レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 (新潮文庫)

  • 80人登録
  • 3.21評価
    • (0)
    • (6)
    • (11)
    • (2)
    • (0)
  • 5レビュー
著者 : 原武史
  • 新潮社 (2015年3月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (531ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101345819

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 西武グループ創業者・堤康次郎。彼が作り上げた東京西郊の風景を通して空間政治学の視点から戦後政治思想史を描いた内容。


    西武鉄道事業の展開は東京の西を中心に始まった。田畑と山林の多い土地を買収し鉄道を通し、都心ターミナルは駅ビルに百貨店と商業施設を建てる。鉄道沿線は宅地と公営団地を売り、各駅併設のスーパーを作る。終点に巨大遊園地をつくり人を呼び込む。衣食住一体となったライフスタイル文化を郊外に生み出した。堤が行ったそのプランと手法は阪急の小林一三や東武の五島慶太を真似たとはいえ、東京西郊に西武王国を創ったといえよう。

    しかし、反共親米の彼が精力を傾けて作り出した東京西郊の郊外風景がアメリカの街並ではなく旧ソ連の計画都市と似ているという皮肉は面白い。

    それに加えて、創業者の思想とは逆に西武の団地は日本共産党の強力な地盤となった二重の皮肉がある。交通の不便さ(満員通勤地獄)や団地生活の横のつながりから地域の自治活動が盛んになり、それが社会運動へと発展する。(ひばりが丘団地史)。
    結果として地域の不満をきめ細かに掬い取った共産党が支持基盤を広げていく様を細かく記述している。
    さらにこの地の特色が病院や結核療養所、老人ホームや福祉施設が多く建てられた場所であることだ。そもそも田畑しかなく住宅地としても売れない土地を医療福祉施設として利用した歴史と立地の利点がある。(日本で最初のハンセン病院が建てられたのもこの地)。病院内の組合運動が発展し共産勢力の支持拡大となった背景や病院そのものがコミューン化して「赤い病院」と呼ばれるようになるのもこの土地がもつ歴史と地勢的理由からである。ここにアメリカナイズされた西武王国を創ろうした堤康次郎の思惑は皮肉の一言だろう。

    細かなトリビア的な記述や知識、馴染んだ地名や土地(大学生の頃、西武沿線に住んでいたので)がたくさん出てきて、懐かしさとともに最後まで読めた。自分が住んでいた土地や郊外の風景が、旧ソ連のそれと似ているとは驚きだった。大学も同級生たちの家もみな西武沿線にあったので、遊びに訪れたときに降りた各々の駅や、通学で毎日車窓から眺めた街並みを今でも覚えている。そういえば共産党の選挙ポスターが多かった。
    良く言えば緑が多く静かで、悪くいうと活気がなく寒々としている東京のベットタウン。そんな巨大団地が連なる郊外風景を思い出す。西武遊園地に行くことも特別列車レッドアロー号も乗ることはなかった。が、東京での学生生活の思い出は西武鉄道なしでは語れないほど、自分のなかに記憶として埋め込まている。

    しかし、東京西郊に親しみのない人は本書を読み進めるのは正直しんどいかもしれないし、お薦めしない。

  • そんなに昔のことではないのに、知らないことというのは本当にたくさんあるものだなとしみじみ思う。

  • 「小平事件」のアリバイを鉄道ダイヤから立証しようとする試みは読ませる。

全5件中 1 - 5件を表示

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 (新潮文庫)の作品紹介

「西武の天皇」と呼ばれた堤康次郎。東京西郊で精力的に鉄道事業を展開し、沿線には百貨店やスーパー、遊園地を建設。公営団地も集まり、「西武帝国」とでも呼ぶべき巨大な文化圏を成した。しかし堤本人の思想と逆行するように、団地は日本共産党の強力な票田となり、コミューン化した「赤い病院」さえ現れた。もうひとつの東京、もうひとつの政治空間でなにが起きていたのか――。

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 (新潮文庫)はこんな本です

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史 (新潮文庫)のKindle版

ツイートする