つめたいよるに (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339139

感想・レビュー・書評

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  • 江國さんの短編集の中で、一番好き。
    21篇のどれも5~10分足らずで読めてしまうのに、どの話も描かれてる物語に引き込まれてしまうのが単純にすごい。

    中でも特にデューク、草之丞の話、スイート・ラバーズ、藤島さんの来る日、子供たちの晩餐、さくらんぼパイ、とくべつな早朝がお気に入り。

    そして夢か現かの不思議な世界観が多い中で、ねぎを刻むの生々しさが本当に目立つ。
    もう何年も手元に置いてある本だけど、これだけは軽い気持ちで読み返せない。
    何ていうか覚悟が要る、良い意味で。
    だから寂しいって怖い。

  • 凪良ゆうさんが、子どもに贈りたい本として紹介されていたので読んでみました。
    短編集は最近はあまり読みませんが、これは短いながらも一つ一つの話がしっかりしていて、隙間時間に読むのにぴったりでした。どれもよかったですが、『藤島さんの来る日』は一番私の心に響きました。
    児童書に分類されていることもあるようですし、受験問題に使われるものもあるようですが、私として はYA以上におすすめかな、と思います。

  • 心が温まる、大好きな短編小説。
    しばらくすると読み返したくなる。

  • 最初から良い。「デューク」では、喪失と再生を深い愛が包み込むように書かれていて、心の奥が癒されていくような心地であった。個人的に「鬼ばばあ」「晴れた空の下で」「コスモスの咲く庭」が好き。江國香織さんの書く短編は、大人の童話みたいな感じで、よくこんな素晴らしい物語が思いつくなと感心させられる。

  • 江國香織さんの短編集。

    私はムーミンパパがよく言っていた「宝石のような小説を書きたい」が昔からとても印象に残っている。宝石にもいろいろあり、私が想像したのは小粒のダイヤとか真珠。それがいくつもいくつもあるのではないかと。

    「つめたいよるに」がそれじゃないかと想う。ひとつひとつがぴかっとしていて、輝きが満ちわたる。

    胸にぎゅっととじこめられて、涙がほとばしる。

    「つめたいよるに」にはなんともいえない暖かいものの流れる短編。
    「温かなお皿」には口当たりが冷っとする短編が。

    私は「夏の少し前」が好き。
    白昼夢、一瞬に一生をみてしまうときがある。

    「ははそはのははもそのこも、
    はるののにあそぶあそびをふたたびせず。」

    いや、今が夢なのかもしれないと思わされる。

    -------
    多分、江國香織さんに今後もはまっていくでしょう。

  • 毎晩寝る前の楽しみとして、一つずつ大切に読んだ。
    とても短いのに、読み終えた後は十分物語に浸っている。
    満たされて、眠りについた。

    静かで、甘くて、つめたい江國さんの言葉は雨のよう。


  • 江國香織の短編集。前に『きらきらひかる』を読んで感動したので、その流れで読んでみた。

    ・どれも10ページに満たないもので、ひとつひとつを読むのに時間はかからない。でも、短いのに切れ味が鋭い。短いだけに、細かな状況は語られず想像力を試される。それがいい。読み終わった後の余韻がすごい。

    ・作品によっては叙述トリック(?)みたいになっていて、1回目に読んで「なるほど!」となる。それから続いて読み返すと、より豊かにイメージが膨らむ。どれも短い話なので、何度も読み返すことができる。

    ・『デューク』という作品がとても面白いと教えてもらい、この本を買った。強くおすすめされた理由がわかった。

    ・老い、死、悲しみ、懐かしさ、恋愛、不倫などなど、バリエーションに富んでいて、色んな感情が刺激される。自分は老いや死を扱った作品が好き。不倫や微妙な感情入り混じる恋愛を扱ったものも面白かった。

    ・作品で言うと『デューク』、『鬼ばばあ』、『晴れた空の下で』、『藤島さんの来る日』辺りが特に好き。

    ------------------------------
    ざっと印象に残った作品をあげてみる。

    ■『デューク』
    ・この本の最初に収められている作品。たった8ページでこんな気分になれるのかと衝撃を受ける。

    ・2001年大学センター試験で、この作品の全文が出題されたようで、有名なのかもしれない。もし試験でこんなのが出てきたら、もし愛犬の死を経験していたら、試験どころじゃなくなってしまうんじゃないか??

