獄窓記 (新潮文庫)

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著者 : 山本譲司
  • 新潮社 (2008年1月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338712

獄窓記 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 知らなかったことばかり。作者の人柄か、登場人物の全てが生き生きと立ち上がってきてそれぞれに人生があるのだと感じられる。そして知りたくなる。その後の作品も是非探さなければ。
    あとがきにあるように、今まで見たことのない漢語が多用されていて多少奇妙に思ったが、あとがきで明かされる理由に納得。
    良い本を読んだ。

  • 期待値は下回った。これ読むと刑務所いっても人間的に成長したり珍しい経験できたりってことはないとわかる。ただ単に生活レベルが著しく下がるだけ。刑務所には行きたくないと思った。

  •  著者の山本譲司は、1996年衆院選において30代の若さで初当選、民主党(当時)のホープでしたが、事務所内部の人間関係のいざこざから、私設秘書の一人に秘書給与流用を内部告発され、2000年9月に逮捕、1年6カ月の実刑判決を受けます。控訴すれば執行猶予となることは確実な状況だったようですが、彼はそのまま服役することを選びます。この本は元政治家による、1年余りの刑務所生活のルポです。
     私は政治に疎く、秘書給与流用というものがよくわからなかったので、調べてみました。国会議員は私費で雇う秘書とは別に、公設秘書2名、政策秘書1名を国費、つまり税金で雇うことができます。特に政策秘書は、その名の通り、議員の政策立案まで担当する高度な能力が求められているため、一定の経験や資格が必要で、それに合わせて給料も初任給で約42万円と高額です。秘書給与流用とは、これほどの秘書を当面必要としない議員が、名目上、例えばAという人を雇ったことにして、税金で支給されるAの給与額を受け取る、Aは実際は勤務せず、月5万円程度の名義貸し料のみ受け取る、そして政治家は残りの金を別の用途にまわす、こういう構図のようです。表に出ないだけで、政治家の間ではそう珍しくない詐欺のようです。
     さて、有罪を受け入れて服役した著者は、そこで思いもよらなかった経験をします。今まで「先生」と呼ばれていた人間が「山本!」と怒鳴られること、食事の貧弱さ、こうしたことは想定内でしたが、彼が驚愕したのは、刑務所に、そこにいてはならないはずの障害者がたくさんいることでした。
     受刑者は刑務所で係りを割り当てられるのですが、著者はある日、寮内工場の補助係りになります。寮内工場は「刑務所の中の掃き溜め」と呼ばれていて、「一般工場には置いとけないキチガイやカタワが集まってるところ」で、他の受刑者から「ご愁傷様」と言われる場所でした。仕事は、認知症、自閉症、精神障害、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、覚醒剤で廃人同様になっている者等、様々な障害を持つ受刑者の異様な行動を監視するとともに、手を突っ込んで排便させる、糞尿を浴びながら彼らの下半身を洗う、湯船に浮いた便を掬う、床の大便を爪で掻き取る等でした。
     彼は議員時代、福祉に力を入れていて、こうした汚れ作業には、初めは嫌悪感を持つものの、やがて慣れて苦にならなくなります。彼が疑問に思ったのは、そもそも、なぜ彼らがここにいるのかでした。彼らはそれぞれ、万引きや傷害といった罪を犯した結果として刑務所にいるわけですが、どう見ても彼らは善悪を判断する能力を持たず、また、自分の行動をコントロールすることができない人たちでした。例えば彼らの工場での作業は、再利用できるように、紐の結び目をほどくことと、使われて短くなったろうそくを色ごとに仕分けすることでした。彼らがほどいた紐、仕分けしたろうそくはその後、実は係りが、紐はもう一度結び、ろうそくはまたバラバラにして、翌日再び彼らに与える、それが「再利用」の内実でした。その単純作業ができない人は、ただその場で糞尿やよだれを垂れ流したり、踊ったりしていました。
     責任能力も訴訟する能力も、刑罰を受ける能力もない、彼らは明らかに福祉の手当てが必要な人々であり、本来は、精神病院、福祉施設に、犯罪者だとしても医療刑務所にいるべき人たちでした。でも、彼らは、国の政策から取り残されたように、刑務所に「掃き溜まって」いました。解説を書いている精神科医の岩波明によると、字も書けず、意志の伝達ができないろうあ者が自白によって裁かれ、収監されているケースもあるようです。議員として福祉に取り組んできたつもりの彼が目にしたのは、刑務所が行き場のない障害者の受け皿になっているという、日本の福祉政策の実態、現状でした。こうして彼は、出所後に自分が取り組むべきことを少しずつ考え始めます。
     その他、この「獄窓記」は、同じ秘書給与流用の辻元清美のこと、獄中での彼の苦悩、妻が彼を支える様子など、心して読むべき場面がたくさんある、大変中味の濃い本です。「続・獄窓記」は、自分の出所後を綴ったものであり、こちらも読み応えがあります。どちらもお勧めです。
     余談ですが、出所後、福祉関係で精力的に行動し、著名になっていく彼に、再び議員になる誘いが何度かあったようですが、彼は現在介護福祉に携わっていますから、きっと断り続けたのでしょう。皮肉なことですが、本当に誰かの、特に弱者のために誠実に行動することは、政治家にはできないということかもしれません。

