号泣する準備はできていた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339221

感想・レビュー・書評

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  • あまり私の心の琴線には触れなかった。
    たぶん自分がこういった恋をしてこなかったからだろうなぁ。誰かに執着するということはない。思い出になるし、浄化されるよね。
    でもこの小説の女性たちは自分の心をかき乱す存在をずっと持っていて、それに囚われているような、縛られているような。よく分からんけど。
    個人的には「溝」「そこなう」が一番好きだな。

  • 「私、子供のころブウちゃんって呼ばれてたのよ」
    たとえば夫に、そう言ってみることがある。
    「十七歳のとき、はじめて男の子とデートをしたの」
    でも、それは、そう言葉にした瞬間に、私の言いたかったことーー言ってみようとしたこと、どうでもいい、あるいはどうしようもなかった日々のことーーとは違う何かになってしまう。

    『じゃこじゃこのビスケット』

  • 読んでから日が経ってしまったけど、久々のエクニカ。
    これが直木賞か~。ふーん、と思った。悪い意味ではなくって、もっとエンタメっぽいのが直木賞だと思ったから。
    12コの短編は、全部「ほんとは泣くはずだった気がするけど、涙を出しそびれた気持ち」たち。
    何かきっかけがないと、涙って流しそびれる。
    淡々と過ぎて行って、涙は身体にたまる。
    涙は溜まったまま、生活はつづく。


    相変わらずのタンタンっぷり。
    なんだか、最近エクニカが自分にぴったりしてきた。
    自分が変わったのか、エクニカが変わったのか。
    まずは、自分が変わったな。
    仕方のないことは仕方のないことってわかってきた。
    エクニカもこの小説では気取った部分が少ない。
    イイ感じの生活ディテールとか、甘ったるいのとかが、ない。
    甘ったるいのは、レズ(orバイ)にして描いている。
    そういえば、短編のほうがおもしろい作家なのかも。

    女子高生がこれを読んでも、面白いとは思えないかもしれぬ。
    だがしかし、ぜひ、少し成長してから読んでほしい。
    男は、一生わからんだろうから読までよし。

  • 江國さん得意の短編

    中でも「溝」。
    人と人とが気づかないうちにどうにもならなくなってしまっていて、それにハッとする瞬間が味わえます。

  • ここに登場する女たちは、だれひとりとして上手くたちまわろうとしない。保険をかけておく小狡(こずる)さもない。ころんですりむいた膝に手当てをしながら、また同じところにこぶを作ってしまうかもしれなくて、本能に忠実に生きようとする。本能を信じる力がある。そしてそういう生き方につきものの孤独を、真正面から引き受けている。
    ― 光野桃(解説)より

  • 表題作を含む12編収録の短編集。



    言葉のセンスはすばらしいのだけれども、なぜだかあまり内容が頭に残っていない印象の一冊。

  • 2014.10.9読了
    第130回直木賞受賞作品。

    真の美に触れたい。
    根源的な欲求がある。

    でもそれは、家族を持ち、サービス業に就いた今の自分にとって、見果てぬ贅沢な願いでしかなくなったと思っていた。

    なぜなら、そんなものに手を伸ばすには、特別な才能でもない限り、全てを犠牲にする覚悟、つまり馬鹿みたいに膨大な、 無限の労力と無為の時間が必要だと思ったからだ。

    そんな思い込みに押し潰されそうになって息苦しさを感じていたとき、図書館で本書が目にとまり、読み進むにつれ、厳寒の中で飲む缶コーヒーのようにほっこりしたのだ。

    多少、古さを感じるところはある。
    10年以上前の作品なのだから仕方ない。この10年の諸々の変わりようは、小説より奇なりを地でいくものだ。

    読んでいて深く思い知ったのは、人間の感情の複雑さは、定型に当てはめられるものではなく極彩色に色づいているのであり、自分にとっての究極の美は、視覚的なものではなく、そんな心の有り様なのだということだ。


    《収録作品》 (全12編)
    前進、もしくは前進のように思われるもの
    じゃこじゃこのビスケット
    熱帯夜
    煙草配りガール

    こまつま
    洋一も来られればよかったのにね
    住宅地
    どこでもない場所

    号泣する準備はできていた
    そこなう

    [気になった文書箇所抜き出し]

    ・ゆうべ、夫が猫を捨ててしまったの。

    ・言葉にした瞬間に、私の言いたかったこと ー 言ってみようとしたこと、どうでもいい、あるいはどうしようもなかった日々のこと ー とは違う何かになってしまう。

    ・それは誰かの抜け殻に見えた。あるいは残骸に。空っぽで冷たいのに、生々しく体温や気配を想像させるそれは、本来の持ち主のそばを離れて困惑しているように見えた。ほとんど恥じ入っているように。
    「私たち一度は愛しあったのに、不思議ねぇ。もう全然何にも感じない」

    ・背筋をのばしてエスカレーターに乗る。誰かに見られてでもいるみたいに気取って、この場にふさわしいと自分の思う、毅然とした態度で。周囲に馴染んでしまわないよう急ぎ足で、地階に向かってまっすぐに降りていく。

    ・私は独身女のように自由で、既婚女のように孤独だ。

    ・認めたくはなかったが、真理子は自分を、いつか見た老女とおなじだと思った。

    ・「じゃああたしは、どこでもない場所に」

    ・自由とは、それ以上失うもののない孤独な状態のことだ。

    ・近所の女の人たちは、私の母も含め、みんな彼女を嫌っていた。だらしのない女だと言い合っていた。私にはそれが恐かったのだが、それというのが陰口なのか、ネグリジェの女なのか、自分の母親なのか、わからない。わからないというより、上手く区別がつけられないのだ。

    著者のあとがきもいい。

    かつてあった物たちと、そのあともあり続けなければならない物たちの、短編集になっているといいです。

  • 初めての江國作品。 準備不足で嘘泣きもできず。

  • 2014.10.27

  • 語尾をのばす大人は、ばかか優しいかのどっちかだは言い得て妙な気がする笑

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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