- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101336329
感想・レビュー・書評
-
20130620
題名に惹かれて。
文学的な文章のものを読みたかったので満足。
最初の導入は幻想的でだったので、そっち系かと思ってしまった。綺麗な導入だった。
もっと海子が絡んでくるのかと思ったけど、
魚彦の日常がメインだった。
あ、あと、お母さんも。
幼少期と思春期の狭間の男の子の不安感だったり、自分は主人公じゃないかもしれない、とか、ネガティブな部分とか、リアルでよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近の劇団事情には疎いので存じ上げませんでしたが、作者は「五反田団」という劇団の主宰の方だそうで。たまたま最近観た映画『横道世之介』の脚本がこの人でした。まあその脚本が取り立てて素晴らしかったわけではないんですが、この小説はタイトルに惹かれて読んでみました。
お母さんの初恋の相手が魚(イケスのハマチ)なので「魚彦」と名づけられてしまった小学生の男の子が主人公。この冒頭の、お母さんの初恋エピソードは個人的にとても好きで、もともと異類婚姻譚が好物なもので(まあこの恋は成就しませんが)、あと子供目線の話にも弱いのでとても期待が高まったんですけども。結果だけ先に言っちゃうと、まああの、期待ハズレでした(苦笑)。むしろ期待しすぎたのがいけなかったのかも。
子供たちのエピソードはどれも、ああ子供ってこういうこと言うよね、自らの幼少期を鑑みてもわかるわかる、あるある感は随所にちりばめられているんだけど、なんていうか、それだけなんだよなあ。イミもヤマもオチもなくてもディティールだけで読ませる作家もあるけど、本作に関してはまだまだ作者の力量不足。単なる作者のノスタルジーに終始していて、何より文章自体がとても退屈。
基本的にどのエピソードも「書きっぱなし」で、有機的に繋がっていかないから、終盤の山場もやや唐突で盛り上がりに欠け、子供の頃の思い出をただ思いつくままに書き連ねただけのような印象しか受けず、物語としての感動、カタルシスはありませんでした。
町田康の解説のほうが本編よりよっぽど面白かったです。 -
三島賞受賞作にあるなにか、どちらかというと人間の仄暗いというかなにか深淵を見つけ続けているような、物語自体は大きく動かないけどどうもなにか掴まれていくような、そういう感じの小説だった。
これってなんていう感覚なんだろう、そういう感覚としかいえないけども。 -
タイトルだけで勝手に、半魚人ファンタジーかなと思って買ったら違った。
小学生の男の子が主人公で、その時代のことが描かれている。その時代、というのはつまり子ども時代なんだけど、大人の目線からでなく、子どもの目線で、かつ子ども子どもと媚びてない感じがいい、小説だった。読めてよかったなーと思う。 -
『僕はお菓子に興奮しなくなっていた。去年、消費税というのが導入されて100円のお菓子は103円になった。遠足で300円分のお菓子を選ぶときも309円まで良いのか、それともやっぱり300円までなのか、その辺のルールが曖昧になって、遠足のおやつの買い物の魅力は失われたように思う。』
『僕は、ちびまる子ちゃんをまだ見たことがなかった。面白いという噂は聞いていたけど、なんとなくサザエさんに悪い気がして見れなかった。』
『いろんなことを知れば知るほど、いろんなことがつまらなくなる。』
『僕は「唾は泡があるやつで、よだれは泡がないものだ」と言った。
林は「目が覚めてるときのが唾で、寝るとよだれだ」と言う。』
『熱があると嘘をついたけど、デジタルになった体温計は全然嘘がつけなかった。』
「へー、埼玉ってどこ?」
「お前埼玉知らないの? 東京の横にあるやつだよ、丸い形の県」
「県庁所在地は?」
「池袋」
「海ある?」
「ない」
『切ないっていうのは、ちょっと泣きそうな気分に似ている。今の気持ちは心地良くて、この気持ちがいつか終わってしまうのが悲しいのか、なんと言ったら良いのかわからないから僕はそれを切ないと呼んでみた。』