かたみ歌 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • / ISBN・EAN: 9784101337715

作品紹介・あらすじ

不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した"かたみ"の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 朱川湊人 著

    朱川湊人さんの本はこの作品が初読書です。
    ブク友さんのshukawabestさんの本棚のご紹介で手に取り読むことが出来て良かったです( ˘͈ ᵕ ˘͈ )ありがとうございます。
    情緒あるって言葉がぴったりくるような作品に出会えた気がして、とても良かったです。
    下町の商店街を舞台にして起きる物語りは下町の情緒溢れるというだけなく、そこに息づく人間や得体の知れぬものの正体にさえ現れる雰囲気と感覚が情感に触れてくる。

    不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包んでくれる7つの奇蹟を描いた連作短編集。

    古本屋の芥川龍之介似の店主である老人が、ストーリーテラーのような役割で物語りは進んでゆく。
    そしてラストでその鍵を握る人物こそ…、、
    短編でありながら連作の形をとっているこの物語の中ではアーケード商店街アカシアと覚智寺のお寺近くに住む町の住人に起きる日常に、まさかの現世と黄泉をつなぐ謎が静謐に描かれている。
    時代背景や流れる歌などは知らなくて懐かしいという感覚ではないにしても、時代が変わろうが、人がもつ切なくて悲しい思いは変わらないと感じさせてくれる。死に別れた人にもう一度会いたい気持ちも…幽霊という魂の不滅にゾワリ背中が冷たくなる感覚もそれすら越えてしまう忘れられない感情が切なくて温かい。

    アーケード商店街って憧れる。
    色んなお店が軒並みにあり商売人の顔やお店独特な顔が見えるようで…人と人の温度が感じられる気がする。
    文中にあった古本屋の店主が言った
    「袖擦り合うも他生の縁ですから」言葉が印象的だった。
    今どき、そんな言葉を聞いたこともなければ、昔からある酒屋さんや野菜屋さんやお肉屋さん等、色んなお店が軒を並べるアーケード商店街も見かけなくなり、大型スーパーやモール店に変わるはやさと言ったら尋常じゃない(-_-;)

    私は15年位前にバスで15〜20分くらいのところに、アーケード商店街を見つけた๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘
    寂れた感じはあったが、私の理想とする野菜、果物屋、薬屋、お肉屋、衣料品店、お菓子屋、帽子屋、お茶屋etc…そんなお店が軒を並べており、商店街の横道それると市場まであったのだ꒰◍︎⍢︎◍︎꒱۶(地元の方に聞くと、随分昔から100年前くらいからあったのではないかと思う)
    一気に盛り上がりましたよ♪独りごちて(^.^)
    何の用もないのに、時々訪れては、果物買ったり、珍しく豆腐屋さんが自家製豆腐を綺麗な水の水槽みたいなところから一丁取ってくれるのには感激した( ˶ˆ꒳ˆ˵ )お肉屋でコロッケをその場であげてもらい、紙に一個ずつ包んでもらい、商店街近くの公園で食べるのが至福の時だった⁽⁽ଘ( ˊᵕˋ )ଓ⁾⁾
    あ〜懐かし、いやしんぼ(๑´ڡ`๑)だった頃を思い出す。
    とはいえ、自分も近所は大型スーパーが沢山あり、駅に隣接のモール店などの近場で一度にすべてが揃うお店で買物する方が多く、簡単だし、自分の中でも商店街への魅力を感じなくなる頃…久しぶりに訪れたアーケード商店街は昔からの商店はなくなり侘しくなっていた( ᵒ̴̶̷̥́ _ᵒ̴̶̷̣̥̀ )もう、5、6年前?もう少し前なのか…(コロナの時期の空白のような時間が最近では時をはやめ年数時期感覚がかなりおかしくなっている)
    市場はすべて閉店していた( ˙-˙ ; )
    打って変わり、そこには新築マンションが建ち並んでいた!このマンションに住む人たちは目の前に商店街があっていいなぁ…(´・з・`)
    と思いたいところだけど、その商店街さえ15年前に見つけた時のなりをひそめ、様変わり…荒んだ状況だ( ・᷄-・᷅ )
    変わっても当たり前のようになる時代だ。
    長々と私情挟んでしまったが、本作の中には変わらぬ心情や人同士の身近な付き合いがあり思いやりがある。下町商店街の良さを引き出しているが、近い存在であるからこそ、嫌な気分になったり辛く切ない思いも近いのかもしれないって思った。
    でも、人に素直に興味を持つことや親しみを感じることがすんなりと自分の心に沁みた。
    そして、やっぱり人は不思議な感情を持つことは大切だって気がした。

