報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)

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著者 : 堤未果
  • 新潮社 (2010年10月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338910

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報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 米国の威信が失墜したなどと喧伝され始めてから久しいですが、それでもなほ「唯一の超大国」「世界の警察」としての存在感は保つてゐるものだと、何となく思つてゐました。
    しかし『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』を読みますと、いかに米国人自身が疲弊し、迷走してゐるのかが分かります。事情通ならとつくに知つてゐることなのでせうが、無知なわたくしは初めて知ることも多いのです。書名にもあるやうに、報道されぬ事項が多すぎることもあります。

    飢餓人口が4200万人とか、医療保険未加入(貧困の為)が4700万人とか、乳児が一日平均77人死んでゐるとか......およそ先進国とは思へない数字が次々と出てきます。
    著者の堤未果さんは、あの同時多発テロ事件(いはゆる「9・11」)を目撃(たまたま隣のビルで勤務中だつたさうです)し、それ以後「テロとの戦ひ」に突入してゆく米国の暴走ぶりを目の当たりにした人。『ルポ貧困大陸アメリカ』などといふ著書もあり、この国の貧困層と呼ばれる人たちを精力的に取材してゐます。

    2004年大統領選(共和党ブッシュ×民主党ケリー)にて導入される電子投票に反対して、55日間もハンストを続けた青年がゐました。彼は堤さんに、強引に自分を取材するやうに仕向けるのでした。米国のメディアはコントロールされてゐる。ならば外国のメディアに期待するしかない。
    前回2000年の選挙(共和党ブッシュ×民主党ゴア)でも電子投票は一部で導入されたのですが、機械の信頼性に大きな問題があるのださうです。フロリダ州では、ブッシュにプラス4000票、ゴアにマイナス(!)16000票入るといふ間違ひがあつたとか。しかも再集計の必要なしと判断されたと。この機械の製造元会社のCEOが熱心な共和党支持者であることも疑惑を呼ぶ材料ですな。

    結局ハンストもむなしく、2004年もブッシュが再選されました。しかし出口調査ではケリー有利でした。かうした逆転現象は、2000年でもあつたさうです。そして電子投票機は、やはり各地でトラブル続き(予定通りか?)であつたと。ある投票所では「ケリー」を選択しても、必ず「ブッシュに投票でいいですね?」と画面に出る不具合があり、それは最後まで放置されたとか。
    また、機械の絶対数が足りないため、投票まで6時間待たされたとか、犯罪歴(スピード違反)があるから投票出来ないとか、8時間待たされた挙句、機械に不具合があるから投票出来ないと断られたり......ケリー支持の多い黒人居住区や貧困層が多い地域の話です。
    ううむ、どこかの独裁国家の話みたいですね。先進国で起きてゐるとは、俄には信じ難いのですが、色色信じられない事が起きるのも米国であります。

    また、米国の徴兵制の実態もルポしてゐます。向学の志があるのに、貧困ゆゑ大学進学を諦めざるを得ない層が、リクルーターと呼ばれる勧誘員の言葉巧みな甘言により徴兵に応じます。学費は軍が出すとか、実際には前線での戦闘はしないとか、卒業後のバラ色の進路とか。
    しかし実際は、かういふ若者たちが真先にイラクへ派兵されて、人間扱ひされぬ殺人マシーンとして消耗させられるのでした。
    それでも堤未果さんは、絶望することなく、まだこの国には希望があると諦めてゐません。ポジティヴであります。「革命を起こすのはいつでも弱者だ」といふ、黒人女子高生の言葉を紹介して。

    現在行われてゐる次期大統領争ひでも、格差解消を訴へるサンダース氏が最後まで若者たちの間で人気を保つてゐたのも、問題発言だらけのトランプ氏が共和党の候補として残つたのも、米国に漂ふ閉塞感のやうなものを打破して欲しいとの願ひがあるのでせうかね。ただ、こんな時は「ヒトラー」が出現しやすい。日本でも要注意ですよ。
    デハ今日はこんなところで、ご無礼いたします。

    http://genjiga... 続きを読む

  • 2010年(底本2006年)刊。本書は子ブッシュ再選期の米国の一面を語る。それが日本の反面教師足りうるか。本書で叙述される著者の様々な体験は、我々の今を問いかける。子・ブッシュと境遇・メンタリティ?が類似するらしい現首相(「新・戦争論」佐藤優・池上彰著)が政権担当なら猶更。なお、電子投票制度の問題は目から鱗。手書き投票の場合、個人の投票行動の把握には面倒な作業を要し、間接的に秘密確保の信頼性を上げている。が、電子投票の場合、悪意を持てば、ボタン一つの検索で投票行動の秘密を把握しうるのだ。くわばらくわばら。
    ちなみに、アメリカの隠れた徴兵制に関しては、本書は具体的に書いているが、著者の他の書とも被る内容である。ただ、イラク戦争従軍兵士の給与が約200万円/年には目が点(しかも、大学学費のための積立や戦死のための生命保険、軍服代等に天引きされる)。

