快挙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 499
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101340739

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  • 【あらすじ】
    写真家を目指す俊彦は、小料理屋を営む二歳上のみすみと結婚する。やがて小説に転向した夫を、気丈な妻は支え続けた。しかし平穏な関係はいつしか変質し、小さなひびが広がり始める……。それでもふたりは共に生きる人生を選ぶのか?
    結婚に愛は存在するのか? そして人生における快挙とは何か? 一組の男女が織りなす十数年間の日々を描き、静かな余韻を残す夫婦小説の傑作。

    【感想】
    快挙とはなんだろう。読み始める前にタイトルの意味を考えてみた。自分なりの成果を挙げること、だろうか。何かを成し遂げること、だろうか。主人公にとっての快挙とは何だったのだろう。そして、著者はなぜ、快挙というタイトルにしたのだろう。ここまでは読み始めるまでの感想だ。快挙という言葉が出てきたのが、主人公の書いた小説のタイトルだったのにはちょっと意表を突かれた。でも、それが快挙だと文章の中にも書いてあったけれど、そう来たかと思って感心もさせられた。でも、その快挙はいとも簡単に潰される。快挙とは一体何なんだろうと、主人公は生きていく中で幾度となく考え、みすみと出会ったことが快挙なのだと気づく。みすみは主人公にとってどのような存在だったのだろう。生きていく上で必要不可欠な空気のような存在だったのだろうか。みすみは大切な時いつも背中を押してくれる存在だった。つらい時も大変なときもみすみは離れないでいてくれた。そして最後にみすみに病気が見つかった時、みすみの死を覚悟したが、まだ、生きていてくれるとわかり、快挙がまた訪れたと主人公は思ったのではないだろうか。それくらい、主人公にとって、みすみの存在は大切でかけがえのないものだったのだろう。快挙とは、主人公が自分の著書を出したように何かを成し遂げることでもある。でも、何か大切なものを得た、それを自分のものにしたことも、快挙と言えるのかもしれない。と、この本を読んで思った。快挙とはいろんな意味があるんだなと改めて感じさせられた1冊だった。わたしの快挙にとってのはなんだろう。もう訪れているかもしれない。でも、快挙は1回限りではない。何度も訪れる。努力すれば得られる快挙もあるし、偶然得られる快挙もある。これからの人生、まだ快挙があると信じて生きてみたい。



著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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