    ブクログで紹介されている朱川さんの他の作品も読んでみたいと思いました。

    7つの連作短編集、どの作品も切なく哀しいけれど救われた思いにもなる良作でした。
    ただ、”夏の落とし文”の啓介のお兄ちゃんのことがずっと気がかりのままだった。

    • hiromida2さん
      やりますね(ΦωΦ)ふふ…( ⸝⸝⸝⁼̴́◡︎⁼̴̀⸝⸝⸝)グルメな人‼︎
      やりますね(ΦωΦ)ふふ…( ⸝⸝⸝⁼̴́◡︎⁼̴̀⸝⸝⸝)グルメな人‼︎
      2022/12/11
    • 本ぶらさん
      朱川湊人は、一時期よく読みました。
      たぶん、同世代なんだろうなーっていう設定やシーンが馴染めるんですよね(^^ゞ
      もともと、日本ホラー小...
      朱川湊人は、一時期よく読みました。
      たぶん、同世代なんだろうなーっていう設定やシーンが馴染めるんですよね(^^ゞ
      もともと、日本ホラー小説大賞出身の人なので、なつかしさやほんわかする中にホラー要素があるのが持ち味みたいなところがあって。
      そういうところが好みに合うんです。
      ま、いわゆるジェントルゴースト系?の話を書く人なので、逆に怖さを期待しすぎちゃうとあてが外れるかもしれません。
      『水銀虫』等ダーク寄りなのもありますけど、これだけホラー映画を見たhiromida2さんなら、蚊に刺されたほどにも感じないと思いますよ(爆)
      2023/02/01
    • shukawabestさん
      本ぶらさん
      初めまして。ありがとうございます。
      たぶん、hiromida2さんならホラー系も許容範囲だと思います。
      本ぶらさん
      初めまして。ありがとうございます。
      たぶん、hiromida2さんならホラー系も許容範囲だと思います。
      2023/02/02
  • もの哀しく、ほのぼのとして、そぐとした郷愁を誘う奇跡の物語です。

    東京は下町のアカシア商店街でちょっと不思議な出来事が起こります。昭和四十年代半ばの学生運動が盛んな時で、千円札に伊藤博文の肖像が使われていた時です。この商店街では、日に何度も、テーマ音楽というべき昔の流行歌「アカシアの雨がやむとき」のレコードが流れています。

    昔懐かしいヒット曲が次々に登場し、その当時の話題の人や事件など当時をしのぶよすがが全編にちりばめられています。そして、いわくありげな幸子書房が舞台として必ず登場してきます。ちょっと不思議な幽霊が、過去の自分が、思い出が、傷ついた人の心を優しく包んでいきます。その模様を連作短編7話で綴っていきます。

    【読後】
    読み終りこの文章を書きながら本のタイトルの「かたみ」とはと思い検索すると「死んだ人や別れた人を思い出すよりどころとなるもの」と。そうです、この本は、死んだ人や別れた人を思い出すよりどころとなる歌を綴ったものでした。この文章を書きながら背筋が寒くなっています。音読していた時は感じなかったのですが、読み終ってこの文章を書いていると背中が、そして体が寒くなって来ています。こんな経験は初めてです。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【音読】
    2023年1月7日から14日まで、音読で朱川湊人さんの「かたみ歌」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、2008年2月に新潮文庫から発行された「かたみ歌」です。本の登録は、新潮文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    かたみ歌
    2017.06埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
    2023.01.07~14音読で読了。★★★★☆
    紫陽花のころ、夏の落とし文、栞の恋、おんなごころ、ひかり猫、
    朱鷺色の兆、枯葉の天使、の連作短編7話。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 昭和40年代半ばくらいかな、アーケード商店街を持つ東京下町。その周辺に住まう住民たちと死にまつわる短編集。
    下町で日常を暮らす人と不思議な存在との共存。昭和のどこかまでは、まだそんな雰囲気があったようです。郷愁という言葉が、一番しっくりくる作品でしょうか。
    “栞の恋”は、古本屋(この作品全体の主要舞台ですね。)の一冊の古本で、栞を使った短い往復書簡。素敵な恋の物語です。以前、映像化されましたね。これが、一番好きでした。そのうち電子書籍での恋なんかも書かれるかしら。
    朱川さん初読みかなと思っていたら、「白い部屋で月の歌を」ですね!作風違って気が付かなかった。こちらもすごく良かったです。
    shukawabestさんご紹介ありがとうございました。