  • 「貧困大国アメリカ」の堤未香さんです

    相変わらず彼女の「立ち位置」はぶれておらず
    そこから発信されていく言葉(文章)には、当然のことながらしっかり説得力があります。

    日本国内で言えば
    沖縄で数々の大きなトラブル(犯罪)の根っこは
    ここにあるのだな、と改めて再確認してしまいます。

    ほんとうにわずかな富裕層のために
    膨大な底辺層が意図的に作り出されている構図
    これって
    アメリカだけでなく
    世界の各地で使われていく常套手段ですよね
    もちろん
    この 日本でも…

    最後の章の
    アメリカの「おかあちゃん」たちに
    心からエールを贈ります

  • 勇気とは、目をそらさないこと。問いかけるのをやめないこと。
    堪え性がない、単純で純粋で、弱くて強いアメリカ人達。
    これも、この国の一面。

  • メディアが報道しているアメリカはほんの一部だ。著者が体験したことをリアルに掲載しているのが面白かった。

  • この本が発行されてから4年。アメリカは変わっただろうか…そして日本は

  • 戦争経済を進め続けるアメリカで、貧困ゆえ軍に入り、死んでゆく若者、運良く帰って来ても未来に希望を持てない若者。そんな絶望的な現状に立ち向かった普通の人々の物語です。
    軍に入れば大学にも行ける、健康保険も手に入るという甘い言葉に乗り入隊する高校生。JROTCというプログラムは、成績や出席率の悪い高校生を引き上げるという名目の制度で、軍服を着た教官が命令やルールへの絶対服従を叩き込み、初歩的な軍事訓練を行うのだそうです。
    また、軍が提供する無料のオンラインゲームで、若者たちを戦争ができる人間へと洗脳していくという話もあります。
    ”正義と自由”のためにイラクへ行った若者たちは、人を殺したという苦悩を抱えて苦しんでいます。

    そんな現状を変えようと高校生が、母親が立ち上がっているんです。

    この本は2006年に書かれた物です。文庫化されたのは2010年です。現在のアメリカはどうなっているのでしょう。
    そして日本はこれから、アメリカのたどって来た道を進もうとしているようです。
    止めなければ!
    それにはたくさんの人が、苦しんでいるアメリカの、イラクの、アフガニスタンの人々の声を聞く事が大切です。

  • 体系だった論文ではなく、ルポであるけれど、余計に現場の臨場感が生々しい。

    格差が拡大し、進学や医療の費用が工面できない人々が、次々と国によって使い捨てにされ行く現実。

    電子投票機の不正を訴えハンガーストライキをする実業家だった男性。
    校内で生徒を米軍がリクルートする活動に異を唱え、学外に追放することに成功した高校生。
    イラク戦を進める政権に抗議する為、ブッシュ大統領の牧場周辺で座り込みをする息子を戦場で失った母親たち。

    一人ではたいした力を持ちえない弱い市民が、いかにして国の暴走から自分や子供たちの生存権を守ろうとしているかという戦い。

    一般市民が政治や社会に無関心でいることが最大の問題なのだ、ということが様々な苦闘の中から浮かび上がってきます。こういう層が、テレビや新聞のプロパガンダを無批判に信じ込んでしまい、暴走する政府を支持してしまう。自らが餌食になるというのに・・・

    よその国の出来事なんかぢゃない。
    今の日本でも起ころうとしている、もしくは既にじわじわと進行中の事態。
    ぼーっとテレビや新聞を眺めているだけの人々に、真実を知ってもらうことが何より大切なんだと思います。

    TPPに乗り遅れるなとか、押し付けられた憲法は改正すべしとか、規制緩和構造改革とか、元々普段からあった領海領空侵犯を大きく報道して国防軍化だとか、事故の収束も被害者への補償もできないのに原発を再稼動や輸出とか、内容もろくに知りもしないで言葉の勢いに乗って投票してしまう人々に、どうしたら本当のことを知ってもらえるのか。

    参院選が近づくにつれ、焦燥感ばかりがつのります。

  • テレビとは縁を切って暮らしたい。
    でないと、現実と作り物の境界線がわからなくなってしまう。

  • アメリカは自由と希望の国と言われるが、堤さんの著書を読むと信じられないような現在のアメリカがあぶり出されてくる。

    貧困とそれを抜け出すために必死で努力している若者たちが、どんどん戦場へ送り込まれ、約束されたと信じていた事がほとんど嘘で固められていた事を、生きて返ってきて初めて知り、そして挫折していく。

    一握りの裕福層と大多数の貧困層というアメリカ・・・

    ただ救いなのは、その底辺にいる人たちが下を向いているだけではないという事。インターネットという手段は、そういう人たちを繋ぎそして立ち向かう力を与えている。

    圧倒的に多いのは底辺の人たちだ、その人たちが下を向くだけでなく、上を向き声をあげ始めたら新しい出発がはじまる。世の中あきらめていてはいけないと著書の中の若者たちは頑張っている。

