すいかの匂い (新潮文庫)

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著者 : 江國香織
  • 新潮社 (2000年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339160

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すいかの匂い (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • まだ夏の名残があるうちに、10年以上前に読んだのを再読。
    小学生時代、少女の夏物語×11

    あとがき(川上弘美さんによる)にも似たようなことが書かれているのだけど、江國さんの書く子ども時代の物語って、不思議と「自分にもこういう記憶がある」と思わせるような…ノスタルジックというのか、自分の思い出のような気がして泣き出したくなるような感覚がある。
    旅先でのひと夏だけの出逢いとか、道沿いにある花の蜜を吸いながら歩くとか、紙せっけんを集めてたとか。
    残酷であったり、少し胸が痛くなるような切ない余韻が残るお話が多くて、きっと自分も小学生のとき、子どもだからこその残酷さがある経験をしたんだろうと思ったりした。

    夏休み、宿題に疲れてひんやりした畳の上で昼寝したこととか、友だちと自転車で走り回った夕方アイスを食べながら怖いくらいの夕陽を見たこととか、虫捕りしたり水遊びしたり、そんな夏の記憶が不意に蘇ってくる、そういう小説。

  • 良い意味で非常に感覚的というか、五感を素手で鷲掴みにされる気分になる。まだ自分の感じていること、考えていることをうまく言葉に変換できない10歳前後の子どもが身体全体で受け止めていたその感覚を思い出させてくれるというのが、この短編集の一番の魅力で、それにとりつかれると毎夏のように読み返すこととなる。
    「水の輪」では、保護され可愛がられる子どもと、そうではない子ども(やまだたろう・大きくなった子ども)を隔てるものが壊される衝撃が描かれているが、クマゼミの質量と音声でその大きさを表すあたり、秀逸。
    気持ち悪いもの、醜いもの、蓋をしたいものを、目を見開いて凝視する苦さを、遠慮なく書き上げていて、その率直さが気持ちいい。

  • 夏の読み物だなー。
    新潮文庫の夏のフェア「ワタシの一行」はかなりいい企画!と思い、どれにしよーかな、と探し始めたものの、オーソドックスなラインは既に読んだものが多くて、紹介者の方のコメントに「わかるわかる、」「なるほど」と勝手に相槌を打つ始末で。でも、江國さんのこの短編集はまだ読んだことが無くて、鈴木杏ちゃんの選んだ一行が強烈に「骨太」というのか、何というか、相変わらず、線の細い江國さんから飛び出るとは到底思えないのに江國さんらしい、かっこいいもので、「こ、これだー!」と決定しました。
    川上さんの言葉を読んで、改めて思います。江國さん、どこかで色んな人の秘密を採集しているのではありませんか。どうしてそんなに、苦みのある、誰もが隠しておきたいような、気怠い思い出をご存じなのですか。この気だるさ加減が、また夏らしく、蝉の鳴き声が煩く、うねる様な湿気と暑さのときに外出先で読むと温度がぴったり合うのですが。百面相したくなる本なので、あまり外向きでないといえば、外向きでも無いのですが。「やだ!なんで、私の厭ーなところを知っているんですか、江國さんの意地悪!」みたいな、よく分からん心境になってしまうものです。でも、この得体のしれない一方通行な秘密の共有が癖になってしまって、江國さんの短編集や随筆の中毒になってしまっているのです。まいったなあ。
    特記しておきたいのは、「水の輪」の悍ましい程聴覚に訴えてくる感覚。読んでいて、「やまだたろう」(なんてお名前ではないけれど)の「シネシネシネ」に覚えた恐怖がありありと浮かんできました。一時的にしても、彼女にとっては怪奇現象、ホラーだったはずで、私も同じくして鳥肌が立ってしまったものです。だから、触覚?肌にも訴えかけてくるものがありますね。もう一つは、一番最後の作品、「影」を始めとした、時系列が破壊された記憶の引き出し方です。別の物事を行いながら何らかの記憶を思い返す、という状況を物語として浮かび上がらせたとき、これくらい混沌としているのが正しいはずです。きれいに整えられた回想描写は長編なら必要かもしれないけれど、時と場合によってはクドイものになってしまうかもしれません。江國さんのバランス感覚は最強です。

  • 少女の夏のお話が11話。
    1話1話は短いけど、続けて読むことが出来ない。
    余韻に浸るというか、息継ぎのような時間が必要だった。

    夏だったかは分からないけど、物語の中の少女達と同じ怖さを私は感じたことがあるはず。
    特に「あげは蝶」の少女のように、新しい(想像したこともない)選択肢が突然現れた時の衝撃と恐怖、どうしようもなく心惹かれるのに踏み出せない自分への失望をよく知っている。

