いまひとたびの (新潮文庫)

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著者 : 志水辰夫
  • 新潮社 (1997年7月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101345123

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いまひとたびの (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 新潮文庫で志水辰夫の短編集『いまひとたびの』読了。いずれも人間の死に関するテーマだがミステリーではない。が、シミタツである。一筋縄では行かない作家だ。9篇のどれもが読後心に欠片が刺さる。表題作は車椅子の叔母にせがまれて箱根へドライブに連れて行った初老の男が知った切ない真実。

    「赤いバス」は家族と離れて山荘に移住した男が地元の少年との交流を通して不思議な体験をする話。少年は赤いバスが死んだ姉を乗せてくると言う。そして男は家族にも秘密にしていることがあった。ラストは男の力強い決意に感動した。

    「七年のち」は亡くなった同僚の娘の就職祝い。集まった男達と同僚の妻、そして娘の会話、そして娘から明かされた足長おじさんの存在。桜の下で娘が思い出した父親の葬儀の時のある出来事。自分のための行為が他人の人生に与えた影響を知った春。

    「夏の終わりに」は田舎の実家に住もうとする夫と、夫を理解するも都会の仕事を離れられない妻との子供のいない初老の夫婦が実家で過ごす週末。夫婦の何気ない会話の積み重ねと田舎の晩夏の風景描写で夫婦のお互いを大切に思うその思いが痛いほど読み手に伝わる。

    「トンネルの向こうで」は死期の近い母親のことを気にかけながら北海道へ出張に来た会社役員が、トンネルを抜けた不思議な空間で母親の姿を見る。いくつになっても男にとって母親は特別な存在だろうか。

    「忘れ水の記」は若き日の悔恨を胸に故郷の旅館を訪れた男の話。亡くなった幼馴染に瓜二つの旅館の女将のため、雨の夜に作った〝てるてる坊主〝。男が過去を思い返し、自己嫌悪に震えるシーンはシミタツ節そのもの。

    「海の沈黙」は母親の元に帰った元同僚の死を知ったシナリオ作家が元同僚の実家を訪れて抱く思い。他人を理解することの難しさを思う。

    「ゆうあかり」は妻と共通の友人だった女性からクラス会に来られなくなった連絡が来る。何故なのか心が騒ぐ男が思い出す友人の姿。詳しい経緯は語られないが、三人の間にあったことは予想できる。悔恨と罪悪感を抱く男はラストに何を思ったか。

  • 30頁程の9つの短編集。人生の終末が匂いが漂う主人公たちの心情と、描かれた自然との掛け合わせが、読後にじわっと沁みてくる。2016.1.22

  • 初老の男性ばかりが主人公の物語を、ここまで立て続けに読むのは初めて。都合良く、理想の女性像を描く男性作家が多い中、とても新鮮に感じた。
    現代においてリアリティには欠けるが、端正で品があり思慮深い男性を通して味わう風景は、どれも奥行きがあり豊かで美しく、やさしい気持ちになれる。

  • 個人は遺された人の記憶の中でしか生きられない。
    だから美事が多い。
    …と云う事実を噛みしめる事が出来る短編集。
    自分が歳とって穿ったのか、
    正直申し上げれば陳腐でげんなり。
    年配の男性と思い出の女性。
    そんな話が殆どな上に、女性の名前がみんな似ていて
    何か思い入れでもあるのかと勘繰ってしまう(笑)

    時代の所為も有るでしょうけど、
    劇団ひとりのネタ帳にありそうな…。

  • 清水辰夫の作品は、ハードボイルド系のみしか読んだことがなかった。
    本作は、高齢のほのぼのした純愛小説とでもよぶのか、読後感がほのぼのとさせられる作品が多数収録されている。
    清水辰夫の新たな一面を知ったという感じ。
    解説を見ると、こちらの方が真骨頂のようです。