  • あまりにもリアルな塀の向こう側。

  • 【商品の内容】(「e-hon」レビュー引用)
    [要旨]
    政治家の犯罪。それは私が最も嫌悪するものだった―。三十代の若さで衆議院議員に当選した私は、秘書給与詐取事件で突然足元を掬われる。逮捕、そしてまさかの実刑判決。服役した私の仕事は、障害を持った同囚たちの介助役だった。汚物まみれの凄惨な現場でひたすら働く獄中の日々の中、見えてきた刑務所の実情、福祉行政への課題とは。壮絶なる真実の手記。新潮ドキュメント賞受賞。

    [目次]
    第1章 秘書給与詐取事件
    (政治を志した生い立ち 菅直人代議士の秘書、そして国政の場へ 事件の発端 東京地検特捜部からの呼び出し 政策秘書の名義借り事件 逮捕 規素 裁判 弁護士との打ち合わせ 妻への告白)
    第2章 新米受刑者として
    (分類面接 手紙 妻の面会 移送日決定 黒羽刑務所へ 初出役の日 短気は損気 受刑生活における目標 欺くして配役工場へ)
    第3章 塀の中の掃き溜め
    (寮内工場の仕事 障害を抱えた同囚たち 出所への第一歩 堀の中の日常風景 看守たちの生態 形影相都弔う年越し 恩人の死)
    第4章 出所までの日々
    (烏兎匆々 ふたたびクローズアップされた秘書給与問題 明治時代からの変らぬ監獄法 本面接 恨事 出所へのカウントダウウン)

  • 本書は、秘書給与詐取事件で有罪判決を受けた元衆議院議員山本譲司氏の刑務所での実体験を綴ったものです。

    刑務所内に存在する理不尽且つ意味不明な数多の規則、明らか法に反する看守の行為等々あまりスポットを当てられてこなかった刑務所の実態・矯正行政について著者の視点より記載されている。

    特に多くの分量を占めているのは、再犯を繰り返さざるを得ない受刑者達の記述です。それらの受刑者は、高齢で身寄りがなく、生きていくために罪を繰り返しては刑務所に帰ってきてしまうと著者は述べています。また、各々社会にうまく適合できない事情を持っているパターンも多く、それらが刑務所に収監されて初めて認識されることもあるという事実。

    著者は刑務所内で日常生活の介助を必要とする人々のサポートする役を担ってきたそうです。
    その著者の視点から見えてくるのは、この社会の福祉・公的サポートシステムの脆弱さといった数々の問題。
    これからの顕在化してくるであろう公的扶助・福祉といった問題について考えさせられる一冊です。

  • 多少一方通行な面もあるかもしれないが、一読に値する内容。
    色々な立場で思うところありの本、多分当方には耐え難き状況かと。それだけでも著者の腹の座り方に感服。
    この人、確か当方が昔住んでた選挙区だったなぁ。それもあり前から読みたかった本でもありました。