    • おびのりさん
       shukawabest さんこんばんは。
      いえいえ、思い出させていただいてありがとうございます♪
      そう朱川さん読むべき人だったんですよー。...
       shukawabest さんこんばんは。
      いえいえ、思い出させていただいてありがとうございます♪
      そう朱川さん読むべき人だったんですよー。
      これから、読むローテに入れます。
      涙腺は、そのままなんですけどね( ; ; )
      2022/06/18
    • aoi-soraさん
      おびさん、こんばんは。
      早速読んだのですね!
      早いなー(☆▽☆)

      “郷愁”ですか。
      素敵な作品のにおいがします。
      私も早く読み...
      おびさん、こんばんは。
      早速読んだのですね!
      早いなー(☆▽☆)

      “郷愁”ですか。
      素敵な作品のにおいがします。
      私も早く読みたーい^_^
      2022/06/18
    • おびのりさん
      aoi-soraさん こんばんは。
      読みましたよ。図書館配本早かったです。
      朱川さん、いろいろ書いてて面白そう。
      読みたい本ばかりで、追いつ...
      aoi-soraさん こんばんは。
      読みましたよ。図書館配本早かったです。
      朱川さん、いろいろ書いてて面白そう。
      読みたい本ばかりで、追いつかないですよ。
      2022/06/18
  • 初めて読む、朱川湊人さんの作品。
    7つの連作短編集。

    舞台は昭和40年代の東京下町、“アカシア商店街”というアーケード通りとその周辺の街。
    この時代は子供も沢山いて、商店街も大変賑わっている様子。
    レコード屋のスピーカーからは古い歌謡曲が流れている。

    私の頭の中は、セピア色の古い昭和の街にタイムスリップした感じ。
    でもこの作品は、そんなノスタルジックなだけの作品ではない。
    黄泉の国と繋がっているらしいお寺があり、7編それぞれ、死や霊にまつわる不思議体験のお話。

    どの登場人物も、幽霊を普通に受け入れている(怖がらない)のが良い。
    本来こうした“不思議”は私達の身近なところあり、共存しているのかな、と思った。

    私が好きなのは、次の3編。
    「栞の恋」 古本に手紙を挟み、文通する話。
    「ひかり猫」 漫画家志望の男と猫の魂の話。
    「枯葉の天使」 最終話、全てのストーリーが繋がる。

    最後に全ての謎が解け、ひとまとまりになる様は、見事です。

    この本を紹介して下さったshukawabestさん、ありがとうございます!
    他の朱川さんの作品も読んでみたいです!

    • aoi-soraさん
      shukawabestさん、おはようございます!
      今、「花まんま」読んでます^_^
      まだ最初の2話ですが、ホラー要素強めで、この暑さの中...
      shukawabestさん、おはようございます!
      今、「花まんま」読んでます^_^
      まだ最初の2話ですが、ホラー要素強めで、この暑さの中ピッタリな感じですね。
      2022/08/01
    • おびのりさん
      おはようございます。
      私は、次は、いっぺんさん読もうと思います。
      どうだろう。
      おはようございます。
      私は、次は、いっぺんさん読もうと思います。
      どうだろう。
      2022/08/01
    • shukawabestさん
      ありがとうございます。朱川さんを話題にしていただくだけで幸せを感じます。ただ「花まんま」も「いっぺんさん」も悪趣味なものがありますので、何卒...
      ありがとうございます。朱川さんを話題にしていただくだけで幸せを感じます。ただ「花まんま」も「いっぺんさん」も悪趣味なものがありますので、何卒ご勘弁の程を。
      2022/08/01
  • 7編の連作短編集。
    心霊現象的なものをからめながら、人間の生き方がちりばめられています。
    特に最後の「枯葉の天使」はこれまでの謎がすべて明らかになります。
    全体の構成がよいので、どんどん引き込まれていきます。
    とても面白い本でした。