    日本だってこのままではいいはずがない、声をあげないと。

  • これがアメリカの全てではあるまいが、これも又アメリカと言えよう。政治的にはかなり民主党寄りであるが作家が必ずしも政治的中立である必要もあるまい。情報を盲信せず批判的に読むのは読者側の責務であろう。内容は『アメリカの見えない徴兵制』が衝撃的。軍のリクルートに活用する為に学校が生徒の個人情報を軍に提供し、学内では軍事教練のようなコースまである。不法滞在者に対して市民権を餌に勧誘するとまである。無料ミリタリーゲームを開発しユーザーを洗脳、早期訓練する話などはまるでSFの世界。次は『貧困対国アメリカ』を再読予定。

  • 堤未果のアメリカレポート。知らないうちにワンコインの文庫本になっていた。アメリカがなかなか浮上しない理由が、経済的なことだけに限らない、というのがわかり、(そして、日本もそのプチモデルになりうるかも…?)暗澹たる気持ちになる。

  • ルポということで、新書より著者が身近に感じられた。


    マイノリティーは、迫害されてきた。それはなにもアメリカだけではない。
    その中で権利を、主張を、通すには声をあげ続けなければならない。
    だが、それだけの事かわなんと難しいのだろうか。誰だって折れない心なんかない。だからこそ、主張を通すためには、折れてももう一度立ち上がれる心が必要なのだと思う。
    マイノリティーがいることが認められること、それこそが多様な社会だ。
    これこそがアメリカのイメージであったし、理想の姿だろう。
    どれほど理想と現実が乖離しようとも、理想の方をねじ曲げないでほしい。

  • 今まで自分が持っていたアメリカのイメージがこの本を読んで一変した。先進国アメリカ。貧富の差が大きいとは聞いていたけど、、、こんなにひどいとは。無知な自分が恥ずかしかった。日本も格差が広がりつつあるし、決して他人事ではない。無知のままいたらそのまま流されて気づいたときにはもう手遅れになるかもしれない。

    堤さんの本はどれも興味深いものばかり。その中でもこの本はとても読みやすく、オススメ。

  • 前作の「貧困大国アメリカ」と併せて読了。

    アメリカに抱く敬意や憧憬の感情が
    かなりの割合でふきとんでしまうであろう事実の数々。

    読後感は「怒」。

    自由と機会均等を貴ぶアメリカは
    ごくごく表層的なアメリカであったのかもしれない。

    こんな国に明日はない。
    いつかはわからないけど、根元から崩壊する。
    そんな予感がする。

  • テレビ、ジャンクフード、教会、銃、就職先としての軍、物事の単純化…どうしようもないアメリカ。良くも悪くも、多様なものを抱え込んだまま大国であり続けるアメリカ。大切なものを失い、痛い目に遭ってから、自分たちの無知に気づき、自分が変わり、世の中を変えていこうとする真っ直ぐな人たち。海の向こうで、まぎれもなく、同時代を生きている人たち。他人事ではない。

  • これは本当にノンフィクションなのか。
    これは本当にアメリカなのか。
    北朝鮮や戦時中の日本ではないのか。

    いままで無知でいた自分が恥ずかしい。

  • 誰が信じてくれると思う?生まれて初めて銃を買ったのが、テロリストじゃなくて、自分の国の政府から身を守るためだなんて。

    自由の国アメリカ。
    自由に憧れ、アメリカンドリームを夢見る。でも、1番自由がないのは、アメリカではないのか。
    無知が偏見を作り、偏見が差別になり、差別が戦争になる。
    リクルーターに巧みに言いくるめられイラクの最前線に行き、防弾チョッキも与えられない。自腹で払う。生きて帰ってきても、なんの援助もなく、路上に捨てられる。
    アメリカが自由であるという偏見が作り出した結果かもしれない。

    「ルポ貧困大国アメリカ」より読みやすく、リアル。
    ふと自分の国を第三者となって考えてみる。

  •  堤未果氏の本はこれで2冊目だが、いまのアメリカの現実を私達に伝えてくれていると思う。
     1970年代に生まれた私にとって、アメリカというのは、それよりも前の世代と比較して絶対的な憬れに輝いていた国ではなかった。しかし、SEとして仕事をしているとインターネットをはじめとするコンピュータの技術は未だに太平洋の向こう側から常に吹いてきており、「腐っても鯛」であるという雰囲気を漂わせていた。しかし、現実はひとにぎりの高所得者層が世界の冠たる国、アメリカのイメージを保持し続けているに過ぎなくなっていることが本書からも分かる。
     もはや「アメリカンドリーム」としてそれを夢見る事さえ困難になっている低所得者層が拡がり続けているアメリカ。オバマ政権は「change」を謳ったがやはりそれは儚い夢なのかもしれない。そして、本書で書かれた世界は、明日の日本なのかもしれない。

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報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)の作品紹介

豊かなはずの超大国アメリカに、貧困生活を送る人、医療費が払えず破産する数多の人がいる。貧しさゆえに戦場に送られ、心身に深い傷を負う若者がいる。そんな現状を打破すべく立ち上がった「弱者」たちがいた-。電子投票に抗議する活動家。軍事訓練に反対する高校生。反戦運動を展開する母親たち。進み続ける彼らに寄り添い、希望の灯を探す若きジャーナリストの心の旅路。

報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)はこんな本です

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