    読んでいる間ずっと心地いいような息苦しいような感覚を味わった。
    江國香織さんは凄い。
    この小説と出会えてとても嬉しい。

  • 書かれている言葉は難しいものではなく、ごく自然に使うようなありふれたものばかり。それなのに、ひとつひとつの言葉の選び方・使い方が絶妙なために不思議な雰囲気・空気感をもって小説世界を彩っている。
    文章がすーっと自分のなかに浸透していく感じがするほどに、さらっとしている。そのわりに爽やかな内容ばかりではなく、切なかったり不気味な後味を残すものが多い。
    この小説は何やかんや頭で考えるよりも、自分の感覚で楽しむべき本なのかもしれない。もしくは子どもの頃を懐古しながら読むと味わい深くなるのかも。

  • 夏やから読んでみたかってん!
    読んでよかったです。
    なんかもやっとしたまま終わる話ばっかねんけど、それが良かった。
    だいたい自分の話ももやっとしてオチなかったりするし。江國さんと一緒にしたらいかんげんけど。
    あげは蝶が一番好きです。自殺してやる!って言って結局怖くて止めるのと近い感じがする。

  • 夏になると本を読みたくなる。
    そんな思いでふと手にとったこの一冊は、夏休み読書の記念すべき一冊目だ。
    爽やかで、きらきらしていて、でも、どこか切なくて影のある少女たちの夏の物語がたくさん詰まっていた。

    窓を開けてひぐらしの声を聞きながら、扇風機をまわした部屋の中で読むのにぴったりな一冊。

  • 短編集。どのお話も衝撃的だった。
    すいかの匂いってタイトル、読む前は爽やかなイメージだったけど、読んだ後にはなんだか不気味だなあと思った。
    夏っぽさを確かに感じさせるのに、清々しくない。

    水の輪と、焼却炉が特に好き。

    川上弘美さんの解説含め、とても好きな本になった。わたしも“江國さんのひみつ”が知りたい江國さんファンです。

  • ぞわっとする、夏の思い出。

    子どもの頃の夏の欠片を、思い出す。
    夏に感じる、あの感覚が、懐かしい。

  • 夏になると読みたくなります

  • 今でも残っているたくさんの昔のささくれを、美しく書き出してくれる。
    こうやって記憶を表現できたら、私の丹田のあたりにこごるコールタールみたいなどろどろも減っていくのだろうかと夢想したくなる。

    ときどき同性愛系の話が紛れ込むのがまた。わかっていらっしゃる。。

    私にとって、「好き」とは「やわらかく触りたい」という欲求なのだ。ぎゅうっと苦しくなるほど抱きしめるのも「好き」だけど、いちばんの「好き」はやわらかさなのだ。
    その曖昧で感覚的な「好き」は、触覚に頼ることない別のやり方、例えば心の持ち方や関係性の保ち方でも表せたりする。
    心のささくれにはそういうものがけっこう含まれていて、それが同性愛かどうかは関係なく厳然としたひとつの経験として記憶されている。
    そういうものもささくれとして認識して短編に表現してくれるのが、江國さんと共鳴できているかのようで、なんだかうれしい。

  • 子供の頃を思い出す。
    無邪気で、残酷で、なんだか救われない感じ。

  • 巻末の解説はなんと川上弘美さん。

    二人とも現実から3センチ浮いてるね(褒め言葉)

  • 初めて読んだのがこれで………
    ひとつめの表題作から面食らいました(笑)。
    全編切なさを通り越して怖い。
    とにかく怖い。切なさと怖さは表裏一体。
    全部が全部こうとはもちろん思いませんが、
    レビューを読ませてもらうとファンの方も好き嫌いあるようで。

    思えば子どもの頃は確かにそうだったかもしれない。
    まだ見ぬ世界の扉が開く、快感と同時にやってくる恐怖。

    なんで江國香織は女性に人気があるのだろう?
    女の子の秘密は僕には一生かかっても理解できないのかもしれないな。
    と、感じました。

    質感が伝わってくる描写は秀逸。

  • 文章の結び、引き際が美しい。よけいなことは詰め込まず、短編ひとつひとつが、日常のなかにある冷たい部分に特化して少女の虚さをただただ浮き彫りにさせている。人間の中身をいやらしく描くものだから、いままで女流作家は苦手で、読まず嫌いの一途だったが、すっきりとした文章で読みやすく、夏になると恋しい作品。

  • この短編に登場する子供たちは、物憂げで所在なさげで、所謂天真爛漫な子供らしい子供ではない。

    でも、それぞれの子供たちの心情が、まるで自分が体験したことのようにリアルに感じられる。

    大人になれば憂鬱な気持ちの持って行き場を見つけたり、うまく発散させたりということを経験から学ぶことが出来る。
    けれど、子供はそのような術をまだ持たないことから、行き場のない気持ちに閉じ込められ、それがこの短編の独特な閉じた世界を作っているように思われる。
    知識や経験を持たない代わりに、世界の薄暗い面を本能的に感じとる子供たちの心情に触れるのは、決して不快ではない。
    むしろ、自分にもこんな気持ちを感じたことがかつてあり、大人になった今でも、ふとした拍子にそんな子供が顔をのぞかせることがあるということに改めて思い当たった。

  • 一編一編がそれぞれ怖い。続けて読めなくて、休憩が必要だった。
    子供の頃はみんなこんな風に残酷だった。居心地が悪くて不自由な気持ちだった事を思い出す。

  • 江國さん3冊目。初めて短編集に挑戦してみた!