  • 東京の下町、アカシア商店街の7話。
    僕は朱川さんの紡ぐ、別の物語がちょっとだけつながっている、その構成が好み。③、⑤、⑥、⑦が特にお気に入り。
    ①紫陽花のころ
    初読はそれなりに楽しめたんだがなぁ、なんだかなぁ、そんな結末だったとは。
    ②夏の落とし文
    電柱の貼り紙に自分の未来が予見されていたら。いいお兄ちゃんだな、せつないな。
    ③栞の恋
    ひねりも不思議さもあってとてもいい。結末が意外だったが2読目以降も飽きない。
    ④おんなごころ
    かわいそうだが、悪い作品とは思わない。他の編ではケバい初恵の正気さのためか。
    ⑤ひかり猫
    猫2匹と「私」と古本屋の店主しか登場しないが、朱川さんらしい味わいの短編。
    ⑥朱鷺色の兆(ときいろのしるし)
    おっさんの一人称の語り口。予兆モノはいくつかあるがハッピーエンドで一安心。
    ⑦枯葉の天使
    他の6作全てに登場する幸子書房の店主が実は主役。締め括りとして珠玉の作品。

  • ’21年11月14日、読了。

    いやぁ…只々、ため息。素晴らしかったです!

    哀しさ、恐ろしさ、あたたかさ…色々な感情が、見事なバランスで混ざり合い、一冊の連作短編集を形造る様が、交響曲全集を聴き終えた様な圧倒的な感動と満足を、与えてくれました!

    最終話「枯葉の天使」、泣けました。でも、お見事!

    たった一つの不満足点は…巻末の、諸田玲子さんによる解説。ネタバレ、凄いです。本格ミステリーではないから、いいのかな?(以降、ネタバレ含む、と表記してある解説をよく見ますが…本書では有りませんでした。)解説を先に読むという方、ご注意を!

    • shukawabestさん
      shukawabestです。僕が最初に読み終えたときも、まーちゃんさんと同じような感触でした。この作品大好きです。僕は連作短編が朱川さんの一...
      shukawabestです。僕が最初に読み終えたときも、まーちゃんさんと同じような感触でした。この作品大好きです。僕は連作短編が朱川さんの一番の魅力だと感じています。
      2021/11/27
  • 商店街を舞台に短編がおさめられています。『栞の恋』が世にも奇妙な物語20周年スペシャル・秋〜人気作家共演編で堀北真希さんが印象的でした。切なくて不思議な恋のお話でした。

  • アカシア商店街の古書店を核にどこか懐かしい不思議な出来事を描く連作短編集。この世とあの世の境界なんて無いのかな。なんとも優しい登場人物だろうか。まるで長岡弘樹や内海隆一郎を彷彿させる作品だ。

    昔はもっと不思議が身の回りに多かったような気がする。最近は現実だけで手一杯。年を取るとは、こういうことなのか。

  • 死者との関わりがあるという寺とその周辺で起こる短編集。

    本の帯が大きい文字で「涙腺崩壊」とかハードルをエレベーター使わなきゃ超えられないぐらい上げて来て、その状態で読んだからか涙腺をガムテープで補強してる状態でも決壊しなかった。
    全体的にしんみりはするのだが、これから踏み込もうとしてるところで次の話に行き、最終話で全ての伏線回収が行われるのかと思いきや、さらっと撫でる程度で終わっていく。
    ライトで良いんだけど、私にとってはもう少し踏み込んだものを読みたかったなと読了後に思った。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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