いまひとたびの (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101345123

感想・レビュー・書評

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  • 30頁程の9つの短編集。人生の終末が匂いが漂う主人公たちの心情と、描かれた自然との掛け合わせが、読後にじわっと沁みてくる。2016.1.22

  • 初老の男性ばかりが主人公の物語を、ここまで立て続けに読むのは初めて。都合良く、理想の女性像を描く男性作家が多い中、とても新鮮に感じた。
    現代においてリアリティには欠けるが、端正で品があり思慮深い男性を通して味わう風景は、どれも奥行きがあり豊かで美しく、やさしい気持ちになれる。

  • 個人は遺された人の記憶の中でしか生きられない。
    だから美事が多い。
    …と云う事実を噛みしめる事が出来る短編集。
    自分が歳とって穿ったのか、
    正直申し上げれば陳腐でげんなり。
    年配の男性と思い出の女性。
    そんな話が殆どな上に、女性の名前がみんな似ていて
    何か思い入れでもあるのかと勘繰ってしまう(笑)

    時代の所為も有るでしょうけど、
    劇団ひとりのネタ帳にありそうな…。

  • 四十にして惑わず、なんていうものはないんだろうな。あってたまるかよ。

  • 悲しくせつない短編集
    全編に共通しているのが、死
    読み終わると暗く重いですが
    何か心に残るという感じです

  • お勧めです。

  • シミタツである。
    心に沁みる達意の文章。既に昔になった昭和の古色蒼然とした風景の中で語られる身近な人の「死」にまつわる9つの短編。
    『このごろ先に逝った者に羨望のようなものを感じるのは、自分の気力が衰えてきた証拠だろう』
    『子らがいずれ離れて行ってしまうことも。…。その先待ち受けているのは、老いという名の下り坂だけである』
    『人は自分の記憶の中でしか生を閉じることは出来ない。残された時間やいまの自分に必要な時間は、いつだってこれまで費やしてきた時間にはるかに及ばなかった』
    『男はみんなそうだよ。いつまでたっても十代か二十代のままさ。なくしたものは絶対に忘れやしない』
    ある程度の人生を重ねてきて満足や悔恨やそれなりの感傷を持つ中で、死という非日常と向き合うことでの改めての感慨。
    私の好きなのは「ゆうあかり」と「忘れ水の記」。老いの中での悔恨と痛みと齟齬、そして男としての矜持にしんみり来る。

  • この作品で、冒険小説を書いていた頃から定評のあった心の機微と中年男性の視線の描写を掘り下げている。過剰な物語や非日常を描いてはおらず、あくまで社会の中で生きる普通の男性の日常を切り取るだけだ。だから最初は地味に感じるし物語の世界にはいるまで時間がかかる。しかし、それを補って有り余るほど・・・でもないかも知れんが、人の思いやりと穏やかな諦観、山や川、森などの自然を大事に扱った世界観を楽しめる

    相変わらず主人公の年齢設定が高すぎてアレだが、主人公の日常への目配りや捉え方のバランスが良い。ただ、病気を絡めすぎではないかと思ったが、想定している読者層には身近で共感できる話題なんだろう。短編集だからかもしれないが、余分な情報を抑えて心の機微に焦点を絞っているように見受けられる

著者プロフィール

1936年、高知県生まれ。雑誌のライターなどを経て、81年『飢えて狼』で小説家デビュー。86年『背いて故郷』で日本推理作家協会賞、91年『行きずりの街』で日本冒険小説協会大賞、2001年『きのうの空』で柴田錬三郎賞を受賞。2007年、初の時代小説『青に候』刊行、以降、『みのたけの春』(2008年 集英社)『つばくろ越え』(2009年 新潮社)『引かれ者でござい蓬莱屋帳外控』(2010年 新潮社)『夜去り川』(2011年 文藝春秋)『待ち伏せ街道 蓬莱屋帳外控』(2011年新潮社)と時代小説の刊行が続く。

「2019年 『疾れ、新蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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