    ・主人公は、愛犬の死に悲しむ女の子。名前すら出てこない。物語で描かれるのは、愛犬の死の翌日の朝〜夜までの1日だけ。

    ・最終ページの「そうだったのか感」がすごい。2回目に読む時は、少年とデュークの共通点を探してしまう。

    ■『夏の少し前』
    ・時間をスキップしているような、不思議な作品。しばらく前は学生だったのに、気付くと大人になっていて、おばあちゃんになっている。どこか切ない。

    ・社会人なら、どこか共感できるものがあるんじゃないかと思う。形のない、昔を懐かしむような、切ないような感情が刺激されてしまう。

    ・引用されている『いにしへの日は』もちゃんと読んでみたい。

    ■『鬼ばばあ』
    ・小学生の少年と、養老院のおばあさんの話。死がテーマに思う。

    ・おばあさんは認知症なのか、少年のことを忘れてしまう。

    ・今読むと、少年に感情移入してしまう。でも、もっと歳を取ってから読むと、おばあさんに感情移入してしまうのかもしれない。

    ■『いつか、ずっと昔』
    ・結婚式間近の二人が夜桜を見に来る。

    ・ヘビ、豚、貝の前世。不思議な話。抽象的なので、無意識のうちに意味を見出してしまう。

    ・『昔の私がどんな風だったとしても、私が好き?』というセリフで締められる。そこに至るまでの流れとこの言葉の意味を考える。

    ■『晴れた空の下で』
    ・おじいさんとおばあさんの話。

    ・『ご飯を食べるのに二時間もかかりよる。入れ歯のせいではない。食べることと生きることの、区別がようつかんようになったのだ。』という言葉で始まって、同じ言葉で終わる。最後まで読むと、なんとなく意味がわかる。絶対に2回読まないとだめだ。

    ■『さくらんぼパイ』
    ・離婚した二人の話。9歳の娘がいる。

    ・離婚しても、友達として元妻を気遣う。

    ・なぜこういう状況になったのか、何が悲しいのかといったことは直接的に描かれない。でも、母子家庭の辛さや苦悩が垣間見える。

    ■『藤島さんの来る日』
    ・語り手は、猫だった。それを知ってから2回目に読むと、一気に状況が理解でき、イメージが膨らむ。

    ・『彼らはまず寝室に行って運動し、運動がすむのは平均九時頃』というのが好き。笑ってしまう。確かに猫だとそう見えるよね。

    ■『南ヶ原団地A号棟』
    ・同じ団地に住む3人の小学生の作文が並んでいる形式の、シンプルな作品。

    ・隣の芝生は青い。

    ・作文の内容は、小学生の真剣な悩み。でも笑ってしまう。

    ■『冬の日、防衛庁にて』
    ・また不倫の話。交際相手の奥さんと昼食。

    ・相手はとても余裕がある。

  • 大学生の頃に読んだんだが「デューークゥゥゥ」となった記憶がある。10年経ったらまた違うんだろーなぁとか思いつつ先ほど読んでみたら「デューーーーーーーーーークゥゥゥゥゥ」となった。犬を飼い始めたのもまずかった。

  • 久しぶりに読み返しました。

    「デューク」…犬派にはたまらない。たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬。「君はペット」の松潤みたいな?しかしこれ、犬種がパグやコーギーなら成立しない気もしますね。

    コーギーのおしりと笑ってるみたいな口元がたまらなく好きな私ですけども。

  • 【心に】

    沁みます。
    江國香織さんの好きなものの詰め合わせ。

    「感激する」「影響を受ける」っていうほどではないけど、
    静かに心のなかに染み込んでいく感じ。
    好きです。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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