姿が思い浮かぶからだろうか。
    「世の中は複雑である」という単純な結論に陥らないように気をつけたい。

  • クレーム文法の原型を供給するのは報道番組である。登場するキャスターたちは「世間の代表」を演ずる。弱者、思いやり、純粋な「国民の声」に耳を傾けるべきだと、一貫して権力を批判するスタイルだ。そもそも報道番組とは権力に対留守クレーム番組なのである。そのスタイルが世間を「ねつ造」する。例えば、国の政策についての意見を街角に聴くという演出でも、「反対」「賛成」はあっても「どっちでもいい」「どうでもいい」という声は無視される。この声に耳を傾けると、スタイルが維持できなくなり「権力」まで消えてしまうからである。
    かくして私たちは、ありもしない「世間」をめぐる輪の中を走り続ける(序章「国民の声」)

    2002年初版の本なので、少し旧いルポルタージュだが、確かにこの国の論点であるはずのの宗教、エコ、沖縄米軍基地、原発、自殺といった問題について、よくよく当事者の話を聞いてみれば、マスコミで流される対立構造のような単純な話でない構図が見えてくる。
    かくして対立の構図は消費され、忘れ去られ、姿を少しだけ変えて再生産される。
    やれやれ。。。。

    明日は総選挙だ。

  •  単行本で出版されたのは10年ほど前、ちょっと古い本ですが、タイトルが気になったので手にとってみました。著者の高橋秀実さんはテレビ番組制作会社の勤務を経てフリーになったノンフィクション作家です。
     本書は、賛成・反対双方の声が渦巻くいくつかの社会問題の現場を訪れ、自らの眼と耳で取材した実相レポートです。
     そこには、テレビ等のマスコミで伝えられている実態とはまったく別の現実がありました。しかし、現場のナマの声は「さもありなん」という感じのものが多いですね。

  • 沖縄の錯綜した基地問題に対してとまどっている姿、小さな親切運動に対する斜め上からの視点。どちらのスタンスも世の中に生きにくくする秘訣に違いないけど、よく分かる。
    でも「席を譲るために自分が座るべきかどうか?」は永遠の命題だな。若い奴が空けておいた席に座ってしまい、席譲らないと「自分が座っておきゃよかった」とよく思う。

  • 大好きな本。何年振りかに読み返してみる。

  • 「民主主義」ってどこにあるんでしょうね。本当に。
    個人的には第一章のがすごく気持ち悪く感じました。なんか、失礼かもしれないけれど「地獄への道は善意で舗装されている」が浮かんでしまう。。。
    森達也さんの本が好きな人にはオススメです。この著者の他の本も読んでみよう。

  • 少し前の本ですが、とても良い本でした。今となっては若狭湾の原発の話もリアリティをもって読めました。先月家族で訪れた富山のことも。基地問題もテレビやラジオの分かりやすい解説が信用できなくる困った本です。未読の方は是非。

  • The author provides interesting information to me. He shows that the realities are somewhat different from what media describe.
    For example, ordinary people in Okinawa aren't angry at the US military base. People in Shirakawa-Go, a world heritage site in Gifu Pref, are annoyed by the old wooden big houses. They don't want to live in such inconvenient house at heart. And another example: people in Fukui Pref are making use of Genpatsu invitation. Genpatsu, or nuclear power plants, have potential danger as turned out in 3.11 earthquake. So local governments normally take a negative stance toward building genpatsu. But depopulated villages needed to accept those facilities to gain huge extra budget.
    Meanwhile, I like Takahashi's investigation attitude toward those controversial topics. He is neutral, cool-headed and never behaves as if he were somebody!

  • 慣れっこになった「危険な日常」の危険《赤松正雄の読書録ブログ》

     大震災が起きてから二ヶ月余り。週刊誌や総合雑誌がこの間に“苦難を乗り越える一冊”やら“絶望が希望に変わる本”などの看板を掲げて特集を組んだ。弱きものの常で、ついついこういう企画には手を出してしまう。私が選んだのは、高橋秀実『からくり民主主義』。気鋭のノンフィクション作家が沖縄米軍基地、若狭湾原発銀座、諫早湾干拓、上九一色村オウム反対運動など10のテーマを選び、現地に足を運んで本当のところをユーモアたっぷりにかつ辛辣に抉り出している。

     ここでの関心の的は、福島原発の大地震・大津波の被災で致命的な打撃を受けてもがき苦しむ東電ではない。電撃的停止は折込済みかもしれなかった浜岡原発を擁する中部電力でもない。福井県・若狭湾に原発を集中させてきた関電だ。このルポを読めばなにゆえにここに原発が、との疑問がそれなりに解ける。しかし氷解というわけにはいかない。確実に言えるのは関電は僥倖だっただけで、明日は我が身ということだ。

     「死ぬときはみんな一緒だから安心なのである」と、地元の空気を突き放すように読み下す著者。文末に、役場に置かれた放射線モニタリングポストにずっと貼られている「調整中」の貼り紙のことを取り上げたうえで、「要するに『故障』しているのだが、そのことに気づく町民はおそらく一人もいない」と厳しく結ぶ。

     原発が集中する地にせよ、米軍基地が途方もなく集まってる地にせよ、それぞれの日常があり、四六時中ノーとばかりも言ってはいられない。当初の喧騒から静穏な日々が定着し、いつの日か「危険な日常」が常態になってしまう。そして、人は考えなくなり、「危険な日常」に遠い人々は安心の日々を過ごす。そういった風景のもつ意味を考えさせてくれる。ただし、絶望が希望に変わったわけではない。

  • 第8章 アホの効用ー横山ノック知事セクハラ事件が秀逸。

    他の章も考えさせられる。

    困った社会に生きている現代人の必読書。

  • 大きな問題になればなるほど、高橋のような斜に構えた視線が重要と思う。

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からくり民主主義 (新潮文庫)の作品紹介

賛否入り乱れる基地問題!「反対」で生計を立てている人もいて、ことはそう単純ではありません。民(みんな)が主役の民主主義は、でも実際に現地を訪れると、その「みんな」が意外と見つからないのです。「世論」、「国民感情」、「国民の声」の主は誰か?米軍基地問題、諌早湾干拓問題、若狭湾原発問題-日本の様様な困った問題の根っこを見極めようと悪戦苦闘する、ヒデミネ式ルポ。

からくり民主主義 (新潮文庫)の単行本

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