  • 順風満帆に乗っていた一人の若い正義感に燃える衆議院議員が
    権力の駆け引きのハザマで秘書給与詐欺罪で貧乏くじを引いた
    まさかの実刑判決を控訴もせずに受け入れて生真面目に採算する

    結果的には14ヶ月の拘束中の出合いと学びを得て
    自分の進むべき確かな道を見出す事になったようだ
    一生涯つきまとう前科者という負のレッテルを貼られながら
    社会のあるべき姿る模索して可能な限りの実現を図る

    獄中の体験を記録し出版にこぎつけ
    高い評価を得てTVドラマ化されることで様々な道が開ける
    福祉の現場やそれに関わる立法に向けてスタートすることになる
    それと平行して明治に施工されたままの「監獄法」が
    未だに支配している理不尽な現状がある
    そこでは色分けされたバッチで従順度現す四段階の等級があり
    看守の一存で自由と権利を奪う飴と鞭をもてあそび
    刑罰を伴う等級を操れるというオゾマシサを隠している

    山本さんは出所後刑務所における人権等について
    新憲法に違反していることを踏まえての活動に関わる
    名古屋刑務所の虐待が発覚するなどと重なって「監獄法」が
    「受刑者処遇法」と名を変え2005年からスタートしたという
    また、PFI刑務所という半官半民の施設であり福祉棟もつくられる
    法務行政と福祉行政と民間が協力しあう体制を
    必要としているのかもしれないが
    競争原理を如何に排除するかが要となるのではないだろうか

    この本を読むにつけて人が人を裁き罪を償わせることの傲慢さを思う
    更生とか矯正させるという大義名分を掲げているが
    その建前の陰に人を踏み台にした権力抗争が有り
    自分の不安恐怖を他人にかぶせる利己心が有り差別意識が有り
    その根底に依存心からなる競争意識と傲慢が有り
    本音と建前を使い分ける人間の浅ましさを痛感する

    こうした自分を棚に上げてしまう理不尽の極を体験するという姿勢で
    前向きに乗り切り自分らしい生き方をクジケずに追求する
    山本さんという人をウラヤマシイと思うと同時に
    この得難い情報を公開してくたことに感謝する

    ただ国会答弁でも感じることだけれども難しい熟語を多用する文に
    辟易としながら読まなかればならないことが残念だった

    法治国家と言う支配体制を卒業しなければとツクズク思う
    民による民のための集いを可能にするのに権利の主張では不可能だ
    権利意識は奪い合う暴力から逃れられない
    支配だの依存だの競争原理は矛盾しているということだ

  • 新潮ドキュメント賞受賞作品。政策秘書給与の不正受給により実刑1年6ヶ月の刑に服した山本譲司元代議士の獄中記。

    『累犯障害者』が優れた作品だったので本書を手に取ったが、第1章は自己正当化に終始し些か白けてしまった。しかし次章以降は、障害者の囚人たちの介助役を担い、積極的に関与していく姿は、本来政治家が持つ気高さが伺える。糞尿処理を黙々とこなし、それを特別ともしない山本氏の様は崇高な印象さえ受けた。一面的な情報だけで判断すべきではないが、本書内で記されている辻元氏とは雲泥の差である。

    本書の中で特に印象的なエピソードは聾者とのシーンである。子どもが「聾者ではなかった」と二人して喜ぶ場面がある。私自身も涙腺が緩んだ。しかし、それは自分の中に「障害は望むべきものではない」という感情があることに気付いた。「障害は無い方がいい」、しかし「有ったらいけないのか?」。物凄く考えさせられてしまった。

    『累犯障害者』でも書かれていたが、障害者にとって刑務所は「人生の中で一番居心地がよい場所」。そんな哀しい社会が少しでも改善されるよう、筆者には是非頑張って欲しい。

  • 代議士としてのスタートから逮捕、収監、懲役、出獄までを描く。累犯障害者を読んだ後なのでその副読本というか、目新しい事実はなくその第一歩を埋めてくれた。どちらも読むべき。工場内の介護の様子は壮絶。

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