王女の涙 (新潮文庫)

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著者 : 大庭みな子
  • 新潮社 (1992年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101344119

王女の涙 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 漢字だと桜蘭とでも書くのだろうか…サクラランがTear of Princessの和名だそうな。ろうらんとも読めるため、沙上の幻の都、楼蘭に思いを馳せてしまった。

    桂という木も出てくる。我が家のシンボルツリーは、金木犀ではなく本当の桂。ハートの形の葉が凄まじい勢いで生い茂り、人の視界を遮り、大きな日陰を生む。この木に紐をかけて首を吊る人の気持ちはわかるような感じがした。

    すべてが過去の出来事であり、その記憶を共有する吉野老人、笛子、夏生の語る言葉にしか真実はないはず。

    笛子の語る物語は妖しくて、いくつもの妄想に彩られ、彼女の壊れた無垢な心と扇情的な容姿と相まって、あまりに現実離れしている。読んでいる間に、私は何度となく不思議に眠気に囚われ、この本を胸に置いて目を閉じていた。だから短い物語なのに読み終えるまでにかなりの時間を費やしてしまった。面白くないのではなく、文芸作品として耽美な小説で惹きこまれながら、私の中の道徳とか倫理というものがついてゆけなくなるらしい。そうしてたびたび逃避しながらやっと読了。

    目をそらしたかったのは表現の妖しさからではなく、そこに描かれている男と女の情念や打算、本音の言葉がなまなましく、私や多くの男女の日常の本当のところを見せつけられてしまうからではなかったか。

    戦後の昭和もまた、大正や昭和初期と似た空気感で描けることを教えてもらった。

    私の知る限り、乱歩に近い。

  • 笛子がどうしても好きになれない。数々復讐を志す女性の物語を読んできたが、その中でも群を抜いて魅力がないように思う。あくまでも私個人の意見ですが。笛子はきっと、何もかも幼いのだ。復讐の動機も、やり口も、拙過ぎる。復讐者となる女性には、気高さであったり、徹底して鬼にでもなる芯の強さであったり、何らかの魅力があるものだが…。復讐の対象である夏生の方が、女性としてよほど魅力的に思える。明の名前をだされて激昂する場面などでは、過去の奔放な恋愛模様と矛盾する人間臭い一面も見えるし。笛子の復讐劇は子供がただ駄々をこねて喚いているのと何らかわりはない。結局誰1人として籠絡できていないのだ。見てて痛々しい…。お屋敷のロケーションは抜群によかったが、途中から怪事件でも起きて早く耕さん出てこないかなーとか思いながら読んでしまった。

  • タイトルにある「王女の涙」という植物の香りがどのようなものかは知らなが、むっとして鼻につくからこそ気になって惹かれてしまう、そんな香りを想像した。女性の生命力を思わせるような、そんな匂い。都心にある日本家屋を舞台に、母を自殺に追いやった女を憎悪する娘と父の物語を、そこに下宿する主人公の視線で描く。つまり主人公もまた、その物語においては読者と同じく(とはいえ距離感はものすごく近く、巻き込まれているが)傍観者なのだろう。バブル期あたりに出た作品で、今の感覚とはちょっとズレがあるかも。

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