  • 切なくて、尊い。

  • 全て「死」が絡んでいる短編集。

    本人、友人、昔の恋人、母、他人…
    対象はいろいろだが、それぞれの身に起こる死とそれに関わる物語。

    切ない。しかし時間は穏やかに流れ、そこに生を感じることができる。

    心に沁み入る短編ぞろいだし、またこれらがまとまっていることで1冊の本としての魅力が増している。

    最初読み通したときはそうでもなかったが、噛めば噛むほど…。
    読む人の気分や状態に左右されそう。
    「忘れ水の記」が好き。

  • 短編集だけど、
    主人公がみな定年間近の男性で、
    静かな男の読み物、という感じがする。

    読み進めていくと、
    後悔の感情がふつふつと
    浮かんでくるのだった。

    死を前に、人は何ができるのか、
    もう少し考えてみたい。

  • 短編集でしたが、「生き方」、「人生」、「死」などを考えさせられます。
    文章がとても美しいと感じます。
    とくに光景を表現する文章がとてもすばらしく、きっとどんな映像にも負けないと思います。
    この本は ずっと持っていて、何度も読み返したいと思う一冊です。

  • ドライブに連れてって。赤いオープンカーで―交通事故で夫を亡くして以来、車椅子の生活を送ってきた叔母の願いは意外なものだった。やがて男は叔母の秘められた思いと、ある覚悟に気づくが...(「いまひとたびの」)。大切な人と共有した「特別な一日」の風景と時間。それは死を意識したとき、更に輝きを増す。人生の光芒を切ないほど鮮やかに描きあげて絶賛された傑作短編集。

  • 四十にして惑わず、なんていうものはないんだろうな。あってたまるかよ。

  • 悲しくせつない短編集
    全編に共通しているのが、死
    読み終わると暗く重いですが
    何か心に残るという感じです

  • 全ての短編が「死」を迎えようとしている人々の物語。
    自分の死が見えてしまった時に、私は凛としていられるだろうか。

  • わざとらしくて苦手。

  • 090921(n 不明)
    100403(s 100917)

  • シミタツである。心に沁みる達意の文章。既に昔になった昭和の古色蒼然とした風景の中で語られる身近な人の「死」にまつわる9つの短編。『このごろ先に逝った者に羨望のようなものを感じるのは、自分の気力が衰えてきた証拠だろう』『子らがいずれ離れて行ってしまうことも。…。その先待ち受けているのは、老いという名の下り坂だけである』『人は自分の記憶の中でしか生を閉じることは出来ない。残された時間やいまの自分に必要な時間は、いつだってこれまで費やしてきた時間にはるかに及ばなかった』『男はみんなそうだよ。いつまでたっても十代か二十代のままさ。なくしたものは絶対に忘れやしない』ある程度の人生を重ねてきて満足や悔恨やそれなりの感傷を持つ中で、死という非日常と向き合うことでの改めての感慨。私の好きなのは「ゆうあかり」と「忘れ水の記」。老いの中での悔恨と痛みと齟齬、そして男としての矜持にしんみり来る。

  • 人は死を間近にむかえたとき、やはり生まれたところを思い出すのだろうか?できるなら帰ってみようとするのだろうか?残りの時間をどう過ごしたいと願うのだろう?読みすすめると、知らぬ間に季節感と自然のかおりに包まれている。日本冒険小説最優秀短編賞受賞「本の雑誌」年間ベスト1

  • 大人の短編集。黙って読むべし。

  • 短編集ですが、話の共通点は自己を知った人の話、話がしんみりしていて、心に残る。特に最後の部分が余韻を残す。

  • はじめて手に取ったのは10年ほど前。タイトルと表紙のブルーにひかれて買いました。
    そして思いがけず、とてもこころに残る作品たちでした。
    私が一番スキなのは「七年のち」ですが、他のどの作品もしみじみとすばらしいと思います。
    若いときに読んでも心に何かを残してくれた小説。今読めばさらに強く、そして優しくこころにしみてくる気がします。

  • この作品で、冒険小説を書いていた頃から定評のあった心の機微と中年男性の視線の描写を掘り下げている。過剰な物語や非日常を描いてはおらず、あくまで社会の中で生きる普通の男性の日常を切り取るだけだ。だから最初は地味に感じるし物語の世界にはいるまで時間がかかる。しかし、それを補って有り余るほど・・・でもないかも知れんが、人の思いやりと穏やかな諦観、山や川、森などの自然を大事に扱った世界観を楽しめる

    相変わらず主人公の年齢設定が高すぎてアレだが、主人公の日常への目配りや捉え方のバランスが良い。ただ、病気を絡めすぎではないかと思ったが、想定している読者層には身近で共感できる話題なんだろう。短編集だからかもしれないが、余分な情報を抑えて心の機微に焦点を絞っているように見受けられる

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