号泣する準備はできていた (新潮文庫)

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著者 : 江國香織
  • 新潮社 (2006年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339221

号泣する準備はできていた (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 見慣れた日常の中で、当たり前にそばにあるものが静かに崩壊していく様を切り取った12編。

    あるとき突然に訪れる悲しみ。しかしその予兆はきっとどこかにあるはず。それを感じ取り、いつか悲しみがぶつかってくる用意を心のどこかで行っているのだと思う。
    この短編集を読んでそう思ったとき、著者の他の作品で出てきた「物事には準備する時間は与えられていない」という言葉が思い浮かんだ。全く対称的だが、どちらの言葉も正しいと思う。予期していながらも回避する事が出来ず、じわじわと悲しみが増していくのをただ眺めることしかできないのは、それはそれで辛い。せめてそれが少しでも早く癒えてくれるのを願うだけである。

  • 中学生で読んだ江國香織は意味が分からなかった。
    大学生になって読んだ江國香織は私の頭の中そのものだった。

    上手く言語化できない、わやわやしてもやもやしてぐんにゃりした不安感か高揚感のようなものが、日常には詰まっている。そんな日常的な頭の中の物語を文章にしたのがこの人のこの短編だとおもう。少なくとも私にとってはそういう小説である。

    いちばん好きなのは熱帯夜。ゆらゆらしてはいても幸せの話であることと、ビアンの話であることが理由。ああ、こういう幸福感に苛まれていたい。

  • 「かつてあった物たちと、そのあともあり続けなければならない物たちの、短篇集になっているといいです。」とあとがきにあった。
    なっていたと思う。
    何故かとても落ち込んでしまった。

    読んでいる間は、静かな物語の中の憂鬱にぷかぷかと漂っているような心持ちだった。
    泣き出したくても、泣く勢いはなくなってしまったような寂しさだと思った。
    『号泣する準備はできていた』というタイトルが、激しい感情を伴った言葉という印象から、号泣出来なかった女性のつぶやきのような弱い印象の言葉に変わった。
    とてもいいタイトルだなという感想は変わらないけれど。

  • 直木賞受賞作品です。
    当作も江國さんらしさが出ていますが、私はほのぼのした作風が好きなので、あまり共感が出来ませんでした。
    恋や愛の喪失を扱ったものが多いので、共感してはいけない気もします。

    悲しくて辛い心も、ドロドロとした確執も、男女の営みも、全てサラリと表現出来てしまうのは凄いと思います。
    痛々しさや生々しさが薄くて、良くも悪くもフィクション色が強いです。
    犬や猫の出てくる確率が高いですね。

    ◆前進、もしくは前進のように思われるもの
    あんなにも愛していた旦那なのに、「猫を捨てた」という言葉を嘘と思えなくなってしまった主人公。
    何度も前進、もしくは前進のように思われるものを繰り返して行き着いたのが、乾いた関係という皮肉。
    ホームステイ先で世話になった家の娘と主人公の対比が何とも言えません。

    ◆じゃこじゃこのビスケット
    「あまりもの」という意味かしら。
    このお話は好きでした。
    何もかも思い込んで生きていた十代の主人公の、あまり楽しくはなかったデートのお話です。
    大したことではないのに、ずっと記憶に残ることは結構ありますよね。

    ◆熱帯夜
    激しいくらいに愛し合っているカップルのお話です。
    但し、百合だけどな!!!
    他の話の主人公よりも幸せに見えます。
    確かに、ぬるいビールはすんなり入りますよね。

    ◆煙草配りガール
    このお話に出てくる人々は、離婚や浮気をしています。
    タバコを吸っているのに、「お吸いになりますか」と聞くのは確かにおかしいかもしれません。
    マニュアル通りに従っているだけなんでしょうけどね。

    ◆溝
    この話はヒステリックで怖いです。
    離婚を決めた二人ですが、主人公の実家で麻雀をします。
    嫁は見ているだけです。
    あの中に馴染めないという気持ちは分かりますが、ウェットスーツをパクるのはどうかと思います。

    ◆こまつま
    比較的、平和なお話です。
    デパートが好きなのは、昔好きだった男性を意識出来るから。
    「家族を愛しているけど、それとは別よ」という感じでしょうか。
    「旦那は家族であって、男ではない」と言っているようにも取れます。

