雷の波濤 満州国演義七 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101343266

作品紹介・あらすじ

昭和十五年、ドイツは電撃戦により、フランスを征服。帝国陸軍はすかさず北部仏印に進駐した。敷島次郎は独立を志すインド女性たちの訓練を行い、四郎は満映作品の取材中に人工国家の綻びを目撃する。太郎は心ならずもある謀殺に加担し、三郎は憲兵としてマレー進攻作戦に同行することに。太平洋戦争開戦、南進の成功に沸きたつ日本人と次第に増幅してゆく狂気を描く、第七巻。

感想・レビュー・書評

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  • 長かった。
    私事のバタバタやお盆休みを挟んだとはいえ、読み始めから読了まで1ヶ月もかかったのは、ひさしぶり。でも、間違いなく面白い1冊。

    日本軍部が太平洋戦争へとひた走る狂気の時代。
    局所局所で無能な司令官が愚策を呈し、軍部や政界の勢力争いが、国を破滅の途へと誘って行く・・・。

    ★4つ、8ポイント。
    2018.08.27.新。

    ※巻末解説文より。
    敷島四兄弟が主人公なのではない、「満州国」こそが主人公なのだ・・。
    納得。

  • 不安が緩慢とともに北の大地に残る中、狂騒は絶望を無視して南へ。現在から振り返るからこそわかるこのうねり、当時を必死に生きる人にはやはり抗えない波だったんだろうか。いや、女を囲うその傲慢さに、戦勝の報に溢れるその顔の緩みに、何かを感じて動く余地はあったのでは。いやいや、これこそが現在を高みに思う歴史の闇か。

  • 1928年~1945年の17年間の満州の歴史。登場人物4兄弟の視点で語られる。満州事変から第二次世界大戦終結までの流のなかで、南京事件、張鼓峰事件、ノモンハン事件、葛根廟事件、通化事件と有名な事件が次々と起こり、4兄弟それぞれの立場で事件と向き合う様子が描かれる。満州の歴史を詳しく知らなかったので、勉強になった。何が正しくてなにが正しくないのかなんてだれにもわからないと感じた。

  • ついに日米開戦
    敷島四兄弟は、流れに引きずられ、立場を微妙に変えながら、歴史を目撃する。

    現在に一番近い歴史であるだけに、
    もしこの時点でこうだったら?こうしていれば?とか、ついつい思いながら読んでしまう。
    ここに出てくる政治家や軍人、実業家などの一部は、現在の政治家や実業家に直接関係していたりする。

    この巻の中に、「社会主義と国家社会主義は同根だ」との言葉があり、確かに一党独裁ということともに、スターリンもヒトラーも同じにおい(力で他を制する)がする。
    そして、現在の日本の1強の政治状況は、その方向に流れていっていないだろうか?

  • 圧巻の歴史冒険小説の第七巻。

    世界は戦争という狂気の渦に巻き込まれ、ついに太平洋戦争が開戦し、帝国陸軍は南進する。

    敷島四兄弟もまるでメフィストフェレスのように付きまとう間垣徳蔵により、次第に狂気の渦に引きずり込まれていく。一体、間垣徳蔵は何故に敷島四兄弟に付きまとうのだろうか…

    前巻まで読んだ限りでは、物語の結末は敷島四兄弟が顔を揃え、幾ばくかのハッピーエンドで終わるのではないかと予想していたのだが、この巻を読むと、それは儚い願いであったことに気付く。

    壮大な物語も残すところ後、二巻。心して読まねば。

  • 大長編も7巻目となった。時代はとうとう1941年12月8日に至り終わりも近い。描かれるのは戦いの場面が多くなり、男女が入り乱れたりするシーンも減っていまいち面白くない。
    解説(高野秀行)の船戸作品分析がなかなか秀逸。「(作者の船戸さんは)舞台をどこに定めても大枠の「現実」を勝手にいじらない。架空の政治家や政党、反政府ゲリラなどは一切登場させない。~中略~ 半面、実在の人物は直接書かない。それがイランのホメイニ師であれ、幕末の榎本武揚であれ、登場人物の会話や地の文にこそ垣間見えるが、彼らの内面が描かれることはない。内面どころか見た目の描写さえない。おそらく、見た目を描写すると内面も透けて見えてしまうからだろう。」(p.684)とか、各巻の解説を読んできたので敷島4兄弟(それにしても太郎、次郎、三郎、四郎という名づけ方は何という短絡さ。フィクション感を醸すためだろうか)の末路もそこはことなく知っているんだけど、本巻の解説の「船戸作品の登場人物が最後にはほとんど死んでしまうのも、彼独特のニヒリズムだけが理由ではなかろう。「自分が創ったものは自分で始末しなければいけない」――それもまた船戸さんの流儀の一部なのだと思う。芝居が終わったあと、舞台は前の状態に戻さねばならないということだ。」(p.684)を読んで何だか納得。次巻以降を楽しむ視点がひとつ増えたような感じ。

  • 2016年11月18日読了

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