    夏の物語がいくつか入ってて、私はあげは蝶と薔薇のアーチがお気に入り。

    短編集苦手ながら、ちょっとその読みやすさに心動かされた。

    江國さん独特のあのなんとも言えない感性を久しぶりに読めて、すごく読み終わるのが残念やった。

    私は基本的に夏が嫌いやけど、夏のなかでも好きな部分、バニラアイスの木べらの味とか夏の夜の空気とか…そういったものを懐かしく早く夏きてほしいなって思わせてくれた。

    あと、川上弘美さんのあとがきも分かりやすくてよかった。

  •   時々ふっと江國さんの本を読みたくなる時があります。
    思い出したようにそう思いつくと、途端に江國さんの織り出す世界が恋しくなる。今回手に取ったこの『すいかの匂い』は11人の女の子の夏の記憶でした。

      子どもだった頃、大人にはわからない子どもの世界というものが存在していた気がします。大人だって昔は子ども。それでも大人になると忘れてしまうものは本当にたくさんある。

      幼い頃の子どもは無邪気で残酷。小さな私は、赤蟻と黒蟻のどっちが強いのかが知りたくて、二匹を捕まえてフィルムケースに閉じ込めたこともありました。

      今まで忘れていたようなことを次々と思い出して懐かしくてたまらなくなりました。遊んだ帰り道のよその家の夕食の匂い、花の蜜のほのかな甘さ、水の中に聞こえる泡と波の音。あとがきで川上さんが書いていた通り江國さんの本を読んだ後には「じぶんのはなし」をしたくなります。

  • 短編小説集はあまり好きではないんですが、
    この短篇集は江國香織が好きだったから読んでみた。
    記憶に残っているのは、セミの話、おばあちゃんとの話、穴掘る話、弟が死ぬ話と、一話目の家出した話。意外と覚えているものです。
    ところどころに印象的なシーンがあってそれが記憶に根づいているのかと。
    すごく面白かったとはいえませんが、なんだか記憶に残る話です。

  • 11人の女の子のそれぞれの夏の記憶を綴った短編集。
    女の子達は10歳前後の小学生だが、皆どことなく色っぽい。そして子供特有の残酷さを持っている。
    人によっては狂気じみていたり生々しく感じられてしまうので苦手な人は苦手。でも分かる人には分かる、という作風。
    私はガラス製おはじきの美しさやアイス棒の木の味を思い返し、甘く懐かしい気持ちに浸ることができた。

  • どの短編も、真夏の小学生の少女の記憶が書かれている。
    少女たちはたいてい小学校の空気にぴたりとなじめない心を持った子たちで
    どこかじめじめした後ろめたいような暗さがどの短編にもあふれている。
    そんな暗さがあったり、季節は夏であるにもかかわらず
    浮いた視点から書かれた文体のために、ひやりとするような読後感があって
    それが気持ちのいい作品たちだった。

  • うまく、夏に読めたと思う。
    これは「夏」の短編集である。

    これらの短編に、僕は「コワイ」と感じた。
    初めのうちは小説自体が。

    そして、だんだんと人間というものに。
    最後には江國さんの才能に。

    友人に江國さんのようなすばらしい言語感覚を持った女性がいるけど
    このような感性は女性のものなのかな?

    川上さんの解説にあるように、
    たしかに「自分の話はおもしろくない」

  • 解説にもあったが
    江國香織は本当に言葉を選ぶ能力に優れてる、「工芸品を作る職人」のような人だなあ、と思う。
    ひらがなと漢字の使い方もだけど、あたしが一番度肝を抜かれたおは比喩。
    「水の輪」で、おばさんが鬼灯を揉むところ。ぎょっとした。うますぎる…

    夏が終わる前に、是非とも読んでもらいたいさわやかな一冊。

  • 不思議な感じだ。
    なんだか生々しくて、ちょっとひんやりするような、けだるくじめじめと暑いような、そんな感じ。

    夏。

    子どもの頃を思い出したりするけど、それは決して甘ったるい感じではなくて・・・


    川上弘美さんの解説にあーってなる。

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すいかの匂い (新潮文庫)の作品紹介

あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに-バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。無防備に出遭ってしまい、心に織りこまれてしまった事ども。おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。

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