    ◆洋一も来られればよかったのにね
    表面的には穏やかですが、とても捩れています。
    心底楽しんではいないのに、主人公は定期的に姑と温泉旅行をしています。
    洋一は旦那の名前ですが、主人公は別れた浮気相手をしつこく想っています。

    ◆住宅地
    三人の視点でお話が進みます。
    とあるものは、別の人から見れば違って映るようです。
    この話に出てくるピアノの先生は、旦那の首根っこをギッチリと押さえていそうですね。

    ◆どこでもない場所
    問題が山積みではあるけど、お店でお酒を飲みながら語る話は物語のように思えます。
    四人のやり取りは楽しそうですね。
    お酒を飲んだ後に牛丼って入るのだろうか。

    ◆手
    この話も好きです。
    友達(一時は肉体関係有)の男が押し掛けてくる話です。
    「もう、くっついちまえよ」と言いたくなりますが、実際は簡単な話でもないんだろうな。

    ◆号泣する準備はできていた
    表題作なだけあって、切なさや悲しさが一番伝わってきました。
    恋は終わっていても、体は悲しいくらいにピッタリと重なる。
    泣ければケリがつくものなのかしら。

    ◆そこなう
    長く続いた不倫関係でしたが、相手が離婚に踏み切ることになります。
    それなのに、主人公がネガティブなのは、相手の男には他にも女がいるから。
    とんでもないオッサンだな。
    昔から略奪愛は上手くいかないといいます。
    沢山の業を背負うことになるので、余程図太くない限り耐えられないようです。

  • 大人女子向けな短篇集で、未熟なオイラには早すぎたのかもしれません。 ―― https://bookmeter.com/reviews/66673353

  • 寝る前にひとつずつ読み進めて、この前ようやく読み終えた。
    はじめ、私はこの本を長編小説だと思っていて、短編集なことにびっくりして、短編がかなり短い部類の短編なことにもびっくりした。

    この本を読み終わったとき(細かく言うと『そこなう』を読み終わったとき)、なにか判別のできない涙が溢れそうになってしまった。
    言葉にできない悲しさ、苦しさ、さびしさ、愛しさがつらいくらいに言葉で表されている本。自分の心がつらくねじ切れそうになったとき、この本がそばにいたら、わたしはきっと明日を迎えられるだろうなって思わせてくれる。

    好きな短編は『どこでもない場所』『号泣する準備はできていた』『そこなう』。

  • ひとりひとりに人生があって。
    この人といたら最強!みたいな気持ちがあるから結婚するんだろうけど、それが続かないこともあるし、この人といたら最強!ってひとといろんなことがあって一緒にいられなくなっても、やっぱりずっと忘れられないこともあるだろうし。
    ドラマや映画になる人は一握りだけど、全員にそれぞれの物語があるのは当たり前なんだよなあ。

  • この本にでてくるひとはみな、ものわかりがいいみたい。
    自分の状況や、素直になれない気持ちのことをよくわかってて、冷静。
    タイトルからしてそうで、悲しいことがあって、なにが悲しいのかわかっているような人たち。
    わたしはそんなに冷静に自分のことを考えられないし、号泣するのに準備なんてしていられない。

  • 江國さんの短編は初めて。どの話も、色で表すと灰色、のような印象。短調で、静かで、文章は柔らかいのにそこを剥がすと小さな刺があちらこちらに生えているような。江國さんの描くキャラクターはやっぱりどこか浮世離れしている人たちが多い気がする。周りの人間に振り回されているけれど、己のルールを決して曲げない、そんな女の人がたくさん出てくる。それが結構好きた。

  • 男性には理解しにくい感覚なのかも、それか自分だけかもしれないが、読みにくくはないのだけど、後にのこるものも少なく、手ごたえなく感じた。

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号泣する準備はできていた (新潮文庫)の作品紹介

私はたぶん泣きだすべきだったのだ。身も心もみちたりていた恋が終わり、淋しさのあまりねじ切れてしまいそうだったのだから-。濃密な恋がそこなわれていく悲しみを描く表題作のほか、17歳のほろ苦い初デートの思い出を綴った「じゃこじゃこのビスケット」など全12篇。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、きっと大丈夫、切り抜けられる…。そう囁いてくれる直木賞受賞短篇集。

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