- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101342115
感想・レビュー・書評
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(2004.08.12読了)(2002.08.30購入)
日経の連載を読んで、前から気になっていたこの本を読んでみた。
「ぼくは、今年になってからはまだ充分に身体に馴染んでいない熱気と光の横溢に目を細める。額に次々と吹き出す汗を幾度も腕で拭きなぐりながら、陽炎が立ってみえる緩やかな坂道の下方に視線を注ぎ続ける。」
(このような描写が三島賞を受賞したる所以でしょうか。)
本の題名は、主人公(斎木鮮)が、英語教師によって、「ア・ルース・フィッシュ」(だらしのないやつ)の例文に使われたことに由来している。主人公は、looseを辞書を引いてみて、「しまりのない」「だらしのない」・・・などの意味のほかに「自由な」「解き放たれた」という意味もあることに気付き、現在の自分に相応しいように感じられI am a loose boy.と思う。
中学時代のガールフレンド、上杉幹、高校は別々の高校に進学したので、会う機会はなかった。上杉に呼び出され再び付き合い始めたが、上杉はテニスの能力を認められて私立高校に行ったが体調を崩して、テニスができず、目的を見失っている状態だった。
親と一緒にいるのがいやだからアパートを借りて一緒に住みたいとか、抱いてと関係を迫られたり、・・・。一線を越えられずに、分かれた。
その後上杉は、不良仲間と遊びまわり、妊娠し、退学させられたという。私生児を生み入院中といううわさを聞いた、斎木は、産院を訪ね、子供が里子に出されてしまうと困っているのを聞いて、アパートを借りて一緒に住もうと提案し、産院を連れ出してしまう。
三畳のアパートを借りて、親子を住まわせ、必要な生活用品を買い集める。
高校3年の斎木は、進学する気はなく、英語教師と喧嘩の末退学してしまった。
乳飲み子を抱えた、幹を働かすわけにはいかないので、就職活動を始める。中学のころから新聞配達をしてきたけど、昼の仕事に切り替えようと思う。
面接に行ってみるが、進学校の高校中退者を雇ってくれるところはない。
しょんぼり公園のベンチにいると、街灯交換の作業を手伝うことになり、そのまま雇ってもらうことになった。切れた街灯を交換したり、街灯を増設するための穴掘り作業をしたり、仕事を覚えてゆく。幹も朝の4時半から7時までパン工場で働き出した。
赤ん坊が病気になり、幹と赤ん坊は消えた。どこへ行ったのか全く連絡がない。一月ほどたって幹はやってきた。3週間ほど入院し、その後母子寮で過ごし、母親が子供を育てることを承知したので、家に帰ることになったのだという。
その夜やっと幹と結ばれた。翌朝、幹は家に帰って行ったように思えたのだが、斎木の友人の話では、家には帰っていないという。子供の父親のところに行ったのではないかという。斎木は、仕事を覚えながら、幹の帰ってくる日を待とうと思う。
(著者の履歴の中に、週刊誌記者、土木作業員、電気工事の仕事をしたことがあると書いてあったので、小説の中にその経験が織り込まれていることがわかる。電気工事の仕事の場面は実に詳しく書いてある。新聞配達の仕事も実にリアルなので、これも体験したことなのかもしれない。)
男の子(人間)は、仕事を覚えることを通じで、精神的に自立してゆくことを描きたかった作品なのだと思う。
著者 佐伯 一麦
1959年 宮城県生まれ
宮城県立仙台第一高等学校卒業
1984年 「木を接ぐ」で海燕新人文学賞受賞
1990年 「ショート・サーキット」で野間文芸新人賞受賞
1991年 「ア・ルース・ボーイ」で三島由紀夫賞受賞
2002年7月から2003年11月まで「鉄塔家族」を日本経済新聞・夕刊に連載。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校のとき先生から薦められた本。
本棚に眠っていたので読み返してみた。
当時はこの本を読んでも全然共感できなかったけど、
今になってようやく分かる気がする。
進学校特有の様々な制約の中で、それでもエネルギーにあふれてた時代。
もう一度高校生活をやり直したいとは思うけど、それじゃ駄目なんよね。
あの時から学べるものを学び、しっかり未来を見据えていきたいとおもう。 -
今となっては、古い話のような、少年の物語。私小説作家、佐伯一麦の出発。
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最初からズバっと決めて行動しちゃうような潔い主人公だとは思っていたけれど、仕事を始めだしてからはその性格に磨きがかかり、カッコイイ。読み始めは反抗期の少年の話なのかと思えば、主人公はべつに反抗期だからまわりに反抗したわけじゃなくて、自分の考えに沿って行動していることが次第にわかる。電気工職人の道へ踏み出した主人公が、大学へと進む同級生達の卒業式を体育館の照明を修理しながら見下ろすラストがまたカッコイイ。
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読売新聞の書評が良かったので、読んでみました。読み始めは感性豊かな中学生と中学時代にぐれて、そして妊娠してしまった女学生の単なる物語かな?と思いながら、読み進めて行った。読み進めていくと主人公の中学生は先生に反抗をしたり、親にも見捨てられたにも関わらず、懸命に自分の信念を通し、自分の生き方を見つけていく。仕事を通しても世間を学び、人を信用していく姿が、自分の中学生時代と比較すると羨ましく感じたり、もっと自分も信念を持ってその時代を生きれば良かったと後悔の念が生まれた。
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描写の言葉選びが好き
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高校に進学しなかった友達や中退して行った友達のことを思い出した。
若くして結婚して子供作った奴らのことも。
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17歳
この年齢は、10代の中でも大きなポイントなのかもしれない。
数多くの書物で、この年齢を題材にしたものがある。
盛んな時期で、物事にぶつかり、自分自身が何者なのか、よく見えなくなり、周りと自分を比較して
変に大人びて、変にあせって・・
それが青春問わえれれば、そうなのかもしれないが・・・
物語は、仙台が舞台
仙台の進学校に通う少年が高校を退学
中学校時代の彼女で女子高に通っていた少女が結婚しないまま、子供を出産する。
2人は、共同生活をはじめ、少年は必死に働きながら、目の前の現実と向かい合いながら、大人への階段を
徐々に登っていく。 -
非常によい小説であると思うのだが、これを読んだときに自分が求めていたものとはちょっと違ってしまっていて、感動するところまではいかなかった。
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青春小説